AFTERMOD E-PRESS 【vol.0039】 (2011年08月29日号)


=index=
00【巻頭】『誰のためのメッセージなのか?』
01【特集】ライフリンク代表、清水康之氏インタビュー
『寄り添うために -報道を通して何ができるのか-』
02【特集】安田菜津紀『1本松に寄せる想い』
03【告知】矢萩邦彦 gapyear.jpにてコラム『タブラ・ラサの時間』連載開始!
04【告知】安田菜津紀 「クリンスイ」ラジオCM出演!! 
05【告知】安田菜津紀 11月23-28日 フィリピンスタディーツアー
06【告知】矢萩邦彦 9月4日『鏡明塾』「陽明学入門」
07【後記】『多様に発信し、多様に寄り添う』


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00【巻頭】『誰のためのメッセージなのか?』



 震災の影響は、何もかもに及んでいます。それは当たり前のことなのですが、

浸透しているからこそ麻痺してしまい、乱暴に扱われてしまう情報があります。

今回、佐藤と安田のインタビューに答えてくださったライフリンクの清水さんは、

メディアの報道について負の可能性を指摘します。


それは、いったい「誰のためのメッセージなのか?」


非常時だから仕方がないのではない。

非常時だからこそ、繊細にならなければならないことがあります。

無自覚思考停止状態を脱し、「情報」の前で立ち止まって考えることが必要なのだと思います。

知ることがみなさんの行動に結びつきますように、今週号をお送りいたします。

(矢萩邦彦)


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01【特集】ライフリンク代表、清水康之氏インタビュー
『寄り添うために -報道を通して何ができるのか-』(前編)


 8月5日、内閣府は東日本大震災が直接の原因となった自殺者が6月だけで16人に上ると発表した。 調査は、(1)避難所もしくは仮設住宅、遺体安置所で遺体が見つかった、(2)避難所もしくは仮設住宅に住んでいた、(3)被災地から避難してきた、(4)自宅や職場が地震や津波で大きな被害を受けた、(5)震災の影響とする証言や遺書などがある-の5項目について警察庁の情報を基に、1項目でも該当すれば震災関連自殺と判断したものだ。


(参考URL:内閣府経済社会総合研究所 自殺分析班)
http://www.esri.go.jp/jp/archive/jisatsu/jisatsu_h2306.html


 16人のうち、男性は11人、女性5人。年代は60歳代が6人と最も多かった。

家庭問題、健康問題、生活問題などが主な原因として挙げられている。

県別に見てみると、自殺者全体に占める震災関連自殺の割合は、

宮城県が最も多く45人中8人、岩手県が36人中3人、福島県が50人中2人。
 今高まっている、被災地での自殺のリスク。

自殺を防ぐために、そして残された遺族のために、メディアができることは何か。

自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンク代表、清水康之さんにお話を伺った。

※インタビューは内閣府の発表前の8月2日に行ったものです。


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―――まず震災が自殺問題に及ぼす影響について、現状を踏まえてお話いただけますか。


現在震災の影響による自殺で亡くなった方の統計をまとめている最中なのですが、

6月分の統計結果が来週出ます。7月分に関しては9月までには発表出来ると思います。

どこでどういう立場のどういう属性の方が自殺に追い詰められているのか、できるだけ早く実態を把握して、ハイリスクグループを特定し、そうした方々への支援を強化していきたいと思っています。

すでに、酪農家や高齢者の方々による自殺がメディアで報道されていますが、

亡くなっているのは氷山の一角で、例外的に例外的な方が亡くなっているのではなく、大勢の同じような属性、同じような立場の方々が似たようなリスクを抱えて困っていらっしゃるのだと思うのです。


 特に衝撃的だったのは、高齢者の方が「お墓に避難します」との言葉を遺して自殺されたことです。

福島では原発の問題もあり、未だに災害が続いています。つまり、被害状況が確定していない。

被害がどこまで広がるのか、いつ自宅に戻れるのかも分からない。ずっと戻れない可能性もある。被害状況が確定していないため、行政や自治体の対応も決まりません。例えば保障に関しても、全体像が見えない限り、何の支援を得られて、逆に支援を得られないのかが分からない。避難者の中には、

いつでももどれるようにと福島県内にとどまっている方々も多くいらっしゃいますが、行政の対応が決まらない限り、将来を見通した行動の選択ができません。


 例えば、行政の対応が決まっていて、「県内に留まっていればここまで保障します」、

「県外に出るのであればここまで保障します」、というふうに選択肢が明示されたら、

それに基づいて自分たちの選択ができます。


 その選択肢が見えない状態が続いているため、止め処なくストレスが高まっていきます。

あえて例えるならば、受験の合格発表前夜がずっと続いているような状態です。

しかも、いつ発表になるのかも分からない。発表される時期すら分からない。

どぎつい表現かも知れませんが、言わば「生殺し」のような状態が続いているのです。

そのように地域社会全体でストレスが高まっていくと、

最もその影響を受けやすいのが社会的に立場の弱い人たちです

特に子ども、高齢者、障がい者の方々。

「お墓に避難します」と遺して亡くならざるを得なかったというのは、

恐らく、地域全体のストレスの高まりの中で、高齢者が「自分が迷惑をかけている」、

「周囲の負担になっている」と思わざるを得ない環境に追い込まれたからではないか。

そんなことを感じます。


 加えて、農林、漁業、畜産など一次産業従事者のリスクが高まっていることも、

個々の事例から実感するところです。


 一方で中長期的な観点からすると、

「喪失体験」をしている人たちのリスクが高まっていくことが懸念されます。

これは新潟中越地震と自殺の関係をまとめた報告書をですが、重要なポイントとして挙げられているのが、喪失体験をした人たちがじわじわと自殺に追い込まれていったということです。

喪失体験と言うのは、家族を亡くしたり、仕事を失ったり、あるいは住み慣れたふるさとを離れるといったことも含みます。そういった様々な喪失体験が人々を自殺に追い込んでいった現実が、この報告書の中につづられているのです。


 東日本大震災では、喪失体験を複合的に抱えてしまった方が大勢います。家族も、自宅も、仕事も、故郷も、地域の人間関係も、すべて一度に失ってしまった方がたくさんいるわけですから、そういった方々への包括的な支援が急務であることを、私たちは過去の経験から学びとらねばなりません。


 このように、データを分析するまでもなく想定できる自殺のリスクもあるわけなので、

そうしたものに対しては早急に対策を進めていくこと。そして、統計を分析する中で分かってきたことを、そうした対策に付加していくこと。つまり、対策を走らせながら軌道修正を図っていくという「アクションリサーチ」の姿勢が重要なのだと思います。



―――そういった現状を取り巻く報道に関しては、どのようにお考えでしょうか。


 これは被災地で活動をしている民間団体の方から伺った話ですが、

被災地で自殺が起きると、その地域社会全体にものすごく強烈な絶望感を抱かせるのだそうです。

平時に起きる自殺以上に、被災地で起きる自殺は、周囲に与える影響が大きいということです。

せっかく助かった命が自殺という形で失われていく、そうしたことが「みんなで生きていこう」という連帯感の中で起きると、連帯感が強い状況の中だけに周囲に与える影響も大きくなるのだと思います。

その点を考慮すると、被災地における自殺報道は平時にも増して、より慎重になるべきでしょう。


 ただ、現在の震災関連自殺の報道の有り方については、問題を感じることが多々あります。

例えば、亡くなった現場からリポートしたり、亡くなり方を詳しく説明したりといった報道が多く見受けられます。平時の中で起きる自殺であっても、情動に訴える報道は避けるべきだと、WHOが自殺報道ガイドラインでの示しているわけですが、それが、被災地の自殺においても踏みにじられている。

それゆえ、震災関連の自殺に関する情報発信をする際は、非常に神経質にならざるを得ません。政府で現在把握している統計も、どこまで発表すべきかを慎重に検討しています。



―――それはその統計の発表によって、自殺が発生していることにショックを受ける方がいるからでしょうか?


