かんのうのじょうらん、と読みます。高校で日本史を選択した方はご存じですね。2017年初版です。教科書ではほんの1~2行しか記載のない足利尊氏・直義兄弟の死闘ですが『南朝の真実』の亀田先生が前史後史併せて65年間の動乱を余すところなく描ききっています。 

通説にも厳しくメスが入れられます。正直言って観応の擾乱で一冊本が書けるのか疑問に思っていたのですが亀田先生の情熱ある姿勢で史実や学説を解釈するとそこには実に濃密な記述が現れるのです。単純に足利将軍家の内紛と思っていたものが叛服常ない諸侯の離合集散・復権を図る南朝の策略など目まぐるしいばかりの人間ドラマが味わえました。単なる通史にとどまらない問題提起の書と言えると思います。巻末の年表もよくできていて知識の整理に役立ちました。