AFTERMOD E-PRESS 【vol.0054】 (2012年05月13日号)


=index=
00【巻頭】『ズレと忘却を越えて』
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ4』
02【特集】安田菜津紀『あなたのいない、これからの時間を。』
03【告知】安田菜津紀・佐藤慧『THE FUTURE TIMES』 Gallery & Live in OSAKA 開催!
04【告知】佐藤慧「ジャーナリスト佐藤慧といくザンビアスタディツアー」受付開始!!
05【告知】6月3日 矢萩邦彦 鏡明塾『説得と交渉術』『日本史研究:安土桃山時代Ⅱ』
06【後記】『命を繋ぐために』

本サイトはこちらから↓
【AFTERMOD E-PRESS】
http://www.aftermode.com/press/


=================================

00【巻頭】『ズレと忘却を越えて』


 授業で東日本大震災の話をしたときのこと、「震災って去年だっけ? 一昨年だっけ?」とこぼした生徒がいました。そういう感覚に出会うであろう恐怖というか、不安は震災直後からありました。阪神淡路大震災が起きたとき、やはり1年間は受験業界でも地震関連の問題が出題される可能性があると言って話題に上り続けました。実際、社会や理科だけでなく、国語でも震災関連の出題をする学校もありました。しかし、1年経過するとすっかり元に戻ってしまって、地震の解説に時間をかけていると「先生、もう地震関連はトレンドじゃないですよ」と信じられないことを言う講師までいました。何のための勉強か。究極的に言えば、生きるためです。より良く生きるため。その過程においてトレンドかどうかなんて知ったこっちゃないですし、そもそもそういう言葉が出てくること自体がズレています。しかし、そんなズレが垣間見えたのも震災起こったからとも言えるわけで、危機感を覚えた人達がきっと色々な所で動き、今を迎えることが出来たのだろうと感じます。日本が元々持って居た脆弱さとフラジリティ。僕らはそれを知って、どうすれば良いのか。そんなことを考えながらお読み戴ければ幸いです。

(矢萩邦彦)


━━━━━
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ4』


(PHOTO)


日玉浩史(以下、日玉そう、それだけだと十分でないというか、伝わりにくいというか。長年の、千年の恨みつらみもあると思うので、共同で外部の人と一緒にやるということが、混ざっていくことでないとダメだと思う。その為には人と人とのつながりがドンドン始まっていくようなことが起きる必要がある。Eメールのやり取りはスピードとしては良いんですが、情報量としては少なすぎるんですよね、めんどくさいし。やっぱり、人に会うのが一番早い。矢萩さんのところも、そういうことをバネにして、色々と企画とか、目的を見つけてつなげていくとかした方が良いのかもしれないですね。さっきも矢萩さんが言われましたが、たとえ内部出身の人でも、一回外部に出た人が帰ってくるだけでストレスになるということもあるだろうから、その中間支援というか、間に入って何とか人をくっつけていく、そこから有機的な何かを生み出していくというのが大切なのかもしれない。


松岡正剛(以下、松岡それがね、あそこはメディエーターが一番いない地域なんですよ。日本全体の中でメディエーターなしに、直に土地や海から立ち上がっているのは東北と沖縄なのよ。沖縄もメディエーターなんていらない。東北は三沢基地があるけれども、沖縄はもっとたくさんあって、それが半分軍事化されているわけですよね。そこで自衛隊が頑張るでんすが、自衛隊は軍事なき支援だから、やっぱり立ち上がろうとするとアメリカ軍というものとぶつかっちゃうわけですよね。ところが日本はそこを上手に、沖縄モデルと、東北モデルというものを使って、封印してきちゃったんですね。


日玉そんな所ばかり上手にやってどうするんでしょうね。


松岡僕はどこかで発言したけれども、今回の復興や復旧や再生は東北モデルと沖縄モデルを同時に考えた方がいい。同じくらい困難なんだけど、困難な問題を考えろと、引き受けなさいと。普天間もそうだけど、沖縄をずっと詰めていくと、日米軍事同盟の中であることと、沖縄県民の考え方・生き方というものはハイブリッドに作られているわけだから、どこかでハイブリッドの間みたいなところが切れてくるんですよね。飛行場の長さとか、海底のサンゴ礁だとかでも切れてくるし、交付金や支援金がどうなっていくってことでも切れてくるし、海兵隊のような東アジアの安定なのかとか、圧迫なのかはわからないけどそういうものとも繋がっている。東北というのは、北海道の北方四島が残っていますけれども、やっぱりそういうものの中の北東アジア圏全体の軍事に組み込まれていますから、そうすると自衛隊が頑張って何かしたくても、そことぶつからざるを得ない、もちろんそういうことを考えないでやってしまっても良いとは思いますよ。


日玉あとは、これはホントにアイデアだけなんですが、例えば自衛隊、軍事力を使えないわけじゃないですか。結局、あの規律、統制、システムをどう他のところで使えるのか、もう少しこういう災害時以外の、普通に人が感じられるような、日常的に感じられる場所に使えるのか。もしかしたら農業と絡めて、彼らの活動と並立させたらいいんじゃないかというような話を漠然と友人たちとしていたんですよ。それこそ吉里吉里人のような食料自給率100%、あそこの場合は医療だったり、いざとなったら土木関係とか、今回もインフラもあっという間に整えてしまったし、その能力を農業にも、産業にも使えるんじゃないかと思うんです。


松岡そういう可能性が高い一種の組織力とか統制力とか、日本への愛とか、そういう所から行くと、農業、漁業、自衛隊というのは重なるところがあると思うんだよね。思うんだけど、なぜできないのかというと自衛隊は、災害法に基づいていて、生産や管理だとか生活に関与しないんですよ。まあできないというところがあって、被害の対策のための巨大要員で、その時動ける組織力のある集団はヤクザくらいなもの。


日玉結構活躍されているみたいですね。


矢萩邦彦(以下、矢萩阪神淡路のときも活躍していたようですね。


松岡そういうのも含めてもっとこの話を考えると、平時と有事という問題を考え損ねたんですね。平時の中をコンプライアンスでフラットにして、そして犯罪だとか何かはっきり被害が出たところだけでセーフティーネットをつくるとか、失業保険を作るとか病院を建てるということで、それは本来有事のときのための訓練であるはずだし、有事のモデルであるはずなのに、平時によって統計的な平均点を作って、有事を全部外側に出しちゃったわけ。有事の一番外側に日米同盟があるから、有事っていうのは日常の中で編集がきかないモノになってしまって、制度的なことしかできない。自衛隊もやれることとやれないことと全部線引きされていて、その中でしか組み立てられない。そうすると、有事のときにものすごく弱い国を一生懸命作ってきたということになる。その有事のもとはアメリカ軍ですから、日米同盟ですから、本来は有事のための自衛隊が平時では使えなくなるわけです。


矢萩フラットなのは中庸であれば良いと思うのですが、全く中庸でない。


松岡そうですね、中庸でもないし、組合せ、アソシエーションがないんです。出入りがない、ピシャーっと分かれちゃっている。


日玉システム自体、システムと思われているものが、システムとして機能できないように、できない方向に作られているような気がします。


矢萩例えば、先ほどのお話のメディエーターだとかを、今東北や沖縄に入れるであるとか、作るであるとかということは可能でしょうか?


松岡可能だと思います。ただし、それには今までの制度ではない、レギュレーションではないモノも作りあげないといけないです。


矢萩まず制度からですね。


松岡そうそう、それか制度を無視して、民衆の力の中で自発的に創っちゃう。


矢萩とりあえず僕らは草の根的に入り込んでいる組織なので、やはり制度からというのはとても難しいんですね。もちろん同時に考えていかなければいけないんですけども、僕らみたいな集まりが、現地または後方で何ができるのかっていうことをもっと具体的に考えていかなければいけないな、ということを考えていて。


松岡編集学校の例で出すと、編集学校というのはそれぞれが主婦であり、会社員であり、ダンサーであり、どこかに所属していて、組み合わさって、その上でポリロールで動いているわけでしょ。例えばこういうところでは、もっと大きい仕組みがないとそれを全部もとへ、平時へ戻しちゃうと、全部結局ね、会社の失業保険がどうなっているのか、農業としてどのくらいの税金を納めているのか、地代はいくら払っているのか、今の国家が決めているモノに全部戻っちゃうわけです。新しいメディエイター必要だとすれば、ポリロール型か、つまり今までのレギュレーションに引っかからない、あるいは引っかかったとしてもそれはちゃんと普段やってますと、あとの何かでやっているんですと。


矢萩そのポリロールを許容する文化って言うのは関東にもないと思うんですよ。そこをなんとかできたらいいかと思っているんですよ。


日玉東北を最初のモデルにしちゃえば良いかも。


矢萩ポリロールであるというだけで、あんまり信用してもらえない傾向があります。例えば僕たちはこれからボランティア活動を続けていくにあたって、日常の中にボランティアという活動が入らないと意味がないわけです。別に普通に生活しているよ、仕事もしているよ、でもボランティアもしているよ。そういう状態が普通の状態になっていないと続かないと思うんですね。そして、今回は特に続けないといけないと思います。そういうモデルをやっぱり提示することというのが、これからのボランティアに必要なことなのではないのかと考えています。


松岡ゲバラなんかは、ボランティアじゃなくてゲリラの話になるんだけどね、どう考えたかというと、キューバやベトナムを、ボリビアを各自の地域に持てと言ったわけね。いちいちキューバに来なくていい、ベトナムに行かなくていい、でもどこにでもベトナムはあるだろうと。反戦を、そういうのを各地に持てと。ということは、東北の今の問題を日本全土が、世界がどう分有するのか、さっきシェアって言ったけどそれがゲバラの思想なんですよね。一方で、人種問題というのがあって、黒人は全世界にいるわけでしょ。当然アフリカだけではない。でも黒人を取り上げるには、国家のレベルではなくて、ポリカラーなわけ。もう二重、三重目が黒人であったり、白人であったりするわけですよね。ホワイトはWASPのように制度化したわけですよ。ナチスもそれをやったわけですよね、アーリアやゲルマンとか。そこの一致しているものに合わせてグローバリゼーションが起こって日本がそこにハマっちゃったわけだから、そこから何かを抜き出そうとすると、今はゲリラも黒人もイスラムも、これ宗教、信仰ですよね。ポリロールです。ロールというかポリイデオロギーというか、ポリソートというか。そういう何か"あるもの"が、グローバリゼーションの中にいながらも浮上できる、そういうモノが今までは世界を組み立ててきたので、一体に日本にとってそういうモノが一体なんだったのかということをもう一度問い直さないといけない。でも、それが一切政教分離から始まって、フラットにされてきたから……


