本日、渋谷のラジオ出演!
本日
12時から
渋谷のラジオに出演します^ ^
ぜひ聴いてね^ ^
番組アプリから聴けます〜
iPhone用
https://appsto.re/jp/Wydlbb.i
Android用
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.shibuyanoradio&hl=ja
ピアニスト西川悟平さんと共演!
先日、
国立京都国際会館大ホール(1800~2000人くらいの規模)にて開催された、
日本新薬様の社員のみのクローズドイベントのオープニングアクトを、
サンドアート集団SILTの船本恵太と横田沙夜が、
ピアニストの西川悟平さんとの生コラボで、務めさせていただきました!

(情報と写真の掲載許可を各所よりいただくことができました。)
日本新薬様、ご来場の皆様、ありがとうございました!
西川さんはとても気さくな方で、一瞬で打ち解けて仲良くなり、魅了されました。
西川さんの素晴らしいピアノと共にパフォーマンスさせていただき、とても光栄でした。
またいつか、ご一緒できる日があることを祈って。
ありがとうございました!
国立京都国際会館大ホールでのライブは今回が二度目。一度目はヴァイオリニスト竜馬さんとの生コラボでした。
再びここでパフォーマンスできたことも、感慨深かったです。
サンドアーティストによる初短編小説「三つの本の最後の一頁」
「もしも今日、巨大隕石が落下し、世界が終わるとしたら、あなたは最後の一日を、どう過ごしますか?」
サンドアーティスト船本恵太が
生まれてはじめて
短編小説を執筆しました。
東京に暮らす二人、
パリ近郊に暮らす二人、
ペンシルベニア州に暮らす二人、
三組の群像劇です。
とうとう完成いたしました。
初短編小説
「三つの本の最後の一頁」
文・朗読/船本恵太
2019.10.07
一冊目
東京に暮らす二人
雨の音で目が覚めた
真っ白で柔らかなベッドから顔を出し
ゆっくりとメガネに手を伸ばす
裸の上半身をおこして
黒髪の青年は窓の外に目をやった
鉛色の空の向こうに
新宿の高層ビル群が霞んでそびえ建つ
梅雨、まだあけてなかったっけ?
あっ、と思い出し
そっと上体を反らすと
色白で少し年上の女性が
同じベッドの中で眠っていた
耳をすますと
雨の音に混じって
寝息が聴こえる
長い黒髪がその白い肌にまとわりついている様を
青年はジッと長い時間眺めた後に
壁にかかった時計に視線だけを動かし
もうお昼に差し掛かっていることを確かめた
どうせ遅刻なら
のんびり行こうと決めた彼は
彼女を本当にゆっくりと抱きしめて
その頭に顔を押し当てながら
おもいきり息を吸って
彼女の存在を確かめた
小さな寝息の音が止まったの気がつき
頭に顔を押し当てたまま声をかける
ごめん、起こしちゃった?
ううん、おはよう。行かなくていいの?
返事をするかわりにキスをして答え
彼女の口を塞ぐ
雨の音だけが
部屋の中の時を
淡々と刻んでいく中
一羽のカラスが窓の外をよぎり
その影が白いベッドの上をかすめた
長いキスは終わることなく続く
東京に生きる
二人の人生の中の
1ページの物語
2冊目
パリ近郊に暮らす二人
目が覚めてベッドから跳ね起き
5秒で着替えて靴を履く
白いレースのカーテン越しに射す陽光が
少年の栗色の癖毛を光らせている
起きたばかりとは思えない速さで階段を降りる
ママおはよう
おはよう私の可愛い坊や
両頬にキスを交わし
軽く髪を撫で寝癖を整えようとしたが
この子の癖毛では
ラチがあかないから諦め
エプロンのポケットから
コインを数枚取り出し手渡した
行ってきます!
行ってらっしゃい。車に気をつけて
と言い終わる前にバタンとドアは閉じられていた
石畳を駆け
朝日を浴びたこの町の空気を吸い込んでゆく
手にコインを握りしめて
パン屋の前にくる50mくらい前から
いい香りが漂ってきてので
足の速度を速めた
いつも通りもう長い列が出来ていて
木のカゴを持った近所の老婆に朝の挨拶をする
ちょうどその時
町の教会の鐘の音が遠くから聞こえた
いつもより少しはやくパン屋に到着できた合図
少年は少し飛び跳ねた
おはよう
おはよう。バゲットを一つ
ありがとう。またね。
またね。
買い物を終えると再び少年は走り出した
紙袋に包まれたバゲットを片手に
家の近くに見慣れない黄色いシトロエンが止まっていたので歩みを遅め
眺めながらバゲットをかじった
家に戻ると
木製の丸い食卓の上に
ナイフと小さなスプーンが置かれ
グラスには水が注がれた
どれくらい食べる?
バゲットを指差すと
ママがその位置までの長さでカットしてくれた
ナイフでバターを塗り口に頬張りながら
おばあちゃんの手作りのアンズジャムの蓋を開けようとしたけど
今日も開けられなくてママが開けた
瓶から二杯目の水を注ぎながら
ママ、リンゴ食べてもいい?
もちろんよ
木の籠の中には
洋ナシと青リンゴとバナナが入っていた
青リンゴをかじりながら
コーヒーを淹れに台所へゆく
それも少年の役割だった
チョコ食べる?
