AFTERMOD E-PRESS 【vol.0034】 (2011年5月06日号)

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00【巻頭】「私援」するということ
01【特集】安藤理智11年目のトランジット 第3話 ~ほほえみの国の落とし穴①~
02【特集】ヤハギクニヒコ『社会学曼陀羅9:社会学曼陀羅09:ボランティアとアナキズム』
03【告知】安田菜津紀 5月19日 パークサイド広尾レディスクリニックにて座談会
04【告知】安田菜津紀 毎日新聞にて記事掲載
05【告知】佐藤慧『週刊FLASH』手記掲載!
06【告知】安田菜津紀『日本カメラ』表紙掲載中!
07【告知】安田菜津紀×NGO・PLASウガンダ写真展「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~
08【告知】5月15日 ヤハギクニヒコ 鏡明塾
09【後記】ヤハギさん


00【巻頭】『私援』するということ


 NPOみんつなでは「志援」という表記になっていますが、一番最初僕は「私援」という表記を提案しておりました。というのも、一人ひとりがやれることをするというのが何よりも大事だと思ったからです。私ができる援助とは何か、これをまず考えないといけないのではないか。誰にでもできるけど、一番難しいことはおそらく「忘れないこと」でしょうね。実際何かを目に見えた行動をするわけではないですが、これも立派な支援なんですね。こういうことでも良いわけです。ニュースはいつも入れ替わります。今回、安藤理智は『11年目のトランジット第3話』で「喜捨」というキーワードを上げます。昔の富の再分配に近いシステムですね。ヤハギクニヒコは『社会学曼陀羅09:ボランティアとアナキズム』で有償・無償について考察します。今回のボランティア活動に限らず、物理的なもの以外でも喜捨的なことはできるのですが、ボランティア活動は「こういうこと」という先入観を持っている方が数多くいらっしゃるように感じます。みなさま一人ひとりの「わたしにできること」を考えるきっかけになればと思い、今回のE-PRESSを送ります。
(笠原正嗣)



01【特集】 安藤理智11年目のトランジット 第3話 

ほほえみの国の落とし穴①


 昨年の5月にバンコク中心部を反政府勢力(親タクシン派=UDD)が占拠し、軍による強制排除で多数の死傷者が出たことは記憶に新しいが、バンコクに住む人間にとっては、それも過去の話となってしまった。
放火されたビルは再建され、ショッピングセンターとしての営業を再開している。一部、再建することも無く、黒くこげた跡が残っている建物もあるが、道行く人たちは気に留めるそぶりさえ見せない。



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 タイを訪れる外国人観光客は年間1400万人、そのうち日本人観光客は年間120万人と言われている。日本と違い、比較的街中で英語が通じやすい(というより外国人慣れしている)のも、観光客にとっては好都合だ。
さらに、食事の面でも恩恵を受けることができる。タイ料理はもちろん、世界各国の料理が安く食べられるのも大きな魅力の一つだ。

世界に誇る歴史的建造物、豊かな自然。そして穏やかな人々。観光で訪れるには最高の国かもしれない。


 さて、そんなタイだが、落とし穴もちゃんとある。


 英語を母国語としない国において、流暢な英語(あるいは日本語)で観光客に話しかけてくる人はの多くは悪意を持った人たちだ。留学などを経験した裕福層が、平日の昼間に暇を持て余して観光客の相手をすることなど、ありえない。ちょっと冷静になって考えてみれば分かりそうなものだが、そうもいかないのは外国という非日常が判断を鈍らせているためだろうか。


 「私、留学していた時に日本人のお世話になりました。日本人は優しい。私は○○(あまり有名でない日本の地名が出てくることが多い)に住んでいました。」と言われると、旅先での出会いに浮かれた日本人はすぐにだまされてしまう。


 詳しくは『地球の歩き方』の巻末にいろいろな事例が出ているのでそちらを見て頂くことにして、詐欺などの被害に遭う日本人は後を絶たない。



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 そんな悪い人たちばかりでは無いが、やはりタイ語が話せない外国人は、価格などの面でタイ人と異なる事も多い。外国人が有料で参拝する寺院であっても、タイ人は宗教上の理由から無料である事も多い。遊園地などでは英語で書かれている入場料と、タイ語で書かれている入場料が違ったりもする。


 なぜ、このような二重価格が存在するのだろうか。


 タイで物事を考える上で、仏教を切り離して考えることはできない。そしてその中の重要なポイントとして「喜捨」という考えがある。
持てるもの(富裕層)は持てないもの(貧困層)に施しをするのが当然という考え方だ。


 一部の上流階級を除けば、概して外国人よりは貧しい生活をしている。少なくとも飛行機に乗ってきて、ホテルに泊まることができる人間は裕福に見える。


 つまり、お金を持っている(であろう)外国人に対して、高い金額を言うのはあたり前のことであり、何ら罪の意識があるわけではないのである。だからこそ、納得して買った後で「ぼられた」という外国人に対して、タイ人は冷たいのである。


 幸運にして、タイ人と知り合った日本人が食事に行った時、財布を出そうとしないタイ人を見て「図々しい」というのも、また話しが違うのである。


 一億総中産階級という意識の中で育った日本人にとっては理解しがたい事かもしれないが、これがタイの「見えないカースト社会」であり、その中での常識から言えば、お金を持っている(であろう)外国人が、その場にいる全ての人の分の食事代を払うのが道理なのだ。たとえそこに、自分が直接招待していない人が交じっていたとしても、だ。


余談だが、タイ語の学習を始めた頃、こんな例文があって驚いたことがある。
「このホテルの一泊の代金は、私の一ヶ月の給料と同じ値段です。」
タイの社会において、ホテルに泊まるという事がどれだけ難しい事かお分かり頂けるだろうか。

<続く>

(写真+文章=安藤理智)



02【連載】ヤハギクニヒコ『社会学曼陀羅09:ボランティアとアナキズム』


 震災翌日に立ち上げた「NPOみんつな」の活動をする中で、ボランティアの在り方について色々と考えることが多くなってきました。支援金を活動維持費に使用することについて、色々と議論も在りました。実費弁償すら認めたくないという学生の意見もありました。さて、果たしてボランティアのあるべき姿とは、どういうものなのでしょうか。


 もともとボランティアというのは「自由意志の人」という意味のラテン語です。自由意志による共闘というのはアナキズムの基本でもあります。ボランティアの定義は「やる気・世直し・手弁当」すなわち、自発性・社会性・無償性の三つが核となります。では、一体アナキズムとは何が違うのか。一番の違いは動機です。社会性というのは広く社会のために、と言う大義であるわけですが、アナキズムの場合、かなり個人的な価値観によります。ただ、その個人的な価値観が、結果的に社会性を帯びていることは往々にしてあります。例えば、自分が幸せに暮らしたい→そのためには自分の住む地域が平和で安全な方が良い→自警団を組織して夜回りをしよう、と言う具合です。「情けは人のためならず」と言いますが、これは他人に情けをかけることで、結果的に自分に返ってくると言うことです。究極的には自分のためにすることも、他者のためにすることもあまり変わりはないと言えるかも知れません。自分を開いて、拡張していくことで、アナキストはボランティアになります。そういう意味では、ボランティアとアナキストは非常に近いと考えられます。アナキストと言うと無政府主義という訳語や、スペイン内戦の義勇兵を思い浮かべる人も多いと思いますが、実際ボランティアには志願兵という意味もありました。


 ボランティア活動に携わる中で、どうしても避けて通れないのが、その無償性に対する立場です。もともと貧困問題に対してアクションを起こしたことが現在のいわゆるボランティア活動の起源です。そのため、どうしても無償性が取り立たされます。しかし、今回の震災支援においては、現地に入り込んで時間をかけて行うことが必要な役割も多く、そうなるとどうしても仕事や生活を犠牲にするボランティアも出てきます。本来、自発的であるので生活を犠牲にするもしないも本人の選択によるのですが、そういう気持ちで活動をしている人達に対して、それが出来ない人がサポートするという感覚はもっとあって良いと感じます。


 「有償ボランティア」という言葉がありますが、これがボランティアといえるのか、という議論は以前からありました。語義的には有償である以上、無償性を定義の軸とする現在のボランティアとは矛盾してしまいます。ですから、全国社会福祉協議会などの組織では実費弁償を超える報酬がある場合「有償ボランティア」という言葉を使わず、「有償サービス」「有償ヘルパー」という言葉を提唱していたりします。しかし、それはそれで商業的なイメージが強すぎ、自発性や社会性から遠のいて聞こえてしまう気がします。言葉の問題は、案外大きな影響を及ぼします。一番大事なのが言葉でないのはもちろんなのですが、その影響力を考えずにラベリングしてしまうことは色々な問題を誘発します。「有償」という言葉はあまり良いイメージがありません。せっかくの活動がなんだか打算的に見えてしまいます。そもそも無償性がボランティアならば、いちいち有償と付けないことでイメージは変わります。「スタッフ」と「ボランティアスタッフ」というように使うだけでも随分と印象が変わると思います。


 僕自身は、ボランティアとして活動に参加した人への金銭的サポートはある程度必要であると考えています。しかし、完全なる無償ボランティアの存在というのは、その組織の試金石になるとも考えています。無償でもその組織に所属して活動したいという思いが集まるような組織は健全で理想的なヴィジョンと実践があるのだと思います。線引きをするのはなかなかに困難ですが、慈善と報酬を二項対立みたいに考えるのは良くないのではないかと考えます。正直者が馬鹿を見ることのないように、気持ちのある人を、その気持ちに甘えずに周りがちゃんと評価してサポートしようとすること。それこそが「手前味噌」を嫌う日本人の粋であって、「情けは人のためならず」の実践である気がしています。
(ヤハギクニヒコ)


03【告知】安田菜津紀 5月19日 パークサイド広尾レディスクリニックにて座談会

いつも写真を展示して頂いているパークサイド広尾レディスクリニックにて、
第7回ミニ写真展(19:30~)陸前高田での活動報告を踏まえた座談会を予定しております。
お時間がよろしければぜひお越し下さい!