矢萩取り戻すための……


(次号へ続く)
(写真=安田菜津紀)


(次号に続く)

━━━━━
02【特集】安田菜津紀『あなたのいない、これからの時間を。』


(PHOTO)


 昼間は汗ばむほど温かくなってきた5月。穏やかな空の下、静かな近所の住宅街を歩いていて、ふと、昨年の今頃は何をしていただろうと考えることがあります。


(PHOTO)


 去年の今頃はというと、陸前高田へ一週間ごとに往復しては、避難所に物資を運び、そして小学校への支援活動を始めた頃でした。街のいたるところで遺体の捜索が続けられる傍らで、3月には泥に覆われて灰色に見えた大地の割れ目から緑が見えはじめ、心が少しだけほっとしたのを覚えています。


(PHOTO)


 その一方で私が行動を共にしていた佐藤慧の一家にとっては、大きな悲しみが心を覆っていた時期でもありました。4月下旬にようやくお母さんの実家である広島で葬儀を終え、終始無言で車を走らせた道中。「新聞では何千何万って数字ばっかり踊ってるけどね、僕が亡くしてきたのは“人”なんですよ。顔が分かる、一人一人の人なんですよ」。お父さんの頬をつたう涙を、どうしたら止めることができるだろう。そもそも止めることで心が軽くなるのだろうか。ただ押し黙ることしか、できませんでした。


 54歳という若さで亡くなったお母さん。生前、手話の通訳ボランティアなどの活動を盛んにしていたそうです。津波警報が鳴ったら、きっと耳の不自由な方のところに行く、そんな人だったと家族は話してくれました。


 「彼女はいつも、人のために生きる人でした。
  でもせめてこんなときくらいは、身の安全を第一に考えてほしかった」。


 葬儀の途中、お父さんは悔しさを押し殺し、静かな声で参列者にこう語りました。大学時代からずっと寄り添ってきた夫婦。お父さんの一番の幸せは、毎日家に帰り、お母さんのご飯を食べることだったと言います。


 「1年経ったら、何かが変わると思っていました。
  でも気持ちは全く、あの日から動いていないんですよ」。


(PHOTO)
 
 昨年の3月11日から、前に進むことができない心の時間。1年という月日は、大切な人を失った悲しみ、そして心に重くのしかかってくるものを和らげるには、あまりにも短いものでした。

 ようやく戻ってきた鳥たちの声を聴きながら、お母さんが残したかったものを思った昨年の5月。最後まで人のために生きたお母さんの命をつなぐことができるのは、生きている私たちしかいない。この街の中で、そのバトンを受け取りたい。そんな決意を新たにした季節でした。今年も美しい緑が、陸前高田市を包み始めています。


(写真+文=安田菜津紀)


━━━━━
03【告知】安田菜津紀・佐藤慧【The Future Times Gallery & Live@大阪】


6/3の後藤正文さんのライブチケットはお陰様で完売しましたが、ギャラリーは下記時間内、常時開いておりますので是非足をお運びください。夕方18:00頃まではなるべく在廊しています。
詳細はこちら→ 
http://www.thefuturetimes.jp/tft_event/

■日時 : 5月31日(木)・6月1日(金)・6月2日(土)・6月3日(日)
※6/3のみ、夜の部 "LIVE&TALK"開催

■会場:digmeout ART&DINER
〒542-0086 大阪府大阪市中央区西心斎橋2-9-32 アメリカ村・アローホテルB1F / TEL:06-6213-1007

ギャラリー(写真展)
※ ギャラリーのみでライブ演奏の予定はございません。
■入場無料
■OPEN:12:00~24:00 (最終入場は23:30まで)
■写真展:渋谷敦志 / 佐藤慧 / 安田菜津紀

<昼>ギャラリー(写真展)
■入場無料
■OPEN:12:00~15:30
 (入場及びラストオーダー15:00まで)
■写真展:渋谷敦志 / 佐藤慧 / 安田菜津紀
<夜>LIVE & TALK
■チケット制(有料)
■OPEN/START:17:30/18:00
■ライブ出演者:後藤正文
■トークライブ:後藤正文 / 渋谷敦志 / 佐藤慧
イベント | TheFutureTimes



━━━━━
04【告知】佐藤慧 「ジャーナリスト佐藤慧と行くザンビアスタディツアー」


「ジャーナリスト佐藤慧と行くザンビアスタディツアー」

 ◆2012年9月18日(火)~2012年9月30日(日)

基本旅行代金319800円 ※燃油サーチャージ53000円日本&現地空港諸税別途要
申込・詳細はこちらへ
http://www.jeps.co.jp/africa/satokei_studytour.html

アフリカ南部に位置するザンビア共和国。雄大な自然、人懐っこい人々、豊潤な文化。そこに生きる人々から学ぶことは数多く、忙しい日本の生活では目につかない沢山の小さな喜びに気付かせてくれます。また、貧困やHIVエイズ、世界規模での資源の奪い合いなど、私たちの生活とも無縁ではない問題について向き合うことで、これからの世界に生きるひとりの人間として、皆で未来を考える機会となればと思います。



━━━━━

05【告知】矢萩邦彦 鏡明塾 『説得と交渉術』『日本史研究:安土桃山時代Ⅱ』


鏡明塾


06月03日に横浜で鏡明塾が行われます!

[一般]13:05~14:50 『説得と交渉術』(406教室)
[中高]17:05~18:50 『日本史研究:安土桃山時代Ⅱ』(404教室)

★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)

・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
 「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。 (※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます) (※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください) 申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。 では、みなさんの御参加、お待ちしております!



━━━━━
06【後記】『命を繋ぐために』


 マイナスの事態を想定することを「縁起が悪い」と一蹴する人が居ます。もちろん、ネガティヴに捉えれば、悪い想定に引きずられることも考えられます。しかし、災害や事故などは想定することで被害を避けたり、小さくする可能性があります。つまり、ポジティヴに想定すればいいわけです。未来のためにプラスもマイナスも想定しておく。そのために過去をしっかり踏まえる。未来をAFTERとして捉えることは、過去を糧にするということです。そういう感覚を、身近なことから大きなことまで持つことが出来れば、堂々と希望を持って未来に迎えるのだと思います。鼎談はまだまだ続きます。じっくり考えながらお付き合いくださいませ。ではまた次号でお目にかかります。



=================================
編集  矢萩邦彦 笠原正嗣(ML) 佐藤慧(EXTRA)
執筆  矢萩邦彦 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード
     〒220-0072 神奈川県横浜市西区浅間町1-4-4 小泉ビル401
本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、
法律で定められた場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。
記事の使用をご希望される場合は、
タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。

取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com
AFTERMOD E-PRESS since 2010-08-09 / Copyright 2010-2011 studioAFTERMODE.
All Rights Reserved.

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0053】 (2012年04月30日号)


=index=
00【巻頭】『誰が為の未来』
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ3』
02【回廊】安藤理智『ため息のでる美しさ アヤソフィア』
03【告知】安田菜津紀 写真展『Ekilooto of Uganda~HIVと共に生まれる~』開催中!
04【告知】佐藤慧 シンポジウム『未来を探検する知のバトンリレー 人類の未来』映像公開!
05【告知】6月9日 須田誠×佐藤慧トークイベント『「なぜ撮るのか?」写真を通じて生き方を考える』
06【後記】『ポジティブな想定力』


本サイトはこちらから↓
【AFTERMOD E-PRESS】
http://www.aftermode.com/press/



=================================

00【巻頭】『誰が為の未来』


 震災から1年以上経過し、ところどころに過去との断絶が見られるようになった。被災地の光景をテレビの画面越しに見て、都会では人々がスーパーに走り、水やカップラーメン、乾電池などを求めて我先にと争ったことなど、まるで現在と切り離された過去の出来事のように見える。あの時、起きるかもしれないと思われていたこと(自分自身に被害が及ぶ災害、危機)が、今日、明日に起きない保証はないというのに、それでもどこか、明日も安穏とした日々が続いてしまうように錯覚してしまう。ところが、「突然この命が危機に直面するかもしれない」という危機感は幻想ではなく、実際にすぐ隣に、肌の触れ合うところに存在している。日本全体が文字通り震撼した昨年の震災から人々が学び取れることとは何だろうか。それは既存のシステムや生活を疑うことから始まり、最終的にはひとりひとりの生き方、日常の捉え方という根本的な価値観を問いなおすことではないだろうか。何よりも自分のため、自分の大切な人の未来のために、過去から学び、未来を考えることには大きな意味がある。そして、その個々の精神的な葛藤、学びが、社会全体の「未来への推進力」になるのではないか。その学びのために必要なのは自分自身、そして他の人々との対話を通した思索、次いでそこから生まれる行動であると強く信じている。今回も引き続き掲載している鼎談、『震災と日本のフラジリティ』の第三回から、過去から現在に至り、未来へと続く「未来への意志」を感じて頂けたら幸いである。
 (佐藤慧)


━━━━━
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ3』

( 『震災と日本のフラジリティ2』 )


矢萩邦彦(以下、矢萩このあいだ僕たちの団体で一般の方を招いた報告会をしまして、そのときお父さんとお母さんが被災してしまった岩手出身の仲間が話したんですね。そして、質疑応答の際に、岩手に住んでいたことのある人が手を上げられたんです。「よそ者がズカズカ入ってこないでほしい。とにかくそれが気にくわないし、復興は望んでいない。復旧で十分、元に戻りさえすれば良い、ホントによそ者が余計なことしないでほしい」。ということを声を張り上げて主張されていました。僕たちの中に岩手出身の人間がいないなら、その意見はよく分かるのですが、岩手の人間が行ってやっていることに対して、そういう意見が出てきたことにものすごい溝を感じたんですよ。