 もちろんそれも理由のひとつですが、情報を詳しく発表することによって生じる危険性もあるからです。例えば周囲の人たちが自殺と知らずにいた事例があったとしても、それを地域情報を詳しくを公表してしまったら、「あの人が亡くなったのは自殺だったのではないか?」と、不要な形で心理的な不安感をあおることになりかねません。現在のところ、県単位の公表であれば問題ないのではないかという方向で話を進めています。職業、年齢の公表は検討中です。



―――福島での酪農家の方の自殺が報道された際、「原発さえなければ」という遺書が写真付きで公表されたりしていました。その後、ものすごい数の反響がネット上で流れていたのを覚えています。あのひとつの報道が与えた影響というものが今後出てくるのではないでしょうか。


(※福島での酪農家の方の自殺――今年6月、福島県相馬市の50歳代の酪農家男性が、原発に対する不満を書いたメ
モを残して自殺した。この地区では、福島第一原発事故の後、原乳の出荷が約1か月間制限されていた。)


 取材に行った方々は、その地域の方々にも多々インタビューを行っていると思います。同じ地域の人たちへの影響もありますし、本人と直接関係ないような方でも、過度な報道が心理的に与える影響は小さくないと思います。


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―――逆に明るいニュースが、むしろ被災地の人々の心を追い詰めてしまっていることもあるのではないでしょうか。


 「自分は頑張れていない」「自分は置いていかれている」と。

そういった報道を考えるにあたり、それが「誰のためのメッセージなのか?」よくよく見極める必要があると思います。「頑張れ日本」、「負けるな東北」というメッセージにあるような「前向きな声援」はもちろん重要です。けれどそれが誰のために発せられているのか、慎重になるべきだということです。というのも今回、被災地以外の場所で、メディアを通して疑似的に被災をした人が大勢いて、そうした人たちの心理的な不安が高まっており、それらを解消するために「前向きな声援」が被災地に向けられていると感じることがあるからです。「自分たちの不安を解消するために、被災者の方々が頑張っている姿を観たい」、「被災者が頑張ってくれれば、それを観て自分たちも元気になれる」と、無意識のうちに、実際の被災者を置き去りにした、擬似被災した人たち自身のための復興、頑張れという言葉になってしまっていないかということです。


 それは、震災で家族を亡くした遺族の方たちの言葉から、強く実感させられます。私たちは5月1日から、震災遺族向けの電話相談事業を行っているのですが、その中で「復興と言うが、それどころではない」「がんばれと言われても、この状況でどうがんばればいいのか」といった言葉によく接するのです。ご家族を亡くされた方の中には、「津波で逃げるときに子どもの手を放してしまった。あのとき手を放さなければ」と自責の念にかられている方や、「私以外の家族は全員津波にのまれて亡くなった。なぜ自分だけ助かってしまったのか」と、茫然自失状態の方もいます。「頑張れ」というメッセージ、前へ進んで行こうという方向性は確かに大切なものです。しかし、「こうあってほしい」という願望を、「頑張れ」というひとつの言葉でしか発せられないというのでは、社会が貧弱だと言わざるを得ません。なかには頑張りたくても頑張れない人もいれば、放っておいて欲しいという人もいるわけで、一辺倒なメッセージを同調圧力として、「がんばらなきゃだめだ」と押し付けることは避けるべきです。あるいはそうしたことになっていないか、発するメッセージの検証を繰り返し繰り返し行うべきだと思います。


 少なくとも私たちは、復興ムードが強まる社会の中で、決して置き去りにされる人がいないように、遺族の方々に少しでも寄り添っていければと思っています。一人ひとりが、社会の同調圧力に翻弄されることなく、それぞれのペースで回復していくことができるように、少しでも支えになれればと思っています。その意味で、電話や手紙による震災遺族向けの相談事業を、今後とも続けていく決意です。


(次号に続く)

(写真+聞き手:佐藤慧、安田菜津紀)


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※≪ライフリンク様相談窓口≫のご案内
[ホームページ ]
http://www.lifelink.or.jp/hp/shien311/index.html
[フリーダイヤル] 0120-556-338
(受付時間 毎週日曜10~20時/毎月11日 10~24時) 
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02【特集】安田菜津紀『1本松に寄せる想い』


 高田松原。かつて7万本た日本百景の一つ。今はほぼ更地になってしまった中、たった1本、波に耐え抜いた松がありました。地元では「ど根性松」と呼ばれ、陸前高田市の復興のシンボルになりつつあります。


 けれども震災後、1メートル以上地盤沈下があり、松の目の前まで海が迫ってきています。海水を吸った松の葉は今、赤茶色に変わり、根腐りも進んでいます。

 震災前からこの松原の保全に尽くしてきた「高田松原を守る会」の代表、小山芳弘(おやまよしひろ)さんは、松を見上げながらつぶやきます。「希望が持てないことが何より辛い。たくさんの方に、ここに松を植えに来てほしいのです」。

 松の上には今、鳥が巣を作って暮らしています。「枯れゆく木には、鳥は巣を作らないんです。」と小山さんは言います。市にはまだ、松を守るための余力はなく、「高田松原を守る会」が独自の活動を続けています。松は耐えることができるのでしょうか。


この街に暮らしていた方々の、心の支えができるまで。

(Photo)

(写真+文=安田菜津紀)


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03【告知】矢萩邦彦 gapyear.jpにてコラム『タブラ・ラサの時間』連載開始!


gapear.jp」のサイトにて、コラムを連載させて戴くことになりました。
『タブラ・ラサの時間~人生のキャンバスを作るために~』

第1回は、『日本を選択いたし申候』 

思考停止状態で漠然と海外へ行く選択をしていないか、という問題定義です。


とりあえず行ってみるのも大事ですが、自覚があればまた違う時間を過ごせると思います。

大事なのは悩みながら過ごすことではないでしようか。
と言うわけで、お読み戴ければ幸いです。


第1回『日本を選択いたし申候』
http://gapyear.jp/?p=124
第2回『越境する勇気』
http://gapyear.jp/?p=495


━━━━━
04【告知】安田菜津紀 「クリンスイ」ラジオCM出演!! 


≪関東≫J-WAVE 毎週金曜6:40- 50am 「JK RADIO」 (ジョン・カビラさんナビゲート)
≪関西≫FM802 毎週日曜10:35-10:42am 「SUPERFINE SUNDAY」)
安田菜津紀が「クリンスイ」のCM出演をさせていただきます!!
お時間のある方はぜひお聞きくださいませ!!
http://bit.ly/qGnV18

クリンスイHP→ http://bit.ly/qGnV18


━━━━━
05【告知】安田菜津紀 11月23-28日 フィリピンスタディーツアー


11月23~28日の6日間、
「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くフィリピン スタディツアー」
第2弾の告知を開始致しました! 
フィリピンに生きる人々の今に、一緒に触れてみませんか?
詳細はこちらです!
http://amba.to/oFT3B4


━━━━━
06【告知】矢萩邦彦 9月4日『鏡明塾』「陽明学入門」


さて今回は『陽明学入門』です。

日本の幕末、明治を駆け抜けた『陽明学』。
その学問と活動を両輪とする思想は現代においてもとりわけ効果的で
実践的な方法論です。
アフタモードのメンバーも重要視している陽明学の根本を解説します。


[世界科一般コース]13:05~14:50
・神奈川県民センター(307教室)
・テーマ『陽明学』

[世界科中高コース]17:05~18:50
・神奈川県民センター(302教室)
・テーマ 『日本史研究:平安時代』


★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)

・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
 「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。
(※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます)
(※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください)
申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。
では、みなさんの御参加、お待ちしております!


