今回は、H29年5月中の渋谷道劇における、立花散里さんのデビューについて、「捨てる神あれば拾う神あり。ストリップの神様、ありがとう!」という題で語ります。

 

 この六月には、長く応援してきた踊り子さんが次々と辞めていく。13年間応援してきたロックの灘ジュンさん、12年目のロックの豊田せりかさん、そして、ここ二年半の間で精力的に応援していた道劇の石原さゆみさんが引退していく。私としてはあまりにも大きな穴が開くことになる。

 ちょうど梅雨の時期。今年はきっと涙雨になるだろうな。そんな寂莫とした想いを抱きつつ、淋しさを紛らわすように、今週は渋谷道劇にやって来た。

 私はそこで新しいストリップの天使に出会った。私の中のSweet Spotが大きな音を立てて弾んだ。ストリップの神様は私を見捨てていなかった。彼女の名前は「立花散里」。

今週のメンバーは次の通り。①園田しほり(フリー)、②天羽夏月(九条OS)、③立花散里(道劇)、④さつき楓(晃生)、⑤新條希(道劇)&RUI(栗橋)、⑥平野ももか(道劇)〔敬称略〕。今週は、立花散里さんのデビューの他にも、平野ももかさんの初トリ、新條希さんとRUIさんのチームショーと話題が多い。

 

最初に、渋谷道劇から新人がデビューすると聞いて、昨年デビューした四人、橘メアリーさん、新條希さん、花咲はなさん、平野ももかさん、そして今年デビューして既に一週で消えた浜崎なおさん、白咲なるみさんと同じAV事務所の子かなと思って、散里さんに尋ねてみたら、なんと素人からの飛び込みだった。「私は岐阜出身で、まさご座でストリップを観て憧れてデビューしました。」「道劇のスタッフさんに声をかけてデビューさせて頂きました。」

驚いたのが1997年8月14日生まれの19歳であること。今この業界にこれだけ若い子はいない。彼女の初々しさに納得。しかも「ストリップ以外に学生をやってます。ストリップはたまにしか乗れないけど、できるなら続けたいです。」

私は初日に彼女に出会って離れられなくなった。今週はこの子に骨をうずめようと決心。

すぐさま私はスト仲間に連絡し、みんなで彼女を応援しようと呼びかけた。もうすぐ引退する石原さゆみさんの代わりを探していた仲間は皆やってきて、彼女の魅力に驚いていた。新しい我々のアイドルが現れたことにみな狂喜していた。

 

 デビュー週の模様を話しておこう。デビュー作はこんな感じ。

最初に、新人らしい清純なイメージの白いドレスで登場。舞台にパーッと花が咲いた雰囲気になる。まさにフレッシュな華をもっている女の子だ。

膝上までのワンピースドレスで、白地に金色のポチポチ斑点がある。白いVの字の襟首には、白にピンクが混じった首輪が見える。白い手袋、髪には白い花飾り。すらりとした脚に銀色のハイヒール。

斎藤由貴の曲「悲しみよこんにちは」にのって可愛らしく踊る。

次に、赤いロングドレスに着替える。肩紐で吊るしたドレスで、足元は二重の裾になっている。髪はセミ・ロングで、胸まで垂らす。

細川ふみえの曲「メロンの切り目」に合わせて裸足で踊る。

小林麻美の名曲「雨音はショパンの調べ」に変わり、白いパンティのみで盆に移動し、ベッドショーへ。

 十代の若いヌードが輝く。まぶしいほどの白い肌。すらりとしたプロポーション。手のひらサイズのバストに、ポチっとしたピンクの乳首がかわいい。丘の上に逆三角形でちょこんとのっている薄いヘア。小股の切れ上がった、白桃のようなお尻。なにもかもが可愛くそそる。心が洗われるような美しいヌードである。