松岡正剛(以下、松岡もう一つ話すと、柳田國男が『遠野物語』を 佐々木喜善から聞いて、そして日本の民俗学が始まったんだよね。ところが、佐々木喜善が語っていることと柳田が書いたことは違うんですよ。大体同じことは書いているんだけど、その解釈と、それ以降の民俗学の考え方は違っていて、その後柳田は『雪国の春』というものを書くんですが、瑞穂の国、つまり稲穂が実る豊かな国がこんな北のね、雪国の中にもあったと。これは、御田から天皇の穀をもった稲穂の国が、津々浦々北のここまで来ているんです。というような、一国民俗学というんですが、柳田の民俗学がそこで確立して、これは農政省のプロジェクトでもあったわけだけど、そのときに東北全体が稲作常民の国家の一つであるような調査報告研究を確立したわけです。これに対して、折口信夫、宮本常一といった人が、そうじゃないんじゃないか、ということで、沖縄とか見るようになって、東北と琉球と全然別だと。例えば、東北はアキタコマチとかササニシキとか今はありますが、もともと長らくは雑穀なんですよ。マタギでしょ。漁労でしょ。マタギと漁労は御田からの稲作の民とは違うわけです。しかし、陸羽132号のような有名な稲が東北に生まれて、それを品種改良して、ものすごい努力をして、おいしいお米を東北は作り上げてきたんだけど、それは柳田が言うような農政学的に同じ日本の国土を作るというような部分の行為ではなくて、ホントに東北人の独自の努力なんですね。ホントにすごい努力をしたので滅茶苦茶おいしくなったわけですし、日本中が買い、中国でも高い値段が付くようになった。こういう日本のフォークロアっていうのは、民俗学的な国家観からも東北はズレている。深い。難しい。


矢萩陸羽132号から農林一号が生まれたんですよね。コシヒカリをはじめ現在日本中で食べているほとんどの米の源流は東北で生まれたと言っていいわけですが、日本と東北のズレというのは意図的にズラされてきたんでしょうか?


松岡最初に、大和朝廷から弾かれたことが千年の蓄積になっているんですね。ズラしたかったわけではないと思うよ。それで、今の原発のあるところは、福井だったり六ヶ所だったり、柏崎刈羽だったり福島だったり、それは高度成長と日本列島改造のもとに作られた科学技術長官で原子力委員長になった時の中曽根・田中時代以来の組み立てなので、全部そういう辺境というとまずいんだけど、そういうところにあてがわれていったわけ。日本というものに、たくさんの日本と日本人がしなかったことのツケが回っているんだよね。


日玉浩史(以下、日玉東北独立かな……。


松岡それもあるんだよね。


矢萩僕は一番それが心配だったんですが、独立した方が良いことというのは何が考えられますか。


松岡経済的には大変だよね。北海道があるから、やっぱり東北4県とか新潟までとか、どこまで入れるかにもよりますが、前に岩手の増田知事の時に、浅野史郎知事が宮城県を出たときにそういう話があって……。


矢萩3県くっついて東北州にするって計画がありましたよね。


松岡ありましたね。でも、相当大変だろうね。僕は、東北だけじゃなくてもうちょっと色々で独立か連邦制か名前はどうするかは別として、新しいに日本の形態に進まないと無理だと思いますよ。


日玉独立とかの話ですが、自衛隊が今ものすごく頑張っているじゃないですか。相当、限界超えるくらいに。


松岡誰もちゃんと評価してあげていないよね。


日玉それで、今回現地の子供とかは、自衛隊を見ていることもあって、将来自衛隊に入りたいとか言う子供が増えてきている。


矢萩:そうですね、現地に行けば圧倒的に自衛隊の人が動いてますからね。


日玉しかも遺体の処理とかもしていて、それで彼らも相当心身に限界が来ていて、そういう状態になっている今、「東北で蜂起するぞ!」となったら止められないと思うんですね。


矢萩そういう話をすることが、みんな荒唐無稽だと思っちゃっている。でも、そういう可能性があるということを想定だけでもしておくことが大事だと思うんですよね。


松岡そうそうそう。


日玉ありうること。人間としていられる仕事の限界ギリギリ。しかも集団で、統制がしっかり取れている人たちが、それに向かってキツイところに立たされているということは、ありえないことでもないから、そうなったら独立させてあげた方が良い。


矢萩自衛隊の方々も機械的に動いているわけではないですよね。例えばアルバムや写真というものがあったら丁寧に丁寧に拾い上げているのも自衛官の方々です。心があるわけですから、そういう風に思ってもおかしくないはずなんですよ。


松岡ちゃんと手を合わしているしね。


日玉そういうことも考えると、独立云々というのが具体的になるかは分からないんですが、東北の、現地のことをちゃんと見て、伝えられる人、ちゃんと東北自体を掘り返したりするのも早急にやらないといけないと思います。


矢萩:東北の方々がやるのが一番なんですよね。


(次号へ続く)

(写真=安田菜津紀)


━━━━━
02【回廊】安藤理智『ため息のでる美しさ アヤソフィア』


(PHOTO)
http://www.aftermode.com/press/


ビザンチン建築の最高傑作として名高いこのアヤソフィア。歴史の生き証人のごとく、1500年以上前に建てられたこの建物。15世紀に入りオスマントルコ帝国によってモスクに改装された。


(写真+文=安藤理智)


━━━━━
03【告知】安田菜津紀 
写真展『Ekilooto of Uganda~HIVと共に生まれる~』開催中!


5月13日までです!グンゼ原宿本店にて、エイズ孤児支援NGO・PLASの皆様と共に、世界エイズ孤児デーキャンペーン・安田菜津紀写真展「 Ekilooto of Uganda~HIVと共に生まれる~」 を開催中!http://www.plas-aids.org/waod/2012/event.html

ぜひお立ち寄りくださいませ!!


━━━━━
04【告知】佐藤慧 シンポジウム『未来を探検する知のバトンリレー 人類の未来』映像公開!


今年1月に開催された日本科学未来館の企画展「ウメサオタダオ展―未来を探検する知の道具―」関連イベントシンポジウム「未来を探検する知のバトンリレー 第1回 人類の未来」の動画がアップされております。
http://goo.gl/r8tQN  

村上陽一郎さん(東洋英和女学院大学学長)、松沢哲郎さん(京都大学霊長類研究所所長)という素晴らしすぎる人々と共に佐藤慧(フィールドエディター/ジャーナリスト)の名前を連なせて頂きましたm(_ _)m 
今でも胸に残る、濃密な時間を過ごせたイベントとなりましたので、
ぜひお時間のございます時にご覧いただければと思います。


━━━━━
05【告知】6月9日 須田誠×佐藤慧トークイベント『「なぜ撮るのか?」写真を通じて生き方を考える』


佐藤慧がケア・インターナショナル・ジャパン( http://www.careintjp.org/ )主催の
ファンドレージングボランティアの第4回チャリティートークイベントに登場いたします。


◆日時:6月9日(土)18:00~20:00(17:30開場)
◆場所:サンクチュアリ出版1Fイベントホール
http://www.sanctuarybooks.jp/company/profile11.php
◆定員:50名

【申し込みはコチラ】→http://goo.gl/AmdeR
上記フォームから申し込みができない方は
fundraising.challenge2@gmail.com までメールのタイトルを「6/9なぜ撮るのか?参加希望」とし下記の内容を明記の上メールにてお申し込みください。
「名前」「ふりがな」「メールアドレス」「参加人数」「終了後の交流会希望(別途1500円)」

こちらのイベントの経費を除いた収益金は全額CAREの東日本大震災のプロジェクトに募金させていただきます。


━━━━━
【再掲告知】安田菜津紀
「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くカンボジアスタディツアー」申込受付開始!


来たる2012年8月15日~8月25日。 
「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くカンボジアスタディツアー」が行われます!!
その正式募集が5月1日から開始しました。
ふるってご参加ください!

●今回は高校生チャレンジ枠として、2名無料枠を設けます
●現時点での詳細はこちらです→
http://ameblo.jp/nyasuda0330/


━━━━━
06【後記】『ポジティブな想定力』


 マイナスの事態を想定することを「縁起が悪い」と一蹴する人が居ます。もちろん、ネガティヴに捉えれば、悪い想定に引きずられることも考えられます。しかし、災害や事故などは想定することで被害を避けたり、小さくする可能性があります。つまり、ポジティヴに想定すればいいわけです。未来のためにプラスもマイナスも想定しておく。そのために過去をしっかり踏まえる。未来をAFTERとして捉えることは、過去を糧にするということです。そういう感覚を、身近なことから大きなことまで持つことが出来れば、堂々と希望を持って未来に迎えるのだと思います。鼎談はまだまだ続きます。じっくり考えながらお付き合いくださいませ。ではまた次号でお目にかかります。
(矢萩邦彦)


=================================
編集  矢萩邦彦 笠原正嗣(ML) 佐藤慧(EXTRA)
執筆  矢萩邦彦 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード
     〒220-0072 神奈川県横浜市西区浅間町1-4-4 小泉ビル401
本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、

法律で定められた場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。

記事の使用をご希望される場合は、
タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。

取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com
AFTERMOD E-PRESS since 2010-08-09 / Copyright 2010-2011 studioAFTERMODE.
All Rights Reserved.

