今回は、みおり舞さん(ロック所属)における、H30年8月頭の大阪東洋ショー劇場の公演模様について、三つの演目「ドリーム・カム・トゥルー」「アイリッシュの恋占い」「ユニオンジャック」を題材に、「どうしても観たいステージ」という題名で語りたい。なお、このレポートは私のストリップ日記なので他の人には見せませんのでご安心を。

 

 

 

 

前半(後半も)2,4回目は演目「アイリッシュの恋占い」。初出しは今年2018年2月11日の横浜ロック。

ネットで調べたら、アイリッシュってアイルランドのことなんだね。「アイリッシュ・ステップダンス」の恋占いは忍耐強くストイックとある。……アイルランドの伝統音楽にあわせて、足の動きだけで踊る「アイリッシュ・ステップダンス」。上半身を直立姿勢のままにするというストイックさが魅力的です。あなたの恋の進め方は、このダンスのようにどこか自制的。相手の気を引くような動きをすることはありませんが、誠実かつ忍耐強く恋のステップを踏んでいくのです。……

最初に、アイルランドの民族衣装で登場。髪飾りだけでも凄いな。赤、青、黄色、白、緑、水色とたくさんの色彩の布に包まれる。紺をベースにした衣装で、袖の部分は丸く白く、大きなベージュのエプロンをして、膝上丈のスカートの裾はオレンジの花柄になっている。足元は白い靴下に、黒い短いシューズ。

タンバリンを持って、掛け声を発しながら、最高のステップを魅せる。あれほど素晴らしいステップは観たことがないと思うほどステップに魅了された。

音楽は、映画『タイタニック』の場面にあったダンス曲「An Irish Party in 3rd Class」。

音楽が「Whisky Before Breakfast」に変わったところで、タンバリンから麦の束に持ち変える。

ここで一旦、暗転。

黄色をベースにしたワンピース衣装に着替える。上着は丸い肩の半袖で、袖部に白と赤のフリル付き。ウエスト部を赤いベルト紐でしばり、紫の布紐を両サイドに垂らす。スカートは足元までのロング。裸足。髪型は同じ。ガラスの首輪。

音楽が日本語になる。John John Festivalの曲「ふたりのことば」。John John Festivalって日本人三人組だけどアイルランドの音楽を演奏するんだね。フィドル(バイオリン)と歌、ギター、それにアイルランドの太鼓、バウロンを使って奏でる音楽はリズムやグルーヴ、優しさ楽しさ、時に哀しさに満ちている。空気に触れて、呼吸を合わせてどこまでも高く登りつめ、 呼吸を整えてどこまでも静かにささやく音楽。弾く人も聴く人も幸せにする、それがJohn John Festival。 結成2010年1月。

麦を一本持って、ベッドショーへ。ゆっくりした演技。前半の‘動’に対して、後半は‘静’といった感じ。

立上りもJohn John Festivalのインスト曲。最後は足でタンバリンを叩くほど激しく終わる。

 

 

全ての作品がまるでブロードウエイの舞台を観ているかのようだ。ストリップでこれだけのステージを観れるなんて幸せこの上ない。

みおり舞さんはダンスの申し子、ストリップの至宝。「ダンスが好き過ぎて恋愛どころじゃない」とおっしゃっているから、しばらくは我々ストリップファンを恋愛対象としてステージを楽しませて下さいな。

 

 

平成30年8月                          大阪東洋ショーにて

 

 

【みおり舞さんからの返事ポラコメ】

レポートありがとう。

秘密を言うと、アイリッシュの恋占いの話のネタは「コッペリア *1」のあるシーンです。

ユニオンジャックは「NYC Ballet *2」の演目です。

*1.『コッペリア』(Coppélia)は、動く人形を題材としたバレエ作品、

*2. ニューヨーク・シティ・バレエ団 (New York City Ballet)は、アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタンに本拠を置くバレエ団。略称はNYCB。

 

 

 

『鏡の中のマイ』  

~みおり舞さん(ロック所属)に捧げる~

 

 

 

