今回は、H29年5月中の渋谷道劇における、新條希さんとRUIさんとのチームショーの模様を話します。

 

 

 

今回は演目「ゼラジャイ」を紹介する。

希さんから「ゼラジャイは『ライチ☆光クラブ』というマンガがテーマです。」と教えてもらい早速、ネットで検索してみる。・・・『ライチ☆光クラブ』秘密基地,Wikipedia参照

1980年代、わずか三年で活動の幕を閉じた幻の劇団、飴屋法水率いる「東京グランギニョル」があった。ちなみに、グラン・ギニョールというのは、フランス、パリに19世紀末から20世紀半ばまで存在した大衆芝居・見世物小屋で演ぜられた「荒唐無稽で」「血なまぐさい」あるいは「こけおどしめいた」芝居のことを指す。そこでは浮浪者、街頭の孤児、娼婦、殺人嗜好者など、折り目正しい舞台劇には登場しないようなキャラクターが多く登場し、妖怪譚、嫉妬からの殺人、嬰児殺し、バラバラ殺人、火あぶり、ギロチンで切断された後も喋る頭部、外国人の恐怖、伝染病などありとあらゆるホラーをテーマとする芝居が、しばしば血糊などを大量に用いた特殊効果付きで演じられた。観客動員数ばかりではなく、「顧客のうち何人が失神したか」も劇の成功・不成功を測る尺度とされた。

「東京グランギニョル」は廃墟的な舞台装置や暴力的音響、暴力的内容を特徴とし、鮮烈な独自の美意識を持った劇団であった。当時、高校生であった古屋兎丸(ふるやうさまる1968.1.25生まれの現在49歳)はリアルタイムで観劇し、大きな衝撃を受けた。

 この時の衝撃は、古屋兎丸のその後の人生に多大な影響をもたらすことになる。劇団に参加したくも果たせなかったことへの後悔を抱きながら漫画家としての研鑽を積み、二十年経った2005年、満を持して、漫画化したのがこの『ライチ☆光クラブ』である。

 オリジナル描写を加えつつ原作舞台の退廃的な世界観を強烈に描き出した本作の、壮絶ながらも美しい少年たちの物語は、連載直後より話題沸騰になり、単行本は幾度となく重版されている。古屋兎丸の最高傑作のひとつと言われている。

 

『ライチ☆光クラブ』のあらすじを紹介する。

工場からの排気と油で黒く覆われ鬱蒼とした街・蛍光町。その片隅の廃墟で無人のはずの深夜、けたたましく響き渡る笛の音、そして不気味なドイツ語の怒声。

彼らの正体は、学生帽・詰襟の学生服に身を包んだ少年たち。そこには、「廃墟の帝王」ゼラを筆頭に、九人のメンバーで作られた秘密基地が存在していた。――その名を「光クラブ」。

その秘密を見た者は、ゼラの指示を受け、彼を崇拝するメンバーの手によって残酷な罰が下される。なぜならば、彼らは夜な夜な基地に集まり、ある「崇高な目的」のために「甘美なる機械(マシン)」を創造していたのだった。

そしてある夜、ついに彼らの希望の機械「ライチ」が目覚めの時を迎える。ライチは「美しいもの」を連れてくるよう命令されるが、ライチは「美しいもの」が何なのか理解できず、違うものばかり集めてくる。そんなある日、特殊な設定を施されたライチはようやく「美しいもの」が何なのか理解できるようになり、一人の美しい少女カノンと数人の少女を光クラブに連れて来た。光クラブの面々はカノンを王座に据えて女神として崇め、次の目的に進もうとする。しかしある時、メンバーのタミヤとダフがカノン以外の少女たちを密かに逃がそうとしていたことが発覚し、タミヤは粛清として自分の手でダフを処刑することになってしまう。更にゼラと親密な仲にあった少年・ジャイボが仕掛けた罠によってゼラは疑心暗鬼に陥り、光クラブの少年達の結束は徐々に崩壊し始める。

 

登場人物を二人紹介する。

□.ゼラ「廃墟の帝王」

 光クラブのリーダー。角眼鏡を着用している。チェスの名人であり、その才気とカリスマ性を以てクラブを統括する。合理性を重んじ、チェスに例えた考え方をする。トレードマークは黒い星が描かれた手袋。