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0052】 (2012年04月16日号)


=index=

00【巻頭】『情報はサイである』
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ2』
02【連載】佐藤慧『アフリカ再訪 2012春 (4)Way Station「道の駅」-それぞれの未来へ』
03【告知】5月1日-3日 安田菜津紀 「JAPAN SEED2012」
04【告知】5月1日 「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くカンボジアスタディツアー」申込受

付開始!
05【告知】5月10日 安田菜津紀 地デジ9ch!TOKYOMX「ゴールデンアワー」に生出演!!
06【告知】5月6日 矢萩邦彦・鏡明塾『犯罪心理学とプロファイリング』
07【後記】『時を越える言葉』

本サイトはこちらから↓
【AFTERMOD E-PRESS】
http://www.aftermode.com/press/


=================================

00【巻頭】『情報はサイである』

寒い日が続いたかと思うと、急に暖かくなり、何を羽織るか少し考えるような季節が続いておりますね。そんな中、前回から始まりました松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦による鼎談は、早くもご好評をいただいており、改めて3月11日のことを思い起こす契機になっているのではないかと期待しております。また、佐藤慧の『アフリカ再訪』全四編はこの度完結いたします。資源争奪戦に巻き込まれた住人が家をなくし、避難し、それでもまたその地に還り復興させる決意が伝わってくることと思います。どちらの文章にも共通することは、復興はやはり「人」の手によるものだということでしょう。当たり前のことのようですが、今の政治や経済のニュースを考えつつ、鼎談を読んでいるとやはり人がいなくなっているように感じます。もはや「増税」が主軸で復興はそのための理由になっている、目的と理由が逆になっているようにさえ感じてしまいます。去年でしたら、きっと今のようなニュースが出ていたらネット上で激しく議論が巻き起こっていたことでしょう。しかし、今はなんとなく僕たちは慣れてきてしまっている。グレゴリー・ベイトソンは「情報は差異である」であると言っていますが、「サイ」は「再」「最」「歳」「才」「彩」「祭」「際」「債」「災」と色々な文字があてがわれます。でも根っこは同じなのではないかと気が付くことでしょう。ずっと続けていると見落としがちなことがある一方、一度時間を置いて見直すことで気付かされることは多々あります。みなさんのそんな一助になることを信じ、52号をお届けいたします。

(笠原正嗣)


━━━━━
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ2』
(前回『震災と日本のフラジリティ1』)


日玉浩史(以下、日玉):結局、政府の対応なんですけど、僕は税金を上げる、つまり増税ですが、絶対やっちゃいけないと思うんです。


松岡正剛(以下、松岡):やっちゃいけないし、できないでしょうね。


日玉:今の政府の言い方ですと、地域的にも人口動態的にもすべてに税金を掛けるつもりでいるということになります。被災地も、年金で困っているお年寄りにも、全部掛ける、と。消費税を上げるってそういうことじゃないですか。元々は、ずっとそういうことを“仕分けする”と言っていたのに。


矢萩邦彦(以下、矢萩):被災地には「還付する」とは言っていますね。


日玉:そんな大雑把なやり方はできないと思います。今回色々な人と話してきたんですが、例えば漁業がダメになるだろうと思われますが、そうすると就労人口が余ってしまいますので、そういう方には、農業とかにシフトしてきてもらうとかそういう考え方があるのではないかと思います。廃村とかはたくさんあるわけですからね。すると、そういう意味では、人をどう繋げていくのかということをやらないといけないと思うんです。


松岡:「雇用創出」が同時に行われないとダメでしょうね。


日玉:雇用創出の場合、事業を色々やり直すとか、製紙工場のようなものを作り直すことも大切ですが、そういう産業よりもやっぱり第一次産業が大事だと思います。漁業あたりをなんとかしないと、下手するとホントに首を括る人が出てきてしまう状態です。


矢萩:現地の人が納得してくれるかという点はすごく大事だと思うんですね。現地で漁協の方とお話をしたのですが、「俺たちは漁師だから大丈夫だ。」とおっしゃるんですよ。漁業をやるしかないし、漁業しか考えていないし、外からいろいろ言われても他の業種に変える気もない、と。ただ、高齢者がやり直すのははキツイ。どういうことかというと、その漁協の方がヒアリングをした結果、60歳までの人はみんな借金をして、すぐに漁業を再開する覚悟ができているわけです。でも、60歳以上の人はというと、借金を返済できないだろうから、そこは考えないといけないとおっしゃっていました。


日玉:結局、そうやってできる人は良いかもしれません。でも、最悪の場合、放射性物質が流されたために起こる海洋汚染があり、しばらく漁業自体ができないということも考えておかないとダメなんじゃないかと思います。また放射性物質も動き回ることを考えると日本沿岸、近海、太平洋が影響を受けることになるでしょうから、もう少し人の流動性を良くするという案があった方が良くて、そのためにも人がどうつながるかが大事になると思います。アイデアとしては、例えば内陸部の村と沿岸部の村を縁組させてペアで、個々の人達は個々の地域を特化して助けてあげる、労働力が足りなかったらこっちの人に来てもらって……


矢萩:姉妹都市のような感じですね。


日玉:はい、姉妹都市になる感じです。そういうことが少しずつ広がっていくと良いのかなと思うんですね。変に税金を掛けて還付するよりはそこで何か賄ってもらう方が良い。


矢萩:そうなんですよね。拡散しすぎちゃってどうしようもなくなってしまっている感があります。ある程度線引きをした方が良いと思います。


日玉:情報はある程度被災地から集めることはできるから、先に集めちゃうんですけど、それをシェアをしながら役割分担をしていこうという体制もまだできていないんです。


矢萩:そこができていないんですよ。


日玉:そうすると、やっぱり一人でそこを全部引き受けてやらないといけないと思っちゃう人が出てくる。そういう人には、ものすごくプレッシャーがかかり疲労し、実際動きは遅くなっていっちゃう。そこをどうするかが問題です。


矢萩:シェアしようという人はいても、シェアされようという人とのがマッチングできていない。


松岡:独特なのよ。正直あんまりシェアされたくない人もいるし。


矢萩:そうなんですよ。本来、情報を集める人がいて、編集する人がいて、それを受けてバラバラで動けばいいのに、それが「イニシアティブを握られているような感じがするんで嫌だ」っていうような流れがあるんですよね。


日玉:僕らも今、仲人のような人を探そうということを言っているですが、地縁がある人が居ないと難しいんですね。もちろん、もしかしたら自然に動いている人もいるかもしれませんが、足りていないのは明らかで、もともと地縁がないところをつなげてしまっても良いのですが、やっぱり動いてくれる人が地縁のある人だとやる気というか、踏ん張りがきくというか。気合が違います。早急にそのあたりを掘り返していったほうがずっと良いと思います。繰り返しになりますが、こういうことの方が変な増税をするよりも効果があるはずです。


矢萩:今、岩手ですと遠野がやっていますね。


松岡:遠野には、3年前から編工研の所長だった渋谷が入っているんですよ。自分のアパートを二部屋解放して、小さなハブになっている。ただ、彼女の話だとハブ機能でもっとやりたいことがあるけど、それができないくらい足が遅くて、十分キャパシティが使われていないんで、そういうこう凸凹がありすぎて、キャパシティが高いところと、ケイパビリティが高いところと、エスタブルが高いところと、全般的にはバランスが悪い。エスタビリティとケイパビリティが合わない。でもね、これは3.11によって起こったことだけではないんですよ。30年間、もうちょっと言うと戦後の日本が組み立てておかなければいけなかったことが今回全部出てきているんだよね。


矢萩:市と村というか部落の関係が元々あんまり上手くいっていなかった。


松岡:上手くいっていないし、どこから今日話して良いか分からないけど…… 東北というところは何かって言うと、大和朝廷を見捨てた国々なんですよ。一言で言うとね。坂上田村麻呂が征夷大将軍、つまり日本に大和朝廷ができて次に将軍を置いたときに、征夷、蝦夷を征伐っていうわけでしょう。驚くべきことですが、日本人の多くは「エミシ」をアイヌの人々だと思っていて、東北人を「エミシ」と言ったんですね。東北の人は全部そんなこと知っているんですが、そこが“負”の歴史で……


矢萩:津軽王朝とかもそのあたりの話ですね。


松岡:それだけじゃなくって、もう多賀城以降の、白河の関以北のすべてが大和朝廷にとっての制圧の地、服属の地だったわけです。まつろわぬ人々がそこにいて、その人たちが勝手に国づくりをしていた。その国が、その後の江戸幕府のような六十余州の藩の形を最後は取っているけれど、実は古代・中世以来、後々の戦国大名や守護大名や幕藩体制にあたるようなリーダーの国づくりではなくて、元々は盆地ごとの小さな国なんですよ。今、君ら二人が行っても、「奇妙なところだなあ」と思うとは思うんだけど、それはもうずーっとそういう状態だったの。そこに持ってきて、奥州藤原四代が全く別の国を作ったわけです、その前はアテルイが作って、そのアテルイたちが全部滅ぼされている。で、この奥州藤原は全く中央の藤原と関係なくて、本当はもう一つのアナザーカントリーなんですよ。ケルトや初期ゲルマンのようなパルティアとバクトリアとか大月氏みたいな、ユーラシア的な移民に近い空間で、「東洋のチベット」とか呼ばれたりもしたんですが、そこへ持ってきて、藩政奉還の時に、要するに明治維新の時に奥羽列藩同盟というのができて、それで中央の朝廷ですね、明治維新軍が戊申戦争を起こした時に、彼らは全部大政奉還に反対したわけですよね。で、反対して、こういう議院内閣制とか国家を天皇のもとに作りたいと言っていたわけでもなくて、「やりたいようにしたい」と言ったわけです。それが奥羽列藩同盟で、会津が滅ぼされ、福島以北は福島が負けたから全部ほったらかしになったんだけど、そのときにみんなも知っているように、東北を超えて札幌の枠を作って屯田兵やって、北海道を作っちゃったわけです。また、この三段階目で東北は無視されている。そこへさらに、明治国家というものができあがり、続く昭和国家は、「農」を、安いものを遠くから収奪するというシステムを作って、それが二・二六事件になるわけでしょう。東北の飢饉というものに、食えなくてなった連中を全部軍部に持ってきて満洲へ持っていく。東北というものが、また反故にされて、ほったらかしされて満州という全く別の国土というものに構造を入れ替えようとしたわけ。で、戦後の日本というのは、満州の、株式会社満州の、株式会社日本化ですから、満州問題が日本化になったわけで、東北は全然組み立てていない。すると、あとは戦後で同じとはされているけれども、寺山修二や網野善彦さんがずっと語ったりしてきたように、到底同じとは言えない東国というものと西国というものが、ずっと違うまま日本はこれまで来ているので、結局東北というものは、古代蝦夷以来ほとんど私たちの意識や連帯の中にいないんです。もし21世紀に連帯を求めるとするならば、一つ良い悪いは別として、グローバルな連帯意識のもとに東北まで考える。その次、第二段階として、オールジャパンとして日本を組み立てなおすときにどこが良いかは別として東北モデルにするか。三つ目は、東北と他は相変わらず切り離して独自のプログラムを建ててあげるか。この3つの選択を迫られているんだけど、この3つの選択を誰も出来ない。ましてや、この3つのシナリオを同時に語り、その長短を組み合わせて、日本のものに加えることもできない。難しい。難しいと言ってもしょうがないんだけどね(笑)。


(文=松岡×日玉×矢萩、 写真=安田菜津紀)


