がんじゅうオバアが行く | ぶっ飛び沖縄‼︎

ぶっ飛び沖縄‼︎

突然沖縄に引っ越してきました。
楽しいこと、不思議なこと大好きです。


名嘉眞サチさんは
御年80歳になったばかりの
国頭村生まれオバア。

ルミ子姉さんから
いきなりお願いされたのは
大石林山ガイド。

ナイチャーの私が
国頭村生まれのサチさんを
なぜに、国頭村にある
大石林山を案内するんや?

サチさんが住んでいるのは
那覇市の牧志だけど
大石林山で待ち合わせなんてさ。

サチさんの子どもの頃には
整備されていないやんばるが
広がっていただけで
御嶽だらけだったから
行ったこともないし
そもそも観光という概念すら
なかった時代だったらしい。

戦後のドサクサで軍採用になり
タイピストとして20年働く中で
家庭を持ち、子供2人に恵まれた。

で、30年前に
息子さんを病気で亡くす。
酒の飲み過ぎで
ずっーっと入院加療中の
突然の急変で。

一人娘は埼玉県に住む。
内地の男なんか、と
結婚を許さなかった夫。
沖縄なんかには帰らない
と、ケンカ別れしたまま
ご主人も50歳の若さで
亡くなった。

娘さんは
父親の葬儀にさえ出てこないまま
孫が生まれているのかどうかさえ
分からないまま。
サチさんが電話しても
まったく電話を取らないようで
いつしか音信不通になっていた。


サチさんは
生まれつき強い霊能力を持ち
いろいろな未来を言い当てたり
事故や病気を知らせたりして
子供ながら
集落の人たちから
頼られるようになっていく。

でも。
やがて初潮を迎える半年前に
今帰仁村の神女の血筋の
祖母によって
力を封じられていた。

そこで
国頭村を出る両親と共に
那覇市に移り住むことになり
霊能力があったことなど
すっかり忘れて成長し
行儀見習いで、栄町にあった
大丸というホテルで働く。

昼間はタイピストの学校へ通い
帰宅すると、息をつくヒマもなく
ホテルの手伝いをする。

経営者の叔母は外面は良いけど
サチさんには厳しく
逃げたいと思っていた矢先に
軍採用の話を持ってきた
宿泊者の男の誘いに乗る。

頭数だけ揃えて
軍に採用させれば
あとは野となれ山となれ。
つまり、詐欺師のような男の口車に乗せられ
身売りに近い扱いをされた。

だけど、サチさんは負けなかった。
叔母から逃げたくて
必死にタイピングを習っていたから
その腕を買われたんだけど
他の女の子たちは
米兵たちの恋人になっていた。

これ見よがしに
好きな男に抱きついて
キスをねだる様子は
あまり美人では無いサチさんを
あからさまに馬鹿にしていた。

食うためだけ、に
何の躊躇なく体を投げ出す。
そんなオンナたちに
軽蔑の目を向けていたサチさん。

それが、逆にアダになった。
ある日、普段は残業などしないのに
明日は休みだからと
遅くまで残って仕事を終えた。
帰ろうとしてタイプ室の
電気のスイッチを切った。

その時だった。
背後から口を塞がれ床に転がされ
数人の米兵たちの餌食になった。
後から知ったことは
米兵の恋人になったオンナの1人が
仕掛けた意趣返しだったことを
彼女の薄ら笑いから
直感したという。

若いサチさんは
死のうとは考えなかった。
とにかく生きようと思った。

辛い記憶を思い出さないように
仕事に集中したことで
サチさんの腕前を認めた米兵の上官が
ある男性を紹介してくれた。

基地に出入りする
上官が信用する男は貿易商で
サチさんに好意を寄せていたけれど
あまりに仕事一徹の様子に
気後れ気味だった。

で、結婚してからも
基地の中でタイピストとして働く。
すでに上官付きの秘書のように
なっていたのもあり
給料が破格に良かった時代だったのもあった。
でも、負けず嫌いのサチさんの本心は
彼女たちには負けたくなかったから。

自分に不埒なことをした
米兵たちの顔は分からなかった。
でも、天罰が下ると
サチさんは信じて疑わなかった。

で、3年が過ぎた日のこと。
基地の中で
あり得ないような事故で
若い米兵3人が即死した。

結婚指輪をして
葬儀で泣いているオンナたちは
サチさんと同じ時期に軍採用されて
恋人になった人たちだった。

結婚してアメリカへ行く
そんな甘い思いを巡らし
幸せの絶頂だった矢先の事故。


普通なら

ざまあみやがれ、と

思うじゃない?