━━━━━
07【後記】『多様に発信し、多様に寄り添う』


 「頑張れ」という言葉は、本当に難しいですね。僕の関わっている受験生の中にも、「頑張れ」をプレッシャーに感じてしまう生徒もいれば、逆に言って貰わないと不安になるという生徒もいます。つまり、言葉自体が問題なのではなく、いかに相手のことを理解しようとして、かつ、気持ちをくみ取った的確な言葉をかけることができるか、ということが大事なのだと思いますが、言うはやすしですね。特にマスメディアのように不特定多数に発信する場合は、誰がどんな気持ちでその情報に接しているか分からないのですから、できる限りの誠意ある想定をしなければいけませんね。

無自覚に少数意見を切り捨てることのない、常に多様な価値観を視野に持ち続けようとすることが誠意なのだと思います。ではまた次号でお目にかかります。
(矢萩邦彦)


━━━━━
編集  矢萩邦彦 笠原正嗣(ML) 佐藤慧(EXTRA)
執筆  矢萩邦彦 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード
     〒220-0072 神奈川県横浜市西区浅間町1-4-4 小泉ビル401
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法律で定められた場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。

記事の使用をご希望される場合は、

タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。

取材もこちらで承ります。
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AFTERMOD E-PRESS 【vol.0038】(2011年08月22日号)

【休刊のお詫び】
 すこし時間が空いてしまいました。メンバー全員の「NPOみんつな」での活動に加え、

通常の業務に戻るために奔走しておりましたため、執筆・編集に手が回らずご心配を

お掛けいたしました。『AFTERMOD E-PRESS』を楽しみにしていてくださったみなさん

には大変申し訳ありませんでした。9月の創刊1周年に向けて、徐々にペースを戻し

ていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
(矢萩邦彦)


=index=
00【巻頭】『記憶を記録すること』
01【報告】安田菜津紀『新しい瞬間を写真に込めて』
02【回廊】安藤理智『隣国の少女』
03【告知】矢萩邦彦 gapyear.jpにてコラム『タブラ・ラサの時間』連載開始!
04【告知】安田菜津紀 「クリンスイ」ラジオCM出演!! 
05【告知】安田菜津紀 11月23-28日 フィリピンスタディーツアー
06【告知】矢萩邦彦 9月4日『鏡明塾』「陽明学入門」
07【後記】『反省しながら走る』

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00【巻頭】『記憶を記録すること』
 入学式の写真を撮り終えた安田が、写真の役割について考えが変わった、と漏らしていました。
今までコミュニケーションのためのツールとして、そして伝えるためのツールとして写真を使って
きたが、記録を残すことにも意味があると言うことを思い知った、と。

そもそも写真というのは残像を定着させようと抗うことです。私たちの記憶というのは、

忘れたいことほど忘れられず、覚えておきたいことほど薄れてしまうような、

そんな不自由な現象です。

しかし、写真の力を借りることで、その機能が拡張します。

マクルーハンは道具は身体の延長であると言いましたが、写真はまさに脳の延長、

そして存在の延長ですらあるのかも知れません。

今回は写真と小さな文章を二つ掲載しました。

写真の意味について思いを巡らせつつ、読んで戴ければ幸いです。
(矢萩邦彦)


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01【報告】安田菜津紀『新しい瞬間を写真に込めて』



先日NPO「みんつな」のプロジェクトとして陸前高田市内の小中6校で行わせて頂いた入学式撮影、
皆様のご支援を受け、お陰様で集合写真を無事お届けすることができました。

今はスナップ写真を校内に展示して頂いています。もうすぐ参観日、生徒さん方や保護者の方々に
楽しく見ていただきながら、写真を選んで頂ければと思っています。

集合写真をお届けしたとき、ある学校の校長先生の目からぼろぼろと涙が零れ落ちました。
全壊の校舎、廃校になった学校を借りての授業再開、涙の一粒一粒には、たくさんの想いが
詰まっていたのでしょう。

「何もかも諦めていたんです。体育館でできる入学式も、ましてや写真なんて考えてもいません
でした。学校という場は、色んな方のご協力があって初めて成り立つのですね」。

生徒さんたちの写真を見る先生方のお顔はとても優しく、
そして子どもたちを守る大人たちの強さがあらわれていたように感じます。
どんな場所でも、子どもたちは希望の種なのだと思います。
そんな彼ら彼女たちが素敵な花になっていけるよう、
私もできることをやっていきたいと思います。


AFTERMOD E-PRESS

全壊した気仙小学校の校舎の前。自宅跡に菅野啓佑さんが大漁旗を掲げる。
(文章+写真:安田菜津紀)


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02【回廊】安藤理智『隣国の少女』


AFTERMOD E-PRESS

タイとカンボジア。国境問題で揺れている。
今では信じられないが、20世紀の終わりまでは陸路で国境を越えることができなかった。
僕にとってはとても遠い隣国、カンボジア。

タイに住み始めて10年近くが過ぎようとする頃、ようやくアンコールワットを訪れた。
裸足で土産物を売って歩く少女達。
数年前まではタイでも見られた光景だったはずだ。
(写真+文=安藤理智)


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03【告知】矢萩邦彦 gapyear.jpにてコラム『タブラ・ラサの時間』連載開始!


gapear.jp」のサイトにて、コラムを連載させて戴くことになりました。
『タブラ・ラサの時間~人生のキャンバスを作るために~』


第1回は、『日本を選択いたし申候』 


思考停止状態で漠然と海外へ行く選択をしていないか、という問題定義です。
とりあえず行ってみるのも大事ですが、自覚があればまた違う時間を過ごせると思います。


大事なのは悩みながら過ごすことではないでしようか。
と言うわけで、お読み戴ければ幸いです。

第1回『日本を選択いたし申候』
http://gapyear.jp/?p=124
第2回『越境する勇気』
http://gapyear.jp/?p=495


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04【告知】安田菜津紀 「クリンスイ」ラジオCM出演!! 



≪関東≫J-WAVE 毎週金曜6:40- 50am 「JK RADIO」 (ジョン・カビラさんナビゲート)
≪関西≫FM802 毎週日曜10:35-10:42am 「SUPERFINE SUNDAY」)
安田菜津紀が「クリンスイ」のCM出演をさせていただきます!!
お時間のある方はぜひお聞きくださいませ!!
http://bit.ly/qGnV18

クリンスイHP→ http://bit.ly/qGnV18


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05【告知】安田菜津紀 11月23-28日 フィリピンスタディーツアー


11月23~28日の6日間、
「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くフィリピン スタディツアー」
第2弾の告知を開始致しました! 
フィリピンに生きる人々の今に、一緒に触れてみませんか?
詳細はこちらです!
http://amba.to/oFT3B4


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06【告知】矢萩邦彦 9月4日『鏡明塾』「陽明学入門」



さて今回は『陽明学入門』です。

日本の幕末、明治を駆け抜けた『陽明学』。
その学問と活動を両輪とする思想は現代においてもとりわけ効果的で
実践的な方法論です。
アフタモードのメンバーも重要視している陽明学の根本を解説します。


[世界科一般コース]13:05~14:50
・神奈川県民センター(307教室)
・テーマ『陽明学』

[世界科中高コース]17:05~18:50
・神奈川県民センター(302教室)
・テーマ 『日本史研究:平安時代』


★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)

・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
 「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。
(※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます)
(※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください)
申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。
では、みなさんの御参加、お待ちしております!


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07【後記】『反省しながら走る』


 この夏は、節電のため暑さを肌で感じる機会に恵まれたな、と感じます。
暑い中でじっと我慢して、今までのことと今後のことに思いを巡らせていました。
その中で何度も、忘れていた感覚に出逢ったり、また大事なことに気づく機会になりました。
走りながらも省みる姿勢、内省する時間というのは本当に大事で、
あまり快適な環境では思考が拡散してしまうこともあるのだろうと実感しました。
どんな環境も、長く続けば慣れてしまいます。そのことを意識しつつ、
自身への負荷をコントロールしつつ、地に足を付けた活動をして行きたいと思います。
では、また次号でお目にかかります。
(矢萩邦彦)


空白の時間を作り、それを何処で過ごすのか。

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0037】 (2011年5月27日号


=index=
00【巻頭】『情報とイメージと信用と』
01【特集】笠原正嗣『日本の症状1』
02【対談】佐藤慧×矢萩邦彦アフリカ取材実況対談『コンゴ民主共和国の今(前編)』
03【告知】矢萩邦彦 Motheru『KAKERUインタビュー』にて紹介して頂きました
04【告知】安田菜津紀 6月13日 「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウム
05【告知】安田菜津紀 6月28日-7月10日「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる
06【後記】『普通とは何か』

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00【巻頭】『言語の力と限界と』


 しばらくアメリカへ渡っていました。渡米の目的はボストンMITにてノーム・チョ

ムスキー博士との対談です。僕と佐藤慧の間には鍵となる人物が沢山いますが、その中

でもとりわけ影響を受けている人物の一人です。対談の模様は確りとまとめてから掲載

いたしますが、とにかく一番の収穫は、非言語コミュニケーションの重要性を言語学最

先端の博士から直接感じさせてもらったことです。結局言葉に限界があることは自明で

、それでも言葉があった方が良いということを感じるためにも、言語と非言語を同時に

見ていく視点が必要だと実感しました。アフリカと日本を繋いで対話が出来るのはイン

ターネットのお陰である以前に、言語のお陰でもあるわけで、そういう当たり前のこと

に僕らは無自覚になりすぎている気がします。原発についての情報にしてもその殆どは

言語によるもので、それを言語で解釈し考えている。メディアリテラシーの中心にはや

はり言語があるんですね。そんな視点で今回の記事を読んで戴ければ幸いに思います。
(ヤハギクニヒコ)



01【対談】佐藤慧×矢萩邦彦アフリカ取材実況対談

『コンゴ民主共和国の今(後編)』


震災前日の2011年03月10日、矢萩・佐藤による日本とザンビアを繋ぐ対談後編です。こ

の後佐藤はすぐに帰国することになったのですが、未だコンゴへの思いは変わっていま

せん。日本での活動が落ち着いたら、またアフリカへ戻ります。


前編はこちら http://www.aftermode.com/press/0036.html


・・・


矢萩:ところで、慧君がそんな危険なコンゴに行こうと思った切っ掛けと目的はなんだ

ったのですか?


