AFTERMOD E-PRESS 【vol.0054】 (2012年05月13日号)
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00【巻頭】『ズレと忘却を越えて』
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ4』
02【特集】安田菜津紀『あなたのいない、これからの時間を。』
03【告知】安田菜津紀・佐藤慧『THE FUTURE TIMES』 Gallery & Live in OSAKA 開催!
04【告知】佐藤慧「ジャーナリスト佐藤慧といくザンビアスタディツアー」受付開始!!
05【告知】6月3日 矢萩邦彦 鏡明塾『説得と交渉術』『日本史研究:安土桃山時代Ⅱ』
06【後記】『命を繋ぐために』
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00【巻頭】『ズレと忘却を越えて』
授業で東日本大震災の話をしたときのこと、「震災って去年だっけ? 一昨年だっけ?」とこぼした生徒がいました。そういう感覚に出会うであろう恐怖というか、不安は震災直後からありました。阪神淡路大震災が起きたとき、やはり1年間は受験業界でも地震関連の問題が出題される可能性があると言って話題に上り続けました。実際、社会や理科だけでなく、国語でも震災関連の出題をする学校もありました。しかし、1年経過するとすっかり元に戻ってしまって、地震の解説に時間をかけていると「先生、もう地震関連はトレンドじゃないですよ」と信じられないことを言う講師までいました。何のための勉強か。究極的に言えば、生きるためです。より良く生きるため。その過程においてトレンドかどうかなんて知ったこっちゃないですし、そもそもそういう言葉が出てくること自体がズレています。しかし、そんなズレが垣間見えたのも震災起こったからとも言えるわけで、危機感を覚えた人達がきっと色々な所で動き、今を迎えることが出来たのだろうと感じます。日本が元々持って居た脆弱さとフラジリティ。僕らはそれを知って、どうすれば良いのか。そんなことを考えながらお読み戴ければ幸いです。
(矢萩邦彦)
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01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ4』
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日玉浩史(以下、日玉):そう、それだけだと十分でないというか、伝わりにくいというか。長年の、千年の恨みつらみもあると思うので、共同で外部の人と一緒にやるということが、混ざっていくことでないとダメだと思う。その為には人と人とのつながりがドンドン始まっていくようなことが起きる必要がある。Eメールのやり取りはスピードとしては良いんですが、情報量としては少なすぎるんですよね、めんどくさいし。やっぱり、人に会うのが一番早い。矢萩さんのところも、そういうことをバネにして、色々と企画とか、目的を見つけてつなげていくとかした方が良いのかもしれないですね。さっきも矢萩さんが言われましたが、たとえ内部出身の人でも、一回外部に出た人が帰ってくるだけでストレスになるということもあるだろうから、その中間支援というか、間に入って何とか人をくっつけていく、そこから有機的な何かを生み出していくというのが大切なのかもしれない。
松岡正剛(以下、松岡):それがね、あそこはメディエーターが一番いない地域なんですよ。日本全体の中でメディエーターなしに、直に土地や海から立ち上がっているのは東北と沖縄なのよ。沖縄もメディエーターなんていらない。東北は三沢基地があるけれども、沖縄はもっとたくさんあって、それが半分軍事化されているわけですよね。そこで自衛隊が頑張るでんすが、自衛隊は軍事なき支援だから、やっぱり立ち上がろうとするとアメリカ軍というものとぶつかっちゃうわけですよね。ところが日本はそこを上手に、沖縄モデルと、東北モデルというものを使って、封印してきちゃったんですね。
日玉:そんな所ばかり上手にやってどうするんでしょうね。
松岡:僕はどこかで発言したけれども、今回の復興や復旧や再生は東北モデルと沖縄モデルを同時に考えた方がいい。同じくらい困難なんだけど、困難な問題を考えろと、引き受けなさいと。普天間もそうだけど、沖縄をずっと詰めていくと、日米軍事同盟の中であることと、沖縄県民の考え方・生き方というものはハイブリッドに作られているわけだから、どこかでハイブリッドの間みたいなところが切れてくるんですよね。飛行場の長さとか、海底のサンゴ礁だとかでも切れてくるし、交付金や支援金がどうなっていくってことでも切れてくるし、海兵隊のような東アジアの安定なのかとか、圧迫なのかはわからないけどそういうものとも繋がっている。東北というのは、北海道の北方四島が残っていますけれども、やっぱりそういうものの中の北東アジア圏全体の軍事に組み込まれていますから、そうすると自衛隊が頑張って何かしたくても、そことぶつからざるを得ない、もちろんそういうことを考えないでやってしまっても良いとは思いますよ。
