最近の俳優は多彩だね。斎藤工の初監督作品。
どっかで“どうせ”と思っていた。それが軽く覆る。
これは放送作家“はしもとこうじ”の実話だ。
400万円の借金をかかえたまま、ある日、とつぜん家族の前から姿を消した父。
13年後、父はガンで余命3ヶ月で入院しているとの知らせが入る。
長男と母は今更、見舞いに行かないと言うなか、次男コウジだけが父に会いに行く。
借金取りにいやがらせを受けた日々、父親とのキャッチボール、甲子園に行った時の作文、
父がいなくなった後の母の苦労、新聞配達をした朝。
コウジの頭の中にはいろいろな父との思い出がよみがえる。
久しぶりにあった親子の会話は言葉少なく、謝るでもなく、怒りをぶつけるでもなく、悔いるわけでもなく淡々と描かれる。どこまでも客観的で、俯瞰。コウジ演じる高橋一生のセリフは少なく、表情と間で語る。ここの場面が秀逸だった。でしゃばるでもなく、それでもコウジが悔いないように面会をすすめる彼女役の松岡茉優もいい演技だった。この子も、演技がうまい。
そして映画タイトルが入り、第2幕。葬式会場に場面がかわる。ここからどういう訳か、佐藤二朗劇場となり映画のトーンは一変する(笑)。友人たち一人ひとりの送る言葉の進行役のような役割をしはじめる(笑)。ただし、客観的で俯瞰な視点はそのままで、父と交友のあった友人・知人たちの言葉を通して、父のもう一つの姿をしる息子たち。
麻雀仲間だったり、借金まみれの友人たちにはじめ、呆れ顔だった息子たちの表情が、父の借金のほとんどが友人を助けるために作ったものだと分かり、複雑な表情をうかべる。長男演じる斎藤工は無表情なまま、ただ一点をみつめるのみだったが、最後に少しだけ視線と口元が動く。
そして最後の長男の喪主の挨拶から、、、。徹底された引き算で構成されたこの映画、余計なセリフもなく、余計な心情説明もない。とても印象的だったシーンは、母を演じた神野三鈴。葬式には出席せず、喪服をきたまま式場ちかくの公園で、野球少年たちをみつめる後ろ姿。いい画角で、母はなにも語らないが、すべてを語っていた。本当にすばらしい映画で、70分という短さもよかった。そしてエンディングに流れる音楽。
笹川美和「家族の風景」の歌詞が、とてもマッチしていて印象的だった。全体的にとてもセンスのよさが感じられる映画だった。斎藤工の来歴をみてみると哲学者の教育理念を実践するかわった学校で小・中・高を過ごしたとあった。この思慮深い表現の理由が、なんとなく腑に落ちた。
とてもいい映画だった。彼の次回作が楽しみ。
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2018年日本
監督:斎藤工
出演:高橋一生、松岡茉優、斎藤工、神野三鈴、リリー・フランキー、佐藤二朗、村上淳、神戸浩、伊藤沙莉


