教科書改訂と学校教育の限界 | 中学生の勉強法と親の心得 ~塾長直伝! 高校受験対策と反抗期の対応法~

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 脱ゆとり路線に沿った教科書改訂が話題になっていますね。


 知識が分断されてしまっていた部分がありましたから、そういう意味では逆に教わりやすく、かつ、教えやすくなる面もあると思います。その一方で、時間数は増やせないのに指導内容が増える問題もあって、授業についていけない生徒がますます増えるのではないのかという懸念もあります。


 そして、マスコミでは「教師の指導力が問われることになる」と言われています。


 この点については確かにそう言えるでしょう。時間が限られて、指導内容も増えるか難しくなる一方で、周囲の環境や子供自体は何も変わらないのですから、教師の指導力しか改善しようすがありません。ただ、現実の学校・・・特に中学校を見る限り、指導力をどうこうするような余裕はもはや無いでしょう。


 学校教師の指導力はもちろん人によっていろいろですが、「平均」をとれば低いものであることは事実です。学校では全く分からなかった生徒が塾だと分かるようになるのは、昔はそれだけで良い塾と言われたものですが、今ではどこの塾でも見られる当たり前の光景ですよね。今や学校だけでは分からないのが当たり前で、塾のほうが授業が良くて指導力があると言うのは、もはや塾としては最低レベルにすらなっています。


 ただ、だからといって学校教師だけに問題があると言うつもりはありません。


 学校の先生は、授業以外にもやるべき雑務がたくさんあります。自分がやりたくてやるようなものでは無く、「制度だから、学校の方針だから、学年の方針だから」といった理由で仕方なくやるようなものもあれば、部活や行事など、塾とは違った広い範囲での指導や活動が必要なものもあります。塾は塾で営業活動が加わってくるため、どちらが大変とは一概に比較できませんが、少なくとも、学校より塾のほうが「授業準備」ができる環境が整っているのは間違い無いでしょう。そして、授業は準備しただけ良くなるものですから、塾のほうが良い授業ができるのは当然なのですね。


 事実、塾では学生バイトでも分かりやすい授業ができてしまうことも多いです。しかし、その学生が卒業後に学校に入って「超人気教師になった」「すごく分かりやすい授業で生徒や保護者の評判も良い」という話はめったに聞きません。実際に塾で人気のあった学生バイト教師や、正社員で数年務めた教師で学校教師になった人を何人も知っていますが、今では普通の「学校の先生」です。


 もちろん同じ時間準備しても、塾のほうがより良い授業ができる側面もあります。そのためのシステムや、教材の研究などが進んでいますからね。しかし、それは裏をかえせば、学校教師には「授業に集中できる環境が無い」とも言えます。「その他のことをやるべき時間が多すぎる」のですね。


 また、塾では「教え切れない生徒」は入塾テストなどで断れますし、教えやすいように学力別のクラス編成もできます。しかし、学校では、塾でさえ断られるような生徒でも、他の成績の良い生徒と同じ教室で教えなければなりません。


 それに、学校には「退塾」のような、教える側に都合の良いシステムもありません。


 たまに塾講師や塾経営者で学校の先生をボロボロに言う人がいますが、それは間違いです。学校の先生も頑張っていて、それでは何ともならない仕組みや環境がある・・・そう考えるのが現実的です。


 ただ、だからと言って学校の指導力が低い現状を「良い」と認められるものではありません。学校でも塾でも、教師はきちんとした指導力があってこその「教師」ですから。



 学校はそろそろ選択すべき時期にきていると思います。「勉強を教えるところ」なのか、「それ以外の基本的な教養、素養を身に付けるところ」なのか、はたまた「単に子供を預かるだけのところ」なのかですね。


 勉強に、部活に、文化活動に、はては家庭でなされないしつけや基本的生活習慣の指導、さらには崩壊気味の家庭のケアや心の病を抱えた生徒のフォローなど、請け負う部分が広すぎます。そのくせ、学力別クラス編成無しの40人学級ですからね。超優秀な人気塾講師が魅力的な授業をしても、授業以外は崩壊します(笑)


 分野ごとに役割分担をはっきりさせて、例えば教科指導は全て塾に任せたり、部活や文化活動は専門のスクールに任せたりなどと、それぞれの専門家に介入してもらうほうがうまくいくと思います。もちろん、利権も絡むため難しいのですが、今の学校は「全てをやろうとしすぎ、抱えすぎ」の状態ですから、手放すことを決断すべきでしょう。


 そうは言っても、頭のかたい役人が文科省を支配し、それらのもとで古い教育思想にどっぷりつかった50代以上の一部の教師が、教育委員会や管理職を支配している現状では、変わるべくもありませんよね。やる気のある若い先生や、出世よりも現場を選んだ先生たちが潰れてしまわないことを願います。


 その一方で、何でもかんでも学校に求める地域のうるさ方やモンスターペアレンツたち。ことあるごとに学校の悪口ばかり言う塾などの民間教育機関。学校の味方は極めて少なく、今や敵ばかりです。そうこうしているうちに、志のある有望な若い教師がやる気を無くし、悪環境に染まっていくのでしょう。悲しいことです。


 そして、もちろん一番の被害者は普通の生徒達と保護者の皆様ですよね。



 こうした現状を打破できるような、何かできることは無いものか・・・

 ニュースや記事を見ていて、そんなことを考えています。


 いつか、同じような思いの方が集まれば、1つの力になるかもしれません。

 知らないだけで、どこかの誰かが活動しているのかもしれませんけれども(笑)