塾の生徒に「塾に通っていて良かったね」という話をする内の、最大のものの1つがこれですね。
授業の進度は学校によってバラバラですよね。そして多くの場合、予定より「かなり遅れる」ことが多いです。
ひどい学校だと、クラスによってもバラバラで、それを無理やり定期テスト前に揃えてテストすることもあります。その場合も、多くは「一番遅いほうのクラスに合わせる」ことになるため、全体の進度はますます「かなり遅れる」ことが多いです。まともな先生のクラスまで道連れにされるのは大きな問題ですね。
もともと学校では「カリキュラムは絶対に守らないといけないもの」ですから、そこからはずれること自体があり得ない状況なのですが・・・困ったことに守られないのが常態化しているのが現実です。
そして、保護者の方からすると、この危険性は漠然としか分からないかもしれません。
しかし、これが実は入試には致命的な差になることもあります(^_^;)
分かりやすさのために、具体的な単元名を出して書きましょう。
1番遅れがちな数学にしますね。
例えば中1だと、カリキュラムどおり進めば、1学期の定期テスト(6月末頃)までに方程式の計算、2学期の定期テスト(11月末頃)までに比例・反比例、冬以降に平面図形や空間図形をやります。
ところが、遅い中学だと1学期のテスト範囲が文字式が何とか終わる程度です。もっとひどい中学だと、なんと正負の数の計算(と文字式がほんの少し)だけで終わることもあります。
すると、一番期間が長いはずの2学期のテスト範囲が広くなる・・・かと思いきや、超スローペースのまま進み、定期テスト範囲が「方程式まで」なんてこともあります。
そうすると1番短い3学期での学習内容が「比例・反比例から空間図形まで」ですから、当然終わるはずがありません。
終わらない場合はどうするか?
実際に過去に見かけたケースを言うと、
・今までのスローペースが嘘のように、ものすごいペースで進んで終わる(もちろん生徒はついていけない)
・未修範囲を中2に回す(禁断の技どころか、もはや違法行為に近い。翌年の先生まで犠牲に・・・笑)
・ほとんど触れることなく、教科書を流し読みして終わる
こういった指導法(と言うよりも手抜き法)がありましたね。
最後の例が一番ひどく、よくできる生徒などは「先生が軽く読んだだけで終わり、一瞬すぎてびっくりした」と言っていました。これがひどい生徒だと「習ってない!」と言い張ります。あまりに早すぎて、油断していた生徒が気づく間もなく過ぎ去ったのでしょう(笑)
このおかげで、3学期頃に習う単元を苦手(というか基礎すら知らない)生徒が結構出現します。
中1の場合は平面図形や空間図形の公式や計算方法がボロボロですし、ひどい場合だと立体の名前さえ怪しい状態です。
被害がここだけで済めば良いのですが、当然のことならがその前の「比例・反比例」も短縮して行われがちです。そして困ったことに、ここが中2以降の関数分野の基礎になるところです。普通に教えていても、ここが理解できていないために中2以降もボロボロになる生徒が非常に多いのですが、こんな有様ですから余計にひどい状態になります。
そのくせ、時間をかけたはずの方程式(文章題)も、できない生徒が相変わらず多いままですし、その前の正負の数や文字式も入試レベルの計算問題だとちっともできません。塾で習っている生徒とそうでない生徒がいるなどでレベル差が激しく、学校の先生の大変さもお察ししますが、それにしてもあまりにできません。
ちなみに、これでも中1はまだマシです。中2になると、終わりのほうの「円周角の定理」「確率」が、結構な確率でまるっとすっ飛ばされます。ここはただでさえ生徒が忘れやすい単元で、それなのに入試頻出単元ですから、こういう学校の生徒の中3の実力テストなどは悲惨なことになります。できるできない以前に、「知らない」のですから話になりません(苦笑)
そして中3範囲の最後にある「相似」「三平方」は入試最大の山場なのですが、これも習うのが卒業直前になったりと、肝心の応用問題や融合問題を練習する暇すらありません。ただ、さすがに中3だけは頑張って早めに終わらせる学校が多いのが救いですね。
とりあえず、生徒からすると「進度が遅いと定期テストの範囲が減って嬉しい♪」となるのですが、そんな嬉しさを吹き飛ばして余りあるくらいの「被害」が見えない所で生徒を襲っているのです。
まさに「先に楽をすると、後で苦労をする」の典型例ですね。
私は授業中にこういった話もよくしますが、入試の出題例や先輩の苦労などの具体例を出しながらリアルに話をするので、最初は大笑いしていた生徒も、終わりの頃には真っ青な顔をします。そして、もちろんその日の授業はとても一生懸命に聞きますね(笑)
(そのため、モチベーションアップの話のネタの1つとしてもわりと有効です。先生は良かったら話をしてみてくださいね)
自分の学校が遅くても入試の範囲は変わりませんし、入試で競う相手は学区内の全ての生徒たちです。習ってなくても得点がおまけされることは無いですし、進度の遅い学校に対しても何のフォローもしてくれません。
遅くて損をするのはまさに「生徒だけ」なのですね。
だからと言って、塾に入ることを勧めるつもりはありませんよ。塾も塾でメリット・デメリットがありますし、塾に頼らなくてもフォローにしようはいくらでも ありますから、このことだけを見て決めるのは早とちりというものですからね。ただ、こういうものだと心得ておくことはしておいてください。
最後にもう1度書いておきましょう。
進度が遅くてテスト範囲が狭くなることは、ラッキーどころか「強烈にアンラッキー」だと思い、どこかでそれを挽回することを考えないと、後々苦労することになりますから、くれぐれも気をつけてくださいね。
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