佐藤:もともと僕はザンビアに縁があったのですが、ザンビアで色々な活動をしていく

うちに、隣国のコンゴで悲惨な経験を持った人たちとの出逢いがあったんですね。コン

ゴが大変なことになっているという知識はありましたが、それが身近な人の出来事にな

った途端、他人事ではなくなりました。欧米のメディアを通った情報ではなく、自分自

身の目で見て問題を認識したかったのです。


矢萩:そういうことでしたか。ではコンゴからザンビアへ逃れてくる人は多いんですか?


佐藤:難民キャンプも存在します。ザンビアは南部アフリカ地域ではずば抜けて平和な

国なので、アンゴラやルワンダ、ジンバブエなど、周辺諸国からの難民、移民が非常に

多いです。


矢萩:国家として受け入れ体制があるということですか?


佐藤:そうなのでしょうね。色々と和平会議を取り持ったり、ザンビアは周辺諸国との

争いは極力避けてきた歴史があります。


矢萩:国境を越えることは問題なく出来るのですか?


佐藤:問題は多々あります(笑)が、一応入れます。法的にはビザを入手し、黄熱病の

予防接種の証明書があれば問題ありません。ただ、前述のように汚職が激しいので、僕

らのようなムズング(白人、外国人)が通るとなると色々と難癖をつけられます。


矢萩:なるほど。法的に問題があるわけではないんですね。


佐藤:検疫が大変で、必要のない予防接種を何個も受けろと言われ、結局受けてもいな

い予防接種の印だけ沢山押されて入国しました。


矢萩:ちゃんとした予防接種なら良いのですが…… 相性もありますしねえ。ところで

コンゴ国民は、今の国内の状況に対してどう思っている様子ですか?


佐藤:コンゴは本当に長い間、西洋人が殖民に入った中世からずっと奴隷のように扱わ

れてきました。強力な暴力のもと従属するという経験を、何世代にも渡って経験してい

るのです。もうこの状況が当たり前になっていて、不平を言うよりも諦めている風に見

えましたね。


矢萩:なるほど、諦めですか。でも諦めていると言うことは、無自覚では無いと言うこ

とですよね?


佐藤:そうですね、そのような状況のコンゴを恥じている人もいましたし、より良い国

にしたいと思っている人もいます。「これだからコンゴは……」という溜息は同行して

くれた僕の友人からもよく聞きました。



AFTERMOD E-PRESS

町の至る所にいる両替商。DRコンゴではATMから米ドルしか降ろせない。しかし実生活

で使うのはコンゴフランのため、このような事態となっている。


矢萩:ということは、ある程度外の情報は入ってくるのですか? インターネットやメ

ディアなどはどんな感じですか?


佐藤:ネットに規制は見られなかったですね。もちろんある程度以上の富裕層しかアク

セス出来ませんが。新聞はあてにならないでしょう。仏語の新聞を熟読出来たわけでは

ないですが、第4の権力として機能しているようには見えませんでした。


矢萩:記事の内容は政治的なものが多い感じでしたか?


佐藤:政治とスポーツですね。ザンビアの新聞もそうですが。一般大衆の政治の関心は

高いですよ。まあ日本が低すぎるのかもしれませんが。政権が不安定だということも承

知しているでしょうし、事が起これば一番被害を蒙るのは一般大衆ですからね。


矢萩:日本はちょっと普通ではないですからねぇ…… そうか、やはり大衆にはダイレ

クトに、という感覚なんですね。日本人は何が起こっても、対岸の火みたいな顔してま

すからね。


佐藤:実際にコンゴ北東部の北キブ、南キブ州では争いが続いていますし、カタンガ州

でも北東部では武装勢力による集団レイプ被害など、深刻な事態も発生しているようで

す。


矢萩:それについては国連もピリピリしていますね。それぞれの武装勢力の一番の目的

は何なんですかね?


佐藤:コンゴの紛争を語るには長い長い前置きが必要になってくるのですが、表面上言

われていることは民族の対立です。


矢萩:そもそもの目的と、現在の行動のズレは感じますか?


佐藤:実際に殺しあっている人たちは民族的な対立を本当に感じているでしょう。そこ

には多数派と少数派の圧倒的な格差があ存在するので。しかし一歩引いてみると、その

争いすらも大国の利権(資源の争奪戦)のための手駒として焚きつけられている感じで

す。


矢萩:なるほどね。貧困層は農業を営んでいる感じですか?


佐藤:そうですね。ほとんどの住民が農業を営んでいます。鉱物資源の豊富な地域では

手掘りの鉱物採掘なども大きな産業ですが。基本的にコンゴの自然は非常に豊かなので、

農業国として立国出来るポテンシャルはあります。




AFTERMOD E-PRESS

鉱山の側の人々は、手掘りで銅やコバルトを採掘し、自転車でマーケットまで運ぶ。取

材翌日、この鉱山で中国企業に対する暴動が起こり、多くの死傷者を出した。


矢萩:税金や生活費などはどうですか?


佐藤:税制はほとんど機能していないので、従って社会福祉も壊滅状態です。生活費は

最底辺でしたら1日1ドル以下という、国連の定める貧困ライン以下の生活をしている

人が多数います。もちろん経済的貧困がそのまま生活の困窮を表しているわけではない

ですが。田舎では基本的にあまり現金が必要でない生活を営んでいる人もいるので一概

には言えません。その反対に、入るのに25ドルかかる高級プールや、最安値でも1泊

250ドルするようなホテルがあります。


矢萩:とすると、例えば食べるのに困っている市民だとかは余りいない感じですか?


佐藤:答えるのが難しい質問ですね。とりあえず僕が実際に訪れた地域では、絶対的に

食べ物が無いという人とは出逢いませんでした。路上孤児など、日本のスタンダードか

らは考えられないような食生活をしている子もいますし、影の部分では多くの人が困窮

しているかもしれません。北東部では色々あるようですが。。。僕が訪れたカタンガ州

の州都、ルブンバシは想像以上に平和な町です。普通に観光都市としてもっと発展出来

ると思います。汚職さえなんとかすれば、ですが。


矢萩:その汚職は、直接的に市民にどういう被害をもたらしているのですか?


佐藤:国境では地元民も賄賂無しには通れないようですし、行政機関で何か手続きをし

ようと思ったりすると、やはり色々とコストがかかるようですね。交通警察が賄賂欲し

さによく取り締まりをしていました。外国人に限らず、少しでもカモになりそうな相手

には賄賂を要求するそうです。


矢萩:なるほどね。実際に触れてみて、日本、あるいは世界に特に伝えたいことは何ですか?


佐藤:色々とマイナス面を述べましたが、実際に僕が感じて、みなに伝えたいと思うこ

とは、カタンガ州は敬遠されるべき場所ではないということですね。 日本は極端にア

フリカとの人的交流が少ないので、アフリカに対して未知=恐怖を抱きやすいと思いま

すが、実際にそこに生活している人々と交流していると、僕らと変わらないと思える側

面も多々あります。豊かな自然、歴史、動物、食物など、カタンガには多くの魅力があ

り、それを鉱物資源の町、紛争の歴史の街という側面だけで捉えて渡航を控えるという

のは勿体無いと感じました。日本は多くのODAを割いていますのが、実際に必要なの

は人的交流だと思います。


矢萩:それはそうなんでしょうね。想像力が足りないのもあるのでしょうが、やはりそ

のための情報も不足しています。


佐藤:無謀な言葉に聞こえるかもしれませんが、僕はカタンガ州には将来的に多くの日

本人が交流を持てる土壌があると感じました。



AFTERMOD E-PRESS

どこの国に行ってもマーケットのおばちゃん達は元気いっぱいだ。


矢萩:人的交流の方が重要なのは、だいたいどこに於いてもそうですよね。それは、日

本人に通じる何かを感じたと言うことですか?


