米国政治は混迷を深めている。

10月3日マッカーシー下院議長を解任した後、共和党内で議長選出の協議を行っていたが、スカリス院内総務(辞退)、ジョーダン司法委員長(投票で過半数に達せず)と政治的空白を続けてきたが、10月25日、マイク・ジョンソン議員が共和党全員(217票)の支持を取り付け議長に選出された。

 

 10月3日のマッカーシー下院議長解任の原因は、2024年度予算(2023年10月~2024年9月)の審議がまとまらず、民主党に妥協した11月17日までのつなぎ予算を可決させたことに対する共和党右派(フリーダム・コーカス)が出した解任動議を民主党も加わり可決させたことである。
 スカリス院内総務は、フリーダム・コーカスの支持を得る見通しがないことで辞退、ジョーダン司法委員長はフリーダム・コーカスの創設者の一人であるが共和党内の反フリーダム・コーカス派の支持を得られず下院投票において過半数に達せず、マイク・ジョンソン議員が議長に選出された。ジョンソン下院議長は、トランプ大統領支持派である。

 

BBC 10月26日
米下院、議長にジョンソン氏選出 3週間の空席と混乱をようやく解消

 

 喫緊の政治的課題は、ウクライナ支援、イスラエル支援、11月18日に失効するつなぎ予算の継続(つなぎ予算または本予算)であり、とりあえずイスラエル支援を優先し、つなぎ予算の合意に向けて協議している。
ロイター 11月9日
米下院議長、政府閉鎖回避へ暫定措置を近く決定

ブルームバーグ 11月13日
米政府閉鎖リスク残る、下院議長が妥協案提示も可決のハードル高い

 この1ヶ月、米議会は議長不在によりほとんどの審議が止まっていた。この間、バイデン親子の収賄問題、COVID19の起源問題などについては進展が見られなかった。

 

下院監視委員会は、11月8日ハンター・バイデンと弟とウォーカー氏(関係者)に召喚状を送付。

さらに11月9日追加でハンターのビジネス関係者4名に召喚状を送付した。

 

毎日新聞 11月9日
バイデン氏の次男や弟に米下院委が召喚状 大統領弾劾の審査
委員会出頭日
11月29日 ウォーカー氏
12月6日 弟ジェームズ
12月13日 ハンター

 一方、トランプ大統領に対し民主党支配の司法は攻撃を強めている。

「2020年選挙結果への異議」
10月6日 BBC
2020年選挙結果への異議 ワシントン連邦地裁
トランプ前大統領、選挙結果覆す試みは「職責の一部」 裁判所に免責求める

10月20日 BBC
トランプ前米大統領の元側近、ジョージア州での選挙介入で有罪認める

「ニューヨーク連邦地裁:トランプ一族の不正利益」
10月26日 ロイター
米裁判所がトランプ氏に再び罰金、中傷禁じる命令に違反

11月2日 BBC 
ニューヨーク連邦地裁:トランプ大統領の長男証言

11月7日 Bloomberg
トランプ氏が判事らを怒鳴りつける異例の展開-NY州民事訴訟で証言

 

11月10日 CNN 
機密文書の扱い巡るトランプ氏の裁判、リゾートの従業員が証言に立つ可能性 情報筋

2024年選挙に向けて
10月31日 NHKのまとめ(共和党候補動向と裁判)

未確認情報だが、トランプ氏が副大統領候補に前FOXのニュースキャスター「タッカーカールソン氏」を検討と発言した。


 

 夏休み明けの9月17日に再開した米下院では、連邦債務上限や2024年度連邦予算(2023年10月~2024年9月)の重要法案の成立を目指していた。マッカーシー下院議長(共和党)が民主党と協議し、9月30日に、11月17日までのつなぎ予算を可決させた。ウクライナ支援、国境管理、支出削減などの問題で、共和党内保守強硬派「フリーダム・コーカス」(下記NHK記事と宮沢氏解説)の反対を押し切って成立させた。

 フリーダム・コーカスに属するマット・ゲーツ下院議員が、民主党に協力を求めたマッカーシー下院議長の解任動議を提出、10月3日の採決により、8人の共和党員と民主党全員の賛成により216:210で動議を可決した。
 後任の下院議長選は10月11日、候補としては、スカリス院内総務、エマー院内幹事などの名前が挙がっているが、スカリス院内総務は血液ガンで治療中。

 マッカーシー下院議長は、バイデン大統領を弾劾裁判に持ち込むため、司法委員会、監視委員会、歳入委員会における証拠集めを指示していた。ゲーツ下院議員はより強硬であった。(下記日経記事)一方民主党はバイデン弾劾を避ける努力を推し進めている。油と水の利害関係の組み合わせが、マッカーシー下院議長解任に同意した。民主党としては、議会運営が遅れること共和党の内紛を利用することが期待できると考えたのだろうと思う。しかし、フリーダム・コーカスの主張を受け入れれば、よりバイデン政権攻撃の勢いが増すのだが。

Bloomberg 10月4日
マッカーシー米下院議長解任、史上初-共和党保守強硬派の造反で

 

NHK 10月2日
「つなぎ予算」成立でアメリカ政府機関の閉鎖回避も混乱続く

フリーダム・コーカス(東京財団の宮沢氏の解説)

 