━━━━━
02【連載】佐藤慧『アフリカ再訪 2012春 (4)Way Station「道の駅」-それぞれの未来へ』


 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の旗が、どこまでも青い空になびいている。熱風が砂埃を舞い上げながら人々の間を駆けて行く。老若男女、あらゆる世代、性別、民族の人々が区別なくここで暮らしていた。ここは南スーダンの首都、Jubaに設置されているWay Station(道の駅)。昨年7月の南部の独立に際し、これまで北に暮らしていた南部出身のものは「北で外国人として生きるか」、「生まれ育った土地で新国家のもとに生きるか」、二択を迫られていた。南北で長く戦争の続いてきたスーダンでは、南部出身者が新国家に寄せる期待も大きく、多くの者が南を目指していた。Returnee(帰還民)と呼ばれる彼らは、その多くが白ナイル川を貨物船で上ってくる。数百、時に数千の帰還民を乗せた船は、初めて踏むことになる新国家の土を前に歓喜の声で沸き立っていた。


 Way Stationの一室で僕は数人にインタビューをしていた。南スーダン北東部、最も大きな面積を持つ自然豊かな州、Jongreiから避難してきたMurle民族の面々だ。Murle民族は牧畜民であり、牛と共に暮らし、水場、草場を求めて同じ牧畜民であるLou Nuel民族と長く敵対していた。時折起こる衝突では、多くの人々が犠牲となった。昨年末から激化してきた衝突は、この1月に激しく燃え上がり、武装したLou Nuelの集団がMurleの村々を襲撃、3,000人以上の死者を出していた。人々は散り散りに逃げ、その多くはブッシュ(草むら)に潜んで避難生活を続けていた。中でも重症を負った人々は、国連機に救出され、首都JubaのWay Stationに匿われていた。


 なんとも理不尽な抗争のように思えるが、両民族はこうやって互いに限りある資源を奪い合って生きてきたのだ。それに拍車をかけたのがスーダンで長く続いていた内戦だ。およそ半世紀もの間、この国では紛争が絶えたことがない。特に第二次スーダン内戦はJongrei州を主戦場としていた。多くの若者が戦場に駆り出され、数え切れないほどの武器が市民の手に渡った。現在、高い殺傷能力を持った銃火器と、長引く内戦によって培われた戦闘技術を用い、両民族の争いは正規軍、国連平和維持軍の介入を持ってしても簡単には鎮めることが出来ないものとなっている。加えて、他民族からなる新生国家の政治パワーバランスを巡って、民族間の溝はより深いものとなりつつあった。


 去年の暮れ、Matha Simon(女性・18)はいつもの様に起き、外に腰掛けながら静かな朝の空気を楽しんでいた。突然遠方から何か騒がしい音が聞こえてきたかと思うと、武装した集団がMathaの家に向かって突撃してきた。警告もなく、ましてや話して分かり合えるような状況ではなかった。いきなりの発砲。家族が次々に倒れていく。恐怖に駆られ体が凍りつく。攻撃対象に女子供は関係なかった。まだ幼い子供の肉片が弾けとんだ。家族のほとんどが殺され、Mathaは拘束された。若く、容姿端麗なMathaは殺されずに連行されることになったのだ。その場で殺されることは逃れたものの、これからどんな非情な仕打ちを受けるかわからない。しかしMathaはなんとか逃走できる隙がないものかと僅かな望みを捨てることはしなかった。武装した男達は、人々を殺すと次に家を燃やし始め、次いで牛の群れを誘導し始めた。何百という牛を追い立てるために男達はMathaから目を離した。一瞬の隙。一目散に駆ける。数百の死体の間を駆け抜け、郊外の空港まで無事逃げ切ることが出来た。そこで国連機に保護され、Way stationに搬送された。


 今Mathaは村に帰る準備をしている。家も家具も、何もかも燃やされたが、皆でまたそこで生活を再建するのだという。生死のわからない家族の無事も早く確認したいという。インタビュー終了後、Mathaが小さな男の子を抱いてやってきた。「私の子よ」と言って微笑むMathaの瞳には、強い母の意志が宿っていた。何がなんでも、生きていくのだ。


「またの襲撃が怖くないの?彼らを憎んでないの?」
「もちろん怖いし、憎いわ、でもあそこは私たちの土地だもの」

(写真+文=佐藤慧)


━━━━━
03【告知】5月1日-3日 安田菜津紀 「JAPAN SEED2012」


5月1日~3日、原宿DESIGN FESTA GALLERY EAST101に、音楽とアート、そして未来を紡ぐメッセンジャーが集う「JAPAN SEED2012」が開催されます!( http://www.designfestagallery.com/
5月3日16:00から、安田菜津紀がトーク出演させて頂きます。お時間のある方は是非お越しくださいませ!
http://japanseed.jp/


━━━━━
04【告知】【告知】安田菜津紀 5月1日 「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くカンボジアスタディツアー」申込受付開始!


来たる2012年8月15日~8月25日。 「フォトジャーナリスト安田菜津紀と行くカンボジアスタディツアー」が行われます!!
その正式募集が5月1日から開始しました。
ふるってご参加ください!

●今回は高校生チャレンジ枠として、2名無料枠を設けます
●現時点での詳細はこちらです→
http://ameblo.jp/nyasuda0330/


━━━━━
05【告知】5月10日 安田菜津紀 地デジ9ch!TOKYOMX「ゴールデンアワー」に生出演!!


地デジ9ch!TOKYOMX「ゴールデンアワー」
4月12日に安田菜津紀が出演させていただきました、津田大介さんMCの地デジ9ch!TOKYOMX「ゴールデンアワー」。その再度出演が5月10日に決定いたしました!
ぜひ、ご覧ください!!

http://www.mxtv.co.jp/gold/


━━━━━

06【告知】5月6日 矢萩邦彦・鏡明塾『犯罪心理学とプロファイリング』『日本史研究:安土桃山時代』

5月6日に横浜で鏡明塾が行われます!


[一般]14:05~15:50 『犯罪心理学とプロファイリング』(404教室)
[中高]17:05~18:50 『日本史研究:安土桃山時代』(404教室)
★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)

・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
 「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。 (※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます) (※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください) 申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。 では、みなさんの御参加、お待ちしております!



━━━━━
07【後記】時を越える言葉


 今回、松岡さん日玉さんとの鼎談を改めて編集しているわけですが、実に発見が多いんですね。昨年自分がその場に参加していたにも関わらず、新たな気づきやアイデアに満ちています。松岡さんは日頃から、何度も読むことを推奨されていますが、読書だけでなく繰り返しすことは、文字通りの繰り返しには成り得ない、と実感します。茂木さんのクオリアは一回性を大事にしていますが、まさに自分も環境も変わる中で、変わらない文字を読むことは新たな関係や展開の可能性に満ちているのだと思います。プラトンの作品は、ソクラテスと弟子達の会話を書物にしたものですが、その言葉は何も変わらないにも関わらず、今も読む僕たちに気づきを与えてくれます。松岡さんは書物こそ「ソフト」ではなく「ハード」だと言いました。小林秀雄は、哲学の古典とは古くなるような性質のものではない、と言いました。そんなことを想起しつつ、また次号でお目にかかります。

(矢萩邦彦)


=================================
編集  矢萩邦彦 笠原正嗣(ML) 佐藤慧(EXTRA)
執筆  矢萩邦彦 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード
     〒220-0072 神奈川県横浜市西区浅間町1-4-4 小泉ビル401
本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、

法律で定められた場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。

記事の使用をご希望される場合は、
タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。

取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com
AFTERMOD E-PRESS since 2010-08-09 / Copyright 2010-2011 studioAFTERMODE.
All Rights Reserved.

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0051】 (2011年04月02日号


=index=


00【巻頭】『何度でも考えること』
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ』
02【連載】佐藤慧『アフリカ再訪 2012春 (3)ジュバ-産声をあげた国』
03【告知】4月10日 佐藤慧 『福留功男、震災と洪水の「これから」を考える』に出演!
04【告知】4月12日 安田菜津紀 地デジ9ch!TOKYOMX「ゴールデンアワー」に生出演!!
05【告知】安田菜津紀 『THE FUTURE TIMES』第2号!
06【告知】4月15日安田菜津紀 『NPO法人フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN』
07【告知】4月22日-30日 安達ロベルト×小原孝博×佐藤慧×安田菜津紀 写真展『Life』  
08【後記】『同じ感覚へ』


本サイトはこちらから↓
【AFTERMOD E-PRESS】
http://www.aftermode.com/press/

=================================


00【巻頭】『何度でも考えること』


 AFTERMOD E-PRESSも51号を迎えることが出来ました。震災から1年が経過し、いよいよ被災地から遠い地域では、過去のことになり始めているように感じます。歴史から、過去から未来を照射する。僕らはすぐに忘れてしまいますが、忘れないように努力することは出来ます。伝え続けることも出来ます。もちろん、知ると痛いこともあると思いますが、それでも過去を受け入れる覚悟が、失敗を繰り返さない、明るい未来を作ることだと信じています。そこで、今回から昨年震災直後に私矢萩邦彦が、エディトリアルディレクター松岡正剛氏、そしてベルギーから復興支援に立ち上がったダンサー日玉浩史氏と行った対談を掲載したいと思います。是非、もう一度震災について考え、そして何か行動をする切っ掛けになれば、と思います。


━━━━━
01【鼎談】松岡正剛×日玉浩史×矢萩邦彦『震災と日本のフラジリティ 1』


 2011年4月下旬。矢萩邦彦は、ベルギーで災害支援活動を行っている日玉浩史さんと共に、二人の共通の師であるISIS編集学校校長松岡正剛さんと対談させていただきました。
 以下はその時の対談模様を原稿にしたものです。1年前にどういったことが話し合われていたのかをご覧いただき、今一度震災について考え、行動して戴ければ幸いです。


(PHOTO)


松岡正剛(以下、松岡):お待たせしました、さっそく始めましょう。
日玉浩史(以下、日玉):お久しぶりです、よろしくお願いします。
矢萩邦彦(以下、矢萩):この度はお時間を取っていただきありがとうございます。よろしくお願いします。


松岡:確認ですけれども、二人とももう現地を見てきているんですよね?


