米国の通商交渉は、憲法上(第一章第八条)、議会に権限があり、大統領府に権限がないと書かれている。外交条約の署名権限は大統領にあるが、上院の承認が必要。現在のUSTRは、大統領府の行政機関であり、議会の承認を得ながら活動しなければならない。USTRは決定する権限を持たされていない。議会が通商交渉を進めることは、常に国内法との関連を点検しながら、個別の審議になる。FTAのような包括的通商交渉では、事実上他国と交渉をまとめるのが困難になる。大統領府(USTR)が勝手に交渉を進めても、議会が批准する保証はない。交渉している他国に対して、約束を守れないことになる。
大統領府の官僚は、通商交渉権限を議会から委任されるTPA法を可決され、他国との交渉にのぞむのだが、2007年7月に失効して、USTRは包括的通商権限を持っていない。
米国議会は、誠に自分勝手で国内のことしか考えない。誰が条約を結ぼうが、米国のために(票のために)しか考えない。党議拘束もないし、法案の政府提出も出来ないから、時の大統領府が、思うように政策を進めることはできない。この政治システムが、「国内法の改正や立法を伴う貿易協定は締結しない」という行動規準になる理由である。
(日本は、外交条約通商条約も一元的に内閣が交渉権限を持ち、交渉締結後、国会が批准するかどうかの採決を行う。当然、内閣は多数党であるから、批准の確立は高くなる)
5月22日と31日の官僚達の回答は、前回述べたように、非常に重要な問題を含んでいる。米国の政治システムを知らないはずはない。
「米国通商政策のモデル;米韓FTA」
TPP条文のモデルになっている米韓FTAのIP条項をご覧いただくと、米国のIP戦略が理解出来る。2009年米韓FTA要約版より。
この資料は、USTRのHP、米韓FTAの場所にはなく捜しにくい場所にあり、引用している例を見たことがない。毒素条項情報より確か。
http://www.ustr.gov/about-us/press-office/fact-sheets/2009/april/summary-us-korea-fta
この2009年要約版の解説は次のブログに掲載。
(1) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11051414503.html
(2) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11051601227.html
(3) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11052683327.html
(4) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11054795964.html
State-of-the-Art Protection for U.S. Trademarks(米国商標の保護)
・音や香りにも商標の保護をする。
・重要なドメイン名がcyber-squatting(先行取得)されないように、紛争解決の準備。
・商標、地理的表現は、先出願が基本。
・商標などの検索・登録・保守システムの提供。
(省略)
Protection for Copyrighted Works in a Digital Economy(電子経済における著作権)
・音楽、ビデオ、ソフトウェア、およびインターネットによる広範囲の不正コピーを防ぐ
・国際標準として出現することと一致している表音文字を含む著作権のある作品のための保護期間 ( 例えば、著者寿命プラス70 年) の延長を提供する。
{この70年も米国の押し付け}
・インターネット上で不正を防止する技術を改竄することを防ぐ技術の提供。
・政府機関は正規のコンピューターソフトウエアを利用し、個人ユーザーにお手本を示すこと。
・政府は、個人ユーザーが正規のコンピューターソフトウェアを使用するよう示さなければならない。
・衛星放送の違法コピーを防ぐため、暗号化された信号のコピー・配布を防ぐルールが必要。
・デジタルミレニアム著作権法を反映し、著作権侵害に対するインターネットサービスプロバイダ(ISP)の責任のための規則を提供すること。
{DMCAを押し付けている}
Patents & Regulated Products(特許と規制製品)
・原特許の権利付与の遅れを補償するため延長を求める。
・発明者が自身の発表により権利化が出来なくなる12ヶ月を待って、雑誌などに発表することを認めること。
・特許の任意の取消に対する保護と、新たに開発された植物品種及び動物の保護を保証すること。
・製品承認のために提出したデータが不正な商用に使用されないよう保護すること。医薬品は5年、農薬は10年。
・医薬品の特許の侵害、有効性に関する評価が必要。協定発効後18ヶ月は協議しない。
Tough Penalties for Piracy and Counterfeiting(海賊版と模造品)
・著作権侵害と商標の偽造を防ぐため、海賊行為を行ったエンドユーザーを起訴すること。
・両国は、模造あるいは著作権侵害の製品およびそれらを製造した装置の押収、没収、破壊を行う権限がある。
・海賊版の運搬に港や自由貿易ゾーンを利用する違反者を制止するため強制的な通関手続きを行う。
・効率的通関手続きのため合理化を行う。
・税関の職員及び検察官は、権利者からの正式の苦情を待たなくても IPR 実施訴訟を起こすことを可能にする。
(PRO-IP法を押し付けている)
以上が米韓FTAの内容(一部)であり、米国の著作権、特許、DMCAやPRO-IPを押し付けている。医療関係では下記の様に、薬価・償還決定など他国の行政に介入する協定まで押し込んでいる。TPPはこれ以上とUSTRが言っていて、米国法を変えないとしたら米国の法律を他国に輸出し、属国化することになる。まさしく主権侵害の契約である。
Pharmaceuticals and Medical Devices;A Shared Commitment on Access to Innovative Medicines
