10年以上前から計画していた3極管シングルアンプ3代記の製作も終ったところで、電電公社で使用されていた電話用真空管(未使用分)の棚卸をしてみました。

 

 上段 左から 101D(NEC1947.4製造)×4、101D(WE)、101D(NEC)

 下段 左から 102D(NEC1947.3製造)、HO-101F(NEC1950.11製造) 、

 CW-101D(WE)、HO-104-F(NEC1949.1950製造)×3、104-F(NEC1948.5製造)

 

 右下の4本(*注)は104Dアンプの予備球として使うつもりですが、上段の101Dテニスボール球を死蔵するのもどうかと思われ、101Dシングルの試験用アンプを作ることにしました。幸い残ったパーツを工夫すれば、新たに購入するものはあまりなさそうですし。

 

 *注 NECは電電公社納入品の104には HO- を冠し、またフィラメント電流を減らしたもの(4.15V、0.5A)には -F を付したと聞いています。フィラメントに気をつければST管の104として104Dアンプに使用できると考えています。

 

[参考にする回路]

 

 

 

 

 手持ち部品の関係、特に再利用するシャーシの大きさもあって電源部、出力管ドライブ部分は違う形になると思っています。

 利用できるパーツを確認してから回路図を起こしたいと思っています。

 

[変更のポイント]

 1.出力管ドライブ回路

   参考回路ではドライブに102Dを使用していますが、102Dは手持ちが1本だけ

  なので2チャンネル分には不足します。またスペース的にST管では窮屈なので

  12AX7または12AU7の2段増幅を検討しています。

  今までのアンプは12AX7パラ接続の1段増幅でしたが、iPODを直接接続する場合

  は増幅度が不足するため。

 

 2.高圧電源回路

   真空管用電源トランスを持っていないので、スイープジェネレータからの取り

  外し品(82V/0.15A)を倍電圧または3倍電圧整流して使うつもりです。

  また、直熱管保護のためタイマーリレーを使って高圧ONのタイミングを遅延させ

  ます。

 

 3.DCフィラメント電源回路

   6.3V/3A ×2 のヒータートランス出力をブリッジ整流した後、3端子レギュレ

  ータ LM338により、約2V~4.5V間を調整可能なDC電源を2系統作ります。

 

 4.101D動作点測定のためのメーター回路

   6本すべての101Dの状態を確認したいのでプレート電圧/電流とグリッドバイア

  ス電圧を測定できるようにするつもりです。

 

[シャーシレイアウトの検討]

  再利用するシャーシは、CZ-504Dプッシュプルのモノラルアンプを作るつもりで途

 中まで穴あけをして中断していたものです。

 

A案:

 下の写真は、出力トランスをシャーシ内に納めたらどうかと検討したものです。

シャーシの深さがちょっと不足しており、シャーシの脚をつければ何とかなりそうでしたが、シャーシ内が狭くなるので採用見送りです。 

 もと電源トランスを取り付ける予定であけた大きな穴(中央 上)はメーターを取り付けてふさぎました

 

B案:

 次に、出力トランスをシャーシ上に持ってきてトランスカバー(右端のパンチングメタルでできたケース)をつける案を考えましたが、トランスカバーの大きさがぎりぎりなので不採用としました。

 ドライバー管用にMTソケットを取り付ける穴2つをタイマーリレーの右にあけなければいけません

 

C案:

 部品探しもだいぶ進んできたので、集めたものをとりあえず並べてみた(空いている穴をできるだけ使うように)案です。シャーシの外に置いてある部品はシャーシ内に納める予定です。試験用のアンプなのでアンプ部分の対称性は気にしないことで考えました。

 

 

D案:

 今までの案は、新たに大きな穴をシャーシに開けなくて済むことを優先していましたが、これを放棄して、アンプ部分と電源部分を右と左に分けてすっきりさせようとした案です。ST管ソケット用の丸い穴を2つ新たにあけなければいけないのですが。

 左101Dの下の穴とその右(新たな穴をあけて)にはドライバー管を取り付ける予定ですが、ST管用ソケットの穴なので、使えそうなST真空管を探してみました。(写真下の4本)

 見つけたのは37と76ですが、戦前のもの(1940年4月製造のマツダ製)なのとソケットが見つからないという理由でST管ドライバーは不採用にしました。

 MT管ソケットにアダプターを付けて、ST管用の穴に取り付けることにしました。

 