サチさんは

自分の霊能力の封印が

解かれたと感じたらしい。


あまりに強い念は

自分が気が付かないところで

人をコントロールせずには

いられないのだと。


祖母も

見えすぎることにより

何回も半狂乱になったと

母親から聞いていた。


サチさんは

何が見えても気にしないように

努力したらしい。

祖母が自分のチカラを封じたのも

分かったような気がした。


未来が、分かるから幸せ

とは限らないということも。

未来が分かってしまったら

生きているのも

辛くなってしまうことも。


ある程度は

まとまった貯金も出来て

軍を辞める時には

上官もアメリカへ帰国していた。


ダンナや息子との早い別れも

娘との不仲も

本当は分かっていたんだって。

で、何でうまくいかない人生を

選んできたのも分かっていた。


生まれ変わってもユタだった自分は

ずっと、自分の考えのまま

人をコントロールして

アドバイスに従わない人間には

病気になるような呪いをかけて

素直になるようにし

思い通りにしてきたことも

思い出すことができたらしい。


神になったような気で

神託のつもりで話したけれど

結局は、大したアドバイスも

出来なかったんだって


あゝ、今世のことは

すべてが因果応報だと思い

うまく行くようにしないで

あえて無為自然に任せた。

これでいいのだと。

それが一番いいのだと。


がんじゅう

とは、

頑固のこと。


人のことを

頑固だ、なんだと言えても

自分の頑固さには

気づけないもんよね。


相手を思い通りにしたい

というのも

頑固なんだよね。

頑なに固い、と書いて頑固。

執着心の塊だよね。



岩を這うように根を張り
強い風雨に引き剥がされないよう
用意周到に岩を抱え込む。

生きることだけで
精一杯だった時代の沖縄の人のように
ガジュマルの根は
凄まじい生命力を持つ。

何としても生きる。
何があっても生きる。
私は生きてみせる。

サチさんは
ただただ、1日1日を
生きること、だけに
集中したらしい。

毎日の家事の繰り返し。
ウォーキングと、買った畑の農作業。
歩く時には目に付いたゴミを拾う。
少食と長い瞑想。

無駄な買い物はせず
井戸端会議みたいなのには参加しない。
ウワサ話には耳を貸さない。

カンタンそうで
なかなか出来ないよね。


サチさんは

話を聞いて欲しかった。

沖縄の人にではなくナイチャーの私に。

それが目的だったみたい。

ルミ子姉さんから聞いていた

ハッキリ言う私に。


大石林山の素晴らしい景観。

ノコギリのような岩に囲まれて

展望台近くのベンチに腰掛けて

しばらく話を聞いていた。


なんで、そんな

辛い記憶を話したの?

わざわざ思い出すことも無いのに

墓場まで持って行けばいいのに

と、私は言ってみた。


すごいね。

あの世にまで

持って行きたく無いんだって。


じゃあ

この大石林山に埋めるか?

みたいな話になった。

封印ではなく、大地に染み込ませる。

感謝とともに、雨と共に

聞いてくれてありがとうって。


ルミ子姉さん、ズルいのよ。

待ち合わせしたはずなのに

来なかったんだから。


さて。

サチさんを乗せて

那覇まで帰ろうっと。



龍が写っている⤴️

って思った?

たぶん、レンズフレアだと

思うんだよね。


まさか、この時に

サチさんが一週間後に亡くなるなんて

思っても見なかったからさ私。


お土産を買ってあげるから

何がいい?

と聞かれたから

消えモノが1番よ、って

カマボコや野菜を買ってもらっていた。


カタチのある思い出なんて

束縛そのものだからって

呟いた私の背中を

サチさんは叩いた。


やっぱり

あなたのような人に

話して良かった、って

大宜味村の道の駅で

黒糖ワタアメも

たくさん買ってもらった。


で、ルミ子姉さんから連絡があり

老衰のための心肺停止

だったみたいよ。

まさかや〜💧


あの岩の道を

スニーカー履いてスタスタと👟

フツーに歩いていたのよ。

私の方が息が切れて

ぜいぜいしていたから。


サチさんの

娘さんによる

家族葬だったみたいで

私たちは断られた。


でも

全部手放したからこそ

逝けたんだと思う。

天気予報では雨だったのに

見事に晴れたのは、サチさんへの

ギフトだったのだろう。


ありがとうサチさん。

オススメの黒糖ワタアメ

最高に美味しいわ‼️