期待通りのおかしな話。こわれた人々。
松尾スズキ演出は、とにかく女優たちに下ネタをさせる。女優たちは恥じらうことなく、ど真ん中の下ネタセリフを堂々という。エロサイトだ、セックスだ、ここには書けない単語がいっぱい。エロいのでなく、下ネタ。この言葉のチョイスのセンスが松尾スズキワールドでおもしろい。
今回は家納ジュンコが、家出からかえってきて、義父との不倫のいきさつを赤裸々にかたる場面なんてもう、松尾スズキの変態演出に、全力でこたえる女優魂を感じた。すごかった。
祖父から受け継いだそば屋で足をひきずる店主サッちゃんを演じる、鈴木蘭々。
店を手伝わずブラブラしている父を、松尾スズキ。
サッちゃんに思いを寄せ店に通う脳性麻痺の営業マンの男と祖母を、小松和重。
サッちゃんの親友で自称ダンサーを、猫背椿。
薬の売人を、宮藤官九郎。
ムショ帰りの痴漢常習者のそば屋の調理担当を、皆川猿時。
サッちゃんにケガをおわせた犬の飼い主で不動産屋社長を、星野源。
義父と不倫してかけおちしたサッちゃんの母を、家納ジュンコ。
右足をひきずる女、サレ男で元アル中でDV男、脳性麻痺、シングルマザー、元犯罪者、金持ち、不倫妻と。登場人物みな偏見や、差別をうけやすい人。そんな人たちのあいだで、許容と、偽善と、屈折と、卑屈が入り乱れ、結果として人情噺になる。
おさえず、偽らず、欲望のまま、おもうままに生きる人たち。人を傷つけたり、傷ついたり。トップに貼り付けた画像からイメージするのはサザエさん的な人情ものだが、松尾スズキだもの、普通の人々じゃないでしょそら。
ストーリーはなんのこっちゃ分からんかったけど、笑って、終わった瞬間わすれる芝居で、満足。
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2009年
作・演出:松尾スズキ
出演:鈴木蘭々/宮藤官九郎/猫背椿/皆川猿時/星野源/家納ジュンコ/小松和重/松尾スズキ