島根大学教職員の戦争体験手記が綴られた『私と太平洋戦争』を続けて少しずつ読んでいます。
 
第二章は「徴兵は延期されたが」のタイトルです。
 昭和18(1943)年10月、理工系と教員養成学校の学生を除く学徒に対し、これまでの徴兵猶予が解除され、多くの学徒たちが出陣することになりました。雨降る明治神宮外苑競技場で出陣学徒壮行式も10月21日に行われました。
 その時、徴兵猶予の継続を受けた理工系の学校で学んでいた7名の方の体験手記が、この章には集められていました。
 読み進めていくと、徴兵は猶予されたと言いながらも、
卒業論文の研究内容が、
 〇 重油からガソリンを取り出す方法
 〇 ガソリンのオクタン価を高めるための研究
 〇 地下資源調査の実施
 〇 B29のレーダーの絶縁材であるポリエチレンを入手し、その合成実験

などに取り組んでいたことが紹介されていました。
 
徴兵猶予継続は、学問をする自由のためではなく、確実に戦争遂行に直結する学問研究を行い、学問を戦争体制に組み込むための結果として行われていたわけです。

【『私と太平洋戦争』表紙から】