(無事終了いたしました。ありがとうございます。)


04【告知】安田菜津紀 毎日新聞にて記事掲載


試行錯誤してようやく仕上げた原稿と写真とキャプション。次週毎日新聞に陸前高田の写真記事の掲載です。文章は佐藤慧、写真は陸前高田市の入学式を撮影して頂いた3人の写真家さんと私。5人の力が合わさって1つの記事を仕上げる、素敵な作業でした。また詳細告知させて頂きます。



05【告知】佐藤慧『週刊FLASH』手記掲載!


5月11日発売の光文社『週刊FLASH』(2011年5月24日号)に、
3ページに渡り佐藤慧の手記
『28歳ジャーナリスト「母を捜しつづけた30日」』が掲載されました。
是非お手にとって頂ければ幸いです。

http://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101002


06【告知】安田菜津紀『日本カメラ』表紙掲載!

日本カメラ 2011年 05月号の表紙と口絵ページに
安田菜津紀の写真を掲載して頂いております! 是非お手にとって頂ければ幸いです。

http://www.nippon-camera.com/



07【告知】安田菜津紀×NGO・PLASウガンダ写真展
「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~
(6月現在、終了いたしました)


エイズ孤児支援NGO・PLASの皆様との写真展が始まりました!
●ウガンダ写真展「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~

▽5月3~16日 C’s Fort(表参道)
▽5月17~31日 BODY WILD Under wave原宿本店
http://www.plas-aids.org/waod/2011/event.html

現在開催中の会場はこちらになります!
※開催時間が変更になっています!
【会場】C’s Fort(表参道)
 ※ 地図→ http://csfort.fumotoya.com/access.html  
【開催時間】11:00~22:00
【主催】エイズ孤児支援NGO・PLAS
【共催】世界銀行情報センター(PIC東京)、
    株式会社スタディオアフタモード


08【告知】5月15日 ヤハギクニヒコ 鏡明塾


さて今回は『認知心理学入門』です。

前回の写真論にも大いに関係する、認知心理学。
自分の感覚がいかにコントロール出来ていないかを感じることで、
表現の可能性について考えて見たいと思います。


[国語力研磨コース]17:05~18:50
・神奈川県民センター(306教室)
[世界科風雅コース]19:05~20:50
・神奈川県民センター(306教室)
・テーマ『認知心理学入門』


神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。
(※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます)
(※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください)
申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。
では、みなさんの御参加、お待ちしております!


09【後記】義務と自由意志

日本の武士道にもかつてはノブレス・オブリージュの思想がありました。持っている者が持っていない者を助ける。そんな当たり前のことが、今は崩れてしまっているように思います。かつて助けられた人や、自分の生活をなげうって支援活動をする人々を尻目に、中流以上の生活を保つサラリーマンは、自分たちだって不景気で大変なんだ、と居直っているように見えます。自由意志というのは大事です。しかし、持っている者が持たざる者へ分配することこそが、貨幣経済の平和への可能性だ、とルドルフ・シュタイナーは言いました。資本主義でも共産主義でもない、もっと良いとこ取りをした中庸を突き詰めていかなければいけない気がします。日本の近未来を案じつつ、また次週お目にかかります。

(ヤハギクニヒコ)

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0033】 (2011年4月29日号)


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00【巻頭】『もう二か月か、まだ二か月か』
01【対談】日玉浩史×矢萩邦彦『日本の未来のために』
02【特集】佐藤慧Twitterなど情報まとめ4月後編
03【告知】佐藤慧『週刊FLASH』手記掲載!
04【告知】安田菜津紀『日本カメラ』表紙掲載中!
05【告知】安田菜津紀×NGO・PLASウガンダ写真展「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~
06【告知】5月15日 ヤハギクニヒコ 鏡明塾
07【後記】『全ての存在と非存在への畏怖』



00【巻頭】『もう二か月か、まだ二か月か』


 311というカタストロフィーから二か月が経とうとしています。僕には、非常に長い2か月でした。様々な新しいことが起こりすぎて未だに追いつけていないような感じがします。原発の方は未だに手の打ちようがないようで、手探り状態の対応が目立ちます。どちらかと言うと状況は日増しに悪化しているのですが、気が付けば僕たちの意識からは遠のいてしまっているように感じます。すでに忘れ去られようとしています。いや忘れようとしている人さえいるでしょう。これは被災地のことにも当てはまるように思います。でも、忘れちゃいけませんよね。そして、周りの友達に忘れさせちゃいけないんです。今回のE-PRESSは、もう一度震災を考えるきっかけになる内容が盛りだくさんです。
 特集一つ目は、ISIS編集学校で培った見識を元にいち早く行動した二人、ベルギー在住のダンサー日玉浩史さんと弊社代表矢萩邦彦が対談をします。二人は現地で何を感じ、どんな日本の未来を見ているのでしょうか。二つ目は前回のつづきで、刻一刻と変わる被災地の状況を佐藤慧はwitterという形で生の記憶を留めます。もう一度震災の時に自分がどうだったのか、そして周りがどうだったのかということを想い出す一助になることを祈って今回のE-PRESSを送ります。
(笠原正嗣)


01【対談】日玉浩史×矢萩邦彦『日本の未来のために』


今回は震災後素早く立ち上がった、ISIS編集学校の同門である矢萩邦彦(NPOみんつな共同代表)と日玉浩史(NPOアクト・フォー・ジャパン・ベルギー代表)の対談記事をお送りします。この対談の後、松岡正剛師を交えた三人での対談が実現しましたので、そちらは追って掲載させて頂きます。


◆覚悟しておくこと


矢萩:初めまして。こうしてお話しさせて頂くのは初めてですね。


日玉:それでもこうやってイキナリ話し始めることが出来るのが、編集学校の強みですね。矢萩さんのことは知っていましたし、たまに活動を追っていましたよ。


矢萩:それは光栄です。同じ場で同じ型を学んだ者同士の強みですね。僕も日玉さんは編集学校で典離(松岡正剛直伝プログラム『離』のMVP)を取られた後に、僕と同じで編集学校から距離を置かれていたので気になる存在でした。


日玉:だって『離』でしょう。離れなきゃどうすんの?って。(笑)


矢萩:実に心強いご意見です。(笑) 型を習得することは大事ですが、それを習得したなら、外に出て使ってみるということが凄く大事ですよね。


日玉:まさに今回の震災がそうでしょう。編集術をどう動かすか。今やらないでいつやるのか。


矢萩:仰るとおりだと思います。しかし、編集学校関係者でも動きにはかなりばらつきがありました。


日玉:要は覚悟の問題でしょ。編集というのは選択することで、それは覚悟の連続ってことで。


矢萩:編集を学んだのであれば、それをいつ活かすのか、常に臨戦態勢で居ることが重要ですよね。

それはつまり、いざとなったら動く、と最初に覚悟しておくことであると思います。知行合一、

知識と実践は両輪ですからね。


日玉:そう、何のために陽明学を学んだのかってことだよね。



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◆人と物とを混ぜていく


日玉:こういうときに編集学校のようなモデルを活かすには、まず情報を発信することだよね。


矢萩:その通りですね。何かを分かってからでないと情報にならないと思いすぎている人が多いですね。何が分からないか、何を必要としているかも立派な情報ですよね。「ない」ことを認識してディレクションするというか。


日玉:その上で、インターネットとかではなくて、実際にどう人と物とを交流させるかが鍵だとおもう。今回ブリュッセルから日本のことを見ていて、西と東の断絶が起きる可能性が高いと思ったんだよね。僕が住んでいるベルギーって国もそうなんだけど、フラマンとワロンに別れてしまっていて、言語の問題を越えて未だに対立が続いてる。感情的な断絶をもっと想定しないと危ないと思う。


矢萩:震災後3ヶ月から1年くらいで、何か重大なコトが噴出してくる気がします。この国がもともと抱えていて、でも見えなくしていた、誤魔化していたフラジャイルなことと向き合わなければならなくなると感じています。そういう断絶に気づいた上で、さてどうするか。


日玉:僕が考えているのは、まず農業だよね。それと教育。実感を取り戻すことが必要だと思う。そうしないと精神的な断絶は致命的になるんじゃないかな。経済的に東北がゴーンと落ちるのは分かっているから、人と物を上手く交流させていかないと。


矢萩:そのキーワードが農業と教育というわけですね。安藤昌益に三浦梅園に。


日玉:例えば安易に税金を上げるなんて言ったら、西は反対するでしょう。

下手したらクーデターが起こるかな?


矢萩:クーデターですか。あって欲しくはないですが、それは想定すべきことですね。今回、被災地で活躍しているのは、自衛隊が目立ちます。組織の構造の問題もありますし、なにより地元の警察官も被災者であることが大きいと思いますが、警察などの動きよりも圧倒的に自衛隊が早く実のある活動をしているように見えます。


日玉:自衛隊の中から、意志のある人が出てくる可能性は十分にあると思う。国全体のことを考えて、極端なところに走らないように、あるいは革命維新のようなことが起こったときに、極力痛みを伴わないように、人間を交流させていかないと。


矢萩:境界の内側に、さらなる境界が出来ないようにしないといけませんね。


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◆日本を分断させないために


矢萩:僕らの団体「NPOみんつな」の関西のメンバーから、やはり関西では震災後それほど影響を感じないというか、想像以上に引きが早く、もう日常に戻りつつあるという状況を憂う声が聞こえています。もしそうだとすると、これから長期にわたる復興支援を考えている僕らにとってはかなり危機感があります。


日玉:税金の話もそうだけど、西、とりわけ阪神淡路の被災者の人はやっと生活が戻ったのに、また不景気とかで、なんとか保っている生活レベルを更に落とすことは考えたくないでしょ。それに、被災地の様子、想像したくないもん。カットしちゃうよ、ヤバ過ぎて。


矢萩:そういう防衛本能みたいなことはあるのかも知れないですね。


日玉:心の中の編集作業だよね。危機感なんてマトモな大人は持っていると思う。


矢萩:でも、僕は、スルーして良いとは、見ないようにして、忘れて良いとは、思わないんですよ。これからの日本全体のためにも。だから、報道をはじめ、忘れないためのシステムって言うのを作りたいと考えています。


