不安と希望が混在したフランス80年代の1本@”Les Passages de La Nuit” | ばろーろの東京下町日記

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ずっと異国暮らしでした。
ニューヨークで飼い始めたアメリケン(犬)であるバローロにとっては日本こそが異国でしょう✨
夫婦と1匹で東京下町での生活を楽しんでいきます

今回紹介するのは、私にとっては久々のフランス映画作品ですフランス

子供の時から好きだったし、合計でフランス語圏には10年は住んでいるでし、フランスから帰国して6年目。

日常だった世界でしたし、やっぱり定期的にフランス映画は見ることで、「自分軸」が調整できるような気がしていますウインク

 

80年から90年代にかけての世界は目まぐるしい変化に満ちた時代でした。

日本ではバブルへの道をまっしぐらで、勢いがあった時代でしたよねダッシュ

 

フランスでもミッテラン政権が誕生し、若者を中心に漠然とした希望が満ちていくかにも見えた時期だったかも。

この時代は本当に個性的な、そして世界的にもヒットした作品が何本も製作されましたびっくりマーク

 

そんな時代にある大きな変換点を迎えたなんてことない普通の家族の絆と再生の物語!というのが今回の映画です。

彼らを繋ぐもの、それが夜中に流れるラジオ番組という設定なのです。実際にあったラジオ番組なんです。

 

Les Passages De La Nuit

 

邦題はちょっと長いのですが、こうせざるを得ないでしょうね~。バックグラウンドとして共有できる情報がないから。

 

午前4時にパリの夜は明ける

 

画像はお借りしました。

 

公式サイトもあります。

ご関心のある方はこちらにどうぞ!!

 

あらすじはその公式サイトから引用します。

 

1981年、パリ。

結婚生活が終わりを迎え、ひとりで子供たちを養うことになったエリザベートは、深夜放送のラジオ番組の仕事に就くことに。

そこで出会った少女、タルラは家出をして外で寝泊まりしているという。

彼女を自宅へ招き入れたエリザベートは、ともに暮らすなかで自身の境遇を悲観していたこれまでを見つめ直していく。

同時に、ティーンエイジャーの息子マチアスもまた、タルラの登場に心が揺らいでいて…。
訪れる様々な変化を乗り越え、成長していく家族の過ごした月日が、希望と変革のムード溢れる80年代のパリとともに優しく描かれる。

 

普通の一家とは言いましたが、離婚の後、ほぼ専業主婦だった彼女が仕事をもって子育てをしていくことになったエリザベートを演ずるのはシャーロット・ゲーンスブールです乙女のトキメキ

だからと言って、何の苦労もなく、生きていたか?というとそうでもなさそう。

さりげないシーンでしたが、彼女が着替えるシーンがさりげなくあるんです。

右胸が乳がんの全摘をしていることがわかりましたしで、安穏とした生活を決して送ってきたのではないことが分かる監督のこだわりなんだろうなぁって思いました。

 

シャーロットですが、母親役を演ずるのようになっても、相変わらず少女を思わせるような繊細さは変わらないですね~ウインク

 

夫が家を残して出ていったものの、生活も安定していない中、不眠症のエリザベートを支えたのはヴァンダの深夜ラジオ番組でした。

ここでは、色々な人たちの悩みが紹介され、自分たちの生活を吐露するコーナーが評判だったの。自分も不幸だけれど、世の中にはもっと苦しんでいる人がいることで、なぜか今の不幸だと思った自分を客観視できるエリザベート。

 

どうせ仕事をするなら?この番組がいい!とヴァンダに手紙を書き、それが認められて、ラジオ番組のスタッフとして勤めるようになります。

 

因みにこの当時のキャリア・ウーマン的存在のヴァンダを演ずるのは、エマニュエル・べアールですリボン

彼女も天使のように愛らしい時期を経て、まさに成熟したフランス人女性を演じさせたら、右に出る者はいないぐらいの役者さんになりました。

ハリウッドの女優と違って、大掛かりな突貫工事的美容整形をしていないのも、行き過ぎたダイエットをしていないのもフランス人らしくて好感が持てるわぁハートのバルーン

 

さて、映画に話を戻しましょう。

母としても繊細な彼女には、手のかかるティーンの娘と息子がいました。

支えになってあげたいのに、子供たちも自分たちが何になりたいのか?何をしたいのか?分からないそんな時期に、エリザベートのラジオ番組にある少女タルラが番組に出演するため、一人でパリにやってきます。

 

番組のコーナーが終わり、朝4時過ぎにラジオ局を出たところ、その少女がいるじゃないですか!?

いわゆる彼女は家出していたの。

あまりに不憫で、自分の家に招き入れ、一緒に時間を過ごすうちに、エリザベート一家にも徐々に影響を与えてきます。

 

でも大事件が起こるわけではなく、一緒に映画に行ったり、屋根裏から夜の街を眺めたり、いたって普通のことばかりなの。

そういう普通の風景が80年代にみた風景そのものだったのも嬉しかった。

わざと当時の粗い画素で仕上げた映像になっているのも良かったですパー

 

特に息子マチアスは、タルラに惹かれ始め、数日の滞在ということだったのに、徐々に仲が良くなり…。

 

そんな仲になっても、息子たちを責めないのがフランス人らしいなぁ。

親子だけれど、それは個人の感情だから。周囲に迷惑さえかけなければ、親がとやかく言うことではないものね。

 

ラジオ局だけでなく、図書館でも昼間に働き始めたエリザベートにも、恋人ができます。図書館で働く彼女に一目ぼれした年下の男性ですが、まぁ、シングルですから、今は、お付き合いするのに何も問題がないわけです。

そこもうんと年下の彼氏だけれど、それも母が選んだ人なら、子供がとやかく言うことでもなく、普通に食卓も囲んだりしているの。

 

さて、マチアスと一夜を共にした翌日、姿を消したタルラ。

3年後、家の前で倒れている彼女を発見するのでした。見たところ、薬ヅケで意識がもうろうとする中、エリザベート宅に来たらしいのです。

必死に看病し、そして薬を絶ち、仕事を持つように応援する一家。

彼女も役者の道を歩むべく、エキストラをこなし、映画館でもぎりとして働き始めます。

 

タルラを含め、皆が家族と思えるようになったある日、またタルラは姿を消すのです。

子供のころから家族を知らなかったタルラにとって、エリザベート家での時間は「宝物」のように壊してはいけないものだから。

ずっといれば、そして自分がそれを壊してしまうかもしれないという彼女なりの判断だったのでしょう。

 

エリザベートをはじめ、それぞれが新しい人生をスタートさせていく「再生の道」にタルラが残したものはなんだったのでしょうか?

 

こちらがオフィシャル・トレーラーです。

 

時代が時代だからか?母であれ、娘であれ、日常のあらゆる場面で喫煙するシーンが多いのが目を惹きました。

ファッションとか、あと音楽が当時流れていたものが多くて、さすがミカエル・アース監督のセンスですね。

日常の中の些細な心の動きを捉えたということで、エリック・ロメール的というのも、凄く納得です照れ

 

80年代のフランスが味わえますよ乙女のトキメキ

 

 

劇中にも流れたジョー・ダッサンの名曲”Et si tu n'existais pas”が彼らにとっての大切な曲として登場。

個人的にも好きで、今でも流れると口ずさんでしまうから、嬉しかったです~。

 

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