「その2」より続き
僕の提出した「軸」の部品図を見た先輩は開口一番、
「なぜ(「軸」の)直径を40mmにした?」
もっともな話である。「35mmでもつ」と教えたはずなのに、出来上がってきた図面は40mmになっていたのだから。
僕は先述の経緯を踏まえ、計算書を見てもらい、強度計算における根拠(材料の実験資料など)を提示し、「軸」の直径を、教えてもらった35mmではなく40mmとした理由を説明した。
僕の説明を一通り聞いた先輩が次に発した言葉は、
「・・・で、実績は?」
この言葉に、最初僕は、何を聞かれているのかわからなかった。
要は
「過去にも別の製品で同じような試験が行われているはずであるから、そのときの『軸』について、同じように解析を行い、比較検討したか」
ということである。
「そんなことをする必要があるのか?」
という考えが一瞬、頭をよぎったが、先述のように「装置が壊れてしまっては話にならない」わけであり、ましてや僕のような、設計経験の浅い者のやることである。
過去のいわゆる「実績」と比較検討するというのは、ある意味当然のことといえる。
今思えば、恥ずかしいことであるが、当時の僕は些か自分を「過信」していたようである。
とはいえ、「『実績』との比較検討」を示さないことには仕事が前に進まないので、僕は早速「実績」探しにかかった。
そこでまず、図面庫(過去の図面を収納してある倉庫)に行き、「軸」の図面を探したが、なかなか見つからない。
ようやく見つかったのは、なんと1970年代の図面。
もっと最近にも試験は行われているはずであるが、どうしても見つからない。
仕方なしにこの「軸」と、この軸を使って試験された「製品」の仕様を用いて計算を行い、今回僕が設計している「軸」と比較検討したのであるが、やはり今回の試験において、「軸」の直径は35mmでは不足という結論に至った。
その結果を持って、さきの先輩のところに説明に行った。
(続く)