舞台映像 クヒオ大佐 | 気むずかしい いろいろ

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録画ストックから。

 

吉田大八が、映画「クヒオ大佐」を作った後、

いろいろと心残りがあって、宮沢りえを主演して作った舞台と説明があった。

 

映画は、クヒオ大佐を主役にして、華麗な詐欺の手口を見せるものだったが、

妻側、騙された女側の立場で、クヒオをどう見ていたのか、を描いてみたかったとあった。

 

クヒオ大佐は70年~90年代に活躍(?)した、詐欺師。

目鼻立ちが日本人離れしていたことを利用して、

アメリカ軍人になりすまし、そしてハワイとイギリスの血統であることをでっちあげ、

あっちの女、こっちの女から大金をせしめた伝説の詐欺師である。

 

そのクヒオ大佐の帰りを待つ妻が主役で、クヒオ大佐は出てこない。

出てこない代わりに、外で女から金を巻き上げてることをうっすら知りながら、

帰りを信じて待つしかない妻の狂気を描いている。

 

そして、妻に同情しはじめ、訴える気をなくしてしまった騙された女(川面千晶)と、

なぜ偽物とわかりながら騙され続けているのか、なんで帰りを待つのか、愛せるのかと、執拗に妻を問い詰める妻の元同級生(岩井秀人)と、

クヒオ大佐を敬愛する近所の子供(水澤紳吾)と、の4人芝居。

 

そないに“アメリカ”という国は強大なのか。

戦後、高度成長期のアメリカに対する日本人のコンプレックス、

敗北感を「男の幽霊」として表現しているようだ。

 

クヒオ大佐は、早々に敗北をみとめ、“アメリカ”という強大な力を利用した男と、それにすがる女たち。

日本の男に失望し、偽物と薄っすらわかっていても、希望として縋りついている女たち。

 

“愛は惜しみなく奪う”でもあるが、

“愛に惜しみなく差し出す”が女たちの心境に近いんじゃないだろうか。

 

ストーリーとしては、吉田大八の極端な思想が入っているように思う。

当時の女は、自立が難しかったのだろうか。

“女”という立場で見ると、あまり気持ちのいい話ではないが、

宮沢りえの演技を、あの距離で観れたのは、うれしかった。

 

そして2017年はまだまだ舞台のことはあまり知らなかったから、

あとからこの舞台が、わたしの初岩井秀人だったなと、思い返す。

 

この舞台では、妙にしつこくて、自信満々な小説家を夢見るヲタク役で、

ほんとうに、うざい!きもい!と思いながら、観ていた 笑。

 

その数年後に、大ファンになるとは思いもせず。

元同級生で、喋ったこともない、顔も名前も覚えていない男に、

あんなに絡まれたら、怖すぎる。

 

でもあの男は、敗戦国の男の象徴で、まだ負けを認めていない男の一人でもあるのだろうなと、今になって思う。

 

 

宮沢りえのラストシーンの振り返りの表情、ちょっと微笑むあの顔。

舞台では目が悪すぎて確認できなかったが、映像だからみれてようやく謎がわかった。

いや、あれにはいろんな含みがあるのだけど、

なぜ、あのラストシーンになったんだろうと思っていたから、薄笑み浮かべてたんやと、はじめて知った。

 

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2017年

作・演出:吉田大八

出演:宮沢りえ、岩井秀人、川面千晶、水澤紳吾

 

 

▼観に行ったんだよなー。出張にからめて行けた時代はよかった。

 

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<今日のいちまい>