日玉:ドキュメンタリーを薄れないようにすること。あとはイマジネーションだよね。例えば、100円でこれだけ救える、みたいな提示をすれば、じゃあ、っていう人は多いと思う。具体的に行動できることで繋がるというか。それで忘れないって言うのはあると思う。


矢萩:つまり、方法・モデルを提示してナビゲートするってことですね。


日玉:変に現地を知っている人が、これだけ大変なんだ、なんて主張しても埒があかないと思う。そういう意味では温度差があった方が健全というか。


矢萩:温度差があるからこそ、対流が起こると言うことですね。それを認識してどうオーガナイズしていくかが重要ですね。


日玉:そのためには顔の見えるやりとりをすることだと思う。まずは日本を分裂させないこと。物とか人が具体的に繋がっていることが力になるはず。それをしないと嫌な関係になる。それを上手くオーガナイズする力は政府には絶対に無い。本当にそういうコトを分かっている人は政治家にはならないと思う。


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◆江戸の経済と日本文化の問題


矢萩:現地で「何を支援して欲しいか、自分たちにも分からない」という声を沢山聞きました。しかし、僕らがそこに来て活動していることに対して、「ありがとう」という声も沢山頂きました。


日玉:何を助けて良いのか、日本人自体が分からないんだと思う。例えば何かを頂いたら「ありがとう」っていう根本的なこと。文化ってそういうコトでしょう。だから自信を持てば良いんですよ。日本の文化がどれだけ外側にとってインスパイアルなものか、もっと認識しないと。僕の周りのアーティストは、みんな日本の文化をリスペクトしていますよ。


矢萩:逆に日本人は自国の文化を説明できないですからね。手前味噌は粋ではない、とかそういう価値観からではなく、単に知らないですよね。勉強不足というか、ないがしろにしているというか、そういう環境になってしまっている。では、なぜ知ろうとしないのか。その根底にある、自国の文化は置いといて、みたいな感覚に闇の深さを感じます。

日玉:それは、早急にオーガナイズすべきコトだと思うよ。外に出ないまでもちゃんと認識できるように。例えばダ・ヴィンチやドラクロワは知っているのに、雪舟や等伯を知らない。そんなの有り得ないよ。そういう愛国心がないから、外に向けて、助けてくれ、って言えない。僕の周りでも「なんで助けてって言わないの? 平気なの?」って思われているよ。


矢萩:その辺の認識に至る導線には、幕末から明治へのチェンジで起こった価値観のシフトがありますよね。


日玉:明治の廃仏毀釈で神道だけになって、どんどん今までのものを捨てよう、そして西洋のものを受け入れようとした。立派になろう、というのは西洋になろう、ということで。日本人というものに対する自虐意識が生まれたのもその頃だよね。


矢萩:日本の海外に対する引け目みたいなものって、データから来たものではないですよね。でも、データをひっくり返すことで自信を持てるような気もします。見方のチェンジだけでも効果があるように思います。

日玉:内と外をどう明確にして、日本だけで結構イケルんじゃない? という流れを作るか。今まさにパラダイムシフトが起こりつつあると思う。国を支える人間が居ないとヤバイよ。日本全体の危機を考えるべき。どういうメディア操作が必要なのか。


矢萩:人と物とを交流させるためのメディア操作ですね。まさに経済的です。


日玉:経世済民。今はお金の流れの話になってしまっているが、本来は世を救うこと。梅園・徂徠、そして陽明学。それが江戸にはあった。絶対忘れちゃいけないのは、何のために何万人も死んだか。こんな時に。絶対悔しかったはず。戦争でもないし。それを自粛自粛と言っていないで、未来に繋げないと。


矢萩:誤解を恐れずに言えば、この震災を糧にしなければいけないですよね。未来に向けて前進しなければ行けない。それでいいんだ、ということをもっと僕らは叫んでいきたいですよね。


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【日玉 浩史(ひだま こうし)】振付家・ダンサー。1968年生まれ。日本大学芸術学部卒業。1986年チャイコフスキー記念東京バレエ団入団。六年間所属した後、イギリス・ロンドンのラバン・センターに留学。1993年「カンパニー・ミッシェル=アンヌ・ドゥ・メイ」(ブリュッセル)に参加。1994年「カンパニー・ローザス」(ブリュッセル)で活動。1997年よりフリーランスとなり、ダムタイプ「OR」共同振付、「ローザス」、「カンパニー・ピエール・ドゥルーズ」、ロッテルダム劇場プログラム「Los Invitados」などに参加し、現在もニードカンパニーやAMGODなどでヨーロッパで活動を続けている。1998年、神奈川芸術文化財団「dance today」において「L.S.D.S./サルの監視」発表を機に、日本でのワークショップや振付などの活動を本格的に開始。1999年、「Violence of gravity」(ランドマークホール・神奈川)や、2000年、「The Body On The Liquefaction―沈み行く身体についての考察」(スパイラルホール・東京)、2001年、「What do you want?」(スフィアメックス・東京)など。在ベルギー。

Act for Japan.be
ベルギー発、被災地支援 日本人アーティストらNPO設立
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(写真+文=日玉浩史×矢萩邦彦)




02【特集】佐藤慧Twitterなど情報まとめ4月後編


【4月5日】
◆どこからが被災者なのか。家は流されなかったが職も失い買い物にも行けない。そういう人も被災者には違いないと僕は思うのだが、地域によっては被災者と見なされず物資の配給が受けられない場合もあるという。

◆狭すぎず、広すぎず、物事の芯を見据えていこう。表面的な個別の事情ではなく、命そのもの、人間そのものを見つめていきたい。これは「世界」を捉えなおすための試練なのかもしれない。

◆家や家族を失い、今なお明日が見えない人々の苦悩、心労、疲労を思うと僕はとても無力なのだと思ってしまう。「僕らは無力なわけではなく微力なだけ」という先輩の言葉に助けられる


【4月7日】
◆今日はおそらく遺体安置所に足を運べる最後の日だった。突然春の訪れた陸前高田では、遺体は急速に彼岸に流れていく。何が起こったかももちろん大事だが、何を為すべきかを真摯に考えていかなければ。

◆小休止を入れないと現実と非現実がゴチャ混ぜになる。現実を捉えること、それは世界を自己とを認識すること。「あなた」と「わたし」の総和であるこの世界の中で、息を継ぎ、命を紡いでいくこと。


【4月8日】
◆どれだけ学んでも、「起こり得ること」を「想定外」だと認識してしまう人間の弱さ。

◆どれだけ休んでも体にのしかかるような気だるさが抜けない。心労が大きいと体もうまく休めないのだろうな。市の職員の方、社会福祉協議会の方、他にも沢山のひとたちが僕以上の疲労を抱えて働いている。どれだけ気力で動いていても限界は来る。早く、少しずつでも休めるような体制が整ってほしい。


【4月11日】
◆悲しみの深さは愛の深さ。


【4月14日】
◆遺体の安置されている体育館に足を踏み込むと、そこには死が充満していた。圧倒的な死の香り。冷たく、

深く、静かな香り。ひとつの命の営みが、宇宙へと還る儀式。


【4月15日】
◆≪お知らせ≫2011年第36回「視点」写真公募展において、ザンビアの写真「ゴミの中の祈り」が入選、これから全国巡回となります。6月からニューヨークで展示するものと同じ写真です。詳細はまた後日お知らせ致します。こんな時こそ、祈りというものが世界に伝播していけばと思います。


【4月16日】
◆母は生前、短歌を詠んでいた。「海霧に とけて我が身もただよはむ 川面をのぼり 大地をつつみ」。高田の空に舞うやませ(山背)を詠んだこの歌は、母の魂が大地に深く、暖かく染み入っていく様子を思わせる。


【4月20日】
◆「戦争を忘れちゃいけないってよくうちのばあさんが言ってたけど、今までその言葉はそんなに響かなかった。今回の震災を経験して思う。これは忘れてはいけない。語り継いでいかなかきゃいけないって」 人は経験を継ぐことの出来る存在。無数の死、悲しみは未来への糧に。

◆言葉は酸化する。胸の内に沈んだ澱は、その容がいびつに固まる前に掬い上げなければいけない。時は巡り、命は溶け行く。


【4月21日】
◆命がいずれ尽きるというのなら、この瞬間にはどんな意味があるのだろう。僕はその意味を、

「わたし」と「あなた」の関係性の中に見いだす。縁が世界を形作り、その交歓がこの足を前に進める。

◆マダガスカル語の「死」は「肉体を失う」という意味で、生と死に観念的な違いは無いという。


【4月25日】
◆千早高校では、若く力強いエネルギーに講演するこちらが活力を頂いた。部活、応援団なども見学させて頂き、久々に気分がリフレッシュした一日に。歴史を糧に、未来を作る。NEWではなくAFTER。教育の現場は未来の種で溢れてる。健やかな日差しを、水を、少しでも糧となれるように。


【4月27日】
◆車一台廃車にするのも大変な作業だ。特に全てが流されてしまった後は。人を墓に入れるにも埋葬許可証がいるしなあ。効率化を推し進めるために、不効率になってしまった部分もあるんだろうな。


【4月28日】
◆ある被災地では埋葬許可証を発行する窓口が機能していないため、

火葬後も遺骨を埋葬出来ずにいるそうだ。

◆あの大津波から49日、母の遺体を発見してから19日、無事に母の遺骨を墓に入れることが出来た。アドレナリンに満ちていた脳の緊張が少し緩む。と同時に、地球の中心に強く引かれる重力を体全体に感じた。ああ、生きているんだな。空が高い。

◆色即是空 空即是色

(佐藤慧)



03【告知】佐藤慧『週刊FLASH』手記掲載!


5月11日発売の光文社『週刊FLASH』(2011年5月24日号)に、
3ページに渡り佐藤慧の手記
『28歳ジャーナリスト「母を捜しつづけた30日」』が掲載されました。
是非お手にとって頂ければ幸いです。

http://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101002  



04【告知】安田菜津紀『日本カメラ』表紙掲載中!


