映画 ウインド・リバー 先住民に敬意を払えない愚かなアメリカの制度 | 気むずかしい いろいろ

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2017年アメリカ

監督:テイラー・シェリダン
出演:ジェレミー・レナーエリザベス・オルセン

 

 

問題提起型のミステリー映画である。

ネイティブ・アメリカンがアメリカでドえらい扱いを受けていることが分かって、

すっごく憤慨してしまった。

 

舞台は北米ワイオミング州。

雪に埋もれた先住民の少女の遺体が、発見されたことから、

アメリカの法律の矛盾がどんどん浮き彫りになっている。

問題は大きく2点ある。

 

1)先住民たちは土地を奪われ、ひどい環境下に追いやられていること。

2)先住民たちが殺人犯を独自捜査できないこと。

 

問題の一つ目。

1年中、雪に囲まれているような寒い土地に暮らすネイティブアメリカン。

略奪者たちが元々彼らが暮らしていた農業に適した豊かな土地を奪い、

作物の育たない不便な場所に彼らを追いやった。

 

先住民は本来、狩りや農業など自然と共生する部族であるのに、

何も育たない土地では、白人たちと同様に働かなければならず、

クソ田舎ではロクな仕事もなく、生活が困窮し、働く気力が失せ、

ドラッグやアルコール依存者が増加傾向にあり社会問題になっている。

 

標高の高い山に囲まれた土地で、防寒マスクなしで20mも走ると、

肺が破裂して死亡してしまう過酷な環境。

こんな土地に、自らが望んで暮らしているのではなく、

戦いの勝者、略奪者に強制的に暮らすことを強いられているのだ。

 

この背景で何を語りたいかというと、先住民たちはアメリカと言う国と

知らないアメリカ人を敵視している土地柄なのだ。

 

 

そして問題の二つ目。

 

アメリカは日本の警察と違って、自治体運営なので横連携ができない。

日本でいう近隣の警察署から応援を頼むことができない。

この事件が起きた警察署の捜査員はたったの6人だ。

その6人で、すぐに証拠が雪に埋もれてしまう広大な土地を操作するなんてどだい無理な話。

そこで頼るのがFBIになるのだが、

「殺人事件」と断定できないと応援が頼めない。

頼りない女捜査官が一人派遣されたのみ。

 

少女の死が、事故死なのか殺人なのか。

状況証拠は「殺人」といえるが、断定できない。

たった7人と主人公である地元の白人のハンターに協力を仰がざるをえないのだ。

 

この土地では、少女から大人の女性まで通過儀礼のようにレイプ事件が発生する。

映画の最後、エンドロール前にこうでる。

「数ある失踪者の統計にネイティブ・アメリカンの女性のデータは存在しない」

 

 

ただただ言葉を失う、先住民の扱いのひどさ。

映画のラスト、娘を失った父親が、娘を弔うために自分の顔に死に化粧を施しているシーンが印象的。

主人公のハンターが友人でもある先住民の父に声をかける。

 

 

ハンター 「どうした、その顔は?」

父 「死に化粧だ。でもこれであってるかどうか分からない。誰も教えてくれなかったから」

 

この作品を撮った監督は、この映画が成功しようが、失敗しようがどっちでもよくて、

この問題をとりあげなければという使命感にかられて撮った作品らしい。

 

このような状況下に置かれている場所は、ウインド・リバーだけでなく、

米国内に100ヶ所はある。そしてカナダやオーストラリアでも同様のことがおこっている。

 

日本だって沖縄の問題や、アイヌ新法で同じようなことがおこっているのかもしれない。

ニュースで流れる情報は、いつも政治家が絡むから根底にある問題が見えにくいが、

似たり寄ったりの事があるのかな。

 

重たいテーマだったが、見てよかった。勉強になったな。