 未成年なのにライチ酒を造って母親から怒られる。

 ジャイボからの愛情アプローチを受け入れ、二人きりの廃工場で淫らな行為をしていた事もあった。

 

□.ジャイボ「漆黒の薔薇」

 女性のような容姿をもった美少年。実家は町医者で、家から麻酔を持ち出しては同級生に注射して昏睡状態にして淫らな行為をしていた事があり、ゼラとは別方向で奇矯な言動が目立ち、仲間のデンタクにも「奇人で変人」と称されていた。「きゃはっ」が口癖。男性ではあるが、女性的な印象を与え、一部行動・言動にヤンデレとしての要素が見受けられる。同じ男であるゼラに対して友情とは別次元ともいえる愛情を抱いていた。

 光クラブを崩壊へ追い込んだ張本人。全てはカノンの出現によってゼラの心が自分に向かなくなったと思った事が発端であり、カノンを始めとする「ゼラの心が向くもの」全てへの嫉妬に狂い暴走する。本気でゼラを愛していたが、ゼラからすれば最初から「玩具」に過ぎない存在だった。

その美貌と残忍かつ背徳的な行為ゆえか、古屋兎丸キャラでは一番の人気になっている。

 

以上の知識をもって、チーム演目「ゼラジャイ」を観ると、深く興味をそそられる。知る知らないで観劇の楽しさが10倍違ってくる。

作品模様は次の通り。

暗闇の中、けたたましく響き渡る笛の音が聞こえる。

RUI扮する学生帽・詰襟の学生服に身を包んだ「廃墟の帝王」ゼラが登場。角眼鏡を着用している。トレードマークになっている黒い星が描かれた手袋をしている。

赤い椅子に座る。横の丸いテーブルの上に白と黒のチェス盤。ワインカップにライチが入っている。

そこに、のぞみん扮する「漆黒の薔薇」ジャイボが現れる。髪の毛が真ん中に垂れる。まさに女性のような容姿をもった美少年である。

のぞみんが椅子に座っているRUIに絡む。キスをして、彼のズボンから一物を出してフェラを始める。

RUIが一旦姿を消す。おもむろに、のぞみんがポケットから注射器を取り出す。二三人の観客の口へ中のジュースを注入する。

そして、ポケットの中から花びらをつまんで沢山ばら撒き、楽しそうに舞い踊る。

再び、RUIも現れ、二人で絡み、ベッドショーへ。

 

今回の作品の魅力を三つの観点から考えてみた。

ひとつは、男装の魅力。

男装というのはコスプレのひとつの形態である。女性らしい可愛さとはまた違い、男装にはかっこよさがある。男から見ても惚れ惚れする。宝塚の男役をイメージしてもらえばいい。

今回の演目では、スタイルのいい二人が学ランをかっこよく決めている。しかも、よく似合っており、『ライチ☆光クラブ』という作品に登場するゼラとジャイボになりきって演じている。

もうひとつは、男性愛(Boys love)の魅力。同性愛というのは、パラフィリア(性的倒錯、性的嗜好異常)の世界。前作の「RUI先生」と同様の趣向を覚える。

同性愛といっても、レズとホモでは魅力が違う。ストリップの男性客から観ると、ホモには興味がないだろう。ホモを演じているのが女性であるから楽しいのである。

そして、もうひとつは男性愛(Boys love)を女性が演ずるユニークさ。最近、栗鳥巣さん、京はるなさん、渚あおいさん達が演ずるBoys loveが人気を博し女性ファンが急増している。男性愛(Boys love)を女性が演ずることによって女性の強い関心を惹く。

単に女性同士のレズではない、男性特有の絡みの面白さ。男性性器というのは女性にとってたまらなくかわいく憧れる関心の強い存在なんだと思う。だから異常に人気が爆発するのだろう。

 

 

平成29年5月                            渋谷道頓堀劇場にて

 

 

 

 

                        H29.4

『しがらみ男爵とリセット少女』  

 

 

 

