過去問は「長時間つくりこまれた問題」だから、取り組むこと自体に意味があります。また模試は「かぎりなく似て」いたとしても本物ではないわけです。実際の入試問題より簡単だったり難しかったりします。例えば問題を難しくする理由として、生徒の実力をつけさせるためや、簡単に点がとれてしまい気を緩めないようにするためといったことがあります。難しめの問題を出し、点数が低いとこのままではまずいと思い勉強する、または志望校を変更することになり、どちらの場合であっても「合格率は高まり」ます。
模試を作成しているのは塾・予備校などの受験産業なので「模試の点数が○○だから」という言い訳に使われることもあります。
それに対して過去問というのは実際に出た問題であり、その問題群を「合格最低点」を越える力があれば合格します。目標をどこにおく(合格最低点を余裕で越えるのか、ぎりぎり越えるのか)かは人それぞれですが、「合格最低点」というひとつの目安に対して「自分の実力」がどこにあるのかは、模試のデータではなく最終的には「自分で実感する」しかないといえます。
入試問題は「選抜対象の集団」によって問題が異なります。
例えば「公立高校入試」の場合は、東大に何人も合格する進学校から、大学進学を目的としていない実業系の高校まで「幅広く中学生全体」を選抜対象としています。実際にはその中間に多くの学校がありますが、ここでは話を簡単にするために上記2つの学校を例に話をすすめます。
進学校向けの問題だけで「公立高校入試問題」をつくると、進学校を受験する生徒の点数はうまくばらけて、入試問題が「選抜としての機能」を十分にはたします。しかし、それだと実業系の高校を受験する生徒にとっては「難しい問題」ばかりとなり、ほとんどの問題が解けなくて、偶然正解した問題(記号問題など)によって合否が決定され運の要素が強くなってしまいます。
逆に実業系の高校向けに「公立高校入試問題」をつくると、進学校の生徒はほとんど正解して、わずかにある「難問」が解けたかどうかで合否が決まることになります。つまり「公立高校入試問題」は、点数がバランスよく分布するように作られています。
だから進学校を受験する場合は、基礎問題をミスなく短時間で解きつつ、難問を得点できるかどうが合格の決め手になります。逆に実業系の高校を志望する場合は、学力以上の難問は時間があれば取り組みますが、基本問題に時間をしっかりかけて得点を積み上げることが合格の鍵になります。
そうした公立高校入試と比べると、高専入試において受験生のレベルは一定以上の学力があるので、基本的な問題もあることはありますが、基本問題であっても公立高校入試のような「本当の基本問題」の数はごくわずかになります。ある程度の学力がある生徒を選抜する試験が高専入試だからです。
この受験者(母集団)のレベルによって問題の難易度の割合や、基本問題の最低ラインが変わってきます。国立や私立の有名校であれば、最低ラインも高くて、最高ライン(一部の人しか解けない問題)も高くなります。これが大学受験になれば、偏差値で大まかに問題のレベルがわかります。
大事なのは「公立高校入試」の場合は、学校の偏差値は存在するが、問題が同じであるということです。進学校志望の場合は、いかにミスを少なくし得点率をあげるかが大事になります。過去問に取り組む際には、何点という点数だけでなく、簡単な問題は短時間で、時間が必要な問題はしっかり解ききる(または見送る)といった時間配分をつかむことが重要となります。