佐藤:政府の人間とも何人も会いましたが、皆が腐敗した公務員ではなく、日本のよう

な外部の国との交流を真摯に求めている人も多くいました。コンゴ=危険な国というレ

ッテルによって迷惑しているのは地元の人も同じなのですね。新たなビジネスを求める

日本のビジネスマンも、アフリカの魅力を求めて旅する旅人も、カタンガでは色々なも

のを見つけることが出来ると思います。


矢萩:それはそうでしょうね。良いところがないわけはないのに、危険だという情報し

か入ってこないですからね。


佐藤:現に日本カタンガ協会という、日本とカタンガの人々の交流を深めようと活動し

ている現地の方もいます。今回僕はその方の家にお邪魔になっていたのですが、多くの

外国人が暮らしていながら、日本人だけがあまりにも少ないのは残念なことです。


矢萩:実際、現地から情報を発信している外国人はどれくらい居るのですか?


佐藤:BBCやCNN、アルジャジーラなど大手はコンゴの情報をよく発信しています

が、紛争の危機などを伝える記事ばかりが目に付くので、その反対側には目が向かない

という事態が起こっているように思います。


矢萩:どうしても、カウンターとして、良い部分が極端に隠蔽されてしまうのは、メデ

ィアの悪しき特性ですね。伝えるときに、それを意識してバランスを取れば良いのです

が、それではニュースがぼやけてしまう。


佐藤:もちろん、現在のコンゴで世界最悪の人道危機が起こっていることは報道しなけ

ればなりません。全く足りないくらいです。みなが自覚するべき大惨事が起こっている

のですから。しかし、負の側面だけを見ていては未来に繋がらないように思います。紛

争など、負の要素を乗り越えた時、そこから未来を積み上げていくためには、コンゴの

良い面も沢山知らないといけないと思うんですよね。


矢萩:そうなんですよね、危機報道が極端に際立つと、逆に敬遠されるというか、アン

タッチャブルな空気が造成されてしまいます。本当に何とかしたくて報道しているのな

らば、そこまで考えなければいけない。そういう意味に於いて、慧君がコンゴを訪れた

ことには、大きな意義があると思っています。


佐藤:今回は本当に初めの一歩。コンゴとの縁を作る取材でした。今回得てきたことの

中にも、報道したいことが多々あるので、それらは各種媒体を通して伝えていければと

思います。


矢萩:是非、継続してください。世界中に種をバラ蒔きましょう。


佐藤:知ることから、全てが始まりますからね。この縁を大切に、よりコンゴやザンビ

ア、アフリカのことを知っていきたいです。僕の場合その経験から自分自身のこと、日

本のことなどを考えるエネルギーを頂いている部分が多いので、アフリカには本当に感

謝しています。残り3週間の滞在ですが、より多くのことを学んで帰国したいと思いま

す。


矢萩:では、大量の収穫、日本にてお待ちしております。気をつけて帰国して下さいま

せ。

(文章:矢萩邦彦+佐藤慧/写真:佐藤慧)


02【特集】笠原正嗣『日本の症状2~原発反対運動と電力不足』


 アフタモードのメンバーは原子力発電というモノに対して、かなり慎重でありつつも、

好感をもってはおりません。今回の事故で原子力というものは人の手に余るものだと

いうことが良くわかりました。ですから、僕としても原発を止めたがる方々の気持ちは

良くわかります。できることなら、僕もそうして欲しいです。しかし、現状代替するエ

ネルギーがあるのかというと、これが難しい。いったい、止めるとどうなるのでしょうか。

今回は憂慮すべき事態、要するに電力不足のことですが、電力不足になるとどうい

う問題が発生するのか、僕の意見を書かせていただこうと思います。


 電気事業連合会が13日に発表した速報では5月の原発稼働率は40.9%だったそうです。

日本で原発が供給する電力は全体の3割です。ということは、6割の原発がすでに稼働

しなくなった、言い換えるなら全体の18%の供給がなくなったということになります。


原発は1年(正確には13か月)に一回点検のために稼働を停止しないといけないらしい

のですが、現在九州などで騒がれている原発再起動問題というのは、このチェックのた

めに停止した原発を再起動できないことが問題になっているわけです。結果すでに2割

近い電力供給が困難になっているということになります。


 すでにエアコンを使いだしている場所がありますが、これから夏が近づくにつれてド

ンドン暑くなりますね。そのとき、エアコンを個人が使い出したら供給量が減っている

ので、大規模停電(ブラックアウト)になる可能性があるわけです。これが非常に怖い。

大規模停電というのは、供給量を需要が上回った時に起きる現象で、稼働中のパソコ

ンのコンセントを引っこ抜いた状況になると思ってください。


 もし、パソコンからいきなりコンセントを抜いたらどうなるでしょう。下手をすると

データが飛びますよね? 個人にせよ企業にせよパソコンの電気がいきなりブチッとい

かれたらデータが飛ぶ人がかなりの数出てくるように思います。個人のPCでならまだ写

真が消えたとかで済むかもしれませんが、工場のシステムもコンピューター管理が行わ

れている以上そのダメージは避けられないでしょう。


データが飛んだとなったら顧客情報の問題が出てくるかもしれませんし、

少なくとも稼働する前に工場のシステムをすべてチェックし直さなければなりません。

これだけでも経済的なダメージが起きると考えられます。確かに、

すでに自家発電機を導入し始めた企業が増えてきていますので、

いきなり停電になっても自動で供給が切り替わるところもあります。

しかし、設備投資がうまくいっていない企業もあるのだから、やはり考慮すべきでしょう。

他にも色々な問題が考えられます。それは次回に書かせていただきます。(続く)
(笠原正嗣)


03【告知】矢萩邦彦 

Motheru『KAKERUインタビュー』にて紹介して頂きました


毎お母さんと子どもに焦点を当てて、企画制作をする会社Motheruのコンテン『KAKERU

インタビュー』コーナーに矢萩邦彦を採り上げて頂きました。NPOみんつなの話から、

編集学校、鏡明塾まで、ご覧頂ければ幸いです。

http://www.motheru.jp/kakeru/

Motheru『KAKERUインタビュー』


04【告知】安田菜津紀 6月13日
「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウム


6月13日(月)17時30分~JICA地球ひろば講堂にて、「第1回ギャップイヤー制度キッ

クオフ」シンポジウムにパネラーとして参加をさせて頂きます。お時間がある方は、ぜ

ひお越し下さい。

http://bit.ly/kNNp3o
第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウム


05【告知】安田菜津紀 6月28日-7月10日

「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる


NGO plas の皆様と開催しておりました写真展「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生ま

れる、グンゼ直営店BODY WILD Under wave原宿本店の開催が無事終了いたしました。あ

りがとうございます。
次回は、6月28日~7月10日に『JICA地球ひろば』にて開催させていただきます。こちら

もお時間が取れましたら、ぜひお越し下さいませ。


06【後記】『想像のススメ』
 想像力が大事で、原発にしても、アフリカにしても、色々な場合をどれだけ想像出来

るか、どれだけ多くの人に感情移入できるか、ということに尽きると思います。もちろ

ん、その人と同じレベルで他人の気持ちなど分からないかも知れない。しかし、だから

想像しないというのは、いささか論理に欠けるのではないかと思う。相手は政府でも良

い、上司でも良い、批判でなく批評すること。そのためには様々な立場を知らなければ

いけないのだと思います。そういう感覚で日々生活することで、自ずとメディアリテラ

シーのスキルは上がっていくのではないかと考えます。では、想像力を拡張しつつまた

次号でお目にかかります。
(矢萩邦彦)

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0036】 (2011年5月20日号)