 これから話すのは、ありふれた中年男と不良少女とのドラマである。

 

 男は、生まれてこの方、ひたすら人間関係を大切にすることで生きてきた。実家の家族・親戚縁者を始め、学生時代の友人関係、そして結婚してからの新しい家族関係、仕事での会社関係、近隣の付合い・・・すべてにおいて人間関係を大切にすることで今まで生きながらえてきた。言い換えると、それだけ彼には取り柄が無く、一人で生きてこれなかったとも云える。もちろん、人間関係が多くなればなるほど、彼はたくさんのしがらみに絡まれることになる。

 しかし、彼はそのしがらみをも嬉々として受け入れた。いや、むしろ彼自身がひとつひとつの人間関係にこだわり、こだわり、こだわり抜いてきた。それが彼をいい人にした。彼にはいつもいい人オーラが漂っていた。

 ただひとつ、彼はある事情のため大切な人間関係を壊してしまった。それは家庭崩壊。大切な家族と別れることになった。これについてはここでは言及しないことにする。

 

 一方、少女は、家庭環境に恵まれなかった。母子家庭で、母親とも兄弟姉妹とも仲良くなかった。そのため、家出を繰り返し、不良仲間とつるんでいるような少女だった。

 彼女はかわいい顔をしていたので男がたくさん寄ってきた。適当に相手をしていても、うざくなると簡単に関係を断ち切った。粘着するような男には牙をむいた。彼女の感情の激しさや苦悩はたくさんのリストカットした傷跡からも窺いしれた。

 彼女の口癖は「おまえなんかリセットしてやる」。そう言っては、これまで親しくしていた友人でも、親子関係までも、簡単に縁切りするような子であった。

 

 そんな二人が、ひょんな事から知り合う。

 少女がコンビニで万引きしている現場を目撃した。化粧品を鞄の中に入れようとした。男は彼女の側にすり寄って「そんなことをしたらダメだよ」と耳打ちして、化粧品を取り上げた。少女はきっと彼を睨んだ。男は「これが欲しかったのなら私が買ってあげる」と言って、レジに持っていって購入して彼女に渡した。

 その後も、何度もコンビニで会った。時には不良仲間とコンビニの前で屯していることもあった。未成年なのにタバコを吸ったり、酒を飲んだりしていた。

 彼は黙っておけない性分だった。「キミたち、そんなところで屯していちゃダメだろ。親元に帰りなさい。」と注意した。すると「この前、彼女にちょっかい出したのはおまえかよ!」とすさんできた子がいた。危うく親父狩りに遭いそうになったがコンビニの前で人通りがあったので難を逃れた。

 彼は少女のことがほっとけなかった。今では縁遠くなった自分の娘と変わらない年頃であったからかもしれない。しかし、少女は冷めた目で彼を眺めていた。心の中で「おまえなんかリセットだよ」と叫んでいるようだった。それなのに、彼の性分からか、気になる人へのおせっかいは止まらなかった。

 

 いつしか少女はホスト通いを始めた。気に入った男でもいたのだろうか。いや、おそらく淋しかったんだな。誰とも心を開いて関係を持たなかったので心の中は淋しさが渦巻いていたことだろう。

 それを知った男は、少女にホスト通いを止めさせようとした。彼女の通うホストクラブの入口で彼女を待ち伏せしていたら、ホスト達に行動を遮られ、最後にはボコボコにされた。それでも彼は少女のことがほっとけなかった。

 案の定、少女はたくさんの借金をして、お金に窮することになる。

 お金のことを相談した友達の女の子が「私、ストリッパーをやっているんだけど、あなたもやってみる?」と言うので、少女は友だちのステージを観に行くことにした。

 劇場に一歩足を踏み入れたら別世界があった。まぶしいばかりの光と音、その中を華麗な衣装に身をくるみ舞い踊る。少女はステージに一目で魅了された。「好きな音楽にのって踊れるなんて最高。それでお金になるのなら喜んでストリッパーになりたい。」と思った。これまでも沢山の男性にちやほやされてきたので、容姿にはそれなりに自信があった。劇場側に申し入れ面接したら、若くて可愛い彼女の採用はすぐに決まった。