3サイズを尋ねたら最近測っていないとのことで、「身長は154㎝、体重45kg、胸はAで・・・服は大体Sです」と教えてくれた。はい!十分ですよ。

 

デビュー作について、散里さんに尋ねてみたら、いろいろ教えてくれた。

「衣装は藤波社長と決めた」「振付はちなつ先生です。」「選曲は自分でやった」

特に選曲がよくて気に入った。AKB48などの最新流行曲でなく、全て古い曲である。彼女が生まれる前の曲である。1曲目の「悲しみよこんにちは」(斎藤由貴)は1986年3月リリース。2曲目の「メロンの切り目」(細川ふみえ)は1993年8-9月にNHK「みんなのうた」で放送された楽曲。3曲目の「雨音はショパンの調べ」(小林麻美)は1984年4月リリースした名曲。4曲目の「セシル」(浅香唯)は1988年8月リリース。浅香唯は80年代アイドルで、ヒット曲「セシル」は勇気付けられる歌の定番である。散里さんは「私は古い歌の方が心に受け入れやすくて好きなんです。」とコメントしてくれた。

 

私は、彼女の名前が気になった。「千里」という名前はよく見るが「散る」という字は使わない。何か意味があるのかなと思い、散里さんに尋ねるも返答なし。そこでインターネットで「立花散里」と検索してみたら、源氏物語にヒットした。

花散里という登場人物に出会った。彼女に対して光源氏が詠んだ有名な歌がある。

「橘の 香をなつかしみ 時鳥(ほととぎす) 花散里を たづねてぞ訪(と)る」

橘の花の香りを懐かしんで飛んできたほととぎすのように、私もこの橘の花が散る里を訪ねてきました、という意味。

私は「これだ!」と思った。橘を立花にして「立花散里」にしたのか。その瞬間に童話のストーリーが私の頭の中を流れた。童話「花散る里」はこうやって出来上がった。

楽日前日にプレゼントできた。散里さんの反応もよくて嬉しかった。「童話ありがとうございました。私がそういう風に出てくるとは・・・意外で笑ってしまいました。」デビューのいい思い出になってくれれば嬉しい。

次の公演、8月の渋谷道劇を首を長くして待っていますね。これからもよろしくね。

 

平成29年5月                            渋谷道頓堀劇場にて

 

 

 

 

H29.5

『花散る里』    

~立花散里さんのデビューを記念して~

                   

 貴族全盛時代の京都。

 宮中でプレイボーイとして知られた25歳の光源氏が京の街中を歩いていると、美しい少女が通りかかった。田舎から出てきたような旅装束をしており、不安気な表情を浮かべている。お供の者が付いているものの、どうも道に迷っている様子。

 源氏はすぐに声をかけた。少女が訪ねようとしていた家が源氏のよく知る人だったので道案内することになった。源氏は少女を案内がてら、どこから来たのか、親御さんの家系、年齢、などを聞いた。少女は19歳だった。京から三つの山を越えた村からやってきたようだ。源氏もその村のことを知っていた。

 目的の家に着いて彼女は源氏に丁重にお礼を述べた。お供の者も一緒にお辞儀をした。

 

 源氏は少女のことが忘れられなかった。都の女性とは違う、鄙の素朴な初々しさに強く惹かれた。

 源氏は、京から三つの山を越えた村に便りを出した。その村は、橘の花が咲く里として知られており、花見がてら訪ねることにした。源氏は彼女のことを「花咲く里」と名付けた。

 村に辿り着いた源氏はすぐに「花咲く里」を訪ねた。彼女は源氏を歓迎してくれた。食事をご馳走になり、夜も更けたので、泊まっていくことになった。

 プレイボーイの源氏は早速、彼女の寝室に夜這いする。彼女も源氏が訪ねてくるのを待っていたかのように快く迎え入れてくれた。二人は激しくお互いを求め、愛し合った。

 