矢萩:はい。『NPOみんつな』という組織を急遽設立し、ボランティアの人達と共に行ってきました。


日玉:実際現地に入って話を伺って歩いている最中も、まだまだ細かな地震が起きたりしていましたね。


松岡:マグニチュードは胸の中でも動いていきますけどね。まあ、そういった活動は起こすことよりも、これを持続的にやろうとすると、やっぱりものすごく大変だと思う。


矢萩:はい、そうだと思います。


松岡:第一、今回は地震以上に、津波でズタズタになってしまったでしょ。これらと、都市型の、直下型の阪神・淡路大震災とは違って、広域のグラウンド・ゼロみたいなことになってしまっている。


日玉:そうです、全くその通りです。


松岡:岩手と宮城と、福島と、それぞれ風土も文化も全く違うし、原発の違いもあるけれども、何より根本的に東北地方全体の成り立ちが違うんですよ。でも、そういうものを日本人は見てこなかったんですよ。長らくね。例えば、岩手や、六ヶ所、津軽、下北、南部、それから宮城の仙台、全然違う。日本人が見てこなかったものに、バババッとNPO、ボランティア、政府に住民も一気に集中したから、一番の矛盾しているところが噴き出ているんですよ。今は、悲しい出来事が気持ちの上で大きいから、まだそれは浮上してきていないけれども、一昨日かな、岩手県知事と二時間くらい話したんですが、「とにかく宮城や福島とは一緒じゃないんです」と言っていました。復興政策もそうだし、何もかもが異なってくる。


矢萩:岩手だけ見ても、隣の地域と違う有様なんですよね。


(PHOTO)


日玉:とにかく、どこから手を付けて良いか分からないということから始まっていて、矢萩さんのところとかもNPOで陸前高田に入ってますけれど、大きな団体でないから横のつながりが取れなかったりしています。インターネットも普及していないので、連携して同じ方向で動くということが難しくなっているのが現状です。みんな目的は「支援」ということなんですけども、具体的に何からはじめるかということが全く見えず混乱しているようでした。そして、やっぱり、陸前高田のある地域だけでも、大きい避難所は十幾つもあって。


矢萩:小さいのはどんどん分裂していってます。


日玉:それらをつなげるだけでもすごく大変なんですね。そのネットワークをどう造りあげていくのか。


矢萩:避難所地図を作り直すそばから、また分裂していくんで、把握しきれないんです。


松岡:辻本清美もそうだけど、みんなやっぱり今までセンター機能を持っていたような、リーダーシップのあるところに集まっていくみたいで、逆に困ってる。


矢萩:今現地に入っている僕らの仲間が、現地で辻本さんと会談をしたと言っていたのですが、「やっぱりどうすれば良いのかわからない」ということを言っていたようです。ただ、「どうしたら良いのか分からない」と思っている人はまだ良い方なのではないかとも感じています。というのも、さっきの話じゃないですが、阪神・淡路と同じだ、あの時はこうだったという動きが初期にものすごく目立ったんですが、事情は異なっています。ですから、まずはそこで一度待つ、ということが大事だと思います。


日玉


松岡:今回の震災と阪神・淡路との間には、リーマンショックが入っていて、それからイスラム、アラブ系の動きも入り、EUの周辺地域の混乱も入っている。そういう激しい動きがあった、阪神・淡路から311、そして今回の震災だから、世界構造の意識も変わっているんだろうね。で、そこに被さって、元々東北という地域がどういうものなのか、世界的にどころか、日本人すら知らない。だから超ムズカシくなる。


日玉:やっぱり岩手、宮城、福島、相当違うものなのでしょうか?


松岡:違うねえ。まず一番岩手が違う。


日玉:僕は仙台に知り合いが多いのですが、岩手のメンタリティの違いというのもなんとなく見える気がしないでもありませんでした。


松岡:仙台には前も行ったもんね。


日玉:そうなんですよ。それで、文化人とかその辺りの若い人とかも知っているのですが、ちょっと足が遅いんですよね、盛岡と比べると。実際に被害も大きいことが関係しているとは思うのですが、どうも周りの様子を気にしながらどう設えようかと、周りを気にし過ぎて動けないようなんですが、盛岡は割とドンドン動けちゃうんですよ。そこらへんは文化というかキャラクターの違いというものがあるんじゃないかという気がしましたね。その辺も、歴史的なものもあるのかもしれませんね。


松岡:ものすごく大きい。


矢萩:すごくありますね。一番最初に僕たちは、「ジャーナリストを現地にいれるかどうか」ですごく悩んだんですよ。阪神・淡路のときにカメラを被災者に向けるのは暴力である、ということが散々指摘されたこともあって、岩手出身の仲間だけにカメラを持たして、あとは禁止ということをやったんです。でも、実際岩手に入ってみると、ドンドン撮ってほしい、ドンドン取材してほしい、もっとジャーナリストを入れて欲しいという要請がありました。じゃあ、他の地域もそうかというと、例えば仙台では、阪神のときと同様、カメラに入ってきてほしくない、という声がたくさん聞こえてきたりしました。


日玉:その辺の対応の仕方も、ある程度モデル的なものがあったらやるべきことがわからなくもないんですが、要は、東北のことは良くわかっていないということなので、そこから構築していかないといけない感じです。


矢萩僕らも現地入りのボランティアさんを募集したのですが、実際に現地でボランティアが入れる状況でもなく、かつ現地の人に「ボランティアに何をしてほしいですか?」と尋ねても、「何をしてもらえば良いのかわからない」という答えが返ってくるんですね。じゃあ、全体的にそうなのかというと、宮城では泥をかきだす人が足りないから来てくれという声があったりします。ところが、それぞれの地域で状況が大きく違うのかというと、そんなことはないんです。


(PHOTO)


松岡:状況は、フィジカルな部分は似ていますよね。被災状況ね。宮城県は上手くいっていないけど、仙台市はひょっとしたら可能性あるかもしれない。ものすごく複雑な状況なんだよね。そういうことはまだ良くわからない状態。原発を抱えた福島が言っていることを絶対無視するわけにはいかないでしょ。でも避難民は四散しているわけじゃないですか。福岡まで行っているわけですが、決して上手くいってなくって、八女郡あたりに12件の民家配分されているけど、入りきれていないわけでレセプションの問題も含めて、ものすごく新しい大問題が出ています。例えば、国際ボランティア組織がこれから何をするかが非常に大きな問題なんですよ。原発だけでなくて、海から入ってくる行動型環境保護団体のような可能性もあって、すでにそういうことを指摘している本も出ているのですが、日本の海というは穢されていると。クジラにおいても、原発においても穢されていると。そういうことについて日本人は何もしていないんじゃないか。ただこういったことを一緒のことだと誰も思っていなかったと思うんだよね。


矢萩:繋がっちゃいましたね。


松岡:そうそう。「我々が日本を改めるのである」というようなことも動き始めていて、もう一つが瓦礫処理のことですが、そのコストは3000億とも5000億とも言われてるけれども、このままいくと日本では手がない。業者に頼むしかない。仮設住宅ももちろんそうなんだけど瓦礫処理、原発の中のロボット、誰かがやるって言っても結局業者がやる。特に3000~5000億の瓦礫処理に対して、例えば中国とかは目を付けているわけです。それから海運系が色々ガタガタなので、これは東アジアの海運が登場してくる。今までは普通の海運業者が運ぶことができていたわけだけど、国際的な危機を救わなければいけないという理念に基づいて動き出すことの後ろには、東アジアがいる。ちょうど欧州の原発屋さんが日本に関与してきて、今まで絶対に来なかったような要人がサッときたりすることが、国際的には逼迫しているんです。その中で一人一人の自由意思としてのWillが、ボランティアという本来の意思が、育まれていくのか非常に難しいわけです。


(次号へ続く)


(文=松岡×日玉×矢萩 写真=安田菜津紀)

━━━━━
02【連載】佐藤慧『アフリカ再訪 2012春 (3)ジュバ-産声をあげた国』


 熱風が顔に吹き付ける。奥歯には砂の感触。眩暈を覚えそうな程の気温と、ねっとりと体中に絡みつく湿気の中、僕はバイクタクシーの背中に跨り、南スーダンの首都、ジュバの街を走っていた。南スーダン、2011年7月9日、アフリカ大陸54番目の国家として産声をあげたばかりだった。それ以前は(自治は認められていたものの)北に位置するスーダンの一部として、長い間独立を目指していた。数十年続いた紛争は、停戦、開戦を繰り返しながら、この度の独立によって一応の決着が着くかに見えた。


 僕は2003年以降スーダンで起こっていたダルフール紛争に関心を持っていたため、この国の行く末にはかねてから興味を持っていた。加えて、コンゴ民主共和国の取材をするにあたり、その国が内部に抱える問題というものは、外部との関係性によって生み出されるのだということを強烈に感じていた。豊富な資源を抱えるアフリカの国々は、先進国の「貯蔵庫」として好き勝手に国境を引かれ、民族紛争、宗教戦争といった火種を撒かれて不安定な政情下に置かれてきた。


 ここスーダンも、黒いダイヤモンドと呼ばれる石油の利権をめぐって、沢山の命が奪われていた。現在、独立を果たした南スーダンと(北)スーダンとの間には再び確執が生まれている。両スーダンを合わせて考えたとき、そのほとんどの油田は南にあり、その石油を海(紅海)まで運ぶためのパイプラインは北にあった。その間に国境が引かれたため、両者の間では利権の配分をめぐり緊張した空気が漂っている。北のバシル大統領は「戦争も辞さない」と発言し、南は南で独自のパイプラインを作るから北のルートはいらないと言う。国境では既に衝突が起こっており、北の爆撃機が南の村を襲撃したというニュースも入ってきている。加えて北では、農作物の不作により、食べ物を求めて難民化した人々が南を目指すのではないかという見方も出てきている。紛争による不安定化も伴って、最悪の場合400万人に達する人が飢餓に直面する可能性もあるという。


 有限なる資源の奪い合いが、線のこちら側とあちら側、二種類の命の間で火花を散らしている。国境とは、何のためにあるのだろうか。僕たちは、自分の命を永らえさせるために誰かを殺しているのだという事実を、きちんと正面から見つめなければならないのではないか。これは南北スーダンだけの問題でもなければ、アフリカ大陸の抱える問題でもない。人間というものが、一体どのようにして未来を築いていくのか、その本質が問われているのだ。目を瞑り、「知らなかった」ということは簡単だ。ただ、それではいつまでたっても真の共存社会は生まれない。限り在るこの地球上で共生していくために、まずは人間自身の抱える罪を、痛みを見つめなければならない。今、南北スーダンで、コンゴで、アフリカ各地で進行している出来事は、そういった本質的な問いを含んでいるのではないかと、叩きつけるような熱風を顔に感じながら思いを廻らせていた。21世紀に産声をあげたこの国は、どのように育っていくのだろう。その姿は今後の人類が歩んでいく道を示唆するのではないか、そんな気がしてならない。


(PHOTO)

(写真+文=佐藤慧)


━━━━━
03【告知】4月10日 佐藤慧 『福留功男、震災と洪水の「これから」を考える』に出演!


