映画 アルゴ イランに占拠されたアメリカ大使館から先に逃げた6人を、救出したハリウッド映画作戦 | 気むずかしい いろいろ

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実話をベースにした映画。知らなかった事件と社会情勢をしるには手っ取り早いが、どこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションなのかはちゃんと調べないとアカンけど。

 

おもしろい映画だったけど、アカデミー賞作品賞をとるほどか?とちょっと疑問。ハリウッド贔屓か?

 

事件の本題よりも、冒頭で紹介されたイランの歴史的背景がオモシロかった。

1979年2月までイランの国を治めていたモハンマド・レザー・パフラヴィーは、国を私物化し国民の貧困をよそに贅沢三昧。モハメイ師を中心とした反乱軍のイラン革命で辞任に追い込まれる。当然国民はパフラヴィ―を裁判にかけ公開処刑を求めるが、がん治療のためアメリカに亡命した。イラク国民の怒りの矛先はアメリカに向けられる。

 

連日、イラクのアメリカ大使館にはパフラヴィ―引き渡しをもとめる人々が押し寄せ、ついに門を超えて大使館に流れ込んできた。完全占拠されるまで6人の大使館職員が裏口からカナダ大使夫妻の私邸に逃げ込んだ。それ以外の大使館職員や関係者は人質として足止めされたまま。

 

大使館に足止めされた人々を扱った映画はたくさんあるが、カナダ大使の家に逃げた6人のことは取り上げられていなかった。イランではスパイだと血眼になって探されていた6人だが、約3か月後に無事アメリカに帰国した。どうやって帰国させたのか?その詳細は機密文書として伏せられ、約30年後(?)明らかになった。それを基につくったのがこの映画。

 

カナダ側にも迷惑をかけているこの6人を脱出させるべく、特別チームが組まれた。CIA秘密工作員トニー・メンデスにも声がかかり、あーでもない、こーでもないと愚策を出し合いながら「最も優秀な愚策」として選ばれたのは、映画のロケハンスタッフとして救出することだった。それには、イランの空港の検閲をぶじ通過しなければならない。そのために、ちゃんとした映画としてのエビデンスづくりが必要だった。

 

トニーはまず、ハリウッドの特殊メイクアーティストに声をかけ協力を要請。さらに有名な映画監督にも声をかけ、本格的に始動した。事実をしっているのはこの二人だけ。脚本を買い取り、スタッフ、キャスティングを決め、コンテも書き、メディアをあつめて大々的にPR。雑誌や新聞に広告をのせ、パーティーが記事になる。これでお膳立ては完璧。

 

トニーはプロデューサー補として単身トルコからイラクへ。カナダ大使邸で6人と合流。なんとか説得して映画製作のカナダ人スタッフになりきることに合意。イラク政府側から市場の視察に招待され、そこでイラク民に囲まれて騒動になるも、ぶじ翌日に空港へ。ここで、入国審査カードがないじゃ、おまえらほんまアメリカ人ちゃうんか?映画もうそやろ?とか絡まれて、間一髪のところ飛行機に乗れ、イラク領土をはなれたとなっている。ここのギリギリ脱出は多分、真実とは違うんだろうな。こんな映画みたいな展開はないやろ、さすがに。

 

CIAの秘密工作員がなぜハリウッドのメークアップアーティストとつながりがあったかと言うと、潜入捜査する際に、ハリウッドでメイクや変装、仕草を教えてもらっているのだと、どこかの記事に書いてあった。

 

先に救出された6人よりも、1年3ヶ月も大使館内で人質にされてた職員の方が気になるし。テロリストの要求じゃないんやから、死にかけてるパフラヴィ―なんて、イラク国民にとってはヒトラーみたいなもんなんだから、とっとと引き渡せばもっと早期に解決できたのにと思う。そこに、人道的な理由じゃなく、政治的な何かがあったんじゃないかと疑う。きっと「金」。アメリカ国民はイラクに怒るんじゃなくて、アメリカ政府に抗議すればよかったのに。それに大使館の人質事件では、人質側は誰一人死んではいない。

 

クレーンに吊るされた死体を映して、イラク国民がいかに野蛮人かと強調しているが、アメリカだって黒人の首に縄かけて気に吊るしてた歴史があるやん。みながそうするんじゃなくて、たまたまそんなサイコパスがおっただけや。銃をもって脅かすのはアメリカの専売特許でしょ。ミシガン州で銃をもった市民の抗議運動なんて、脅迫以外のなにものでもない。

 

数本のイラク映画をみたカンジだと、イラク民はとても我慢強く、お人好しの国民性がみえるのだ。だからこんなに偏った描き方はイヤだった。

 

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2012年アメリカ

監督:ベン・アフレック

出演:ベン・アフレック、ブライアン・クランストンアラン・アーキンジョン・グッドマン

第85回アカデミー賞作品賞受賞作品 うそやん!レベル。