第161回日商簿記1級の原価計算では、
ROICの計算という、どちらかというと
ファイナンス分野よりのテーマが出題されました。
近年の日経新聞などを見てみると、このROICに
関わる記事がちらほらとみられるようになっています。
昔ならば、損益分岐点のような伝統的な管理会計理論の
延長上にある会計的なテーマがより目を引いていた印象です。
もちろん、いまでも損益分岐点比率や限界利益などに
関する議論も経営分析を考える上では依然として重要です。
ただ、これだけ経済環境が複雑・多様化してくると、
事業戦略として複数の収益源を持つことの意義は
とてつもなく大きくなっていると思われます。
このトレンドは、とうとう中小企業にも
じわじわと影響を及ぼしつつあるように感じています。
一点集中、狭い領域で一番を取る、これがよく言われる
経営戦略の代表例ですが、それが達成できた後も
1つの事業に固執し続けることの弊害は、
高度成長期から平成中期のころまでと比べると、
格段に大きくなっているのではないでしょうか。
1つの店舗で地域ナンバーワンを取ったが、
新型コロナの流行で一発で撤退を余儀なくされるケースを、
地元高田馬場でも何度か見かけています。
十年にいちどあるかないかの環境変化はふつうに
明日にはやってくるような恐ろしい時代になってきているのですね。
単品商売のリスクはかつてないほど高まっています。
これは中小企業でも例外ではなく、いや、むしろ
大企業と比べて経済基盤の危うい中小こそ、
限られた資源の中で収益源を一つに頼らない
事業マネジメントがより必要となるのかもしれません。
そのさいに、このROIC概念を用いた事業ポートフォリオの
発想は、業種・規模を問わず、多くの経営管理者には
知っておいてほしい気がします。
そういった意味では、第161回の日商簿記1級・原価計算の出題は
注目したい教材の一つといますね。