福留功男、震災と洪水の「これから」を考える

4月10日 20:00より  ニコニコ生放送 にて、佐藤慧が再び福留さんとご一緒させて頂きます。
テーマは「震災から1年経った今、被災地に何をしていくべきだと思いますか?」。
先日のタイチャリティーマラソンの模様も報告させて頂きます。ニコニコ生放送では、皆様からのコメントもリアルタイムで僕たちに届きますので、どうぞ「ご参加」ください!

http://goo.gl/7K5WV


━━━━━
04【告知】4月12日 安田菜津紀 地デジ9ch!TOKYOMX「ゴールデンアワー」に生出演!!


地デジ9ch!TOKYOMX「ゴールデンアワー」
4月12日 21:00~22:00 地デジ9ch!TOKYOMXにて、ジャーナリストの津田大介さんがMC「ゴールデンアワー」にゲストパネリストとして安田菜津紀が出演させて頂きます。
カメラを通してみた「被災地の今」についてお話をさせて頂く予定です。ぜひご覧下さい。
http://www.mxtv.co.jp/gold/


━━━━━
05【告知】安田菜津紀 『THE FUTURE TIMES』第2号!


『THE FUTURE TIMES』
ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤さん編集長『THE FUTURE TIMES』第2号が配布されております。特集は「一年後の現在地」。
この中で安田菜津紀が岩手撮影を担当させて頂きました。BEAMSやタワレコなど、全国各地でお手にとってご覧頂けます!
http://www.thefuturetimes.jp/



━━━━━
06【告知】4月15日安田菜津紀 『NPO法人フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN』


『NPO法人フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN』
4月15日(日)17:30より、ワールドカフェ&バー「INSTEP LIGHT」にて、カンボジアのアンコール小児病院を運営する『NPO法人フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN』(
http://www.fwab.jp/ )の皆さんと安田菜津紀がミニトークイベントを行います。ぜひお越し下さい!

http://ameblo.jp/fwabjapan/entry-11215141788.html



━━━━━
07【告知】4月22日-30日 安達ロベルト×小原孝博×佐藤慧×安田菜津紀 写真展『Life』


「Monkey Forest」
4月22日-30日 バリ・カフェ「Monkey Forest」 (
http://www.monkey-forest.jp/ )にて、安田菜津紀と佐藤慧が、写真家の安達ロベルトさん、小原孝博さんと共に写真展『Life』 を行います。
一人ひとりがそれぞれ持ち味を活かした展示となります。
30日にはLIVEも行われますので、お食事がてら、ぜひいらして下さい!
http://ameblo.jp/monkey-forest/entry-11217167389.html



━━━━━  
08【後記】『同じ感覚へ』


 4月22日、原宿ラフォーレにてイベント『THE FUTURE TIMES』に参加させて戴きました。佐藤・安田も出演させて戴いたのですが、トークセッションで渋谷敦志氏がしていた「写真展の会場に出たり入ったりしている人が居た。後で記帳して戴いたノートを見ると怖くて見ようかどうしようか悩んだと書いてあった、それは現地入りした僕らと同じ感覚だ」という話は、とてもリアルに聞こえました。本物と写真とはいったいどういう関係性があるのでしょうか。そんなことを普段意識することは少ないですけれど、その変換と伝達が僕たちの心を動かしています。伝えることの意味と可能性を信じつつ、また次号でお目にかかります。

(矢萩邦彦)


=================================
編集  矢萩邦彦 笠原正嗣(ML) 佐藤慧(EXTRA)
執筆  矢萩邦彦 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード
     〒220-0072 神奈川県横浜市西区浅間町1-4-4 小泉ビル401
本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、

法律で定められた場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。

記事の使用をご希望される場合は、
タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。

取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com
AFTERMOD E-PRESS since 2010-08-09 / Copyright 2010-2011 studioAFTERMODE.
All Rights Reserved.


もちろん、阪神・淡路の教訓も参考になることはたくさんあると思いますが、規模の範囲だけでも10倍で、それに加えて、津波の被害や原発事故と重なり、単純計算でも3乗くらいしないといけない話になります。

AFTERMOD E-PRESS 【vol.0050】 (2011年03月19日号)

◆50号発刊記念ご挨拶◇


 皆様、こんにちは。ここ横浜でもちらほら色づく花が目立ちはじめ、春めいて参りました。卒業式も終わり新たな旅立ちまでの空白期間。さてここをどのように過ごすのか。それぞれの余韻と期待が重なり、切なくも心躍る、生命力が溢れる日々です。株式会社スタディオアフタモードも設立3年目に突入し、この『AFTERMOD E-PRESS』も今号で50号を迎えることが出来ました。途中、東日本大震災もあり紆余曲折の配信でしたが、読んで下さる皆さんや声をかけて下さる皆さんに勇気を戴き、僕らなりの「伝える」を続けることが出来ました。アフタモードメンバーを代表して御礼申し上げます。


 今年は変革の年です。僕らは「持続」をモットーとして活動していますが、ただ続けていても進歩がありません。経験を活かして、良い所は残し、改善しながら続けていくことに意義があると感じています。これから僕らのメディアが、どのように進化して、皆さんと繋がっていくのか。もちろん根底にある志は「世界平和」です。その荒唐無稽な目標にどうやってアプローチ出来るか。微力かも知れないけれど、無力ではない。そのことを少しでも体現出来ればと思います。是非これからもアフタモードの活動を応援して戴き、共闘して戴ければ幸いです。


株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO 矢萩邦彦


=index=

00【巻頭】『それぞれの日常、それぞれの未来』
01【連載】安田菜津紀『HIVと共に生まれる~ウガンダ取材~』
02【連載】佐藤慧『アフリカ再訪 2012春 (2)チンサリ-森の未来、人類の未来』
03【告知】矢萩邦彦 4月8日 鏡明塾 『墨子のアナキズム』『日本史研究:室町時代Ⅱ』
04【告知】矢萩邦彦 4月15日『未来の子ども達に僕らができること ~世界平和を考える 矢萩邦彦&松永真樹 コラボ講演会~』
05【告知】安田菜津紀・佐藤慧 4月20-22日 『THE FUTURE TIMES』
06【告知】安田菜津紀・佐藤慧 復興支援プロジェクト『道のカフェ』
07【後記】『追体験という羅針盤』

本サイトはこちらから↓
【AFTERMOD E-PRESS】
http://www.aftermode.com/press/

=================================


00【巻頭】『それぞれの日常、それぞれの未来』



 さて、今週は安田菜津紀『HIVと共に生まれる~ウガンダ取材~』と佐藤慧『アフリカ再訪(2)チンサリ-森の未来、人類の未来』をお送りします。それぞれの場所に、それぞれの問題があります。僕らは別の場所の日常や困難を垣間見たときに、カルチャーショックを受けます。そのトランス感を自分の生活に、人生にどのように活かせるのかが大事なのだと思います。どこか遠くの国で起きていることを、最初は興味本位で覗いてみるくらいでも良いかもしれません。しかし、そこには僕らと同じ等身大の人間が居て、人生があって、重なり合う物語があります。それは、本当に他人事なのでしょうか。遠くの世界の、無関係な出来事と言えるのでしょうか。そんな想像が共感を呼び、価値観を変え、いずれ世界を変えていくのだと感じています。それでは、安田と佐藤が見た、それぞれの日常をご覧下さい。

(矢萩邦彦)


━━━━━
01【連載】安田菜津紀『HIVと共に生まれる~ウガンダ取材~』


(PHOTO:朝目覚めたばかりの子どもたち。1枚の布で身を寄せ合って眠る。)


「さあ、畑に出るよ!」


 おばあさんの掛け声と共に、小さな家で身を寄せ合って眠っていた子どもたちが、眠い目をこすって起き始めます。ウガンダ南部に位置するラカイ県。じりじりと照りつける太陽の中を歩き回る1日がまた始まろうとしていました。トウモロコシやパイナップル畑が斜面に広がる、一見すると長閑なこの地は、アフリカの中で初めてエイズ患者が見つかった場所でもあります。


(PHOTO:ジャセンダさんと孫8人、10畳ほどの小さな小屋に暮らしている。)


 ジャセンダさん(69)の家族は、娘息子4人をエイズで亡くし、孫8人を彼女1人が面倒を見ています。2人の孫は母子感染でHIVに感染していますが、小作農のジャセンダさんには医療費も、数十キロ離れた病院に通うための交通費も工面することはできません。


(PHOTO:最近目も不自由になってきたよ、と末の孫を抱くジャセンダさん。)


 ウガンダ共和国は日本の本州ほどの大きさの国土に約3000万人が暮らす東アフリカの内陸に位置する国です。1982年に初めてエイズ患者が発見されて以来、政治情勢の混乱も重なって、爆発的に国内で感染が広がりを見せました。その後1986年に就任したムセベニ大統領によって国を挙げてのエイズ対策が始まり、1992年のHIV感染率が18%であったのに対し、2004年以降は5%台にまで減少しました。けれども未だに深刻なことが、エイズで親を失ったエイズ孤児問題です。国連の統計によると、片親もしくは両親を失ったウガンダ国内のエイズ孤児の数は約120万人、実に孤児全体の半数近くになるのです。


(PHOTO:ラカイ県の南部。丘の向こうには、タンザニアの国境になっている。)


 ラカイ県では、祖父母や親戚が多くの子どもたちの面倒を見なければならない家庭は決して珍しくありません。また、両親を亡くした子どもたちだけで暮らさざるを得ない家庭もあります。子どもが感染している場合もあります。残された家族たちで身を寄せ合いながら日常を生きる、それ自体が彼らにとっては闘いなのです。「成果を挙げた」とされるエイズ対策。その数字の裏には、忘れてはいけない無数の声が存在しています。


(PHOTO:朝ごはんのミレッジ<乾燥させた穀物をお湯に溶かした飲み物>。1日この1食だけという日も珍しくはない。)


