2024年2月11日(日)、島根大学を会場に戦争遺跡の保存と活用をテーマにしたシンポジウムが開催されたことを、このブログでもお知らせしました。
 この時、
慶應義塾大学文学部・教授の安藤広道氏から「戦争遺跡のポテンシャルーその可能性の広がりー」と題する基調講演がありました。
 氏の基調講演を聞き、私個人の内容整理・とらえを紹介したいと思います。


【基調講演の要点整理】
①戦争遺跡は、他の遺跡と取扱いが異なるものである
・戦争遺跡の特質として「負の歴史」と結びつく場であり、「地域の誇り」や「ブランド力」とある意味で対立する場〔戦争の犠牲・被害・反省と謝罪・責任と補償は、地域の誇り・ブランド力と乖離する関係にある〕である。
②戦争遺跡は、多様な人や考えが交流する場
・戦争が現実のものとして存在したことを受け止める場
・戦争には諸問題があることを知り、それに目を向け、関心をもてる場
・戦争を起こさないようにするために考える場

③戦争遺跡は、戦争の痕跡に直接触れ、戦争を実感し、想像力を広げていける場
・だれもが主体的に参加できる場を作っていく
・各人の戦争に対する意見や評価を、「対立」ではなく「つなぐ」考えをもつ
・新たな知識を得て、相手の評価に真摯に向き合う姿勢
・対話のネットワークのハブの役割を戦争遺跡は担っている

④戦争遺跡を地域の誇りやブランド力にする可能性
 「負の遺産」である戦争遺跡に真摯に向き合い続け、戦争や平和について考え・行動・発信する人や団体がこの地域にいることが、やがてその地域の誇りやブランド力になっていく可能性を秘めている。
 坪田愛華さんの『地球の秘密』は、環境問題を解説するとともに、環境と戦争の関係に触れ戦争のない世界を夢見ている。小学生も戦争を語る主体になりうるし、ネットワークの一員。


【私たちの会としての取組の方向性として】
 私たち平和学習や教育に関わる者が、教育実践の工夫や児童の育成を通して、地域に残る戦争遺跡を、「地域の誇り・ブランド力」にしていくことに貢献できる可能性を持っていることを忘れてはならないと思うのです。
 昨年の大社基地巡検後の懇親会の場で、
「平和学習は何をゴールに進めばよいのか?」が話題になりました。
 その際に、
「平和を妨げている暴力や破壊について地球規模の問題へと広げていく方向で」という話になりました。「戦争問題を戦争だけで終わらせない」「平和という状況を、もっと多様で具体的な視点からとらえ考えていく」。そんな平和学習プログラムの提案ができ、具体的な実践への歩みが進められたらいいと考えています。
【講演中の安藤広道氏とシンポジウム会場】