日本カメラ 2011年 05月号の表紙と口絵ページに安田菜津紀の写真を掲載して頂いております! 是非お手にとって頂ければ幸いです。

http://www.nippon-camera.com/  



05【告知】安田菜津紀×NGO・PLASウガンダ写真展


「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~

エイズ孤児支援NGO・PLASの皆様との写真展が始まりました!


●ウガンダ写真展「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~
▽4月20日~5月2日 世界銀行情報センター(内幸町)
▽5月3~16日 C’s Fort(表参道)
▽5月17~31日 BODY WILD Under wave原宿本店
http://www.plas-aids.org/waod/2011/event.html  


現在開催中の会場はこちらになります!
※開催時間が変更になっています!


●4月20日(水)~5月2日(月) ※土日・祝は休館です
【会場】世界銀行情報センター(PIC東京) 
【開催時間】13:00~16:30
【主催】エイズ孤児支援NGO・PLAS
【共催】世界銀行情報センター(PIC東京)、株式会社スタディオアフタモード



06【告知】5月15日 ヤハギクニヒコ 鏡明塾


さて今回は『認知心理学入門』です。

前回の写真論にも大いに関係する、認知心理学。
自分の感覚がいかにコントロール出来ていないかを感じることで、
表現の可能性について考えて見たいと思います。


[国語力研磨コース]17:05~18:50
・神奈川県民センター(306教室)
[世界科風雅コース]19:05~20:50
・神奈川県民センター(306教室)
・テーマ『認知心理学入門』


神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html  

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。
(※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます)
(※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください)
申し込みはメールにて承ります。


タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。
では、みなさんの御参加、お待ちしております!



07【後記】『全ての存在と非存在への畏怖』


 この震災を切っ掛けに、僕らが見失っていたことが次々に表沙汰にされていく気がします。それを受け入れて、そして未来へ繋いでいく覚悟をしなければいけない。対談の中で日玉さんの仰っている「編集とは選択の連続、つまり覚悟の連続」ということは、今まで何気なく選んでいた、無意識に無自覚にしていた自分と世界の編集的世界観への気づきを促してくれます。創造的に生きることを、編集的に生きることとするのは、世界に対するリスペクトが根底にあるからです。僕は松岡正剛師からそのことを教わりました。自然への、世界への、宇宙への、全ての存在と非存在への畏怖。僕らはもう一度、そのことを意識しなければいけないのかも知れません。
(ヤハギクニヒコ)


==========
『AFTERMOD E-PRESS』はいかがでしたでしょうか?
今回の記事についてご意見・ご感想など、
お気軽にドシドシと書き込みください。
アフタモードメンバー一同、心よりお待ちしております。

編集  ヤハギクニヒコ 笠原正嗣
執筆  ヤハギクニヒコ 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード/ studioAFTERMODE Co.,Ltd.
  http://www.aftermode.com/

本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)
することは、法律で定められた場合を除き、
著作者および出版社の権利の侵害になります。
記事の使用をご希望される場合は、
タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまで
ご一報をお願いします。取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com


AFTERMOD E-PRESS 【vol.0032】 (2011年4月22日号)

=index=

00【巻頭】『狭間を感じて』
01【特集】笠原正嗣『ピンセットのような建機の世界で』 
02【特集】佐藤慧Twitterなど情報まとめ4月編
03【告知】安田菜津紀『日本カメラ』表紙掲載中!
04【告知】安田菜津紀×NGO・PLASウガンダ写真展「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~
05【告知】5月15日 矢萩邦彦「鏡明塾」『認知心理学入門』
06【後記】『観念の世界へ』


00【巻頭】『狭間を感じて』


 見ることは信じることであると同時に、間違えることでもある。何度も目を疑って、何度も眩暈

がした。佐藤慧がいつまで経っても、現実じゃないような気がする、と呟く。うつとうつつの狭間

で、僕らはやっと本気でこの国を、この世界を見るための足場を見つけようとしているのかも知れ

ません。今回は、笠原正嗣の陸前高田レポートと、佐藤慧のTwitterまとめ四月前編をお送りしま

す。デジタルに刻まれた言葉の残像が、みんなの心の裂け目を繋ぎ合わせて、僕らがこれ以上堕ち

てしまわないように。未来へ繋がりますように。


01【特集】笠原正嗣『ピンセットのような建機の世界で』 



AFTERMOD E-PRESS


「ことばが、足りない」


◆どこから書き出せば良いのかすら分からない。
きっと最初に現地で作業にあたっていた人は、僕の比じゃなかったことだろう。
どこから手を付ければ良いのか分からなかったと思う。

僕は暗くなってから陸前高田に着いたので、
その日は瓦礫を見ずにそのままみんつなの宿舎替わりになっている
ドライビングスクールに入った。そこで、仲間達から聞いた話は

『ここ1週間で急に瓦礫が片付いてきてるから、最初と大分違ってきてる。』

そういう話だった。
次の朝、LIVEonWIREの光一に案内をしてもらった。
……目を疑った。

「ホントに片付いてきてるの? これで?」

そう聞かずにはいられなかった。何と言ったら良いのか分からない。
世界中の言語を探しても、この状況を表せる言葉はないと思う。
そもそも言葉がない。組み合わせても表現できない。ことばが足りない。
つまり、今まで人間が想定した状況出ないことが分かる。

見て、立って、触れてみて。

自分の中には入ってくる。しかし、出しようがない。
何か言ってもウソにしかならない。ない。無。



AFTERMOD E-PRESS


◆眼前の光景に目を逸らしていた。あまりの瓦礫の量にうつむいた。
そこに見えたモノは、ある家族の住んでいた後だった。
ただ津波が割れたタイルで作った家の断面図の上に自分はいた。
僕は他人の家に土足で上がり込んでいたことに気が付いた。
大きな家の残骸がなくなりはじめた今、逆に細かな何かが浮き出し始めていた。
泥にまみれたポケモンはそれでも明るく笑っている。



AFTERMOD E-PRESS


◆空を見た。
でも陸前高田病院の社宅の階段隅には、砂にまみれたカラスの死骸がある。
逃げ場は空にもなかったのか。どれほどの高さの津波が襲ったのか。
数字で出されるより、この死骸一つの方がよっぽど怖さが身に染みていく。


◆目をつぶった。
なくなっていった何かや、なくなっていくその状況がまぶたに映し出されていく。
一本の満身創痍な松を残して、消えていった松は一体何をしたのか。
波打つアスファルトに寝そべる電柱。
足を取られながらも、ひしゃげたガードレールを跨ぎ思いを巡らす。
土に埋もれた蛍光灯は、何を照らすつもりなのか。

高田病院へ向かい、着いて、見た。
なぜ病院の外壁や内部に、松があるのか?
病院の屋上から眺める塩水まみれの田んぼの中に、
車が沈んでいた。


◆その日(21日)は始業式。小学校からの光景は撤去待ちの瓦礫、瓦礫、瓦礫。
見渡す限りそれしかない。生活の後を瓦礫と呼んでいいというならば。
それでも桜は咲きはじめた。


◆綺麗な舗装のされている直線道路を車で走る。
その先に瓦礫が見える。被害のある場所とない場所。
幻実の世界に迷い込んだようだった。


AFTERMOD E-PRESS

(写真+文=笠原正嗣)


02【特集】佐藤慧Twitterなど情報まとめ4月編


【4月1日】
◆受容と諦めの間で揺れる。もし世界に希望というものがあるのならば、それは前に進むことでし

か得られない。今は一歩ずつ、しっかりと目の前の大地を踏みしめて前に進む。万の骸が眠る大地

の先にも、未来は続いていると信じて。




AFTERMOD E-PRESS

3月11日。
全てを呑み込む大津波は、高田の松原もなぎ倒した。
我が家に突き刺さる巨大な松は、その津波の恐ろしさを示していた。


見慣れた光景を歩くには、全てが変わりすぎていた。
そんな中、あの大津波にも倒れることなく、堂々と聳える一本の松があった。
何本か残ったわけではない。
ただ一本、その松だけが残ったのだ。

これは何を意味するのだろう。

意味なんかないのかもしれない。
人間は、自然の残す言葉を理解するには小さすぎる存在だ。

このただ一本残った松も、大切な仲間たちを失い、
それでもなおここに堂々と立ち続けているのだ。

ともに前に進もう。
残されたものは、強く立ち上がっていかなければならない。
与えられたもの全てに感謝しながら。


◆悲しみは凍らせておくことが出来る。あまりに冷たくて手で触れることも出来ないし、その固さ

故、どこかにぶつけてもお互いを傷つけてしまう。それが徐々に溶けてきた時、人は初めて涙する

ことが出来るのではないだろうか。以前は3年かかった。今は、その氷を優しく抱えてくれる人が

いる。少しずつ。


【4月2日】
◆岩手県でもガソリンスタンドの営業はほぼ正常化した。あの行列がうそみたいだ。みな満タンに

したので、しばらくはむしろガソリンスタンドはひまそうだ。

◆よく誤解されるのが、被災地の範囲。地震は広範囲に影響を与えたが、津波は沿岸部に広くダメ

ージを与え、内陸にはそこまで影響を及ぼしていない。(もちろん、7,8kmも川が逆流し村々

を破壊したことは驚異に値する)そのため近隣の町まで足を運べば物資も食料も買える。それをう

まく利用しないと。

◆徐々に大きなスパンで「復興」を考える必要性が出てきた。復興とはいったい何なのか?町を元

通りにすることが復興ではない。この被災を経て、人は何を学んだのか。それを考えていかなけれ

ば。

◆三陸の町々は強制的にその町の未来を正面から考える必要が出てきたが、本当は日本の過疎化し

た村々は同じ問題を抱えているのではないか。「仕事がなくて、この先どうやって生きていけばい

いんだ、不安で眠れない」。そう呟いた男性の言葉は、局所的なものではなく普遍的な問いを含ん

でいる。

◆各国からの支援まとめ。http://goo.gl/FFo98 [外務省] 

