中小企業融資の「経営者保証」というキビシーい条件が減ってくる?【日経新聞・夕刊R4/11/1】 | 会計知識、簿記3級・2級・1級を短期間でマスター【朝4時起き活動のススメ】

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2022年11月1日の日経夕刊1面で、
中小企業向けの融資につき、
従来から問題とされていた
金融機関による経営者保証を
制限する方向になりそうです。

これは、
資金繰りに悩む中小企業社長にとって、
良いニュースと考えることができます。


昔から言われていたことですが、
日本の商慣習として、
会社に融資するときに経営者の
債務保証をセットで求められる
ケースが多いです。

貸す側としては、経営基盤の弱い
中小規模の会社に融資するとなると、
回収不能のリスクが大企業よりも
高まるという不安は常に
ついてまわります。

また、中小企業はほとんどが
オーナー企業のようなものですから、
会社を私物化する公私混同のリスクは
無視できません。

そういった背景もあり、
債権の保全をより厳しくし、
さらに社長に対して
真剣に経営にあたらせたい、
と考えるのだと思います。


ただ、いっぽうで、
会社が破綻した時に、
会社の財産だけでなく、
社長個人の自宅など、
生活に必要な財産まで
取り上げられてしまうという
恐怖が常に社長について回ります。

会社が潰れて一家離散、
なんてストーリーは昔から
よくあるパターンですよね~。

一度失敗すると、
再起不能になるくらいの
打撃を受けることになるとしたら、
経営者としては夜も眠れません。

よく、海外の成功した事業家が、
いちどはビジネスに失敗して
経営破綻したけど、そこから
這い上がって成功した、なんて
サクセスストーリーが語られたりしますが、
日本ではいちど会社を潰したあとに
再起を果たしてサクセス!という
イメージが持ちにくいですよね~。


どんなに良い手を打っても、
ダメな時はダメ!ということも
事業には往々としてあります。

そんな頑張っている経営者が
再起業できるような環境を
整備することも大事ではないか。

そういった趣旨もあり、
来年4月以降に金融庁の方から
銀行に一定の説明義務を
求める方針に舵が切られそうです。

なお、同紙面でも触れられているのですが、
2013年以降、「経営者保守に関する
ガイドライン」というものに沿って、
金融庁が金融機関に経営者保証に依存
しないよう要請していたといいます。

ただし、現状ではいまなお
新規融資に占める
「経営者保証の無い」融資の割合は
約3割程度にとどまっている、
とのことです。

見方を変えると、現状でもなお
7割は経営者の保証がついている
融資なのでは、ということになりますね。

ちなみに、私の肌感覚ですが、
政策金融公庫の融資を見ていると、
10年以上前と比べて、
融資の時に経営者保証については
要請度合いが緩和されてきているような
実感があります。

なので、まったくこの10年程度で
変化がなかったわけではないと思うのですが、
とはいえ、その変化のスピードが行政側の
求めるレベルに比べて遅い、と感じられて
いるのかな、という感じがします。

じっさい、新聞に掲載されている
無保証融資の推移グラフを見ると、
緩やかに上昇しています。

それをもっと迅速に高いレベルに
持っていきたい、という制度側の
要請が表面化されてきた、というのが
今回の動きつながるのではないでしょうか。


なお、債務保証について、会計的な話を
しますと、これは「偶発債務(ぐうはつさいむ)」
と呼ばれるものになります。

将来、一定の条件が発生した時に債務として
現実化されるものです。

確定債務ではないので、すぐにバランスシートの
負債の部に掲載されるものではありません。

しかし、一定の要件のもとで、
会社が負う債務保証の額を
財務諸表の注記事項とすることがありますし、
引当金の要件を満たすと、
「債務保証損失引当金」という科目名で
バランスシートの負債の部に表示されます。


いずれにせよ、中小企業の資金調達方針に
良い影響があればいいな、と思います。