今回は、私のストリップ・ドライブとしてのアクアライン物語を話してみる。

 

私の現在の仕事場は千葉県内房の木更津というところ。

好きな踊り子さんに会いたくて、アクアラインを通って劇場までやってきます。

大好きな王女様に会うために、海を渡って来た王子様の気分かな(笑)!?

そんなことを考えながら、ひとつ童話が浮かんだよ。

 

 

 

『アクアライン物語 ~もうひとつの浦島太郎話~』

 私は真夜中に、車で木更津からアクアラインを渡り、海ほたるに着いた。見晴らし台の上から、木更津と川崎の両対岸に広がる美しい夜景を眺めながら物思いに耽った。

「今は車で20分足らずで簡単に東京湾を渡ってしまうが、昔の人はこの海を渡るのに命がけだったんだろうなぁ~」

 ふと、木更津という地名の語源になったと云われる「君去らず」の話を思い出した。木更津には次のような有名な日本武尊(やまとたけるのみこと)の伝説がある。

< 第十二代景行天皇の皇子として生まれた日本武尊は、父にうとまれ、西の熊襲、東の蝦夷の平定へと向かう日々でした。東へ向かった日本武尊は、弟橘媛(おとたちばなひめ)とめぐりあい、后に迎えます。しかし、相模の走水から上総へ渡ろうとしたとき、海が荒れ、船が難破しそうになりました。弟橘媛は尊の身代わりになって海神の怒りを鎮めようと、我が身を海に沈めたのです。

やがて木更津に上陸した日本武尊は、愛する媛の面影を偲んで何日も立ち去らなかったといいます。これが、君不去=きみさらず=木更津の起こりと云われています。また、媛の御衣の袖が海辺に流れ着いたことから、袖ヶ浦という地名が生まれました。>

(木更津市中央に位置する大田山公園にある「きみ去らずタワー」の台座文から)

このロマンチックな伝説に触発され、私はひとつ童話を創ってみた。

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昔昔の話。

海に近い木更津という村に太郎という若者が住んでいました。太郎は畑仕事をしながら暮らしていました。

ある晩、太郎の夢の中に、この世の人とは思えないほど綺麗な天女が現れ、太郎のために舞い踊ってくれました。太郎はこんなに幸せを感じたことがありませんでした。

夢から醒めた太郎は、その天女のことが忘れられません。来る日も来る日も、その天女にもう一度会えないものかと思いわずらう日が続きました。

 

太郎の家には、ウサギとカメが飼われていました。ウサギとカメは大事に育ててくれた太郎に恩返しできないかと相談しました。そして、ウサギとカメは、恋に悩む太郎にこんな話をしました。

「この海の向こうに渡れば、あなたの会いたがっている天女さまがいます。私たちがお手伝いさせていただきます。一緒に海を渡りましょう。」

 

 太郎はウサギとカメを連れて、海の岸辺に辿り着きました。かすかに対岸は見えますが、あまりにも遠い。はたしてどうやってこの海を渡るのでしょうか?

 ウサギは海に向かって叫びました。「サメさぁ~ん! 手伝ってくれー!」

 すると、たくさんのサメが集まってきました。そして、サメは一列になって海の上に頭だけ突き出しました。「太郎さん、私の後をついてきて下さい」と言って、ウサギはそのサメの頭をぴょんぴょんと飛び跳ねて行きました。太郎も必死でウサギを追いかけました。

 どれくらい渡ったことでしょうか。ちょうど海の真ん中くらいまで来たところで、サメの頭はなくなりました。

「ここから先は私にバトンタッチです。太郎さん、ウミガメの背中に乗って下さい。」

 ウサギの後を追って一緒に海を泳いできたカメは、大きなウミガメを連れてきていました。太郎はウミガメの背にまたがりました。

 ウミガメは太郎を乗せて、海の中にどんどん潜っていきました。どれくらい泳いだことでしょうか。

 

 暗い海の中に、パッと明るい建物が見えます。竜宮城でしょうか?

 よく見ると、その建物の看板には「川崎ロック」と書かれています。

 太郎はおそるおそる扉を開けてみました。すると、大きなステージの上に美しい乙姫たちが音楽に合わせ舞い踊っています。たくさんの魚たちがステージをとり囲んでいます。目をギョロつかせてステージにかぶりついている出目金さん。上目づかいで乙姫の足元から覗き込んでいるヒラメさん。乙姫の美しさにポッカリ口をあけているコイさん。乙姫のエロさに興奮し、顔を真っ赤に膨らませているフグさん、体がとろけそうになっているタコさんや体を大きくのけぞらせるエビさんもいます。どの魚たちも手拍子をとり、中にはタンバリンを使って囃し立てたり、リボンを投げる者までいます。そこは乙姫に恋する竜宮城でもありました。

 太郎は歳をとるのも忘れ、竜宮城で時間を過ごしました。

                                    おしまい