http://www.mofa.go.jp/mofaj/saigai/index2.html#omimai

◆ラトビアやサモア、普段は耳にしないような国々から沢山の支援が届いている。これを機に、み

んな世界地図を広げてその場所を確認してみてはどうだろう。世界が繋がっていることに気づく。

◆支援を表明したアフリカの国々。アルジェリア、エジプト、ガボン、ジブチ、ジンバブエ、スー

ダン、赤道ギニア、タンザニア、チュニジア、ナイジェリア、ナミビア、ボツワナ、マダガスカル、

南アフリカ、モロッコ、ルワンダ。

◆岩手県の達増知事は、漁船や漁具を国が買い上げて漁業者にリースする仕組みづくりに向けて国

と協議しているようだ。「3~5年で新しい岩手を作るイメージだ」と語る。今回の被災地に限らず、

過疎化する地方への事業モデルとしても重要な一歩となるだろう。


【4月3日】
◆陸前高田市防災本部へ。物資受け入れのセンターをとなっている給食センターでの情報によると、

防寒具や日用品は既にキャパオーバー。沿岸部の被災地から離れた街でも在庫が貯まりすぎている。

◆では物資が全くいらないかというと違う。食糧や水、下着などの物資は、現在は十分な量があっ

ても、消耗品のため長い目で見ると十分とは言えない。細く長い支援が求められている。

◆現在仮設住宅の建設が急ピッチで進められているが、陸前高田市の推定必要戸数4000に対し、

現在の供給量は36戸。

◆復興とは何か、人はどこを目指すべきか、真摯に問う必要がある。復旧と復興は違う。もちろん、

住民の方の意思が最優先だが、この被災を通し、日本全体、強いては世界そのものの在り方につ

いて問うことも大切だと思う。


【4月4日】
◆陸前高田市鳴石で青空保育園開園!正式に保育園が再会するまでの繋ぎ保育ですが、久々の保育

園に園児は大喜び。途中から青空ならぬ雪空保育園になりましたが、子供たちは元気に走り回って

ました。その力強い笑顔にこちらが励まされます。


(写真+文=佐藤慧)


03【告知】安田菜津紀『日本カメラ』表紙掲載中!

日本カメラ 2011年 05月号の表紙と口絵ページに安田菜津紀の写真を掲載して頂いております! 

是非お手にとって頂ければ幸いです。

http://www.nippon-camera.com/


04【告知】安田菜津紀×NGO・PLAS

ウガンダ写真展「Ekilooto of Uganda」 ~HIVと共に生まれる~


エイズ孤児支援NGO・PLASの皆様との写真展が始まりました!

●ウガンダ写真展「Ekilooto of Uganda」~HIVと共に生まれる~
▽4月20日~5月2日 世界銀行情報センター(内幸町)
▽5月3~16日 C’s Fort(表参道)
▽5月17~31日 BODY WILD Under wave原宿本店
http://www.plas-aids.org/waod/2011/event.html

現在開催中の会場はこちらになります!
※開催時間が変更になっています!


●4月20日(水)~5月2日(月) ※土日・祝は休館です
【会場】世界銀行情報センター(PIC東京) 
【開催時間】13:00~16:30
【主催】エイズ孤児支援NGO・PLAS
【共催】世界銀行情報センター(PIC東京)、株式会社スタディオアフタモード


05【告知】5月15日 矢萩邦彦「鏡明塾」『認知心理学入門』


さて今回は『認知心理学入門』です。

前回の写真論にも大いに関係する、認知心理学。
自分の感覚がいかにコントロール出来ていないかを感じることで、
表現の可能性について考えて見たいと思います。


[国語力研磨コース]17:05~18:50
・神奈川県民センター(306教室)
[世界科風雅コース]19:05~20:50
・神奈川県民センター(306教室)
・テーマ『認知心理学入門』


神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。
(※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます)
(※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください)
申し込みはメールにて承ります。


タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分)
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。
では、みなさんの御参加、お待ちしております!



06【後記】『観念の世界へ』


 未だ何を言ったら良いのか分からない。でも、そのことを伝えなければ。伝えることの難しさと、重要さを毎日のように感じます。立ち止まりながらでも良い。とにかく言葉にして、写真にして、概念から次々にはみ出してしまう現実にカタチを与えようとする。その空しさと、その可能性こそが、人間として生きることの1つの理由であるような気がします。身体を越えたがっている表現が、世界編集を夢見て僕らの殻を破ろうとしている。そんな気がしています。アフタモードは過去と現在に連なる未来こそが平和を可能にすると信じて、前進します。

(ヤハギクニヒコ)

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『AFTERMOD E-PRESS』はいかがでしたでしょうか?
今回の記事についてご意見・ご感想など、
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編集  ヤハギクニヒコ 笠原正嗣
執筆  ヤハギクニヒコ 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード/ studioAFTERMODE Co.,Ltd.
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本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、法律で定められた場合
を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。記事の使用をご希望される場合は、タイト
ル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。
取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com


AFTERMOD E-PRESS 【vol.0031】 (2011年4月15日号)


=index=
00【巻頭】『現想と錯綜』
01【特集】ヤハギクニヒコ「陸前高田取材報告」
02【特集】佐藤慧Twitterなど情報まとめ
03【告知】佐藤慧 2011年第36回「視点」写真公募展「ゴミの中の祈り」入選
04【告知】5月4日 安田菜津紀J-WAVE出演
05【告知】5月5日 矢萩・佐藤・安田、『超』就活セミナー出演
06【告知】プラスx安田菜津紀写真展
    「Ekilooto of Uganda」 ~HIVと共に生まれる~
07【後記】『未曾有の絶句の先へ』



00【巻頭】『現想と錯綜』


 人間はインプットした情報をそのままアウトプットすることができません。15日に新宿でみんつ

なの現地入りして活動してきたメンバーから話を伺ったのですが、やはりそれぞれが感じた想いも

、その表現も異なっていました。現地に入る前と後ではやはり印象が劇的に変わるようです。「写

真や映像から想像していたのとは、全然違った」。
 しかし、ほとんどの人はテレビやネットといったフィルター越しにしか現状を把握できません。

一度フィルターを通した情報に、さらに自分というフィルターを通して現状を把握しているわけで

す。また、今回ニュースで取り上げられている災害は地震被害、津波被害、原発のトラブルと放射

性物質と、どれか一つでも大きな問題になるのにそれが重なってしまっています。また肝心のとこ

ろがぼやけた情報が多いため、不安や混乱が起きるのも当然だと思います。結果、世界中で個々の

現実が氾濫し、それがめいめいに錯綜しています。どれが本当でどれが間違っているのか、それを

判断する基準を持ち合わせておらず、現実は幻実に、幻想は現想となってきているのではないかと

思います。でも、支援を必要とする人が、場所がある、これだけは確実に言えるのではないでしょ

うか。今回のE-PRESSはその部分にスポットライト当て、お送りいたします。
(笠原正嗣)



01【特集】ヤハギクニヒコ「陸前高田取材報告」


 地震の影響がほぼ明らかになってきた4月、アフタモードでは佐藤慧・安田菜津紀に続き、矢萩

邦彦・笠原正嗣も現地入りいたしました。「報道が暴力になるかも知れない」そう考えて現地入り

を控えていましたが、その状況にも、かなり地域差があることが分かり、また後方支援への効率的

ディレクションのためもあり、ニーズ調査の結果集めた物資と共に現地へ向かいました。

 4月6日に物資輸送と仕分けの手伝いを終えた僕らのチームは、陸前高田市にある長部地区と広

田地区を中心に情報収集を行いました。その時に直面した問題点の一つは、「行政が機能していな

いこと」。陸前高田市は行政機関が大打撃を受け、現在もその影響で各地域が動けずにいます




AFTERMOD E-PRESS
高田病院屋上から


 調査中何度も耳にしたのが「何を支援してもらえば良いのか自分たちにも分からない」という言

葉でした。漁協のメンバーだったという広田地区の藤田さんは、「ボランティアって言ったって、

何して欲しいなんて分からない。クレーン車でもあればやって欲しいことはあるけどね。人だけ来

られても……」と言葉を濁しました。

 現地調査を元に、ニーズの提案から始めなければならないという現状があります。それくらい被

災地はゼロの状態であると考えたほうが良いと思います。偏った物資支援は返って被災地の負担に

なることが考えられます。実際僕らが目の当たりにした地域だけでも、物資の余っていて受け入れ

に困っている状況すら散見しました。しかし、支援が必要な状況であることは一目瞭然でした。

 「分からないけれど、何かやれるって言うなら、やってくれればいい。でも私たちは(行政から

)言われた通りに動いているだけだから、何をやって欲しいかわからないし、ボランティアに来て

くれると言われても、はいともいいえとも言えない」困惑しながらも僕らに分かるように内側の現

状を話して下さった藤田さんに今後のことを問うと、力強くこう仰いました。「漁師は強い。サラ

リーマンとは違う。漁協のみんなにも聞いたが、みんな借金してでも漁業を再開する覚悟は出来て

いる。私たちにはそれしかないし、ここの魚は他には負けない。再開したらまたここに魚を食べに

来て欲しい。そうしたら歓迎するから」



AFTERMOD E-PRESS
手つかずのままの広田地区


 広田地区には未だ沢山のかつての生活の残骸が、「瓦礫」と呼ばれながら、無造作に重なってい

ます。自衛隊によって整備された道路が、一面に残響する思いの中に境界線を引くように走ります

。車を止めて道路から降りた僕は、その光景とその空気に、眩暈がしました。まるで大量の土埃と

、花粉と、何かの粉塵が大気に渦を作っているようでした。ああ、この下に、誰かが眠っている。

反射的にそう確信する匂いが鼻腔を通り、身体中が熱を帯びました。


 緊急を要する支援は自衛隊を中心に着々と急ピッチで進んでおり、また、現地の方々も協力し合

って活動が出来ている状態です。僕らのような大組織ではない活動家に求められているのは、緊急

支援ではなく、長期協働なのだと実感しました。地域との関係を作りながら、何が必要なのかを共

に考え、実践していく。「支援」という言葉を越えて、共に何かをやっていくということ。そうい

う意識こそが未来に繋がるのではないでしょうか。


(写真+文=矢萩邦彦)


