毎度夕方になると
「朝だから起こして。立たせて。着替えたい。
先生が授業始まる前に会わなきゃいけないから」
と、顔を赤くして一生懸命訴えてくる。
もちろん毎回俺が応対するのだけど、時々、
「あそこにいる人は、『僕は体力がないから何もできない』とか言って、
何もしてくれないから」
と言って、父親のほうを指差す。
母親はさ、わかってんだよ、そういうの。
体力がどうとかじゃなくて、
自分を助けてくれる気があるかどうかを。
俺だって、母親の望みをすべて叶えてやれてるわけではない。
むしろできないことのほうがはるかに多い。
それでも、ちゃんと話を聴いて、
自分ができるところまでは見せることが
重要なんだと思う。
ま、父親はそもそもそんなことができる
人間じゃないから、言っても無意味なんだけど、
そんなことだから母親に名前を
忘れられちゃうんだよ。
自分を邪険にした相手のことを
しっかり覚えたいわけがないよ。
認知症だからって、人間を舐めちゃいけない。
今日は出社からの。実家だぜ。
無事でいるかな。