これ、公開が1995年だから、ビートたけしが事故を起こす前、顔が変わる前の作品なんだろうな。
事故が1994年8月で、復帰が1995年3月だから。なんか、若いというより、懐かしい顔だった。「その男、凶暴につき」のあの衝撃を思い出す。
主役は、ビートたけしではないのだけど。
ディスコを経営している万代(佐藤浩市)は、借金まみれで、ヤクザから借金返済を迫られピンチに。憂さ晴らしに行った新宿のバッティングセンターで、リストラされた元サラリーマンの萩原(竹中直人)にいちゃもんを付けられ、へんな縁ができる。
万代は、借金返済のため、ヤクザの事務所の金庫にあつまる金の強奪を計画。万代と、荻原と、ディスコで男娼をしている三屋(本木雅弘)、元刑事の氷頭(根津甚八)、ヤクザの事務所に出入りする外国籍の元ボクサーのジミー(椎名桔平)の5人で、ヤクザの事務所を襲撃。
うまく1.5億の金を強奪したが、身元がスグにバレ、殺し屋二人組に狙われるハメに。それが、ビートたけしと、木村一八が演じている。ライトを背に浴び、シルエットから登場したビートたけしの存在感たるや!右目に眼帯をして、丸いサングラスをかけ、なんの躊躇もなく、ズドンズドンと銃をぶっぱなし、何事もなかったかのように、普通のうごきで立ち去る。スタスタと、はや足で。かっこいー。いつもの映画の中で見るビートたけしだけど、こんな風に、演じられる人、ほかに見たことがないから、やっぱり独特で、唯一無二の演技法があるのだろうな。
そして、27年前の佐藤浩市と、本木雅弘のかっこよさったら。佐藤浩市当時、35歳頃、本木雅弘28歳頃。あぁ、わたしはこの時代からずっと、佐藤浩市のファンだったなと。あんな顔だった。そんで、化粧をした本木雅弘の妖艶さと、セクシーな裸体ったら。見ごたえがあったなー。逆に、竹中直人は、かなり痩せた現在の方が、男前にみえるのが不思議。根津甚八もかっこよかったし、名優たちの若い頃を、懐かしむだけでも見ごたえがある。
だけど、この映画のカッコよさは、そんなところやない。
バブルがはじけ、生きる場所、術を失った男たちの、色気ナシのバイオレンス映画だ。潔い。そして、これだけ個性の強い俳優を集めているのに、バランスが非常によい。ビートたけしの放つオーラは異常ではあるが、みな適度な見せ場所があり、それぞれかっこいい。ただただ、かっこいいのだ。公開当時は、そんなコトはぜんぜん感じなかったけど、無謀、無鉄砲な行動は、アホちゃうか?とふだんならツッこむところだけど、この映画に、そんなリアリティはいらない。あの当時、追い詰められた人たちなら、こんな行動にも出かねんなと思わせるパワーがある。
久しぶりにみたが、めっちゃよかった。
バブルはじけたけど、ヤクザはまだ金があった時代やな。
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1995年日本
脚本・監督:石井 隆
出演:佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平、ビートたけし、木村一八、鶴見辰吾、永島敏行