(革新的医薬品と医療機械)
・医薬品、医療機械のアクセス、障壁の排除、価格決定、返済方法、商習慣などの改善。
・医療政策の問題については、両国でWGを設置する。
・価格決定、償還方法についても、独立機関を設置する。
(5回目、知財侵害取締り)
大統領府の官僚は、通商交渉権限を議会から委任されるTPA法を可決され、他国との交渉にのぞむのだが、2007年7月に失効して、USTRは包括的通商権限を持っていない。
米国議会は、誠に自分勝手で国内のことしか考えない。誰が条約を結ぼうが、米国のために(票のために)しか考えない。党議拘束もないし、法案の政府提出も出来ないから、時の大統領府が、思うように政策を進めることはできない。この政治システムが、「国内法の改正や立法を伴う貿易協定は締結しない」という行動規準になる理由である。
(日本は、外交条約通商条約も一元的に内閣が交渉権限を持ち、交渉締結後、国会が批准するかどうかの採決を行う。当然、内閣は多数党であるから、批准の確立は高くなる)
5月22日と31日の官僚達の回答は、前回述べたように、非常に重要な問題を含んでいる。米国の政治システムを知らないはずはない。
「米国通商政策のモデル;米韓FTA」
TPP条文のモデルになっている米韓FTAのIP条項をご覧いただくと、米国のIP戦略が理解出来る。2009年米韓FTA要約版より。
この資料は、USTRのHP、米韓FTAの場所にはなく捜しにくい場所にあり、引用している例を見たことがない。毒素条項情報より確か。
http://www.ustr.gov/about-us/press-office/fact-sheets/2009/april/summary-us-korea-fta
この2009年要約版の解説は次のブログに掲載。
(1) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11051414503.html
(2) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11051601227.html
(3) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11052683327.html
(4) http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-11054795964.html
State-of-the-Art Protection for U.S. Trademarks(米国商標の保護)
・音や香りにも商標の保護をする。
・重要なドメイン名がcyber-squatting(先行取得)されないように、紛争解決の準備。
・商標、地理的表現は、先出願が基本。
・商標などの検索・登録・保守システムの提供。
(省略)
Protection for Copyrighted Works in a Digital Economy(電子経済における著作権)
・音楽、ビデオ、ソフトウェア、およびインターネットによる広範囲の不正コピーを防ぐ
・国際標準として出現することと一致している表音文字を含む著作権のある作品のための保護期間 ( 例えば、著者寿命プラス70 年) の延長を提供する。
{この70年も米国の押し付け}
・インターネット上で不正を防止する技術を改竄することを防ぐ技術の提供。
・政府機関は正規のコンピューターソフトウエアを利用し、個人ユーザーにお手本を示すこと。
・政府は、個人ユーザーが正規のコンピューターソフトウェアを使用するよう示さなければならない。
・衛星放送の違法コピーを防ぐため、暗号化された信号のコピー・配布を防ぐルールが必要。
・デジタルミレニアム著作権法を反映し、著作権侵害に対するインターネットサービスプロバイダ(ISP)の責任のための規則を提供すること。
{DMCAを押し付けている}
Patents & Regulated Products(特許と規制製品)
・原特許の権利付与の遅れを補償するため延長を求める。
・発明者が自身の発表により権利化が出来なくなる12ヶ月を待って、雑誌などに発表することを認めること。
・特許の任意の取消に対する保護と、新たに開発された植物品種及び動物の保護を保証すること。
・製品承認のために提出したデータが不正な商用に使用されないよう保護すること。医薬品は5年、農薬は10年。
・医薬品の特許の侵害、有効性に関する評価が必要。協定発効後18ヶ月は協議しない。
Tough Penalties for Piracy and Counterfeiting(海賊版と模造品)
・著作権侵害と商標の偽造を防ぐため、海賊行為を行ったエンドユーザーを起訴すること。
・両国は、模造あるいは著作権侵害の製品およびそれらを製造した装置の押収、没収、破壊を行う権限がある。
・海賊版の運搬に港や自由貿易ゾーンを利用する違反者を制止するため強制的な通関手続きを行う。
・効率的通関手続きのため合理化を行う。
・税関の職員及び検察官は、権利者からの正式の苦情を待たなくても IPR 実施訴訟を起こすことを可能にする。
(PRO-IP法を押し付けている)
以上が米韓FTAの内容(一部)であり、米国の著作権、特許、DMCAやPRO-IPを押し付けている。医療関係では下記の様に、薬価・償還決定など他国の行政に介入する協定まで押し込んでいる。TPPはこれ以上とUSTRが言っていて、米国法を変えないとしたら米国の法律を他国に輸出し、属国化することになる。まさしく主権侵害の契約である。
Pharmaceuticals and Medical Devices;A Shared Commitment on Access to Innovative Medicines
(革新的医薬品と医療機械)
・医薬品、医療機械のアクセス、障壁の排除、価格決定、返済方法、商習慣などの改善。
・医療政策の問題については、両国でWGを設置する。
・価格決定、償還方法についても、独立機関を設置する。
(5回目、知財侵害取締り)