映画 ブリングリング ソフィアは野次馬 | 気むずかしい いろいろ

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ブリングリング窃盗団は、現代版のねずみ小僧みたいな存在だ。
だけど、ねずみ小僧も本当は「盗んだ金を貧しい人に配った」という美談はなく、
実際は賭博で作った借金返済に使っただけだった。


ブリングリング窃盗団も、動機はセレブへの憧れというより、
ただ自分たちの私欲を満たすために盗みを働いていた。

それでも、ターゲットが金持ちだったというだけで、
彼らは世間から妙にヒーロー扱いされる。


そして注目されることで、反省するどころかますます調子に乗っていった。
ヒーロー扱いされるって、ある意味いちばん人を腐らせる。

 

一方で、金持ちは金を持っているだけで悪人扱いされる。
普段は「セレブ!セレブ!」とチヤホヤしていたのに、
いざ窃盗の被害者になっても、誰も本気で同情しない。


有名人たちは、こういう人間の薄情さを、骨の髄まで知っているんじゃないかな。
だから、ファンのことを心底から信用できないのかもしれない。

 

もちろん、盗まれたことにすら気付かないセレブたちにも問題はある。
物を持ちすぎて、何を持っているかさえ把握できない。

 

 


パリス・ヒルトンに至っては、「バカだから鍵を隠さない」と痛烈に皮肉られていたが、
それでも彼女は、この映画に出演している。
つまり、自分が世間からどう見られているかを、ちゃんと自覚しているということだろう。

 

映画の中で、窃盗犯のアレクシスが収監された刑務所に、
リンジー・ローハンがいて、彼女が泣きわめいて迷惑だったとインタビューに答えていた。

アレクシスが窃盗に入った家主なのに!反省の色なし!!


実在のアレクシス・ネイヤーズ(現・ヘインズ)は、

図太さと自己顕示欲のかたまりのように見えた。

 

ただ、事件をもう少し深く調べてみると、
この窃盗団の動機は単純なセレブへの憧れだけではなかった。
いじめ、差別、貧困といった背景が、それぞれの子どもたちにあった。


一筋縄ではいかない、もっと根深い問題があったはずだ。

だけど、ソフィア・コッポラはそういう繊細な部分には踏み込まない。
センセーショナルな表層だけを切り取り、
まるで野次馬のような視点で、面白がるように映画を作る。


彼女の作品にはいつも、人間の繊細さに対する無関心さが漂っている。

この映画も、結局は「表面をなぞるだけ」で終わっていた。
事件の奥にある闇や痛みには、ほんの少しも光を当てなかった。

 

 

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2013年 アメリカ・フランス・イギリス・日本・ドイツ合作
監督・脚本:​ソフィア・コッポラ
原作:​ナンシー・ジョー・セールズ『The Suspects Wore Louboutins』
出演:​エマ・ワトソン、ケイティ・チャン、タイッサ・ファーミガ、イズラエル・ブルサール、クレア・ジュリアン、ジョージア・ロック、レスリー・マン

 

ロサンゼルス郊外の高級住宅地カラバサス。​セレブの生活に憧れるティーンエイジャーのレベッカとマークは、インターネットでセレブのスケジュールや自宅の情報を調べ、留守中の豪邸に侵入して高級ブランド品を盗み出す。​仲間を増やしながら犯行を繰り返す彼らは、やがてパリス・ヒルトンやリンジー・ローハンなど、実在のセレブの自宅を標的にするようになる。​しかし、次第に犯行がエスカレートし、彼らの行動はメディアの注目を集め、ついには逮捕される。​実際に起きた「ブリングリング事件」を基に、若者たちの虚栄心と現代社会の問題を描いた青春クライムドラマ。

 

この作品は、実際の事件を題材にしながら、ソフィア・コッポラ監督が現代の若者文化やセレブリティへの憧れ、SNS時代の虚構と現実の境界を描いています。​エマ・ワトソンの新たな一面が見られる点でも注目されています。

 

犯人の少年少女。みな、あごが小さく映るように、上から撮ってんのな。警察提供のマグショットなのに。

左:アレクシス・ヘインズ。右上:レイチェル・リーとニック・プルゴ。右下:ダイアナ・タマヨとコートニー・エイムズ