日玉:あとは、これはホントにアイデアだけなんですが、例えば自衛隊、軍事力を使えないわけじゃないですか。結局、あの規律、統制、システムをどう他のところで使えるのか、もう少しこういう災害時以外の、普通に人が感じられるような、日常的に感じられる場所に使えるのか。もしかしたら農業と絡めて、彼らの活動と並立させたらいいんじゃないかというような話を漠然と友人たちとしていたんですよ。それこそ吉里吉里人のような食料自給率100%、あそこの場合は医療だったり、いざとなったら土木関係とか、今回もインフラもあっという間に整えてしまったし、その能力を農業にも、産業にも使えるんじゃないかと思うんです。
松岡:そういう可能性が高い一種の組織力とか統制力とか、日本への愛とか、そういう所から行くと、農業、漁業、自衛隊というのは重なるところがあると思うんだよね。思うんだけど、なぜできないのかというと自衛隊は、災害法に基づいていて、生産や管理だとか生活に関与しないんですよ。まあできないというところがあって、被害の対策のための巨大要員で、その時動ける組織力のある集団はヤクザくらいなもの。
日玉:結構活躍されているみたいですね。
矢萩邦彦(以下、矢萩):阪神淡路のときも活躍していたようですね。
松岡:そういうのも含めてもっとこの話を考えると、平時と有事という問題を考え損ねたんですね。平時の中をコンプライアンスでフラットにして、そして犯罪だとか何かはっきり被害が出たところだけでセーフティーネットをつくるとか、失業保険を作るとか病院を建てるということで、それは本来有事のときのための訓練であるはずだし、有事のモデルであるはずなのに、平時によって統計的な平均点を作って、有事を全部外側に出しちゃったわけ。有事の一番外側に日米同盟があるから、有事っていうのは日常の中で編集がきかないモノになってしまって、制度的なことしかできない。自衛隊もやれることとやれないことと全部線引きされていて、その中でしか組み立てられない。そうすると、有事のときにものすごく弱い国を一生懸命作ってきたということになる。その有事のもとはアメリカ軍ですから、日米同盟ですから、本来は有事のための自衛隊が平時では使えなくなるわけです。
矢萩:フラットなのは中庸であれば良いと思うのですが、全く中庸でない。
松岡:そうですね、中庸でもないし、組合せ、アソシエーションがないんです。出入りがない、ピシャーっと分かれちゃっている。
日玉:システム自体、システムと思われているものが、システムとして機能できないように、できない方向に作られているような気がします。
矢萩:例えば、先ほどのお話のメディエーターだとかを、今東北や沖縄に入れるであるとか、作るであるとかということは可能でしょうか?
松岡:可能だと思います。ただし、それには今までの制度ではない、レギュレーションではないモノも作りあげないといけないです。
矢萩:まず制度からですね。
松岡:そうそう、それか制度を無視して、民衆の力の中で自発的に創っちゃう。
矢萩:とりあえず僕らは草の根的に入り込んでいる組織なので、やはり制度からというのはとても難しいんですね。もちろん同時に考えていかなければいけないんですけども、僕らみたいな集まりが、現地または後方で何ができるのかっていうことをもっと具体的に考えていかなければいけないな、ということを考えていて。
松岡:編集学校の例で出すと、編集学校というのはそれぞれが主婦であり、会社員であり、ダンサーであり、どこかに所属していて、組み合わさって、その上でポリロールで動いているわけでしょ。例えばこういうところでは、もっと大きい仕組みがないとそれを全部もとへ、平時へ戻しちゃうと、全部結局ね、会社の失業保険がどうなっているのか、農業としてどのくらいの税金を納めているのか、地代はいくら払っているのか、今の国家が決めているモノに全部戻っちゃうわけです。新しいメディエイター必要だとすれば、ポリロール型か、つまり今までのレギュレーションに引っかからない、あるいは引っかかったとしてもそれはちゃんと普段やってますと、あとの何かでやっているんですと。
矢萩:そのポリロールを許容する文化って言うのは関東にもないと思うんですよ。そこをなんとかできたらいいかと思っているんですよ。
日玉:東北を最初のモデルにしちゃえば良いかも。
矢萩:ポリロールであるというだけで、あんまり信用してもらえない傾向があります。例えば僕たちはこれからボランティア活動を続けていくにあたって、日常の中にボランティアという活動が入らないと意味がないわけです。別に普通に生活しているよ、仕事もしているよ、でもボランティアもしているよ。そういう状態が普通の状態になっていないと続かないと思うんですね。そして、今回は特に続けないといけないと思います。そういうモデルをやっぱり提示することというのが、これからのボランティアに必要なことなのではないのかと考えています。