 電源関係のかなりの量のパーツをシャーシ内に入れなければならないので、さらに検討が必要ですが、基本的にはこの案で行こうと考えています。

 入出力、AC関係の部品はシャーシ上面につけたいのですが、場所がないのでシャーシ側面も利用することになりそうです。

 それにしてもシャーシパンチでのST管ソケット用の穴を2つ開けるのは大変そう、先が思いやられます。アルミ製とはいえシャーシの厚さが2mmもあるので。

  

 

 バラックでの主なテストが終わったので、リアパネルの配線をして、ケースに組み込みました。

 

 リアパネルの配線とその他の配線の整理・バインド の様子

 

 結構苦労しながらやっとケースに組み込んで、電源スイッチをいれても電源がONになりません。ケース組み込みでAC100V系の配線に無理な力がかかって切れてしまったのかと、またケースを分解してチェックしました。狭いのでテスターのリード棒が入りませんでしたので。

 

 最終的には、ヒューズホルダーが壊れていました。ケース組み込み前にチェックした時はOKだったんですが、ケース組み立て時に取り付けが緩んでいたので増し締めした時壊してしまったようです。古い部品なので経年劣化で弱っていたプラスチックが増し締めで破断したみたいです。

 

 他のものを取り付けようとしたらサイズが大きすぎて入りません。仕方ないので

筒形のホルダーをケース内部に押し込みました。 

 

 ケース右上の白い棒状のものが応急的に取り付けたヒューズホルダー

 

 一番左が壊れたヒューズホルダー、右2つが標準的なヒューズホルダー

 

 ヒューズホルダーはいずれ交換するとしても、機能的には完成したということで、机の左横に設置しました。エージングを兼ねて1週間くらい使ってから周波数特性などを測定する予定です。

 

 机の横にセットしたプリアンプ、iPODから入力して104Dアンプを鳴らしています。

 

 正面パネルは、左から「入力切替スイッチ」、「バランスボリューム」、「音量ボリューム」、「高音トーンコントロール」、「低音トーンコントロール」、一番右が「電源スイッチ」です。一番左にある大きな2つのねじはテープレコーダ用の部品を取り去った後の不要な穴をふさぐためのものです。

 

                                (以上)

 今回は、VUアンプの導入、今までの不具合個所の手直し(B+電圧のアップ、バランスボリュームの配線見直し)を行いました。

 

1.まず既存のカソードフォロワー/VUアンプ 基板と関係配線を取り外しました

 

2.購入したVUアンプキットとメーターランプをチェック

 左側の4つ並んでいるのがVUメータにつけるランプ

 

3.VUメータアンプ・キットとその電源の製作

 

 配線完了の基板

 

 キット製作には久しぶりにこて先の小さいハンダ鏝を取り出して虫眼鏡を使いながらやりましたが、部品が一式揃っているので思ったより早くできました。

 

 電源は真空管のヒーター電源(DC12.6V、中点アース)を使う予定でしたが、VUアンプのアースと入力信号のマイナスが共通になっているため使えないことがわかり、別に作ることにしました。VUアンプのVDDにヒーター⊕、GNDにヒーター⊖をつないで信号入力のシールド線のアース側をGNDにつなぐとヒーター電源のマイナス側電圧がショートされることになってしまいますので。

 

 VUアンプ回路図

 

 新たに作る電源は、VUアンプとVUメータランプの点灯に使うのですがスペースも少ないので、できるだけ簡単なものを作りました。

 高圧用トランスについている未使用の 0-6.3V-12.6V巻線から電流を取り出しブリッジダイオード KBP208G、 電解コンデンサー1000uF 35Vを小さなラグ板に組み込みこれで終わりです。 最初、0-12.6V巻線を使ったのですがランプがあまりにも明るくなり今にも切れそうなので最終的には0-6.3V巻線を使いました。

 すべて接続して電圧を測ると6.95Vくらいで、VUアンプ動作電圧下限の7Vをちょっと切りますが我慢することにしました。

 

4.VUメータアンプとメーター照明の試験

 VUメータアンプの基板と関係配線を組み込んでメインアンプ(104Dアンプ)と接続して試験しました。

 

 

 

 試験中の様子、メーターランプが暗い

 

 [試験の結果]

 特に大きな問題は起きませんでしたが. VUメータアンプのRとLの零点調整をすると、お互いに相互作用しているように見えました。

 改めてアンプの回路図を見てみるとメーターのマイナス側を個別にバランス調整させているようです。前の真空管メーターアンプでは零点調整機能は必要なかったため、左右のメーターのマイナス側は共通配線で真空管メーターアンプのアースに接続していました。今回これをそのまま使ったことに原因があるようです。

