母の面影 | 中学生の勉強法と親の心得 ~塾長直伝! 高校受験対策と反抗期の対応法~

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 6日の中日新聞で掲載された、東北地震のシリーズ記事「バラード 母の面影」を読みました。とても考えさせられる記事だったため、ここで紹介したいと思います。


~以下、中日新聞より引用(一部要約)~

「普通の家庭がうらやましかった」
真奈さんはずっと負い目を感じて生きてきた。

10年前に病死した父は、母娘にたびたび暴力を振るう人だった。母は心を患い、夫の死後も何かに怯えるように鎮痛剤を片時も手放せず、人前に出るのを怖がった。仕事は長続きせず、借金を重ねた。

真奈さんはそんな母が疎ましく、ことあるごとにつっかかった。
「ちゃんと働いてよ」
母はきまって黙り込んだ。

11月初旬、新聞の犠牲者名簿を見て、仮設住宅に母の中学の担任が訪れた。
「よく似てるねぇ」
開口一番、そう言われた。

意外だった。「顔も全然、似てないし。雰囲気がってこと?」

線香を上げると、思い出話をはじめた。
「絵に描いたような優等生でしたよ」
英語が得意で、学級委員も任されていたという。
それは真奈さんが記憶のかなたに追いやったもう一人の母だった。

「英語は得意だったんだから」
生前、病状の軽かった頃の母は、よく英語の勉強に付き合ってくれた。
テスト前には朝方まで問題を出してくれた。

学校帰りのバスの中、母が大好きだった洋楽のバラードを聞く。
もう何百回も聞いただろうか。
車で出かける時、カーステレオから流れるのは決まってこの曲だった。

「ちっちゃい時からこればっかり。嫌いになりかけていた」
その曲を今日もまた聴いている。

~以上、中日新聞より引用~


 とても心に響く、良い記事だなと思いました。
 私は5つのことを考えました。


(1)地震と津波が一瞬で多くの家庭を破壊してしまったこと

 今さら言うまでもく、多くの人が今回の震災を通して、自然災害の怖さと人生の儚さとを感じたはずです。


(2)いなくなって分かる大切さ

 「家族」という普段は近すぎる存在だからこそ、その大切さは、失って初めて分かることでもあります。これが記事の最も伝えたいことなのかもしれません。


(3)価値観も反抗期も、突然変わってしまう曖昧なもの

 文章の流れだけを見ると、母の中学時代の担任に出会ったことで母への想いが変わっていったような印象を受けますが、新聞上のことなだけにきっと脚色もあるでしょう。
 国語の問題なら、「問:彼女がバラードを聴くようになったきっかけは何か?」「答:先生から聞いた昔の母と自分との共通点や、今の母とのイメージの違い」などとなるところですが(笑)、実際にバラードを自分から聴くようになったのがその出来事の後だったかどうかの時系列は定かでありません。
 ただ、彼女にとって「嫌い」になりかけていた曲が、母の死によって思い出の曲となり、嫌いどころか「好き」に近いものになってしまったのは事実でしょう。

 しかし、母が生きていればその曲も嫌いになっていたはずですし、母に対しても責める気持ちばかりが先立っていたはずで、こうしたいわゆる「反抗期」は消えることも無かったでしょう。
 これは「いなくなって分かる大切さ」にもつながるのですが、対象(この場合は母)のしたことは何も変わっていないのに、自分(この場合は娘)の認識ががらっと変わってしまうというのは不思議なことですよね。


(4)中学生の頃に優等生でも、結婚相手を間違えると大変なことになる

 「中学生時代に優秀でも、大人になってどうなるかは分からない」という言い方でも良かったのですが、それよりもこの記事では相手選びの大切さのほうを感じました。夫がせめて暴力を我慢できる人であれば、心まで患うことは無かったかもしれませんからね。

 そして、学生時代の成績というのは、ほんの一時期の、一面的で偏った評価に過ぎません。学校の勉強ができたからといって、生きる上で正しい選択ができるとは限らないですし、成績が良いというだけで幸せな人生が約束されるわけでもないのですね。
 将来のためにも、学校の勉強だけでなく、いろいろなことを学び成長していってください。もちろん、私達大人も絶えず学び続けていきたいと思います。


(5)平穏な日常への感謝の気持ちと、今を生きることの大切さ

 もし私達の身近に大きな自然災害が起きれば、誰であろうとどうなるかは分かりません。もし突然家族と死に別れてしまったら、その時あなたは何を感じるでしょう?
 現在、自分の親(子)と一緒に何事もなく過ごせることの幸運や、平穏な毎日が過ごせることへの感謝の気持ちを忘れないようにしてください。そうすれば、反抗期真っ盛りの生徒も、いつもケンカばかりしている親子も、お互い少しだけ優しくなれるかもしれません。

 また、今回の震災を通して、毎日を悔いなく生きることの大切さを感じた人はとても多いと思います。たとえ不慮のアクシデントは避けられないとしても、それまで生きられる時間を少しでも幸せで充実したものにしていきたいですよね。それはひとえに個々の普段の心がけと頑張りにかかっています。

 人間は、痛い目を見るまでなかなか気付けないものですよね。しかし、平穏に過ごせる日常の素晴らしさや、家族や大切な人々のありがたみは、失ってから気づくのではなく、失う前に気づいておきたいと強く感じた記事でした。

(自分の母への感謝はもちろんのこと、日々頑張っておられるお母様方へのエールの意味も込めてお届けします)