松岡:ゲバラなんかは、ボランティアじゃなくてゲリラの話になるんだけどね、どう考えたかというと、キューバやベトナムを、ボリビアを各自の地域に持てと言ったわけね。いちいちキューバに来なくていい、ベトナムに行かなくていい、でもどこにでもベトナムはあるだろうと。反戦を、そういうのを各地に持てと。ということは、東北の今の問題を日本全土が、世界がどう分有するのか、さっきシェアって言ったけどそれがゲバラの思想なんですよね。一方で、人種問題というのがあって、黒人は全世界にいるわけでしょ。当然アフリカだけではない。でも黒人を取り上げるには、国家のレベルではなくて、ポリカラーなわけ。もう二重、三重目が黒人であったり、白人であったりするわけですよね。ホワイトはWASPのように制度化したわけですよ。ナチスもそれをやったわけですよね、アーリアやゲルマンとか。そこの一致しているものに合わせてグローバリゼーションが起こって日本がそこにハマっちゃったわけだから、そこから何かを抜き出そうとすると、今はゲリラも黒人もイスラムも、これ宗教、信仰ですよね。ポリロールです。ロールというかポリイデオロギーというか、ポリソートというか。そういう何か"あるもの"が、グローバリゼーションの中にいながらも浮上できる、そういうモノが今までは世界を組み立ててきたので、一体に日本にとってそういうモノが一体なんだったのかということをもう一度問い直さないといけない。でも、それが一切政教分離から始まって、フラットにされてきたから……
矢萩:取り戻すための……
(次号へ続く)
(写真=安田菜津紀)
(次号に続く)
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02【特集】安田菜津紀『あなたのいない、これからの時間を。』
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昼間は汗ばむほど温かくなってきた5月。穏やかな空の下、静かな近所の住宅街を歩いていて、ふと、昨年の今頃は何をしていただろうと考えることがあります。
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去年の今頃はというと、陸前高田へ一週間ごとに往復しては、避難所に物資を運び、そして小学校への支援活動を始めた頃でした。街のいたるところで遺体の捜索が続けられる傍らで、3月には泥に覆われて灰色に見えた大地の割れ目から緑が見えはじめ、心が少しだけほっとしたのを覚えています。
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その一方で私が行動を共にしていた佐藤慧の一家にとっては、大きな悲しみが心を覆っていた時期でもありました。4月下旬にようやくお母さんの実家である広島で葬儀を終え、終始無言で車を走らせた道中。「新聞では何千何万って数字ばっかり踊ってるけどね、僕が亡くしてきたのは“人”なんですよ。顔が分かる、一人一人の人なんですよ」。お父さんの頬をつたう涙を、どうしたら止めることができるだろう。そもそも止めることで心が軽くなるのだろうか。ただ押し黙ることしか、できませんでした。
54歳という若さで亡くなったお母さん。生前、手話の通訳ボランティアなどの活動を盛んにしていたそうです。津波警報が鳴ったら、きっと耳の不自由な方のところに行く、そんな人だったと家族は話してくれました。
「彼女はいつも、人のために生きる人でした。
でもせめてこんなときくらいは、身の安全を第一に考えてほしかった」。
葬儀の途中、お父さんは悔しさを押し殺し、静かな声で参列者にこう語りました。大学時代からずっと寄り添ってきた夫婦。お父さんの一番の幸せは、毎日家に帰り、お母さんのご飯を食べることだったと言います。
「1年経ったら、何かが変わると思っていました。
でも気持ちは全く、あの日から動いていないんですよ」。
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昨年の3月11日から、前に進むことができない心の時間。1年という月日は、大切な人を失った悲しみ、そして心に重くのしかかってくるものを和らげるには、あまりにも短いものでした。
ようやく戻ってきた鳥たちの声を聴きながら、お母さんが残したかったものを思った昨年の5月。最後まで人のために生きたお母さんの命をつなぐことができるのは、生きている私たちしかいない。この街の中で、そのバトンを受け取りたい。そんな決意を新たにした季節でした。今年も美しい緑が、陸前高田市を包み始めています。
(写真+文=安田菜津紀)
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03【告知】安田菜津紀・佐藤慧【The Future Times Gallery & Live@大阪】
6/3の後藤正文さんのライブチケットはお陰様で完売しましたが、ギャラリーは下記時間内、常時開いておりますので是非足をお運びください。夕方18:00頃まではなるべく在廊しています。
