すると、事務所の前に見知らぬベンツが突然近づいてきました。
「こんな日にお客様かな?」
来客があるとは全く聞いてなかったので、ちょっと変な感じがしました。
少し遅れて、所長が玄関口からにこやかに笑いながら出てきました。
「どうもご苦労様。いい車ね」
車の中から、自動車会社の営業マンらしき人が出てきて、何やら話し合っています。
「何、あれ?」
私が訪ねると、税理士試験を受験中のO君が教えてくれました。
「所長の新しい車みたいですよ。買い換えたんですかねえ」
その新車は、渋い光沢を放ちながら、重厚な存在感を示していました。
「うーん、うらやましい!職員が大掃除でふうふう言っている時に新車の購入とは…やっぱり、早く経営者にならねば!」
あまり格好の良い動機ではありませんでしたが、その時、ますます独立開業への思いを強くしたのは、紛れもない事実でした。