=index=
00【巻頭】『情報とイメージと信用と』
01【特集】笠原正嗣『日本の症状1』
02【対談】佐藤慧×矢萩邦彦アフリカ取材実況対談『コンゴ民主共和国の今(前編)』
03【告知】矢萩邦彦 Motheru『KAKERUインタビュー』にて紹介して頂きました
04【告知】安田菜津紀 6月13日 「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウム
05【告知】安田菜津紀 6月28日-7月10日「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる
06【後記】『普通とは何か』

本サイトはこちらから↓
【AFTERMOD E-PRESS】 http://www.aftermode.com/press/



00【巻頭】『情報とイメージと信用と』


ようやく温かくなったと思ったら、急激に上下したり、気温が安定しないですね。もしかした

ら毎年こんなだったのかも知れませんが、やはり日常の感覚がどこかで揺らいでいる気がします。

なんでも震災に結びつける人も居れば、何にもなかったように振る舞う人も居ます。どうも両

極端な気がします。


 今回は、笠原による日本の現状分析と震災前日にアフリカと日本を繋いで行われた佐藤と矢萩

の対談前編です。原発の状況について、そしてDRコンゴという国について。一見なんの関係も

無さそうですが、僕らは何かを元にイメージを持っています。その何かとは現在の場合メディア

であることが多いですね。メディアからの情報はどうしても偏りがあります。そして、偏った方

が僕らは理解しやすい。『ゼブラーマン』ではないですが、白か黒かの方が安心するんですね。

こういう不安定なときは特にそういう傾向があると思います。全てがグレーではストレスが溜ま

りますからね。


 かくいうAFTERMOD E-PRESSも、ここ最近不定期刊になってしまっていますが、引き続きお付き

合い戴ければ幸いです。僕らもぼちぼち新しい日常へ向かいます。

(ヤハギクニヒコ)



01【特集】笠原正嗣『日本の症状1』


 個人的にはアフタモードプレス内で政治的・経済的なことは、書きたくないと思っていました。

しかし街中を歩いていると、日本の現状が切迫しているという僕の実感とは異なり、

震災前の雰囲気に戻ってきてしまっているように思います。僕はそれを危惧しています。

そう言われたら、みんな言うんですよ。「日本ってマズイよね」って。

分かっているけど認識したくないという問題なのかもしれません。


菅直人総理の不信任案決議でメディアは大騒ぎをしましたが、

mixiなどのSNSでは茶番劇扱いでした。でも僕が怖かったのは、

あの騒動によりテレビのニュースから完全に震災の映像が消えてしまっていたことです。

政治家の方々は口々に「被災地の……」というコメントをおっしゃられていましたが、

ニュースの時間枠は一定です。似たような意見をそれぞれメディアが

取り上げたため震災の報道が消えた。本末転倒だとは思いませんか?


もし被災地の復興を考えるなら、みんつなのメンバーが口をすっぱくして言っているように

「みんなが忘れない」ことを重視すべきです。

佐藤慧の話では、支援物資もすでに減りだしているとのことです。

メディアが映さなくなることは、被災地の孤立化を意味します。

それを被災地のためと言っていた政治家の方々がやってしまった。

しかも時間を無駄にしただけというのが、ほとんどの国民の

意見ではないでしょうか?



AFTERMOD E-PRESS

 もっと怖いこともあります。

そう、原発の問題ですね。

未だに東電は情報を中途半端に開示していて信用がない状態です。

僕でさえネットの情報を集めたら、大体の状況は言い当てられました。

メルトダウンの定義を日本限定で

「全炉心が融解するまではメルトダウンと呼ばない」

と決めていたそうですね。

世界、もちろんIAEAもそうですが、危険性を訴えるためのものですから、

一部、ほんの少し溶け出したらメルトダウンと呼びます。

挙句に、「メルトスルー」という意味不明なことを言い出す始末です。

当然、信用はなくなっていきますよね。

 問題はというと、東電の信用が落ちすぎてしまったことです。

結果2つの問題が浮上してきました。1つは信用というのは、価格とも連動します。

そのため時価総額が下がってしまったということ。2つ目は、

原発そのものに対する反感が起きてしまったことです。

この二つの問題について次回の特集で取り上げさせていただこうと思います。


(写真+文章=笠原正嗣)



02【対談】佐藤慧×矢萩邦彦 アフリカ取材実況対談

コンゴ民主共和国の今(前編)』

 震災前日の2011年03月10日、矢萩と佐藤は日本とザンビアを繋いで対談をしていました。未発

表になったままになっていましたが、災害支援をしつつも、日常を取り戻すために、掲載したい

と思います。

・・・

矢萩:おはようございます。こちらは午前1:30の横浜、気温は5℃です。
ザンビアの慧くーん。


佐藤:はい、こちらは24度と比較的快適な気温、しかしながら湿度の高いザンビアです。DR

コンゴを3日前に脱出してきました。日本は5℃ですか! まだ寒いですね!


矢萩:ホワイト雛祭りでしたよ。寒い寒い。たぶん、普段日本に居る感覚だと、コンゴ(コンゴ

共和国)とDRコンゴ(コンゴ民主共和国)、はおろか、ザンビアも同じような認識の人が多い

と思いますが、ちょっと解説をお願いします。


佐藤:DRコンゴは旧ザイールというとわかる人が多いかもしれません。1997年に現在の国名に

変わりました。中部アフリカに位置していて南にはザンビアと国境を接しています。モブツ政権

時代には、空港に着いたモブツ大統領を天皇が迎えにあがるほどでしたから、旧ザイールの方が

親近感があると思います。


矢萩::そうですね。たぶん未だにザイールという国があると思っている人は多いと思います。コ

ンゴとDRコンゴはまったく違う国なんですか?


佐藤:アフリカの国々をどの程度その国境で区別出来るのかという疑問は残りますが、国家とし

ては別な国として独立しています。宗主国によって分割される前(13~17世紀)は広大なコンゴ

王国であったといいます。


矢萩:なるほどね。面積はDRコンゴの方がだいぶ広い(世界で12番目)ですよね。たしかベル

ギーの国王レオポルトⅡ世の私有地だったんですよね。何度もアフリカに行っている慧君ですが、

今回初のDRコンゴですよね? 


佐藤:まさか自分が行くことになるとは、ザンビアに住んでいた頃には思いもしませんでした。

危険な噂しか聞かない国だったので。


矢萩:僕も、世界遺産について調べているときにDRコンゴのただならぬ状況は気になっていま

した。コンゴには5件の自然遺産があるのですが、その全てが危機遺産に登録されています。内

戦や密猟、武装勢力によるゴリラやカバ・サイの乱獲などで手の施しようがないみたいですね。

アフリカ最古の国立公園ヴィルンガ国立公園は、政府と反政府武装勢力(人民防衛国民会議 

National Congress for the Defence of the People、CNDP)の戦闘で沢山の動物が犠牲になった

は2009年でした。国連はコンゴを「世界で最もレイプ事件の多い国のひとつ」と指摘しています

ね。で、実際足を踏み入れてみて、どうでしたか? 印象通りでしたか?


佐藤:いや、実はかなり印象とかけ離れていました。僕がDRコンゴ(以下、単にコンゴ)に対

して抱いていたイメージというのは、紛争により国家としての機能が完全に麻痺している状態の

国だったので、実際今回訪れたコンゴ南部、カタンガ州のほのぼのとした雰囲気には驚きました。


AFTERMOD E-PRESS
豊かな自然が広がる。
鉱山資源がなければ、DRコンゴは世界有数の農業国家として発展したかもしれない。


矢萩:やはり、先入観というか、情報は怖いですね。現在(2011年3月10日)外務省のHPには 

●カタンガ州北部:「 退避を勧告 します。渡航は延期してください。」(継続)と書いてあります。


佐藤:国土の広さが僕らの常識よりも遥かに広いので、一面的な情報で全てを判断してしまうの

は危険ですね。あ、退避勧告まで出てたんですね(笑)。


矢萩:はい、2月18日から継続して出ています。どうせ行くでしょうから止めませんでしたが(笑)。


佐藤:僕の滞在中の首都のキンシャサで大統領邸が攻撃されて、フランス大使館からは夜間外出

禁止令が発令されました。その時大統領は僕のいた町(ルブンバシ)にいたので、普段よりはも

のものしい雰囲気にはなりましたけどね。


矢萩:なるほど、●カタンガ州南部 (ルブンバシ市を除く):「渡航の是非を検討してくださ

い」(引き下げ)となっていますね。具体的には、警察や軍は街に出ている感じですか?