02【特集】佐藤慧Twitterなど情報まとめ(3月分)


【3月19日】
◆被災地に足りていない薬品。降圧剤、坑血栓薬、抗生物質、眠剤。大津波より生還した医師であ

る僕の父より。

◆軽ワゴン車を受け取り、翌19日早朝、北へ向けて発つ。栃木の店では買いだめなど、それほど

激しくは起きていない。東京の買いだめは、ガス欠や過熱報道から来る不安ゆえだろう。人口が多

い分、奪い合い意識が高いのかもしれない。

◆岩手に入る。営業している店舗はほとんどない。が、町の機能としては全然生きている。目だっ

た震災被害はない。震災というより、ガス欠による補給の遅れが響いているのだろう。
メディアは過酷な被災地だけを映すので、まるで東北地方全てが崩壊したように見えるが、実はそ

んなことはない。内陸は健在。きちんとした情報を得ないと今後の復興支援に響く。

◆父は高田病院の4階で津波を被った。その直前直後に、彼は写真を撮っていた。町ごとさらう大

津波。その津波の中にありなお、彼は救命活動を続けていた。屋上で100名ほどと夜を明かす。

全体を把握している責任者としてヘリで救助された父は、その後被災地で医療活動に従事。数日後

、精根尽き果て倒れる。盛岡の病院に搬送され今に至る。



【3月20日】
◆復興支援の支援を。みなの想いが被災者に届くような活動を。みんつな @npo_mintsuna はそん

な想いの架け橋になりたい。「経験者にまかせろ」と人はいう。しかし誰もこんな震災は経験して

いない。人手は圧倒的に足りない。どこになにが必要か、誰に何が出来るか、その情報を持ち帰る

◆被災地への薬品類は県などが協議に一本化したシステムが出来つつあるようだ。支援物資も多方

面からぐちゃぐちゃ集まっても効率悪くなってしまう恐れがある。うまくそのようなシステムを確

認したうえで、出来ることをやっていきたい。

◆例えば、単純な労働力として、炊き出しや片付けなどは近いうちにボランティアを欲していると

のこと。明日、陸前高田市の対策本部と具体的な話し合いに入る。


◆ガソリン不足は数日中に回復する見込み。ひび割れた国道は既に補修工事が進んでいる。早い。

高速は無事。混乱を避けるため、現在は緊急車両のみの通行。物資を積んだトラックは許可を受け

ることが出来るが、受け入れ先の確保が先決。

◆盛岡近郊では滝沢にある産業文化センターAPIOにまず物資が集まり、そこから各地に仕分けされ

るシステム。仕分けに必要な労働力は十分とは言えないため、事前準備無しに一気に物資が集まる

と混乱の恐れあり。そうなると本当に必要なところに必要な物資を届けれなくなる。

◆岩手県内陸部は平穏。被災地の映像ばかり流れるので、TVを見ているとまるで東北全土が大ダメ

ージを受けたかに思えるが、大部分のインフラは生きている。内陸の物資、インフラを考慮した復

興支援も必要。

◆今は日本中が連帯しているように見えるが、いずれ熱が引き、メディアは次の獲物を求めて流れ

ていく。その時にはじめて、日本の真価が試される。アドレナリンで動いているのではない、愛で

動いているのだと、そう言える人間になりたい。この連帯を、人の優しさを信じ、前に進んでいく。

◆岩手県内陸部は平穏。被災地の映像ばかり流れるので、TVを見ているとまるで東北全土が大ダメ

ージを受けたかに思えるが、大部分のインフラは生きている。内陸の物資、インフラを考慮した復

興支援も必要。

◆父について岩手日報が取材した記事はこちら→http://bit.ly/dYBtdu


【3月21日】

◆瓦礫に囲まれた道路を進み、丘を越えて見えてきたのは何もない町。何もない。本当に何もない。

◆被災地(陸前高田市)の電気や水は復旧していない。自衛隊が何度も往復し、水を運んでいる。

◆陸前高田市対策本部は遺体捜索、身元の確認で大忙し。300人いた市役所職員のうち、半数は残

る職員の目の前で流され、亡くなった。現在働いている職員も限界が近いだろう。

◆陸前高田市の被災地ボランティアは、現状のところ完全な自活を求められるので、今のところ高

田市近郊に住んでいる方に限られている。


◆陸前高田市から7~8km上流の川辺を目にし、言葉を失った。散乱する木材、これは家々の破片か。ひしゃげた鉄の塊になった車。泥土に埋もれる畑。

この地点で既にこの被害。。。さらに進むと道路の両脇には瓦礫の壁。高台を越え、市内に入る。
そこに見慣れた町は無かった。本当に、無かったのだ。
町は津波によって跡形もなく流されてしまった。父が救出された高田病院は、壁だけを残し崩壊し

