大きなニュースが飛び込んできた。

人気TVアニメ『アンパンマン』の作者やなせたかし氏が2013年10月13日(日)に亡くなられた。満94歳だった。

 アンパンマンは私の子供たちも大好きだったので一緒にTVでたくさん拝見している。アンパンマンを始め、カレーパンマン、ショクパンマン、バイキンマンなど・・たくさんのユニークなキャラクターが登場する。私はなぜかバイキンマンが好きで、悪役でありながら憎めないキャラクターに描いていることに作者の思いを感じたりした。以前、そのことをエッセイに綴ったこともある。

 アンパンマンは決してかっこ良いヒーローではない。相手を一方的にやっつけたりしない。やなせさんは先の戦争での出征体験から、この世には絶対の正義も悪もないことを知っていたのだろう。本当の強さとは優しさであることをこの物語は気付かせてくれる。

 

 やなせさんは遅咲きの人。今では漫画家として有名だが、ずっと漫画家としては芽が出ず、漫画やイラストの仕事よりも舞台装置の製作や放送作家、作詞家としての仕事の方が多かった。「アンパンマン」を生んだのは50代も半ばになってからで、「アンパンマン」が人気を博すようになったのは70歳になってからだった。そうした経歴を見ると、私は自分が今こうやって沢山のストリップ童話を書いていることにすごく励みを覚える。いつかは自分も芽が出ると信じて書き続けたいと思う。

 ふと、彼の経歴を読んでいたら、「ワレメちゃん」という性教育用語を、「ウルトラQ」脚本家北沢杏子とともに考案したことが知られているとあり、笑ってしまった。私と同じく、ジョークを解するスケベなファンタジストなのかなと親近感を覚える。

 

 アンパンマンを生み出した彼のエピソードが心に沁みる。

 高知で育った子供時代、出かけた帰りに電車賃を落とし、遠路を歩いて帰ったことがあった。へとへとになったときに、知り合いのおじさんからアンパンをもらう。ひもじい気持ちの中、涙が出るほど嬉しくて、またアンパンが元気をくれた。この味は一生忘れられない、と語っている。アンパンマンがひもじい人に自分の顔をちぎって食べさせるのは、そんな思い出が下敷きにある。

 

 私も、若い頃は女性にもてなくてひもじい思いをしていたから、やなせさんの「ワレメちゃん」に負けないように、童話「マンマンマン」(?)を書いちゃおうかな。

                                   

 

 

 

 

 

『それいけ! マンマンマン -ストリップ界のアンパンマン-』 

 

 ななは小さい頃からアンパンマンの大ファンだった。だから、アンパンマンのように、ひもじい人たちに何かを与えられる仕事をしたいとずっと考えていました。

 年の離れたお姉さんがストリッパーの仕事をしていたことから、ストリップの仕事に興味をもつ。女性にもてない男性、奥さんに相手にされなくなった旦那など、淋しい男たちが集うところがストリップ劇場。「私のこんなヌードでよければ、男性を喜ばしてあげたいわ」と思い、ストリップ界のアンパンマンならぬストリップ界のマンマンマン(?)になる決意をしました。

 

 ななの可愛い笑顔はたくさんの男性のハートを鷲掴みにしました。

 最初のうちは夢中でステージを努めました。人前でヌードを晒すのはすごく恥ずかしくて抵抗がありました。でもお客さんがとても喜んで、元気になるのが分かりました。まるでアンパンマンが自分の顔をちぎって相手に与えるごとく、あそこを指で開くと、目がぱちくり、お口があんぐり、そう!、お客さんの笑顔が開くんです。なんか面白くって! 次第に見せるのが快感になりました。 

マンマンパーンチ★★★

お客さんが皆メロメロリン♪

ななのオープン爆弾は定評になりました。今では立派なマンマンマンです(笑)。

 

 一人の客が毎日のように、ななに会いに来ました。彼はいつもニコニコ笑顔で、ななを見つめていました。ななは彼の笑顔、手拍子、彼のくれる手紙などの応援に励まされました。お客さんを元気にするはずが、逆に自分が元気になります。ななは彼のことを私のアンパンマンだと思いました。

 他にも、ななを気に入って、ファンになった客がたくさんいました。ショクパンマンHやカレーパンマンSなどなど・・・

 

 ななはアンパンマンが現れるのをいつも心待ちにしていました。最初のうちはたくさん会いにきてくれたアンパンマンがぷっつりと顔を見せなくなりました。アンパンマンに事件があり、もう会いに来れなくなったみたい。

 久しぶりに顔を見せたアンパンマンは言いました。

「ぼくは、ななさんのアンパンマンではない。事情があって、いつも傍にいて元気にさせられなくなった。でも、もちろん今でもななさんのことが大好きだよ♡

 たまに、ふらりと現れたときには笑顔で迎えてほしいな~」

 彼はバイバイキーンと言って立ち去って行きました。

 

 ななは思いました。「彼はアンパンマンではなく、バイキンマンだったのかしら?」と。

 

                                    おしまい