ニック・ホーンビィの『ハイ・フィデリティ』という小説の中の一節に、こういうことが書いてある。
ブルース・スプリングスティーンの歌の世界では、とどまって腐っていくか、逃げ出して燃えつきるしかない。彼はソングライターなのだから、それでもいいだろう。選択肢は単純なほうが、歌は書きやすい。けれど誰も、逃げ出したうえで腐っていく可能性のことは歌にしてくれない。中途半端な心がまえのまま逃げだしてしまい、郊外から都会へ出ていったのはいいが、結局街のなかでもふぬけた郊外式の生活しかできない人間だっている。それがまさに僕の姿だ。そして、ほかの多くの人々の姿だ。(森田義信 訳 新潮文庫から)
まあ、それでも、『Born to Run』は、いい曲だ。