 

 少しの研修を受け、いよいよストリップ・デビュー。

 最初はかなり緊張した。慣れないダンスに苦労した。ただ不思議と、裸になって客に性器を見せることに抵抗はなかった。自分のサービスで客の顔がほころぶと嬉しかった。

 彼女はステージの上で精一杯の笑顔を作った。今までこれだけの笑顔を作ったことはなかった。明るいスポットライトの下、彼女の明るい笑顔は一段と映えた。多くの客が彼女の営業スマイルにまいった。

 デビュー週、三日目で、あのおせっかい男がやってきた。彼の顔を見つけたとき、彼女は驚いた。

 実は、彼は熱心なストリップ・ファンだった。長く劇場通いしていて、多くの踊り子さんから「みんなのお父さん」として慕われていたのだ。彼は自分の人生哲学を押し通すように、まさしく踊り子とファンとしての関係を全て大事にしていたのだ。

彼は少女のポラを買い、「これからは君だけのストリップの父になって応援してあげるね」と約束した。彼は、それから彼女の一番客としていつも彼女の側にいて、リボンを投げたり、ポラをたくさん買い、チップもたくさんあげるようになった。

 可愛い少女は笑顔を振りまき、一躍ストリップ界の人気者になった。

 ところが、客の中には下心をもって近寄ってくる者もいる。彼らは連絡先を聞きたがり、アフターに誘ったりした。少女はそういう粘着してくる男が大っ嫌い。以前の顔が蘇る。「おまえなんかリセットしてやる」てな感じで、次々と嫌なファンを切っていった。出禁処分にして二度と近づけないようにした。多少ファンを切ったところで次から次へと新しいファンが増えるので彼女の人気はびくともしなかった。

 彼女の一番客である彼はいつも側に居たため、彼女の周りのファンの出入りを常に観察できた。突然のように夢中になって通ってきては、彼女にプレゼントやチップをあげて気を引こうとしているが、突然パタリと来なくなる客もいた。彼女にリセットされたのが窺いしれた。彼女はそのことを誰にも相談しなかった。もちろん一番客の彼にも。

 彼女のステージのポラタイムには、いつもプレゼントの山で溢れかえった。OPショーではいつもチップの嵐。彼女は大喜び。

 そんな彼女を見ていて、一番客の彼は心配になってきた。手紙で「お金になびいたらダメだよ」と注意した。最初のうちは「わかった。わかった。心配しなくても大丈夫だから。」と返事が返ってきたが、次第に彼の忠告がうざくなってきた。

 ある日、決定的なことが生じた。どんどん嫌なファンを切っていくのは仕方ないことだが、一番客と仲のいい応援客まで切り出した。仲間内で「どうしたんだ」と相談したら、「彼女がどんどん冷たくなってきた」と言うのだった。「人気が出てきたら忙しくて相手にされなくなるさ。一番客の俺だってそうだよ。機嫌を直して彼女の応援をしてくれよ。」と説得しようとした。しかし、仲間はどんどん離れだした。

 ストリップの良さはみんなでお気に入りの踊り子を応援することにある。陰でアフターを誘ったりする輩は排除されて当たり前だが、ストリップを純粋に楽しむ仲間は貴重な存在。みんなで応援し盛り上げるから楽しかった。そんな仲間が一人また一人と抜けていくことには危惧を感じた。彼は「昔から応援してくれるファンのことはもっと大事にしような」と彼女に手紙で忠告した。彼女を怒らせないようにかなりオブラートに包んで話したつもりだった。

ところがそれが彼女の逆鱗に触れてしまった。「そんなことを言うんだったら、あなたももう来なくていい!」と言い出した。「お客が離れていくなら勝手に離れていけばいいわ。ファンなんてどうでもいいの。」そして「私はステージで目の前の客を喜ばせることでいっぱいなの。ファン一人一人との関係はストレスになる。私はストレス・フリーになりたいの。」という言葉が返ってきた。最後は「おまえなんかリセットしてやる」ってな感じで切られた。

 