 マイは「鏡の間」にいた。上下前後左右が鏡に覆われていて、自分の姿が映し出されていた。そして鏡の中の自分が、マイのことを非難していた。

「もっと化粧を濃くしないと綺麗にならないわよ」と正面の鏡の私が言う。

「もっと痩せなければ美しくなれないわよ」と左側の鏡の私が言う。一方、その対称にある右側の鏡の私は「もっと肉付きをよくしないと女性らしいふくよかさは表現できないわよ」と言う。

 いやーっ!!!! マイは思わず両手で耳を覆う。・・・

 マイは目が覚めた。いつからかマイはこんな夢ばかり見るようになった。

 

 マイは小さい頃からプリマドンナを目指していた。

「ふとるから甘いものを食べちゃダメって言ったでしょ!」

「もっと背筋をピンと伸ばして!」

「もっと笑顔を作るの!」

「明るい顔を作るために口紅はもっと赤い色にしなさい!」

 いつもバレエ団の先生が話していた。

 練習は鏡が相手。鏡は嘘をつかない。ありのままの姿を映した。けっして可愛くない、けっしてスタイルがよくない、けっして踊りが上手くない、そんな自分の姿をありのままに晒した。マイはそんな姿を見るのが嫌で、より美しく、より華麗に踊れるようにと、来る日も来る日も練習に励んだ。

 いつのころからか、先生が鏡に変わっていた。鏡の中の私が自分に向かって先生と同じことを何度も何度も繰り返し注意する。

 幼くもおとなしい顔つきをしていた私の口紅は赤々と変化し出した。鏡の中の私の口元がますます辛辣に自分に向かって言葉を発し続けた。

 私は知らず知らずのうちに鏡の中の自分を必死で追うようになっていった。まだ子供だったから逆らう術を知らなかったし、逆らおうとも思わなかった。

しかし、いつしか先ほどの「鏡の間」の夢を見るようになっていった。

 

 一人の少年がバレエ団に入ってきた。名前をサワテと言った。彼も小さい頃からバレエを習っていて、その素質が認められ、この有名バレエ団にスカウトされたのだった。

 少年は年の近い少女マイに関心を抱く。最初はもちろん可愛い容姿に目が行く。しかし、一心不乱に鏡に向かって練習しているマイの姿を見ていて段々に不自然さを感じた。

 彼はマイに近づき、気さくに声をかけた。ところが返事がない。マイは鏡ばかり見ていて彼の言葉が聞こえていなかった。

 サワテは、マイと鏡の間に割り込み、マイの目をのぞき込んだ。彼ははっと思った。「彼女の目は死んでいる」と感じたのだった。

 サワテはマイの手をとって優しく微笑んでこう囁いた。

これからは僕が君の鏡になる。僕の瞳に映った自分の姿を見つめながら踊ったらいいよ」

 彼の瞳はきらきら輝いていた。マイにはそれがとても眩しく感じられた。

 そして彼の言葉に素直に頷いた。

 その日から、練習が楽しくなった。彼の指導は適切だった。なによりも彼はマイの資質を見抜き褒め讃えた。彼に褒められると全身が震えた。マイはバレエがこんなに楽しいものだと初めて知った。

 

 サワテとマイの二人の息はぴったり合った。相性も良かったのだろう。なにより二人は愛し合っていた。

 ある日のこと、二人の評判を聞きつけた人物がバレエ団に現れた。彼はフィギュアスケート界の巨匠と呼ばれる人物だった。来るべき自国開催のオリンピックで優勝できる資質をもったペアを探していた。その候補として二人の名前が挙がっていたのだった。

 彼は一目で、自分が求めていたペアはこの二人だ!と直感した。彼は二人を口説いてフィギュアスケート界にスカウトした。生まれつき類い希な運動神経をもった二人はめきめきと頭角を現した。

 マイは不思議な気持ちになった。スケートリンクはまるで鏡のようだった。たくさんの観客も鏡に見えた。あれだけ怖がっていた鏡なのだが、自分の姿を映す鏡がとても心地よかった。それはサワテの瞳が優しいから。サワテの瞳に映っている自分を信じていれば何も怖くなかった。まさに鏡が彼女のパワーになっていた。

 

 オリンピックの檜舞台で二人は金メダルに輝いた。

 完璧な演技が終った瞬間に、感極まってサワテはマイを抱きしめた。マイもサワテに軽くキスをした。マイの口紅はもう赤くなかった。

 

                                    おしまい