佐藤:うじゃうじゃいます(笑) 毎日拘束されていました。


矢萩:毎日拘束!?


佐藤:完全武装して手榴弾まで身につけた軍人が街中を闊歩しているのには唖然としますね。ま

あ僕はジャーナリストと言う特殊な職業上仕方なかったですね。原則的に「国内での写真撮影禁

止」なので。


矢萩:拘束からはどのように逃れたのですか?


佐藤:もちろん賄賂です。というか、賄賂をもらうために僕を拘束しに来るようなものですね。


矢萩:じゃあ、行列を成すでしょう?(笑)


佐藤:渡航前から汚職の激しい国だとは聞いていましたが、それは想像を絶するものでした……

 一応大義名分がないとダメなので、単に街中を歩いているだけだと大丈夫です。カメラを取り

出すと…… 大変でしたね。


矢萩:なるほどね。一応そういう秩序はあるんですね。だいたい、釈放して貰うのに相場はいく

らくらいなんですか?


佐藤:安くて1,500F(コンゴフラン)、150円くらいです。ビールの大瓶が飲めてつまみも食べれる

値段です。高いと20ドル、1,600円くらいでしたね。もちろんもっと高額の要求も多々されました

が、それらは何とか回避しました。


矢萩:それはリーズナブルですね。海老蔵を殴った人は250万でしたね。ホリエモンは3億円。村

上ファンドは確か5億円でしたっけ。回避というのは、説得ですか?


佐藤:なるほど(笑)。そうですね、彼らも僕が強情に拒んでいると面倒うくさくなって去って

いったり、現地人である僕の友人が説得してくれたりでした。


矢萩:持つべき者は現地の友人ですね。オフィシャルでない武装勢力には遭遇しましたか?


佐藤:というより、何がオフィシャルなのかわからないですね。僕は結局コンゴのCIA的シー

クレットサービス、ANRの協力を得て写真撮影の許可証を手に入れたのですが、他の地域のA

NRとは対立していましたし、地元のやくざのような団体や、鉱山地域で独自の活動をする鉱山

警察などいました。


矢萩:独自の活動をする警察って凄いですね。それは自警団でしょう。


佐藤:権力が乱立し過ぎていて、縦の命令系統がうまく機能していな毎いんです。近年、首都の

キンシャサで大統領の私兵軍と副大統領の私兵軍が衝突する事件もありましたからね。


矢萩:なるほど、それは危険ですね。日本で私兵といったら、幕末か、ヤンキー漫画の世界ですね。

(次号へ続く)(文:矢萩邦彦+佐藤慧)


03【告知】矢萩邦彦Motheru『KAKERUインタビュー』にい紹介して頂きました。

お母さんと子どもに焦点を当てて、企画制作をする会社Motheruのコンテン『KAKERUインタビュー

』コーナーに矢萩邦彦を採り上げて頂きました。NPOみんつなの話から、編集学校、鏡明塾まで、

ご覧頂ければ幸いです。

http://www.motheru.jp/kakeru/
Motheru『KAKERUインタビュー』



04【告知】安田菜津紀 6月13日 「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウム
 
6月13日(月)17時30分~JICA地球ひろば講堂にて、
「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウムに
パネラーとして参加をさせて頂きます。お時間がある方は、
ぜひお越し下さい。http://bit.ly/kNNp3o



05【告知】安田菜津紀 6月28日-7月10日「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる


NGO plas の皆様と開催しておりました写真展
「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる、グンゼ直営店
BODY WILD Under wave原宿本店の開催が無事終了いたしまし
た。ありがとうございます。
次回は、6月28日~7月10日に『JICA地球ひろば』にて開催さ
せていただきます。
こちらもお時間が取れましたら、ぜひお越し下さいませ。



06【編集後記】『普通とは何か』


 一昔前の大学入試現代文みたいなテーマですが、こういう非常時や異常時に初めて普通は認識

されます。縁起のような物で、日常と非日常を分けるのは、明らかに非日常、異常です。現代に

生きる僕らは、歴史の中に、あるいは小説や映画、漫画の中に非日常を感じることでかろうじて

普通を保っていたように思います。もちろん、それは気のせいというか、認識上の話で、本来は

普通なんて言うもの自体が実に曖昧な定義です。しかし、それに気づかないまま、僕らは空気を

読むだの読まないだの言っていたわけです。それぞれの普通。個人的普通。それはもはや普通で

はないのかも知れません。言い換えれば、それぞれが安定している状態ですね。ループすること

で感じる永遠です。しかし、そういう物を求める気持ちが湧いてきた人や、元からあったそれに

気付いた人も居るのではないでしょうか。また安定すれば刺激を求めるのかも知れません。しか

し、一度感じた不安や畏れを、不安定感を心に刻んで、平和的な何かに繋げていければ、と思い

ます。それも僕の掲げる「シュールパシフィズム」活動です。では、また次号でお目にかかりま

す。
(矢萩邦彦)




==========
『AFTERMOD E-PRESS』はいかがでしたでしょうか?
今回の記事についてご意見・ご感想など、
お気軽にドシドシと書き込みください。
アフタモードメンバー一同、心よりお待ちしております。


編集  ヤハギクニヒコ 笠原正嗣
執筆  ヤハギクニヒコ 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード/ studioAFTERMODE Co.,Ltd.
  http://www.aftermode.com/

本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、
法律で定められた場合を除き、
著作者および出版社の権利の侵害になります。
記事の使用をご希望される場合は、
タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。
取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0035】 (2011年5月13日号)

=index=
00【巻頭】『想いと時間』
01【特集】佐藤慧「悼む時間」
02【特集】笠原正嗣『レンブラント時代からのオランダと日本』
03【告知】安田菜津紀・佐藤慧 5月26日 毎日新聞タブロイド版「毎日RT」に掲載!
04【告知】安田菜津紀 6月13日 「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウム
05【告知】安田菜津紀 6月28日-7月10日「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる
06【告知】ヤハギクニヒコ 6月5日 『鏡明塾~武士道と騎士道/大和時代 ~』
07【後記】『光の存在、闇の生』



00【巻頭】『想いと時間』

 もう、ずっと前から、この活動をしているような気がして、たまに立ち止まります。震災から2

ヶ月半が過ぎました。AFTERMOD E-PRESSは創刊して8ヶ月です。僕らアフタモードは活動を初めて

1年と7ヶ月。時間というものが、真に存在しているのなら、それはどのように連関しているので

しょうか。自分の中のマイルストーンを並べてみても、とても時間が同じように流れている気がし

ません。ベルクソンが言ったように、僕らの時間は決して一般化することは出来ないそれぞれのも

のなのかも知れません。瞬間の連続を、補完して時間にしているのは僕ら自身なのかも知れません

。今週は、被災地に通い、活動を続ける佐藤慧の想いと時間、また笠原正嗣による特集は、瞬間を

光と闇の凝縮と拡散によって表現した稀代の版画家レンブラントの時間に迫ります。どうぞ、肩の

力を抜いたり入れたりしながら、それぞれの時間を感じて頂ければと思います。
(ヤハギクニヒコ)