 左右のメーターのマイナス側配線をわけてメーターアンプに接続すれば問題解消できそうです。

 

 2.7KΩ抵抗をショートして電圧チェック

 

 前回のテストでB電圧が参考回路より40V近く低いことが判明してましたので、今回整流出力直後の2.7KΩをテストリードでショートしてみました。

 

     以前のデータ  ショート後のデータ

  A点   304V                    295V

  B点   250V        295V

       B1         225V                       264V

       B2         230V                       270V

       B3         225V                       261V

       B4         234V                       270V

 

 これで参考回路の電圧値と殆ど変わらなくなりますので、2.7KΩの抵抗は取り去ることにしました。聴感上は特にゲインが増したということは感じられませんでした。

 

 次に、プリアンプのトータルゲインが低い原因がバランスボリュームにあるのではないかと考えていたことを検証してみました。

 

 配線をはずして、バランスボリュームの回転角に応じる抵抗値を測定してみたところ、概略下のグラフのようになっており、下の図のように配線すれば良さそうだとわかりました。すなわち、ボリューム中央で、左右の信号の減衰0、右に回すと左側信号の減衰量が直線的に増えて、右信号の減衰量は0のまま。左に回すとこれが反対になります。

 試験の結果に基づき、メーターマイナス配線の見直し、電源基板高圧の初段平滑抵抗の除去、バランスボリューム周りの配線の見直しをした結果が、下の写真です。

 

 

 試聴してみるとVUメーターの振れも含め、問題点はすべて解消したように思えました。心配していたプリアンプ全体のゲイン不足も解消し、手直し前の50%程度のボリューム位置でも大きすぎる音量が得られました。定性的な表現ばかりですが、来年になったらすべてのアンプの特性を定量的に測定しようと思っています。

 

 バラック配線でのテストは今回で終了して、次は、きちんとケースに組み込んですべての配線とテストを完了させる予定です。

 

 回路の再確認チェックが終了したので、試験することにしました。

 

1.ヒーター回路の試験

 

 まずヒーター回路、B+回路の基板側(イコライザー、フラットアンプ、カソードフォロワー)の配線をしました。電源基板との接続のためヒーターは2mmバナナプラグで、B+は基板用中継コネクタで接続できるようにして、増設したハムバランサーとも配線しました。

 

 配線終了した基板裏の様子

 

 ヒータートランス(14.4V、1A)、電源基板とプリアンプの3基板を接続し、6本の真空管(12AU7)を挿して試験しました。

 

 ヒーター電圧試験中の様子

 

 電源ボードから一番遠いハムバランサーのところで測定して12.3Vを得たのでOKとしました。

 

2.B+回路の試験

 

 パネル上に各基板とヒータートランス、B+用トランスを設置しB+コネクタとヒーターコネクタを接続して試験しました。最初、イコライザ基板の電圧が出ていなくてびっくりしたのですが、基板間のアース接続、R/L両チャンネル間のアース接続ができていないことに気がつき修正しました。

 なおカソードフォロワー機能は別途確認するつもりでその基板へのB+は配線していません。

 

 最終的には次の測定値が得られたのでOKとしました。それぞれ予定値より40Vほど低いのですが高すぎるよりよいかと考えたのと、最終的には回路図中の2.7KΩをショートすれば、B点が300V近くなるので問題ないと考えました。

 

      測定値   予定値(キット組み立て説明書の値)

 B1  226V  265V     

 B2  232V  275V

 B3  226V  265V

 B4  232V  275V

 A   305V  365V

 B   252V  295V

 

 

 ヒーター電圧、B+電圧を加えてB+電圧測定中の様子

 

3.フラット基板機能試験

 イコライザー基板の試験にはMMカートリッジをつけたレコードプレーヤが必要ですし、レコード再生にこのプリアンプを使う予定は当面ないので、フラット基板のみ試験することにしました。以前問題なかったのでたぶん大丈夫でしょうし、RIAAカーブの確認で別途に周波数特性の測定をするつもりですので。今はMMカートリッジを付けたヘッドシェルを持っていないというのもありますが。

 

 まず、セレクタ1のケーブルとプリアンプ出力ケーブルにRCAレセプタクルを仮付けし、前面パネル(セレクタスイッチ、音量ボリューム、バランスボリューム、トーンコントロールがついている)とフラット基板を自作の中継コネクタで接続しました。ついでメインアンプとして机上に置いたままになっている1626シングルアンプを使って、例のとおりiPOD音源で試験しました。