 夜が明けて、部屋が明るくなって源氏は目を覚ました。すると、隣に寝ているのはあの「花咲く里」ではない。なんとなく似てはいるが、全く可愛くない。源氏は驚いて、彼女を起こして尋ねた。

「そなたは誰かな?」

「光源氏さま、今更何をおっしゃいますか。昨日から一緒にいるではないですか。私はお化粧を落とすとこんな顔になるのです。申し訳ありません。」声は間違いなく彼女のもの。

 念のため、源氏は年齢や家族のことをいろいろ尋ねたが、即座に答え、それは間違っていなかった。

 怪訝に思ったものの、一夜を共に過ごした責任を逃れるわけにはいかない。京に来て自分の妾にする約束を守ることにした。

 源氏は、この村にやってきた時には「花咲く里」とうきうきしていた気分が、帰りは「花散る里」の気分だった。

 

 実は、彼女には双子の姉がいた。姉は美男子である光源氏の大ファンであった。

 京で妹が源氏と出会った時に、姉は妹と一緒だった。源氏が勝手にお供の者と勘違いしていたにすぎない。源氏は妹ばかり見ていたし、姉は深く帽子をかぶって顔を隠していたのだった。

 姉妹は一計を案じた。夜更けに源氏が忍び込んできた時に、布団の中にいたのは姉の方であった。双子なので背格好は同じ。声も似ている。質問に即答でき正解を言えるのは当然であった。

 

 姉は源氏の言う通りに京に上り、源氏の妾となった。名前を「花散里」と呼んだ。

 しかし、源氏は花散里の顔を見るとどうも性欲がわかず、全くお忍びが無かった。

 ただ、花散里はとても性格のいい娘で、献身的に源氏に尽くした。機転の利くところがあり、なにかと源氏の相談相手になった。つまり、お役目は夜ではなく昼ばかり。それでも花散里は文句ひとつ言わず、大好きな光源氏の側にお仕えできることが幸せであった。

 いうまでもなく、源氏は女好きで浮気ばかりしている。そんな源氏の不誠実さに怒りもせず、いつも困ったときにやってくる源氏を温かく迎え入れた。初めから源氏は自分のものでないのだから、心変わりしたなどと憎んだり恨んだりする筋合いもない。二人は深い友情で結ばれていたみたいな関係で、すごく頼りにしていた。

 だからこそ、光源氏は花散里に、自分と正妻であった葵の上(夕霧を出産時に死亡)との子・夕霧の母親代わりを頼むのです。もちろん、花散里は子供を産んだことも育てたこともありません。(することをしていないんですから子供が出来るはずもない)

 それにしても、頼む源氏も無神経この上ないものの、素直に引き受ける花散里も実に人がいい・・・ちなみに、これに味を占めた源氏は、後にまた花散里に、夕顔の忘れ形見の玉蔓の後見人を任せたりします。

花散里はいつしか、並みいる女御達を押さえて、正妻・紫の上に次ぐナンバー2の座を勝ち得ていました。

源氏は、花散里を自分の館である二条東院の西の対に迎え入れます。そして、自分の権勢の証となる六条院を造営した折りには、紫の上の住む春の館に次ぐ夏の館の主として花散里を遇するのです。源氏の花散里への好意は変わることなく、生涯続きました。源氏の死後、花散里は二条東院を遺産として譲り受けます。

花散里は、源氏物語の女性の中では、もっとも平穏で幸せな人生を送った女性となる。

 

 とまぁ、姉の方は結果としては良かったのですが、問題の妹の方はというと、この時代の英雄であった光源氏を騙したわけです。神仏は彼女に島流しならぬ時代追放という罰を下しました。彼女をタイムマシーンにのせて現代に送り込みました。そして、罪滅ぼしとして、世の男性たちの癒しのためにストリップをやることを命じました。

 今、彼女は「立花散里」という名前で渋谷道頓堀劇場のステージに立ち、可憐な裸体を披露しています。

 

                                    おしまい