(写真+文=安田菜津紀)


━━━━━
02【連載】佐藤慧 『アフリカ再訪(2)チンサリ-の未来、人類の未来』


 首都から12時間、そろそろ座り続けるのもしんどくなった頃、バスは暗闇の中ゆっくりとブレーキを踏んだ。「チンサリ!」と叫ぶ乗務員の声が聞こえる。朝方3時、目的地に着いたようだ。町には僅かな明かりしか灯っていない。そう遠くない朝を前に、町全体が静かに寝息を立てていた。知人に予約してもらっていた宿を目指して歩く。前回此処に来たのは1年半も前か。変わらぬ景色を前に、長旅の疲れも忘れ嬉しくなる。宿にチェックインし、荷物を解くともう4時前だ。水を浴び、心身ともに落ち着けてからベッドに潜り込む。遠くで犬の遠吠えが聞こえる。


 カーテンを垂らした窓の隙間から燦燦と朝日が差し込んでくる。いや、朝日というには少し遅いようだ。ぐっすりと眠りについた僕は。9時過ぎに目を覚まし部屋を出た。真っ青な空。胸いっぱいに空気を吸い込む。宿には馴染みの顔があった。朝食にパンを食べながら、湯を沸かしてもらいコーヒーを啜る。僕が日本で右往左往していた時も、此処では変わらぬ時間が流れていたのだ。


 今回チンサリを再訪したのには目的がある。翌月、日本からのスタディーツアー参加者をこの町に連れてくるための準備だ。ツアーを考えるにあたって、どこに連れて行き、どんな経験をしてもらうか、色々と考えた。首都近郊のNGOを巡ってもいいかもしれない。僕の住んでいた田舎の村で、のんびりと日々を過ごすのもいいかもしれない。しかし、最終的に此処、チンサリにした。ここでは、大切な人たちが、失われつつあるザンビアの自然を守るために日々奮闘していた。ザンビア独立の父、今は亡き初代副大統領サイモン・カプウェプウェの意思を継ぎ、娘のチルフィアとその素晴らしい仲間達が、自然との共生を目指し草の根の活動を行っているのだ。アフリカ諸国は恵と呪い、そのどちらともなりえる諸刃の剣を抱えていた。膨大な地下資源。本来は人の生活を豊かにするはずのそれらの資源は、大国や多国籍企業の思惑によって地元民の手には渡らぬような仕組みを強いられている。ザンビアも独立当初から、経済発展のために特産の銅の輸出や、外貨獲得用の作物栽培(モノカルチャー)に力を入れていた。しかし結果的にそれらは、ザンビアに伝統的に受け継がれていた生活の智慧や作物をダメにしていった。故サイモンは言う。「銅はいずれ涸渇する、しかし自然は共存していく限りその恵みを限りなく与えてくれる」。自然のバランスを無視し、人間の都合の良いように管理、採掘した自然はいびつな形に歪んでいく。歪んだ自然はそこに包み込んでいた生命を徐々に失っていく、命の喪失。それは結局人間自身の首を絞めることになるのだ。人の命とは何だろうか。ただ、自分の命が燃え尽きるまで、その一代が生きながらえたら良いのだろうか。断じて違うはずだ。生命の営みは、世代を超えて脈々と受け継がれていく。今を生きる僕たちは、まだみぬ命の根を生きているのだ。肥沃な土地、綺麗な水と空気を無しに、僕たちは未来という花を咲かせることは出来ない。日本の都市で文明の利器に囲まれた生活をしていると、時々自然が見えなくなってしまう。まるで人間が自然を凌駕したかのような錯覚を覚える時がある。しかし、蛍光灯は太陽にはなり得ず、エアコンは地球を巡る大気の代わりを務めることは出来ない。2011年3月11日、日本人は思い知ったはずだ。人は自然には敵わない。必要なのは自然と闘うことではなく、畏怖し、共存の道を描くことなのだ。発展途上国と呼ばれるこのザンビアから、今僕たち近代国家と呼ばれる国々の人間があ学ぶことは大きい。母なる大地への畏怖、感謝。それは人間それぞれの、その命の尊厳を見つめることにも繋がるのではないか。


(PHOTO)


(写真+文=佐藤慧)


━━━━━
03【告知】矢萩邦彦 4月8日 鏡明塾 『墨子のアナキズム』『日本史研究:室町時代Ⅱ』


4月8日に横浜で鏡明塾(http://goo.gl/2srwC )が行われます!


[一般]14:05~15:50 『墨子のアナキズム』(301教室)
[中高]17:05~18:50 『日本史研究:室町時代Ⅱ』(303教室)


★全ての講座とも先着20名とさせて戴きます。 (単発で受講されても大丈夫です)

・神奈川県民センター(神奈川区鶴屋町2-24-2)
 「横浜駅西口」より徒歩5分
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/0051/center/access.html

参加費用は各コースとも一般・大学生2500円、中高小学生2000円(会費・教材費)です。 (※中高生が一般コース、一般の方が中高生コースを受講することも出来ます) (※参加費は当日お持ちください。振り込み希望の方はお申し出ください) 申し込みはメールにて承ります。
タイトル【鏡明塾予約】日付・コース・名前(参加希望者全員分) で
yahagi.sa@gmail.com
までお願いします。ご要望、ご質問等もこちらまで。 では、みなさんの御参加、お待ちしております!


━━━━━
04【告知】矢萩邦彦 4月15日『未来の子ども達に僕らができること ~世界平和を考える 矢萩邦彦&松永真樹 コラボ講演会~』


未来の子ども達に僕らができること
~世界平和を考える 矢萩邦彦&松永真樹 コラボ講演会~

2012年4月15日(日) 18時15分受付スタート


■会場
国立オリンピック記念青少年総合センター 「センター棟405号室」
〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3-1


■アクセス方法
小田急線「参宮橋駅」 徒歩8分
地下鉄千代田線代々木公園駅 徒歩10分
http://nyc.niye.go.jp/facilities/d7.html


■定員
限定80人
※申し訳ございませんが、定員になり次第受付を終了させて頂きます。


■参加費
学生:1000円
一般:2000円
中学生以下無料


■申込
mugen415@gmail.com
まで「未来の子供達に僕らができること」と表題にお書き頂き、
お名前、大学名or社会人、連絡先を添えてご返信ください。
返信メールを変えさせて頂きます。

■主催
NPO法人「超」∞大学


━━━━━
05【告知】安田菜津紀・佐藤慧 4月20-22日 『THE FUTURE TIMES』


『THE FUTURE TIMES』
 →http://www.thefuturetimes.jp/event/


 4月20-22日に、『THE FUTURE TIMES』Gallery & Liveとして、原宿ラフォーレで安田菜津紀と佐藤慧が渋谷敦志さんと共に東北写真展を開催させて頂きます。
 21・22日には、ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文さん、the HIATUS 細美武士さん、ent (ホリエアツシ from STRAIGHTENER) の弾き語り、そしてトークライブ。ぜひお越し下さい!


■日時 : 4月20日(金)・21(土)・22日(日) 
<昼>ギャラリー(写真展):入場無料 
・4月20日(金)=12:00?20:00 (入場は19:30まで)
・4月21日(土)=11:00?16:00 (入場は15:45まで)
・4月22日(日)=11:00?15:00 (入場は14:45まで)

<夜>LIVE & TALK:チケット制
・4月21日(土)=OPEN/START:18:00/19:00
・4月22日(日)=OPEN/START:17:00/18:00


■会場:ラフォーレミュージアム原宿
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6F


■LIVE & TALK チケット情報
・一般チケット発売日 : 2012年4月1日(日) AM10:00~
・チケット代 : 自由 ¥2,800 (税込) ※入場整理番号順
・チケット : ローソンチケット Web Site (Lコード:71326)[通常]0570-084-003 [初日特電]なし
 チケットぴあ Web Site (Pコード:165-726)[通常]0570-02-9999 [初日特電]なし  e+ Web Site (PC・Mobile共通)


━━━━━
06【告知】安田菜津紀・佐藤慧 復興支援プロジェクト『道のカフェ』


安田菜津紀・佐藤慧がお手伝いさせていただいている復興支援プロジェクト「道のカフェ」( http://www.michinocafe.com/p/project.html )。
プロジェクトに参加したスターバックスのスタッフさん達がフォトアルバムを、

手作りで仕上げて下さいました。
全国各地のスタバ限定店舗に設置されています。
詳細はこちらです! ぜひご覧ください!!
http://www.michinocafe.com/2012/03/photo-album.html


━━━━━
07【後記】『追体験という羅針盤』


 「追体験」という言葉があります。自分が体験出来ることは限られています。様々な制約の中で自分の体験を選ばなければなりません。僕自身、体験したことの多くの切っ掛けは、追体験にあったような気がしています。誰かの体験談を聞いたり読んだりして、自分のやりたいことややるべきだと思うことを手探りで見つけ出していく。そうやって人生を繋いできたのだと感じます。ジャーナリストの存在意義の一つは、そういうことなんじゃないかと思います。客観的に事件を報じたところで、それは追体験にはなりません。体験した本人の目線で、主観的に伝えることで初めて他者との共感が起き、自分と重ねることが出来るのではないでしょうか。先月『LIVEonWIRE_JOURNAL』という新しい試みがスタートしました。多くの記者の「物語」を、皆さんに追体験して欲しい。そこから、それぞれの未来に繋がる手がかりを得て貰えれば幸いです。『AFTERMOD E-PRESS』と合わせてお楽しみ戴ければと思います。では、また次号お目にかかります。


(矢萩邦彦)


=================================
編集  矢萩邦彦 笠原正嗣(ML) 佐藤慧(EXTRA)
執筆  矢萩邦彦 安藤理智 安田菜津紀 笠原正嗣 佐藤慧
発行  株式会社スタディオアフタモード
     〒220-0072 神奈川県横浜市西区浅間町1-4-4 小泉ビル401
本WEBサイトの内容の一部または全部を無断で複写(コピー)することは、

法律で定められた場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。

記事の使用をご希望される場合は、
タイトル「AFTERMOD E-PRESS係」にて下記アドレスまでご一報をお願いします。

取材もこちらで承ります。
info@aftermode.com
AFTERMOD E-PRESS since 2010-08-09 / Copyright 2010-2011 studioAFTERMODE.
All Rights Reserved.