ている。その側面には海岸に立ち並んでいた松の木が突き刺さっている。
その病院の宿舎、すなわち僕の両親の住んでいた家も、丈夫な鉄筋コンクリートながら、内部まで

荒々しくかき乱されていた。地震による崩壊ではない。高田の家々は地震には耐えた。


【3月22日】
◆支援の受け入れ準備が圧倒的に足りていない。受け入れ体制を整える段階から協力していくこと

に。さっそく避難所を訪れ、現状の調査に向かう。

◆避難所の外では鶏肉が炭火で焼かれていた。カロリーメイトなどの栄養食での支援の声もあるが、

人は栄養素のみで生きているわけではない。一杯の温かい豚汁が、生きる希望を満たすこともある。

◆圧倒的に足りないのは情報。どこがどんな状態か。何が足りないのか。指揮系統はどう機能して

いるのか。ゼロからのスタート。防災本部は遺体処理に全力を注いでいるため、社協と共にリサー

チから始めることに。

◆長部地区で求められていた救援物資。下着類全般。昨日初めて、みなに1枚下着が行き渡った。

未だに氷点下近いこの地域では、幼児用の靴下なども求められている。

◆ニッチな要求としてはコンタクトの洗浄液。無くても死なないが、無いと不自由。そういった物

資には草の根的支援が生きる。


◆被災者自身ではなく、対策本部にも必要なものはある。住民に連絡事項を伝える拡声器や、情報

を共有するためのコピー機、電動アシスト自転車など。対策本部の支援をすることが、結果多くの

被災者への支援に繋がる。

◆イニシアチブを奪ってしまっては支援の意味がない。外部に出来るのは、地元の人たちがその能

力を発揮出来る環境作り。自発的に復興活動が沸き上がっている地域もある。

◆体育館にはピアノが眠っている。音楽の力が必要だ。コンサートなども、心の栄養になる。みな

気が張っている。リラックス出来る時間も必要。

◆大手マスコミは一気に引いた。残ったのは地方紙と、本質を見つめようとする個人的な想いを持

った記者だけ。BBC はかなり詳細に個人の話を聞いて回っている。取材能力は流石。


【3月23日】
◆「現実感がなくて、恐怖は一切感じなかった」、津波に呑まれながらも生き残った男性の言葉。

◆被災地に圧倒的に足りないのは情報、そしてそれをシェアするシステム。あんなに大量にいた記

者は何をしていたのだろう。復興のための取材じゃないのか?単なるワイドショーにされては堪ら

ない。


【3月24日】

◆岩手県災害対策本部から電話があり、陸前高田の状況を教えて欲しいとのことだった。誰がどこ

にいて、何をしていて、どれだけのものが足りないか、情報が錯綜している。盛岡市の北、滝沢村

の産業文化センターに集積された物資は、中々そこから先に行き届かない。正確な情報が何よりも

必要とされている。

◆陸前高田市での現地調査に基づく情報。「生きるために必要な物資」は、自衛隊が全力で届けて

いる。そこから先、「生活をするために必要な物資」は、現地の状況が中々わからず行政も対応し

きれていない。ここから1週間の情報収集が非常に大切になってくる。

◆東日本大震災に関する僕の記事、日記、写真は、転載の旨だけ共に書いていただければ、ネット

上の媒体に関しては自由に転載して頂いて構いません。お問い合わせひとつひとつに対応出来ずに

申し訳ございません。今後も現地からの情報発信に励みます。


【3月27日】

◆朝5時に起床し、朝日に染まる市街地を写真に収めました。徐々に整頓されていく瓦礫を見てい

ると、津波がそこを襲ったのは昔の出来事のように感じます。しかし、その瓦礫と泥土の下には、

未だ見つからない数多くの遺体が眠っています。
今日は各地のニーズ調査、現状の把握のために各地の避難所を訪れました。長部地区の対策本部の

ある長部小学校の校庭では、ドラム缶を使った簡易ガソリンスタンドが稼働していました。各避難

所の必要物資は徐々に整いつつありますが、個別のニーズ対応した物資はまだまだ足りないものも

あります

◆対策本部や復興支援のための自治組織が求めている物資もあります。情報共有のためのコピー機

や拡声器など、そういった大口の援助では対応しきれていない繊細なニーズを、今日、明日でより

詳しく調査し、実際に現地へ運ぶ手筈を整えていきたいと思います。

◆被災地への必要物資は自衛隊が全力で届けている。草の根NGOはニッチに照準を合わせてこそ効

果を発揮出来るかもしれない。例えば避難所にぎりぎり入らないで済む程度の被害を受けたひと、

そういった人々への支援は行き届いているのだろうか?調査の必要を感じる。

◆行政機能の回復が急務。しかしどうすればいいというのか。皆、心に傷を負ったまま必死に業務

をこなしている。

◆広田半島は津波により一時、その先端と内陸が二分された。その浸水していた地点に足を運ぶ。

360度、全くの瓦礫。この瓦礫の海に、いったいいくつの骸が横たわっているのか。

◆ずっと瓦礫の中を歩いていると感覚が麻痺してくる。その破片ひとつひとつが命の営みの痕跡で

あるということに想いを巡らすのに、僕の心が耐えられなくなってきたのかもしれない。


【3月28日】

◆今日は朝5時半から高田をあちこち調査に走る。浜の松林に1本だけ残った松は、未来に向かっ

てそびえる希望のように映る。http://twitpic.com/4ea8l9

◆母の遺体を探しに遺体安置所へ足を運ぶ。こうして身元のわからない数百の遺体の間を歩くのは

何度目だろうか。死後2週間が経ち、骸は黒く変色し始めた。苦痛に歪んだ顔。自然に還ろうとそ

の色を失う皮膚。目の前の光景に脳が麻痺していくのがわかる。


【3月29日】

◆実は僕自身、これだけの光景を実際に目にしても、全てが夢の中の出来事のように思えてしまう

瞬間がある。目の前の世界が輪郭を失い、その次の瞬間には溶けて消えてしまうのではないか。そ

んな虚ろな感覚。

◆毎日強い地震がある。「夜中地震があると目が覚めるだろ。その時、静かな暗がりの中で考えて

しまうんだ。いったいこれからどうやって生きていけばいいんだろうかと。お先真っ暗」。ある男

性の談。壊滅した漁業を再建するには少なくとも2、3年かかる。その間、彼らはどう生きて行く

のか。長い道のり。

◆今回の震災で、多くの会社が倒産を余儀なくされている。従業員を解雇せざるをえない会社も多

い。しかし、職を失うことで、社会はますます疲弊していく。震災による損害には特別措置がとら

れることがあるので、事業主の方々にはそういった情報もうまく伝えていきたい。

◆岩手県庁で物資の流れ、状況を確認。配送側の状況を見ると、全域の各集積所までは必要物資が

届いているが、そこから先になかなか届かないという状況が起こっている。行政が動脈に血を送り

込み、草の根の団体が毛細血管にそれを送り届けるという住み分けが理想的かもしれない。

◆ヤマトグループは岩手県、宮城県、福島県の各県に、各自治体と連携しつつ被災地の支援に専従

する「救援物資輸送協力隊」を編成。200台の車両、500名の人員と専門知識を結集し、県内の救援

物資輸送の円滑化と、被災地の支援に取り組んでいる


【3月31日】

◆今回届けたのは爪切りや便所サンダル、マッチ、ライター、乾電池、そしてなぜか全く届いてい

なかったシャンプーなど。

◆シャンプーが届くことで生活用水の需要が増す恐れもあるので、まずは少量で様子を見ようと、

現地の物資担当と話し合う。

◆乾電池、ライターなどは届くところには届いているが、末端まで行き渡っていない所も多い。

◆炊き出しは各所でお母さんたちが自主的に当番を組んで運営しているが、そろそろ疲れたという

声や、自分の家のことで忙しくなってきたという声も。少しずつ外部からの炊き出しは来ているが、

1日、2日の短期的なものが多い。長期的に何か出来ないか検討中。話を進めている。

◆凄い勢いで電柱や道路が復旧されていく。インフラの回復にはそう時間はかからなそうだ。イン

フラ復旧後、人間ひとりひとりによる社会の復興が始まる。

◆物資は至るところで溢れ始めた。しかし、その物資が末端まで届いているわけではない。動脈か

ら毛細血管へ。酸素が滞れば先端は壊死してしまう。

◆アメリカのラジオ局から取材を受けた。長期的に現地の声を伝えて行きたいそうだ。

◆他の被災地に比べて行政機能が多大なダメージを受けた陸前高田市では、真偽の定かでない多く

の情報が飛び交い、なかなか情報の一元化が進まない。

◆現状の把握が難しいため、赤十字も集まった義援金の配分委員会を設置出来ずにいるという。何

をしたらいいのかわからない。みな、未曾有の震災に戸惑っている。その義援金を長期的に被災地

に注げるような、長期的な視点も必要。緊急支援が終わってからが長い道のり。

◆あまりの量に、物資の受け入れをストップした集積所もある。物資を支援したいのに断られた、

と機嫌を損ねる支援者もいるが、物資はそれを有効に配分、活用出来る人間がいて初めて物資にな

る。今は対応出来なくても必要になる時が来るかもしれない。根気強く、末長く見守ってほしい。


(佐藤慧)



03【告知】佐藤慧 2011年第36回「視点」入選


佐藤慧がザンビアで撮った写真「ゴミの中の祈り」が、
2011年第36回「視点」写真公募展にて入選いたしました!
今後、全国巡回いたします。
また、6月からニューヨークで展示するものと同じ写真です。
詳細はまた後日お知らせ致しますのでお楽しみに!!


04【告知】5月4日 安田菜津紀J-WAVE出演


安田菜津紀がJ-WAVEの番組『Earth Symphony』GWスペシャル、に出演します。
16:30頃、カンボジアや写真、被災地での活動などについてなどお話しさせて頂く予定です。

ナビゲーターはSaschaさん。 ぜひお聴き下さい!

http://www.j-wave.co.jp/holiday/20110504/


05【告知】5月5日 矢萩・佐藤・安田、『超』就活セミナー出演


NPO法人「超」∞大学が主宰する『超』就活セミナーに、アフタモードからヤハギクニヒコ、佐

藤慧、安田菜津紀がパネラーとして出演することになりました。

ご興味のある方は是非お問い合わせ下さいませ!
※超就活セミナーはいろんな業界の社会人の人たちと座談会形式で話しをしながら
自分の人生の枠を広げるセミナーです


■日時
2011年5月5日
18時 受付開始
18時15分 スタート
21時30分 終了


【場所】
国立オリンピックセンター
センター棟 416号室


【アクセス】
小田急線 参宮橋駅から徒歩7分


【料金】
学生 無料(一般2000円)
※感動した分だけ投げ銭あり


【持ち物】
・筆記用具
・学生証(受付時にご提示ください)


【定員】
150人
(申し訳ありませんが満席になり次第申込を終了させて頂きます)


【お申し込み】
mugencollege0505@yahoo.co.jp

まで件名に「『超』就活セミナー申し込み」と表記し、
お名前、ご連絡先、所属(大学名OR社会人)とご記入頂き、
お申込みお願いします。
確認のメールを送らせて頂きます。


【主催】
NPO法人「超」∞大学
http://ameblo.jp/mugencollege/


06【告知】プラスx安田菜津紀写真展
    「Ekilooto of Uganda」 ~HIVと共に生まれる~


■世界エイズ孤児デーキャンペーン2011■


こどもたちのえがおに未来を

【写真展】
プラスxフォトジャーナリスト安田菜津紀写真展
「Ekilooto of Uganda」 ~HIVと共に生まれる~

●会期:5月17日(火)~5月31日(火)


【会場】BODY WILD Under wave原宿本店
※地図も入れられるでしょうか?http://www.bodywild.com/underwave/shop.html


■住所 〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前6-14-5 B1F-2F
■電話番号 03-3409-6891
■営業時間 11:30~20:00


【主催】エイズ孤児支援NGO・PLAS
【共催】グンゼ株式会社、株式会社スタディオアフターモード


●店頭イベント情報

【日時】5月28日(土)、5月29日(日)

アフリカンマーケットやお洒落でかわいいフェイス/ボディペイントで気軽に楽しくチャリティ参

加できるイベントを開催。
エイズ孤児について知れるエチロート(夢)ワークショップ、写真を干渉しながら回る店内スタン

プラリーを開催!
foursquareのチェックインなどでアフリカンマーケットや店舗で使用できるクーポンもプレゼント

します!


●世界エイズ孤児デーキャンペーン2011特設サイト
http://www.plas-aids.org/waod/2011/


07【後記】『未曾有の絶句の先へ』


 絶句。今まで僕は色々なことに絶句をしてきました。言葉に出来ない。言葉にならない。もちろ

ん、言葉というものが出来る以前からこの世界はあって、それが言葉によって少しずつ概念化され

てきました。「未曾有」という言葉をあちこちで聞きます。経験論的に言うのならば本当はなんだ

ってそうで、僕らは未曾有の連続の中で少しずつ自分の経験を拡張しながら生活しています。その

中でたまに出会う「絶句」は、普段感じることのない現実と精神との裂け目を、僕らに見せてくれ

ます。それは、人間とこの宇宙との関係を、ミクロコスモスとマクロコスモスの連関を指し示して

いるようです。何かに気づき、そしてそれを前進の糧にしていくこと。人間が生きると言うことは、

前進をするしかない。そんなラディカルなことを、この震災が教えてくれているように思います。
(ヤハギクニヒコ)


==========
『AFTERMOD E-PRESS』はいかがでしたでしょうか?
今回の記事についてご意見・ご感想など、
お気軽にドシドシと書き込みください。
アフタモードメンバー一同、心よりお待ちしております。

編集  ヤハギクニヒコ 笠原正嗣
執筆  ヤハギクニヒコ 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード/ studioAFTERMODE Co.,Ltd.
  http://www.aftermode.com/

本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、法律で定められた場合
を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。記事の使用をご希望される場合は、タイト
ル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。
取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com


AFTERMOD E-PRESS 【vol.0030】 (2011年4月06日号)


=index=
00【巻頭】『幻実とタイミング』
01【特集】安田菜津紀『帰ってくるとそこは、もう出発前と同じ日本ではなかった』
02【連載】ヤハギクニヒコ『社会学曼陀羅08:震災に思う平和学の未来』
03【告知】【告知】5月17日-31日 プラスxフォトジャーナリスト安田菜津紀写真展
04【告知】安田菜津紀 産経新聞掲載
05【後記】『生きることの意味を』



00【巻頭】『幻実とタイミング』


 佐藤慧・安田菜津紀が任意NPOみんつなのメンバーと共に現地に入り、日夜活動しています。ご

存知の方も多いかもしれませんが、はじめ佐藤慧一人が現地に入り、情報収集をしてくれました。

また、現地の被災者の方々、行政の人々と連携を取り、みんつなが活動できる基盤を作ってくれま

した。そして現在、ニーズを探りだし、「こういうモノがあると良くないですか?」とボランティ

ア側が提案し、現地の人から返事をもらう、そういった復興への援助の方法が見えてきました。で

も、もしかすると来月にはこのやり方ではダメになっているかもしれません。ボランティア側で考

え続けることが必要です。今回の安田菜津紀の特集記事は、普段大変な環境で生活しているからこ

そ、痛みを持っているからこそ生まれる優しさが感じられます。ヤハギクニヒコは普段、われわれ

が勉強をすることの本質を問います。気持ちと知識が本当に必要な行動につながります。自分に何

ができるのか、少し考えながら感じていただければと思い、今回のE-PRESSを送ります。
(笠原正嗣)