 カンザス州ウィチタには、エネルギー・コングロマリットのコーク・インダストリーズ(Koch Industries)がある。同社を経営するチャールズ・コーク(Charles Koch)とデイビッド・コーク(David Koch 2019年8月没)の資産はそれぞれ220億ドルに達し、二人は共に『フォーブス(Forbes)』誌の世界長者番付(2011年版)の18位に入っている。(2023年それぞれ590億ドル、合計するとビル・ゲイツより多い)
 コーク兄弟は、共和党の保守派を支援し勢力の拡大を実現してきた。2010年の中間選挙でティーパーティー派が多くの議席を獲得し、その後下院ではフリーダム・コーカスという勢力になる。2016年の大統領選挙を控え、2015年に、コーク兄弟がウイスコンシンのスコット・ウォーカー知事、マルコ・ルビオ上院議員、ランド・ポール上院議員、テッド・クルーズ上院議員等をイベントに招待し、9億ドルの資金提供を行うと表明した。2016年にはコーク兄弟の期待が外れトランプ氏が共和党の大統領候補となった。

東京財団政策研究所 宮沢智之氏
非介入派を支えるコーク財団―クインジー研究所の誕生―(2019年)
コーク兄弟(Koch Brothers)についての考察(2011年)
フォーブス世界長者番付・億万長者ランキング(2023年版)

日経 9月13日
米下院議長、大統領弾劾調査を強行 民主党は猛反発

 

(次回、バイデン弾劾調査、トランプ訴訟のその後)

「トランプ大統領の訴訟」

 

 トランプ大統領が2020年選挙結果に抗議し2021年1月6日に暴徒が議会襲撃を扇動したとして、スミス特別捜査官が起訴した事件について、ワシントンDCの連邦地裁タニア・チュトカン判事が初公判を2024年3月4日に設定した。翌日のスーパーチューズディの3月5日には、各党の大統領候補の予備選が多くの州で開催される。共和党はバイデン政権による選挙活動妨害と非難している。民主党は政府、司法、判事そしてマスコミを動員して、トランプ氏を大統領選から排除しようとしている。勝てば官軍負ければ賊軍の市民戦争終了後の法律を適用して。
CNN 8月29日
トランプ氏初公判、スーパーチューズデー前日に 選挙結果覆す画策巡る裁判

 

タニア・チュトカンを理解する5つの事(The Hill記事より)

 1962年ジャマイカ生まれ、ジョージワシントン大学経済学学士(1983年)→ペンシルベニア大学ロースクール法務博士号(1987年)、1987年~2013年法律事務所勤務・経営。オバマ大統領指名後上院で全会一致で承認2014年に裁判官任命。

 J6関連訴訟担当、検察求刑より厳しい量刑(自宅監禁→懲役、38人有罪全員懲役。20人の裁判官が600人に判決、2/3が懲役、2020年夏のジョージ・フロイドの死に抗議するBLM等の暴動の破壊行為と略奪(被害総額10億ドル)に対する処罰より議会に侵入した暴徒に対する処罰が重かった。マクファーデン判事の場合は検察求刑より軽い処罰を採用したが、チュトカン判事はこれを批判した。政府を打倒しようとする行動は民主主義に対して非常に危険であると。チュトカンは、政府転覆、政権移行妨害などは厳罰に処すべきと。
 

トランプ氏、2024年選挙を妨害したとしてスミス特別検察官を告発すると発表。

トランプ氏への募金
トランプ陣営は、8月 2,000万ドルの資金を集めた。このうち1,000万ドルはアトランタ・フルトン郡刑務所で撮られたマグショット公開後であった。

 

Fox8月27日
自分より国家を優先しているとみられるため起訴されるたびにトランプ氏の支持率が上がる!特に黒人男性の間で。

「バイデン偽名通話記録」

 

 

下院監視委員会発表

:国立公文書館(NARA)は、バイデン副大統領の偽名関連のメール5,400件を保有していることを認めた。サウスイースタン法律財団がFOLA(情報公開法)に基づきNARAにメールデータを請求、下院監視委員会も請求中。

バイデン副大統領偽名メールについて報道したのはNowyork Postのみ、他のメディアは沈黙(8月29日)

Newsmaxのケリー氏は、バイデンの汚職の証拠となる音声テープをハロウィン(10月31日)までに公開されるだろうと述べた。

 

下院共和党
ウクライナのショウキン元検事総長の証言を公表「バイデン親子は賄賂を受けていた。」

「司法省がイーロン・マスク氏を攻撃」

 

 8月24日 司法省はイーロン・マスク氏の経営するスペースX社が亡命者と難民を採用していないとして告訴した。

マスク氏側は司法省の採用条件に米国市民権を有する者と書かれていると反論

マスク氏は、2016年に「ロケット技術は高度な兵器技術なので外国人の雇用については国防長官や国務長官の許可が必要だ。スペースX社の要求ではない。」と説明している。

 さらに、テスラ社がマスクのためにガラスの家を立てているとして捜査を進めている。マスク氏は自宅を持たない主義なので司法省のでっち上げだと語っている。

日経 9月1日

 ツイッター社を買収しバイデン政権とマスメディアとの関係を曝き、そしてトランプ氏を支援しているイーロン・マスク氏を破滅させようとしている。民主党とバイデン政権の司法は、マフィアより恐ろしく恥知らずだ。