【子どもの学びの場を継承の場に変換していく】
今年は戦後80年ということもあり、さまざまな団体からお声がけいただき、私たちのふるさとに戦争があった頃のお話をさせていただく機会がありました。その中で、ある2つのグループでお話をさせていただいた後の意見交換の際、参加者からの声に考えさせられる場面がありました。
その声とは、
まず、終戦時に地元国民学校初等科2年生だった男性の方のお話です。
「今日、久しぶりに戦争の頃の話を聞き、大変懐かしい感じがしました。戦時中のことを思い出すよい機会になりました。」
お話は短い言葉でした。しかし、その言葉から「普段の生活の中で、戦争について語ることや聞くことが本当に少なくなった。本当にこれで良いのだろうか。」
というご本人の思いを感じることのできるお話ぶりでした。
その方は、会場の前中央にお座りになっておられ、最初から最後まで本当に熱心にお話を聞いてくださった印象が残る方でした。
もう一人のお方は、別会場で開催された研修会出席の戦後生まれの方からの発言でした。
「自分は戦後生まれで戦争体験はない。両親の戦争体験を聞いたことはあるが、わずかしか記憶にない。こんな自分に戦争体験の継承と言われてもどうしたらよいか困ってしまう。」
この方は、「次世代への戦争体験の継承」の重要性について関心をお持ちの方でしたが、自身が具体的にどのように関わっていけるのか、それを模索中というご様子でした。
また、ふるさと読本に目を通していただいた方からも次のような意見をいただきました。
「子ども達への平和学習はもちろん大切。それに加えて、我々戦後生まれの大人も戦時中のふるさとの様子を知っているものは少ない。私たちがもっと学ぶ機会を作っていく必要を強く感じた。」
現在の社会情勢も併せ考えると、学校で実施されている平和学習は、単なる教科等の学びの場としてだけでなく、「次世代への戦争・銃後体験の継承の場」としての役割も期待されているとらえる必要があるのではないでしょうか。
毎年行われている平和学習を日本の戦争の歴史を学ぶだけに終わらさせず、実際に生活していた身近な人々の体験を伝えていく場とすること。そしてそれを、保護者や地域住民へも公開し、学びを共有してお互いの感想や意見を世代を超えて交流できる場にしていくことが求められていると思うのです。
「学校での平和学習の様子から」
