東京で「アジアの女」を観る前に、
東京ステーションギャラリーに立ち寄る。
「没後90年記念 岸田劉生展」
岸田劉生は、きしだりゅうせいと読む。
名前を知らなくても↓この「麗子微笑」は観たことあるはず。
重要文化財だし、切手にもなっている。
※東京ステーションギャラリーには展示されていない。国立博物館にある。
中学生の頃だったか、美術の教科書ではじめてみた麗子。
薄暗く、のっぺりとした顔で、大人びた笑みを浮かべる幼い少女。
純粋に笑っているのでなく、見透かしたような微笑が恐ろしかった。
あまり見つめていたい絵画でなく、ずっと避けていた作品でもある。
私も大人になり、なぜ最愛の娘をこんな風に描いたのか、
岸田劉生という人物を知りたくて行ってみた。
上にはりつけた「麗子微笑」は満七歳。
すると麗子をモデルにした絵は数十点あった。
ちゃんとかわいい麗子も書かれてて、ホッとする。
たぶんこれは三歳の麗子だったかと。
劉生は西洋絵画の影響を受けて、写実美を追求した画家だったそうで、
「首狩りの劉生」と呼ばれるほど、友人知人の自画像を描き試ししていた。
麗子は、その最大のモデルだったようだ。
麗子の写真も展示されていたが、目がくりくりした
どちらかというと美人顔の子供だった。
劉生は絵を描き始めるとモデルへの配慮を忘れて没頭してしまい、
麗子はずっと同じ姿勢でいなくてはならず、足が痛くて涙を流していたんだそう。
これは10歳だったかな。
恐ろしさがだいぶん薄れ、子どもらしい表情になっている。
ほかにもいろんな麗子が展示されていて、
怖いものもあれば、可愛いものもある。
色々見れて楽しかった。
重要文化財になった「麗子微笑」はダビンチのモナ・リザのアルカイックスマイルと
エジプト美術に影響をうけている。
だから、アンバランスさが出てきて怖いんだろうな。
アルカイックスマイルは、あまり子供がする表情じゃない。
髪型もおかっぱというより、クレオパトラの髪型に近い。
麗子に限っては、写実的は劉生の頭の中の理想を忠実に描いたものなんだろうな。
麗子本人とはぜんぜん違う物になっているし。
“娘はかわいい”という親バカでなく、
“無垢な者の美”を追求したんじゃないだろうか。
麗子の母であり、劉生の妻・蓁(しげる)。
西洋の宗教画の影響をモロにうけている。妻も美しい人だった。
自画像も数点展示されている。
私は劉生の風景画が好きだった。
東京も100年前は、こんなのどかな風景が広がる場所だった。
なんてことない風景だけど、なんてことある構図。
写真でもこんな構図はなかなかとれない。
ゆっくり観ても1時間ぐらいでまわれる。
なかなか充実した時間でした。