詳細はこちら→ http://www.thefuturetimes.jp/tft_event/
■日時 : 5月31日(木)・6月1日(金)・6月2日(土)・6月3日(日)
※6/3のみ、夜の部 "LIVE&TALK"開催
■会場:digmeout ART&DINER
〒542-0086 大阪府大阪市中央区西心斎橋2-9-32 アメリカ村・アローホテルB1F / TEL:06-6213-1007
ギャラリー(写真展)
※ ギャラリーのみでライブ演奏の予定はございません。
■入場無料
■OPEN:12:00~24:00 (最終入場は23:30まで)
■写真展:渋谷敦志 / 佐藤慧 / 安田菜津紀
<昼>ギャラリー(写真展)
■入場無料
■OPEN:12:00~15:30
(入場及びラストオーダー15:00まで)
■写真展:渋谷敦志 / 佐藤慧 / 安田菜津紀
<夜>LIVE & TALK
■チケット制(有料)
■OPEN/START:17:30/18:00
■ライブ出演者:後藤正文
■トークライブ:後藤正文 / 渋谷敦志 / 佐藤慧
イベント | TheFutureTimes
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04【告知】佐藤慧 「ジャーナリスト佐藤慧と行くザンビアスタディツアー」
「ジャーナリスト佐藤慧と行くザンビアスタディツアー」
◆2012年9月18日(火)~2012年9月30日(日)
基本旅行代金319800円 ※燃油サーチャージ53000円日本&現地空港諸税別途要
申込・詳細はこちらへ
http://www.jeps.co.jp/africa/satokei_studytour.html
アフリカ南部に位置するザンビア共和国。雄大な自然、人懐っこい人々、豊潤な文化。そこに生きる人々から学ぶことは数多く、忙しい日本の生活では目につかない沢山の小さな喜びに気付かせてくれます。また、貧困やHIVエイズ、世界規模での資源の奪い合いなど、私たちの生活とも無縁ではない問題について向き合うことで、これからの世界に生きるひとりの人間として、皆で未来を考える機会となればと思います。
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05【告知】矢萩邦彦 鏡明塾 『説得と交渉術』『日本史研究:安土桃山時代Ⅱ』
鏡明塾
06月03日に横浜で鏡明塾が行われます!
[一般]13:05~14:50 『説得と交渉術』(406教室)
[中高]17:05~18:50 『日本史研究:安土桃山時代Ⅱ』(404教室)
★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)
・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html
参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。 (※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます) (※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください) 申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。 では、みなさんの御参加、お待ちしております!
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06【後記】『命を繋ぐために』
マイナスの事態を想定することを「縁起が悪い」と一蹴する人が居ます。もちろん、ネガティヴに捉えれば、悪い想定に引きずられることも考えられます。しかし、災害や事故などは想定することで被害を避けたり、小さくする可能性があります。つまり、ポジティヴに想定すればいいわけです。未来のためにプラスもマイナスも想定しておく。そのために過去をしっかり踏まえる。未来をAFTERとして捉えることは、過去を糧にするということです。そういう感覚を、身近なことから大きなことまで持つことが出来れば、堂々と希望を持って未来に迎えるのだと思います。鼎談はまだまだ続きます。じっくり考えながらお付き合いくださいませ。ではまた次号でお目にかかります。
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編集 矢萩邦彦 笠原正嗣(ML) 佐藤慧(EXTRA)
執筆 矢萩邦彦 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行 株式会社スタディオアフタモード
〒220-0072 神奈川県横浜市西区浅間町1-4-4 小泉ビル401
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