前にも書いたが教育虐待して息子を殺してしまう、という事件があった。
さすがにまわりの日本人にはそこまでされた人間はいない。
だが私の知り合いの中国人にひとり似たような体験をした女性がいる。
私は一時、中国語を習いたくて家庭教師を探していた。そこで友人よりひとりの中国人女性を紹介してもらった。
彼女は中国からの留学生で、都内の有名美大でデザインを学んでいるとか。会ってみるとまぁまぁかわいい。国仲涼子さんをもうちょっとクールにした感じ。
それから週1回くらいのペースで中国語を教えてもらうことになった。
が.....
とんでもなく情緒不安定なのだ。社会不安障害(SAD)ということばがしっくりくるかもしれない。待ち合わせした喫茶店に来るまでにパニック発作、過呼吸を起こし、たどり着けないことも何回かあった。
彼女はとても日本語が流暢なのだが、得意の日本語を操って、日本人の彼氏をとっかえひっかえしていた。つまり男性がいないと安心できない。私の前でも彼氏に電話して、無理な要求を彼にして愛情を確かめていた。そんな感じだから長続きせず、結果とっかえひっかえになってしまう。こういう情緒不安定さって、万国共通なんだなと、彼女をみて思った。
そして、彼女は日本語学校で中国人の生徒を相手に日本語を教えていたのだが、人間関係がうまくいかず、塾長、生徒といつもトラブルを抱えていた。また、大学の日本人の友人からは「○○さんはこれからが人生経験なんだから、ゆっくりやっていこう」と励まされていた。このような友人ができたことは、彼女にとって幸せなことだったと思う。
彼女は中国の大規模都市に生まれ、幼いことからエリート教育を施される。また、小学校が終わっても友人と遊ぶことはなく(これは現在の中国では結構普通らしい)、日本でいうところの塾と家との往復。大都市で治安の問題があるせいか、一人でマンションから出ることもかなわないような子供時代だったという。そのため彼女はとても多くの本を読んだそうな。
父親は会社を経営していてはじめは裕福だったか、だんだんと会社が傾き始め、素行が悪くなっていく。彼女の態度や勉強の進み具合に文句を言い、言葉を荒げたりすることも多かったよう。私と会っていた時期も、父親との折り合いがつかず、旧正月に実家に帰るかどうかを非常に悩んでいた。
彼女は、もともと頭がよかったこともあり、現在の中国で一番世界ランキングの高い大学に進学して卒業するも、大好きだったデザインを、大好きな日本で学びたくなり、留学を決意する。そして父親と大喧嘩の末、日本の美大の入試に合格する。日本に留学するのは結構大変なようで、日本語能力検定でN1という、一番上のランクじゃないと難しいとのこと。美大なので、それプラス美術の課題を出して説明しなければならない。
圧倒的な幼少期の経験の少なさ、勉強と塾だけの世界、そして親の暴言。これだけのコンボがそろってしまうと、やはりメンタルヘルス案件になってしまう。彼女は今まさに、親に引かれたレールから外れ、日本でデザインを学ぶという自らの選択をして生き始めている。ただ、3年からの編入という形をとっているので、就職まで考える時間はあまりない。
私は彼女に対して、運動療法やマインドフルネス、コーピングなどを教えてあげた。中国ではまだ、「うつ病になる人は心が弱い人だ」というような認識が一般的だと教えてくれて、日本はそういう面では進んでいる、と教えてくれた。私が最後にあったころにはだいぶパニック発作は少なくなっていたが、今後も日本で自我を取り戻し、順調に回復していってほしい。
今回は極端な例だが、このようにひとりひとりの人生をつぶさに見ていくと、いろいろとためになることもある。
悪い趣味...かな。