 

 試験結果は増幅率がやや不足する感じがするが大きな問題なしと判断しました。

増幅率の不足はB+電圧を40V程度上げることでだいぶ解消されると思います。

 

 バランスボリューム、トーンコントロールの配線が非常に多かったので誤配線を心配したのですが、問題なく機能していました。

 ただバランス用のMNボリューム自体に少し問題があるのではないかと心配しています。中点位置では左右チャンネルとも減衰0のはずですが、この位置でかなりの減衰があるように思えます(抵抗値の正確な測定はしていないので断言できませんが)。というのは試験中に右または左に回し切るとびっくりするほどの音量が出てしまいますので。増幅率が不足するように思えるのはこのせいかもしれません。

 

 正確なテスト音源を使っていないので言い切れませんが中点位置も明らかにずれています。可変抵抗器の製造精度があまりよくないのは今までの経験からわかっていますので、左右それぞれに音量アッテネータを付けた方が良かったかと考えています。

 

 機能試験中の様子その1

 

 機能試験中の様子その2

 

4.カソードフォロワー/VUメータアンプの機能試験

 試験前にVUメータをチェックしたところ、片側のメータ照明ランプが切れていました。ヒューズ型の特殊なランプで手持ちがないので黄色のLEDで代用することにしてソケットに直接ハンダ付けしました。

 12Vを印加するときの適正な直列抵抗を知ろうといろいろやっているうちに過電圧が加わったのかLEDが切れてしまい、またやり直しなどしましたが、左右2本のLEDを並列接続し12Vをかける時の直列抵抗は360Ωがよいとやっとわかりました。ところが、目盛り板全体を照明するには程遠い明るさで、高輝度LEDが必要なのかと悩みましたがとりあえずこれで行くことにしました。

 

 

 また、照明光が漏れないよう、また、ほこりなどがあまり入らないよう黒プラスティックでカバーもつけました。

 

 ついで、カソードフォロワー/VUメータアンプ基板にB+配線をし、フラットアンプ出力を入力につなぎVUメータを接続して試験してみましたが、VUメータはほとんど触れません。カソーフォロワー回路ですのでゲインはほとんど1のはずですが、フラットアンプの出力が小さいのかVUメータ駆動には絶対的にパワーが不足している感じです。

 現在のオーディオ環境では、カソードフォロワー出力は必要ないしVUメータアンプとしても力不足とわかったので結局これを取り外すことにして機能試験を終了しました。

 真空管でVUメータアンプを作るには3極5極複合管を使って2段増幅くらい組まないといけないようですが、それを載せる場所もないのであきらめました。

 このままではVUメータは動かないただの飾りになってしまいますが。 

 VUメータアンプ参考回路

 

5.今後の予定

 ネットで捜したところ、オペアンプICを使った小型のVUメータアンプのキットや、VUメータ照明ランプを入手できそうなのでこれを組み込んでから再度試験をする予定です。

 

 長い間、裸のまま机上においてエージングしていた1626アンプは完成したと判断して、プリアンプの試験に使用したのを最後にケースに組み込むことにしました。

 

 殆ど同じ回路で作った「3極管シングルアンプ3世代」の最後のものですし、傍熱管ヒーターなので一番作りやすいと考えていたのに、電源関係のトラブルで苦労してしまいました。

 

 さて、ケース(昔の真空管式オシロスコープのケースの流用)に入れようとしていたら、革製の持ち手が切れてしまったり、背面にある小窓の蓋がガタつくので調整していたらリベット止めが緩んでしまったりで、ケースの修理が必要になってしまいました。

 

 傷んでしまったケース(修理前)にとりあえず入れてみたところ

 

 裏ブタのリベット止めの緩みはちょうどよい大きさのビスナットに交換することで処置し、切れてしまった革製の持ち手は、捨てずにおいた図嚢のつり革を切って、持ち手に作り直しました。

 このつり革は40年以上前のもののためか革が固くなってしまっていたので、加工前に革用のオイルでやわらかくしました。

 

 修理したケース

 

 ケース収納前、前面の左右についていた蝶番と留め金も取り去りました

 

 ケースに収納した背面の様子、スピーカーコードと、ACコードが出ている

 

 ケースに収納した前面の様子

 

 パイロットランプは真空管のヒーターを見ればよいと省略したが、ケースに入れてしまうと覗き込まないとわからないことになってしまいました。