私のアンティークのコレクションは海事関係のものが多く、電気関係のアンティークは今まで持っていませんでした。
わずかに電気式シップログが電磁石を使っているので電気関係と言えば言えるかなという程度です。スクリューの回転に応じて発生した電気パルスを受け、電磁石で機械的な回転計に伝えるものでした。
今回入手した真空管試験機は、1920年代に米国 Stterling社で製造されたもの(Sterling Universal Tube Tester R-406) で、外国のラジオ博物館などにも展示されているようです。

箱はボロボロでした

でも本体は結構きれいで、説明書もついていました

バヨネット式のUXソケットがついているので手持ちの真空管101Dを挿して喜んでいるところです
実は、この真空管試験機は飾り物ではなく実際に使用しようと思っています。
私の作っている真空管アンプは真空管の機能確認も兼ねているので大部分にメーターをつけていますが、メーターのついていないアンプでもこのテスターを使って真空管(直熱3極管に限られますが)の健常度を確認できるようにしたいと思っています。
上の写真右側のプローブをアンプの試験しようとしている真空管のソケットに挿し、検証対象の真空管をこのテスターのソケットに挿し、プレート電圧とプレート電流、バイアス電圧、フィラメント電圧などを読み取ろうというものです。

ということで早速中を開けてみました、手前は入っていた電池
ケースの左右に細長い筒がありますが、なんとまだ電池が入っていました。
昔のものでもちろん電池は腐食してますので、傷みが他の部品に伝染しないよう慌てて取り出しました。ケースの中の貼付説明シートによるとC電池(バイアス用電池)のようで、フラッシュ用1.5Vを4本使えと指示がありました。

メーター2個、回転式切替スイッチ(手前)、シーメンススイッチの構造に似たプッシュスイッチ2個(奥のばね状のもの)が見えます

配線はワイヤーではなく、角形棒状の針金が使われていました
何をするにせよ回路がわからないと困るので、とりあえず目視で配線をたどり作ってみました。
テスターで導通確認していないのと、同梱の説明書を読んで原理の理解と回路の機能確認をしながら作ったものではないので間違いもあるとは思います。

上の回路図からの推定になりますが、次のことがわかります。
1.試験対象アンプ/ソケットのG端子はこのテスターと接続されない。(プローブケーブルは3本のみ)
テスターに挿した3極管のグリッドは、通常状態ではテスターのNEGATIVE配線に接続されている。すなわち、フィラメント電源のマイナス側と接続(アース)されている。
右側のプッシュスイッチを押すと3極管のグリッドには内蔵電池によりー6Vのバイアス電圧がかかる。
2.試験対象アンプ/ソケットのP端子(通常プレート電圧がかかっている)は、プローブを介しテスター上の3極管のプレートに接続される。この時テスター搭載のプレート電流計を経由するので、常にプレート電流が監視できる。このメータは、フルスケール10mAです。
3.試験対象アンプ/ソケットのF端子(プラスとマイナスの2端子)はプローブを介しこのテスターと接続され、テスターの真空管ソケットの対応ピンに供給されている。
したがって試験対象アンプ/ソケットにかかっているフィラメント直流電圧はテスター上の3極管のフィラメントに印加される。
この時、極性切替スイッチを経由しているので、このスイッチを操作することによって、テスター上の3極管にかかる電圧の極性を反転させることができる。
4.テスター上の3極管にかかるフィラメント電圧は、パネル左側の電圧計で常時監視できる。(目盛りは8Vまで)
左側のプッシュスイッチを押した状態では、この電圧計はテスター上の3極管のプレートとアース(フィラメント⊖)にかかる電圧(プレート電圧)を表示する。(目盛りは120Vまで)
この真空管試験機は、単に真空管にかかる電圧と電流を監視するだけではなくその良否を判断できるように作られているようですが、下の写真の説明書をよく読んでいないのでその方法はまだわかりません。

同梱の説明書、傷んでいますが読める状態です
上の説明書を一読した感じでは、テスター上に設置した真空管のバイアス電圧を0Vとー6Vに切り換えて、その時のプレート電流の変化から真空管の良否を判定するようです。試験できる真空管の種類はもちろん限定されていて当時のラジオにポピュラーに使用されていた、UV-199、UV-201Aなどが対象になっていました。
私は、この真空管試験機を改造して、動作状態の真空管のプレート電圧と電流、フィラメント電圧、バイアス電圧をチェックできるものにしたいと考えていますが、できるだけ原型を残したい気持ちもあっていろいろ迷っています。