 彼は、泣く泣く彼女の出禁処分に従わざるをえなかった。

 よく好きな踊り子さんにフラれた客の中には、逆恨みして彼女の悪口をネットに書き込む奴がいる。人間として最低の輩である。少女の場合も「性格の悪い女」「金・金・金の女」「カネゴン」等たくさんの誹謗中傷の書き込みがあった。彼は決してそんなことをする人ではなかった。ただ只、自分の真意が彼女に伝わらなかったことが悲しかった。むしろ、このままでは踊り子としての人気を保てなくなると彼女のことを心配した。

 ともあれ、大好きな少女に会えなくなった彼はショックで劇場通いを止めた。しばらくはアパートにこもり、彼女を撮った沢山のポラの整理をしつつ、彼女との思い出に浸った。

 デビュー当時はまだあどけない顔をしていた。不安や自信のなさが表情に表れていた。この頃の彼女が懐かしく、一番かわいく見える。どんどん人気が出るようになり、たしかに大人の女として綺麗になり、いい意味でストリッパーの顔になっていった。ただ、この短い期間で劇的に顔の表情が変貌しているのが判った。お金に染まったのが一番の原因だろう。

 彼は、自分ことを「ストリップの父」と慕って頑張っていた初期の頃を懐かしく思い出した。そして、あの時の彼女との思い出があれば十分だと思うようになった。

 出会った当初から、まめに付けていたストリップ日記、それから彼女とのたくさんの手紙(ポラ)の交換、それらを元に私小説を書こうと考えていた。

 

 一方、さすがのリセット少女も、これまで親身になって応援してくれた一番客を切ったことが気になった。顔を見なくなった彼がその後どうしているかと心配になる。私のことを盲目的に愛してくれていたから万一自殺なんかされたら大変!とも思った。そんなかんなで気が散りステージに集中できなくなる。

「やっぱり、私が今まで踊り子として頑張ってこれたのは一番客としての彼の支えがあったからだわ。いつも彼の視線が優しく、安心して踊ってこれた。今や、劇場における風景が一変してしまった。どうしても気持ちが落ち着かない・・・」

 少女は、彼と仲良しだったスト仲間に声をかけた。彼の安否を尋ね、そして彼に連絡をとりたいと話した。

 

 少女は彼のアパートを訪ねた。

初めて彼のアパートに来たことになる。彼は一番客になるもお互いの連絡先は教えないこと、アフターは絶対にしないこと、を自分から彼女に申し入れた。もちろん他の客ともそういうことをしてはダメだと話した。そうしないと踊り子を長く続けられないことを長年の経験で知っていた。踊り子をダメにするのは殆どが客とのトラブルによる。彼女も黙って彼の忠告を聞いていた。だから、踊り子と客の関係が続いていたならば彼は決して彼女を部屋に入れたりはしなかっただろう。

 ともあれ、彼は連絡を受けていたので黙って彼女を部屋の中に通した。

 部屋の中に入った彼女はいきなり叫んだ。

「私のことが好きでしょ⁉ 抱かせてあげる。その代り、私が言う通りにして!」

 彼は驚きながらも、黙って彼女の指示に従った。

 彼女は持ってきた自分のバックの中から、手錠や縄などの拘束器具を取り出した。彼をベッドに横たわらせ手足をベッドに括り付けた。目をぎらつかせた彼女は彼の衣類をはがして裸にし、自分も裸になって彼の上に飛び乗った。彼の顔の上に自分の秘部を押し付けたまま、彼女は彼の秘部をくわえ込んだ。彼女は激しく中心に向かって何度も何度も攻撃を仕掛けた。彼は動けないまま快感に身体をくねらせながら、ついに彼女の刺激に耐えられず果てた。

 彼女は激しい快楽で満足している彼の顔にそっとキスをし、そしてすぐに自分のバックの中からナイフを取り出し、彼の胸を突いた。彼は驚きもせず、それが当然の流れであるかのように受け入れ、表情をゆがめることなく息絶えた。彼としては彼女とのしがらみを最後まで貫き通したという、どこか満足そうな死に顔だった。

「これで全てはリセットされたわ」

 その後、二人の死体が重なるように発見されたのは数日後のことだった。

 

                                    おしまい