「その3」より続き
先輩のところに行くと、別に急ぎの用件があったらしく、
「あとで見る(チェックする)から、(「結果」を)もらえるか?」
ということであったので、僕はさきの「結果」と、比較検討に使った「軸」の図面を先輩に渡し、自席に戻って別の仕事をこなし始めた。
しばらくして、先輩が僕の席に来た。
正直、「注文がつかない」ことは無いであろうとは思っていたが、
その「注文」をつけた上で、
「その上でならば、まぁ、いいだろう。進めて」
ぐらいにはなるであろうと想像していた僕に対し、先輩の言った言葉は、
「(比較検討に使った)この『軸』、随分古いもので、壊れたか壊れなかったかわからないから、『これで比較検討しました』ということにはできない」
であった。
・・・えぇっ!?
うちの図面管理は、「壊れたもの」と「壊れなかったもの」の区別もつかない状態にあるわけ?
さらに続けて、
「なぜ(材料を)S43CではなくS45Cにしたのか?」
と質問された。
どうやら「軸」の材料に、(何故だかわからないが)うちの部署ではよく使われる「S43C」を指定せず、「S45C」を指定したことに不満があるらしい。
前者については、ここではひとまず置いといて、まず後者については、僕なりの理由がある。
それは、材料の「疲労限度」などを測定する、いわゆる「材料試験」のn数が多く、データが比較的そろっているから。
n数(「エヌすう」と読む)とは、平たく言えば「試験の行われた回数」のことで、当然ながらこれが多いほど取られたデータの数が多く、また一般的にデータの数が多いほど、その特徴をつかみやすいであろうことは、ご想像いただけると思う。
このn数が、S43CよりS45Cのほうが圧倒的に多く(10倍や20倍どころではない)、一方でS43Cについては「無いことはない」ものの、あれこれと調べてみたものの極めて少ないというのが現実で、そうなればどちらを採用するかは言わずもがな、S45Cのほうを選んだわけである。
一方の前者については・・・正直、絶句である。
というか、理屈が合わない。
繰り返しになるが、「軸」の直径について、先輩の計算では35mm、僕の計算では38mm、これに種々の理由を加味して40mmとなった。
そして僕は、先輩の言うところの「壊れたか壊れなかったかわからない」ものと、35mm、40mmとを比較検討し、「やはり35mmでは不足」という結論を得た、ということは先に述べた。
ここでちょっと考えて欲しい。
「壊れたか壊れなかったかわからない」ものとの比較検討においてさえ「35mmでは不足」という結論になったというのに、「35mmにしろ」というのは・・・
おかしくないか!?
(続く)