「その1」より続き
それは配属から数年経た昨年夏のことである。
僕はひとつの仕事を与えられた。
それは、ある製品(機械)の試作が進み、耐久試験を行うことになり、そのための装置を設計せよというものであった。
「装置」といっても、回転する「軸」と、それを支える「支持台」からなる単純なものであったが、
件の「製品」が、海外への輸出も視野に入れたものであると聞くに及んで、「これはいよいよ責任重大」とばかりに、鼻息荒くして仕事に臨んだ。
通常、「装置」を設計するに当たっては、まず全体の配置を決める「計画図」を作成する。
このとき、「軸」の直径や「支持台」の脚の太さなどは、比較的簡単な計算でだいたいの寸法を決めて計画図に描き入れる。
その後、この「計画図」を基に、各部品の詳細な設計を行い、それぞれの「部品図」を作成する。
このとき、強度計算や材料の選定などには、理論と経験・実績とを併せよく検討して、細心の注意をもって行う。
そしてその情報を「計画図」に反映し、部品同士の「干渉(平たく言えば『ぶつかる』こと)」などがないか検討し、必要があれば修正する。
・・・というような作業を行い、一連のいわゆる「設計図」ができあがってくるのが、僕の勤め先のやり方である。
(他社がどうなのかはわからないが)
この時もこの例に漏れずに、僕は計画図の作成を開始した。
その際、先輩(件の「製品」の設計主担当、先述の「よいものを・・・」と言った方とは別の先輩)から
「『軸』の直径は35mmでもつ(壊れない)はずだから、それで進めて。」
と指示を受け、僕はそのとおりに計画図を作成した。
ところが、部品図の作成段階に入り、僕が「軸」の強度計算を改めて行ったところ、直径35mmでは強度が不足する可能性が出てきた。
厳しい耐久試験を行うにあたり、試験に耐えられなくなって「製品」が壊れるのならまだしも(設計しなおせばよいし、そもそもそういった問題を洗い出すための試験である)、「装置」のほうが壊れてしまっては話にならない。
僕の計算では、耐久試験を無事に乗り切るためには、「軸」の直径は、少なくとも38mmは必要となるはずであったと記憶している。
これに加え、「軸」を支える「軸受(ベアリング)」の選定(市販品のボールベアリングを使う)ということも絡んで、僕は「軸」の直径を40mmに決定して、部品図と計算書を作成し提出した。
(続く)