01【特集】安田菜津紀

「帰ってくるとそこは、もう出発前と同じ日本ではなかった」


 3月11日。私はスタディーツアーに参加してくれた18人と一緒に、マニラから北に走ったサ

ンバレス州にいました。

 それは日本からの一本の電話から始まりました。「東北で大きな地震があったようです。まだ詳

細はわからないのですが、お知らせしておこうと思いまして」。そのときは特に深刻な様子ではな

かったので、私たちは心配しつつも、孤児院の子どもたちと庭で追いかけっこを続けていました。

その後、ニュースはNGOの方を通して次々と入ってきました。そしてとても大切な人が2人、被災

したことも。


 3月12日、地震が起きた翌日。大地震、津波、そして原発のニュースはたちまちフィリピンに

広がり、新聞の一面は皆被災地の写真でした。この日は私の父の誕生日であり、そして兄の命日で

もありました。自分の大切な人を、しっかりと守りたい、支えたい、そう毎年心に誓う日です。フ

ィリピンにいる歯がゆさを覚えつつ、私たちは何ができるかを探しました。ある参加者さんはみん

なの様子を記録し続けて下さり、またある方は可能な限りの情報収集を、そしてある方はフィリピ

ンでかけられた応援の言葉を日本に発し続けてくれました。


 動揺している私たちに、現地でお世話になったNGOの方が声をかけてくれました。「フィリピン

で得たものは、必ず日本でも役に立ちます。ここで生活した経験、そしてここで感じた人の温かさ

を、日本に持ち帰って下さい」。フィリピンにいながら私たちができることは、何より目の前にい

る人たちと真摯に向き合い、たくさんのことを学ばせて頂くことでした。


 8日間、孤児院の子どもたちの温かさに触れ、おばあさんたちの戦争体験に胸を締め付けられ、

パヤタスのゴミ集積場の現状を目の当たりにし、そしてユニカセレストランで貧困解決の糸口を見

せてもらいました。現地の方々、そして参加者さんたちの声に、私自身がたくさんのことを気づか

せていただきました。


 フィリピンにいる間もたくさんの方から励ましの声を頂きました。その場で目を閉じて祈りを捧

げてくれた運転手さん、メッセージカードをくれた青年たち。


 フィリピン国内だけではありません。遠く離れたウガンダから、一番お世話になったレーガン一

家が電話をくれました。エイズに苦しんできた一家。きっと近所の人からお金を借りてかけてきて

くれたのでしょう。イラクからは、治安の悪い地域の一つであるモスルから、ムハンマドが電話を

くれました。自分自身も、とても大変な状況にいながら。


 世界中からの祈りが届きますように。


 これから岩手に入った佐藤を中心に、私たちも最大限にできることをやっていきます。

 最後に、8日間支えてくれたフィリピンで出会った皆さま、スタディーツアーの参加者の皆様、

心からの感謝を。ありがとうござました。


AFTERMOD E-PRESS
『希望の松』(陸前高田市)


(写真+文=安田菜津紀)


02【連載】ヤハギクニヒコ『社会学曼陀羅08:震災に思う平和学の未来』


 2011年3月11日。その日スタディオアフタモードのメンバーは世界中に散っていました。佐藤慧

はアフリカ、安田菜津紀はフィリピン、安藤理智はタイ、矢萩と笠原は日本にいました。しかし、

震災後数時間で動き始めた僕らは、翌12日の午前中には仲間を集めてNPOみんつなを結成してい

ました。こういう事態に直面した時に、スピードは大事です。しかし、それには基盤が必要です。

ただ早いだけでは実現も維持も難しい。居ても立っても居られない気持ちはよく分かりますが、「

とりあえず叫ぶ」だけでは時に混乱を招きます。


 僕はスタディオアフタモードの活動を通して「世界平和」というテーマに携わっているわけです

が、その中で、どうしても気になるのは活動家が、文字通り活動に偏りすぎていると言うことです。

「考えてないで動け!」という檄もよく耳にしますが、活動と思想は両輪です。どちらに偏って

も最適とは言えません。「考えながら動け!」です。もう少し分解するのなら、知識・思考・行動

の三つがなければ大きな成果に繋がりにくいと考えます。だいたい、大事を成し遂げた人というの

は、その行動ばかりが取り上げられますが、それは何を勉強して、何を考えていたかがよく分から

ないからに過ぎません。いちいち自分の思考を説明したりする偉人は少ないですからね。にもかか

わらず、その部分をすっ飛ばして紹介するから、後続が勘違いしてしまうわけです。行動を活かす

ことが活動であり、そのためには知識と思考が不可欠です。


 何を言いたいかというと、世界平和を目指す活動をするのならば、その他の活動と同様、それな

りの勉強が必要だということです。今回の東日本大震災でも、多くの学生達が自分たちに出来るこ

とをしたいと立ち上がりました。しかし、その情熱がから回っているのも散見しました。いざとい

う時のための基礎学力が足りないように思います。もちろん、災害のために勉強をするわけではな

いですが、究極を言えば、勉強するのは「生きるため」ではないか、と僕は考えます。であるなら

ば、あらゆる事態を想定しておき、コトが起こった時に迅速に動けるように周到に用意をしておく。

そういう心構えが大切です。もちろん、いくら準備したって想定外は含まれますし、十分と言う

ことはないですが、後は走りながら考えれば良い。吉田松陰もまた、いずれ来る事態に備えていた

のだろうと思います。


 とはいえ、大事なのはまず現在の情報収集です。状況を把握してから方法構築と実行を繰り返す

わけです。今回のケースですと、情報収集をせずに、無自覚に物資を買って送りつけたり、現地の

文化を鑑みずに、阪神淡路大震災の時と同じ対応をしようとする個人や団体が多いことが問題点と

して上げられると思います。かくいう僕も、現地に行って気づいたことが沢山あります。現地と言

っても沢山の人が暮らす広い土地です。その多様性は計り知れません。多くの価値観を知り、その

多くに対応出来るような方法を模索するだけでも大変ですが、更に時間と共に変化していきます。

これは、時代と共に形態を変えていく戦争や紛争を分析し、その因果を突き止め、次世代に生かす

という平和学の目的と同じですね。


 もともと「平和学」という分野が生まれた背景には、戦争・紛争に対する科学者の焦燥感があり

ました。戦争・紛争の回避、防止のための学術的研究の必要性が叫ばれたんですね。第二次世界大

戦では、原爆をはじめ沢山の科学兵器が使用されました。その結果、科学のダークサイドが際立っ

てしまったわけです。で、科学者としては兵器を作った科学に対抗する平和の科学を打ち立てよう、

と考えたわけですね。真っ先に声を上げたのは、バートランド・ラッセルとアインシュタインで

した。


 平和学の父と呼ばれる経済学者ケネス・ボールディングは、『宇宙船地球号』という発想を提示

し、イギリスの科学者ジェームズ・ラブロックは、『ガイア理論』を発表しました。地球は一つの

心を持つ生命体であり、人間はそのかけがえのない関係性のネットワークに属する一部として生か

されているという考え方です。この考え方では、「人間が地球に対して何が出来るか」という発想

ではなく、「人間は地球と調和するために何をするべきか」という全体と部分を同時に見つつ『共

生』していく方法を模索していかなければなりません。今回の震災からもまた、そういう教訓を得

なければいけないのだろうと思います。

(ヤハギクニヒコ)



03【告知】5月17日-31日 プラスxフォトジャーナリスト安田菜津紀写真展


「Ekilooto of Uganda」 ~HIVと共に生まれる~

■世界エイズ孤児デーキャンペーン2011■
こどもたちのえがおに未来を

【写真展】
プラスxフォトジャーナリスト安田菜津紀写真展
「Ekilooto of Uganda」 ~HIVと共に生まれる~


●会期:5月17日(火)~5月31日(火)

【会場】BODY WILD Under wave原宿本店
※地図も入れられるでしょうか?http://www.bodywild.com/underwave/shop.html


■住所 〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前6-14-5 B1F-2F
■電話番号 03-3409-6891
■営業時間 11:30~20:00

【主催】エイズ孤児支援NGO・PLAS
【共催】グンゼ株式会社、株式会社スタディオアフターモード


●店頭イベント情報

【日時】5月28日(土)、5月29日(日)

アフリカンマーケットやお洒落でかわいいフェイス/ボディペイントで気軽に楽しくチャリティ参

加できるイベントを開催。
エイズ孤児について知れるエチロート(夢)ワークショップ、写真を干渉しながら回る店内スタン

プラリーを開催!
foursquareのチェックインなどでアフリカンマーケットや店舗で使用できるクーポンもプレゼント

します!


●世界エイズ孤児デーキャンペーン2011特設サイト
http://www.plas-aids.org/waod/2011/



04【告知】安田菜津紀 産経新聞掲載


 安田菜津紀の記事と写真「希望の松」を産経新聞にて掲載していただきました。
ぜひご一読していただければと思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110406-00000086-san-soci



05【後記】『生きることの意味を』


 今、必要なことは何だろう。常に考えてきたつもりでした。しかし、非常事態に置かれて、やっ

と少しだけ、人間として何が必要なのかが分かってきた気がします。薄ら寒さを感じていた都会の

中で、僕はいつもよりも一層、凍えそうなくらい冷たい心と、それに抗う熱く燃える心に出会いま

した。それは絶望の中に力強く輝く希望でした。「人間は強い」という人と「人間は弱い」という

人がいます。強さと弱さという儚さを、陸前高田の瓦礫に見ました。全てが夢のようで、夢であっ

て欲しくて、しかし容赦なく脳に突き刺さる現実。こんな今だからこそ僕らは、生きることの本当

の意味に近づけるのかも知れない。そんなことを感じつつ、みなさんと共に未来へ前進して行けれ

ば、と思います。


(ヤハギクニヒコ)