01【特集】佐藤慧「悼む時間」


 もう何度被災地と東京との往復を繰り返しただろうか。
 東京から、母の亡くなった陸前高田に足を向けるたびに胃がきりきりと縮み上がり、目眩を覚え

る。目まぐるしく過ぎる日々の中、時計の針に追われて生活をすることで、冷酷な現実から目を逸

らしたかった。
 震災発生から3ヶ月近く経ち、町の様子も変わってきた。避難所暮らしをしていた家族も徐々に

仮設住宅に移り住み、電気やガソリンも復旧してきた。道路の両脇に、見上げるほど積み上げられ

ていた瓦礫は叙々に整理され、市街地跡が一望出来るようになった。
 こうして片付いていく様子は、復興へ向かっている証であり、危険な瓦礫が取り除かれることで

人々の心も安らぐのだろう。しかしその反面、強烈に脳裏にこびりついた震災直後の景色が変わり

ゆくことに、焦りを覚える自分がいた。
 破壊と悲しみの象徴である瓦礫、目を逸らしたくなる惨状。しかしそれが目の前から消えていく

ことに、僕は不思議な虚無感を抱いていた。何度も瓦礫となった市街地を歩き、無残に砕かれた実

家の居間で佇んでいた。TVや新聞では復興が叫ばれ、窓の外では重機が音を建てて瓦礫を掻き分け

ていた。僕はそんな景色と、心の中に流れる時間との間に距離を感じていたのだ。



  AFTERMOD E-PRESS
        立ち入り禁止となった高田病院。


 3月11日、14時46分。大津波はその29分後に陸前高田を襲ったといわれている。4階ま

で到達した水の壁は、何百もの命を一瞬にして奪っていった。津波に襲われた小学校の壁面には、

14時46分で止まったままの時計がかけられていた。もしかしたら僕の心の中の時計も、その瞬

間から凍り付いているのかもしれない。
 未だに今回の震災が夢なのではないかと思うときがある。東京の自宅で目覚め、青く晴れた空を

見上げると、日々は何事もなく平穏に時を刻んでいるように錯覚する。田舎に帰れば、いつもと変

わらぬ様子の母が、笑顔で出迎えてくれるのではないかと思ってしまう。そんな麻痺した心に、瓦

礫は冷酷に語りかける。そこには、死があったのだと。
 僕は無残な瓦礫を直視することで、死というものを身近に感じようとしているのかもしれない。

着々と片付いていく瓦礫を目にすると、自分の心が置いてけぼりにされたように感じてしまうのだ

。人の心は、重機で掻き分けるように理路整然とは整理出来ない。ゆっくりと時間をかけ、自分と

の対話を繰り返していくことでしか、混沌とした心を落ち着かせることは出来ないのではないか。
 木魚がポクポクと、乾いた音で空気を震わしていた。葬儀というものに、僕はこれまで何の価値

も見出したことがなかった。それは形骸化した宗教儀式に過ぎず、亡くなった人の魂は、線香の煙

に導かれるまでもなく彼岸へ渡る。しょせんは残されたものの自己満足に過ぎないのだ、そう思っ

ていた。しかし、凍りついた自分の心、無情な自然の摂理を前に、打ちひしがれ、泣き崩れてもい

い時間というものを、葬儀は表しているのではないかと今回感じた。死を悼むこと、それは死をネ

ガティブなものとして捉え、生きることに苦しみを見出す行為ではない。死というものに畏怖し、

それを糧とすることで、今この瞬間を生きていることに感謝の念を抱く行為ではないか。
 母から頂いた大切なもの、死というものを、時間をかけてゆっくりと考えていきたい。


    AFTERMOD E-PRESS
           全ては生命の輪廻の中に


(写真+文=佐藤慧)


02【特集】笠原正嗣『レンブラント時代からのオランダと日本』 


 みなさま、久しぶりに元のトーンに戻っての記事となります。いかがお過ごしでしょうか?

 相変わらず暑かったり寒かったりが続いておりますので、御身体にお気を付けくださいませ。
 しかし、やはり暗いニュースが多くて、ついつい心の方も暗い方へ向いてしまいがちになります。

そんな時はやはり芸術を堪能するのも一つの手ではないでしょうか? 現在上野のレンブラント

展を筆頭に、フェルメールが来たりと有名どころの美術展が盛り上がっていますよね。実際僕もレ

ンブラント展に足を運んでみたのですが、レンブラントの印象がかなり変わる構成になっていて驚

きました。あんなにも版画を刷っていたというのに驚ろいた人も多いでしょう(逆に油絵を期待す

る人には、ちょっと物足りないかもしれません)。ちなみに、一口にレンブラントと言いましても、

実は複数の人間が一つの絵画集団となって描いたという説が出てきています。確かに、あれだけ

の量を描くのは一人の人間では難しいですよね。ホメロスもそうですし、個人的には紫式部もそう

じゃないかと睨んでいます。書いている量が多すぎるので、これもやはり一人でやるにはしんどい

と思います。だから紫式部も複数の人が居たのではないかと思っています。今でも宮崎駿監督が全

部セルまでやっているかと言えば違いますし、北野武監督といってもカメラマンとかは別の人であ

るのと同じことですね。一人の名前だからと言って、複数いたっておかしくないでしょ?


 さて話を戻しまして、今回のレンブラント展の目玉の一つは、レンブラントが別の種類の紙に同

じ版画を刷ったものを並列展示していることでしょうね。並べておいてあることでしょうね。しか

も、使われている紙のひとつは「和紙」です。貿易であっちに工芸品とかと一緒に輸出されたんで

しょうね。日本が海外のモノをありがたがるように、向こうの人もかなり日本のモノをありがたが

ったみたいです。だから和紙は高級品なんですね。それをポンポン使っていたレンブラントは相当

羽振りが良かったということが分かります。そして、この時代に始まった日本とオランダの貿易関

係を見ることができます。あまり有名ではないのですが、渋谷にある『たばこと塩の博物館』とい

うところが特別展「華麗なる工芸~世界を驚かせた精美の技~」

http://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html )を行っています。これは明治時代初期に輸

出されたものなんですが、江戸初期からオランダとの付き合いの中で、どのように日本の工芸品が

変化していったのかを知るには打って付けの展示品が並んでいます。量はそんなに多くないですが、

THE ALFEEの坂崎幸之助さん(骨董収集かでもあるそうです)が集められた、明治の写真(カラ

ーです)も展示してあり、入場料も100円という格安設定なので、ぜひご覧になっていただけた

らと思います。こういう美術館を組み合わせてみると色々見えてくることが多いですね。
では、また。

(笠原正嗣)


03【告知】安田菜津紀・佐藤慧 5月26日 毎日新聞タブロイド版「毎日RT」に掲載!

毎日新聞タブロイド版「毎日RT」に、以前夕刊に掲載して頂きました陸前高田市の復興についての

記事を掲載していただくことになりました。そして入学式撮影にご協力頂いた写真家さん方と共に

に写真を再掲載して頂きます。ぜひご覧下さいませ!


04【告知】安田菜津紀 6月13日 「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シンポジウム
 
6月13日(月)17時30分~JICA地球ひろば講堂にて、「第1回ギャップイヤー制度キックオフ」シ

ンポジウムにパネラーとして参加をさせて頂きます。お時間がある方は、ぜひお越し下さい。

http://bit.ly/kNNp3o


05【告知】安田菜津紀 6月28日-7月10日「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる

NGO plas の皆様と開催しておりました写真展「Ekilooto of Uganda」HIVと共に生まれる、グン

ゼ直営店BODY WILD Under wave原宿本店の開催が無事終了いたしました。ありがとうございます。
次回は、6月28日~7月10日に『JICA地球ひろば』にて開催させていただきます。こちらもお時間が

取れましたら、ぜひお越し下さいませ。


06【告知】ヤハギクニヒコ 6月5日 『鏡明塾~武士道と騎士道/大和時代 ~』

(終了いたしました)


さて今回は『認知心理学入門』です。

前回の写真論にも大いに関係する、認知心理学。
自分の感覚がいかにコントロール出来ていないかを感じることで、
表現の可能性について考えて見たいと思います。


[世界科一般コース]13:05~14:50
・神奈川県民センター(1501教室)
・テーマ『武士道と騎士道』

[世界科中高コース]17:05~18:50
・神奈川県民センター(404教室)
・テーマ『大和時代』


★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)

・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
 「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。
(※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます)
(※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください)
申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。
では、みなさんの御参加、お待ちしております!



07【後記】『光の存在、闇の生』


 レンブラントの闇の中に光を見出しす作品群の中、妻サスキアを亡くした翌年に制作された『3

本の木』は光の中にあって、薄暗くも生き続けてしまう生命の陰を描いているようで、胸をついた

。明るいことがポジティヴなのではない。地面で、茂る枝葉で繋がる3本の木は、かろうじて幹の

部分で、3本だということが分かる。これは一体どういうことなのでしょうか。
 植物が僕らに教えてくれることは、本能以前の何かだ。陸前高田の希望の松も、流されて家屋に

突き刺さる木々も、そこに存在することと生きることの境界線を見せつけてくれた。考えることと

考えないことと、感じることと感じないことは、違う。僕らが生きるために、何に気づき、そして

思考を選択するのか。そんな命題に向かいつつ、また次号にお目にかかります。
(ヤハギクニヒコ)