ママはまるで一緒に悪さしようという笑顔で見つめた
笑顔で見つめ返し
コーヒーのいい香りが部屋中に立ちこめた
いつもと変わらない
パリ近郊の家族の
人生の中の
一ページの物語
三冊目
ペンシルベニア州に暮らす二人
遠雷が聞こえる
ざわめく心をよそに
勢いよく手を引かれ
身体を手繰り寄せられた
そのしわがれた大きな手は
赤らんでいて
太い脈は
この老人の
まだ力強い生気を感じさせている
すぐに夕立ちが来るぞ
老人の少し臭い口に
私は息きを止めた
山間の向こうを見つめる瞳に
横たわる厚い雲のシルエットが
くっきりと映っている
老人は何でも知っているんだと確信し
古いズボンの布をギュッと握り
皺くちゃの服に顔を埋めた
冷たい空気が足元からスカートの中に流れこんできたので
私はその汚れた裸足をくっつけた
家の中に入ろう
と老人が言い終わる前に
老人の腕をするりと抜けて
私は家の中へと駆け出した
そのまだ小さい身体は
ほとんど音もない軽いステップで
木の板に足跡だけを残していく
ゆっくりと跡を追う老人のカンカン帽に
トンボが止まった
老人の裸足の足跡の大きさと
この少女の小さな足跡が
仲良く並んでいる光景を
夕立ちが掻き消していったのは
老人が家のドアを閉めた瞬間だった
大きなカンカン帽と
小さなカンカン帽が
仲良く並んで
ヒビの入った壁にかかっている
アーミッシュの家族の
小さな人生の
一ページの物語
一冊目
東京に暮らす二人
郵便受けから部屋の鍵を取りだし
黒髪の青年はエレベーターに乗った。
スマホを取りだしLINEを確認する。
”19時半くらいには着くよ。何か買っていこうか?”
14階に到着するまでに、
”大丈夫。お腹空かせてきてね。”
と返信し帰宅すると、すぐに料理の支度をはじめた。
19時半ちょうどに、インターフォンが鳴る。
いらっしゃ・・・
ドアを開けた瞬間に、挨拶もできぬ間に唇を奪われた青年は
長い黒髪の少し年上の女性の背中に
ぎこちなく手を伸ばし軽く抱きしめ返した。
彼女は目を瞑っていたが、青年はその色白な首筋を眺め
時が流れてゆくのを感じている。
彼女は唇をスライドさせるようにして彼の耳元で囁いた。
カレー? いい香り。
と言い終えるか終えないかの間に彼女は部屋に入っていく。
うん。口に合うといいのだけど。
と言いながら、彼女が脱いだ靴を整える。
冷蔵庫、開けていい?
彼女と目を合わせて頷きながら、鍋に火を入れた。
1.5Lのペットボトルに残っていた水を全部飲み干すものだから
思わずずっと見つめてしまう。
なんて声をかけていいかわからなくて間を埋めるために言葉が先に出た。
おつかれさま・・・
すぐに返事がくる。
ただいま。
そう言われたら、こう返すしかない。
・・・お、おかえり。
微笑みを見せた彼女はそのまま窓際まで歩いてゆきカーテンを開けた。
新宿の高層ビル群を見渡す夜景が広がっている。
僕ら、昨日出会ったばかりなのに・・・
彼女は振り返って、微笑みながらこう言った。
ちょっと焦げ臭いよ。
慌てて鍋の火を消してカレーを掻き回す。
後ろからいきなり抱きつかれたから
三回くらい瞬きをして身体が硬直した。
その隙に言うんだからずるいよ。
好きだよ。って・・・
そのまま僕らは
もう一度キスをして
カレーの焦げた臭いの中で
また一つになったんだ。
今夜も彼女、泊まっていく気かな?
ねえ、今夜も泊まっていっていい?
まるで心を読まれたようで目線を逸らしたけれど、
たぶん、嬉しさを隠しきれず、
微笑んでいたと思う。
新しい恋のはじまりが
焦げたカレーの臭いの中でのセックスが想い出だなんて
嫌だな。
ねえ。カレー食べて。
せめて、本当は美味しいんだって、想い出で、上書きしよう。
二冊目
パリ近郊に暮らす二人
栗色の癖っ毛が、真っ白なシーツからひょっこりと顔を出している。
朝日が、窓の格子が作る十字架の影を、壁に作っている。
一階から鳴り響く、ママの金切り声で、少年は目を覚まし、シーツの中に栗色の癖っ毛をしまいこんだ。
それでもママの声は鳴りやまないので、もう諦めてベッドからずり落ちて、なんとか身体を動かしはじめる。
階段の途中まで降りて、足元の寒さに震え、自分が裸足で、スリッパを履き忘れていることに気がつき、もう一度部屋に戻る間もなお、ママの声は鳴りやまなかった。
ついでに歯を磨き、顔も洗って、着替えさえもした。
髪は、ブラシで整えなかった。どうせ、あまり変わりはしないから。
スリッパから靴に履き替え、この寝坊助さんはようやく階下へと至る。
ママはずっと早口でまくしたてていて、何を言っているかはさっぱりわからないものだから、まるで宇宙人と遭遇したようで、笑ってしまったんだよ僕は。
その時は、まさかママが泣きだすなんて思ってもみなかったから。
僕はどうしていいかわからなくて、10分くらい立ち尽くして、ママが泣き止むのを待っていたんだ。
「もう最後だから、今日はクロワッサンを買ってきなさい。」
「えっ? ママ、今日は火曜日だよ?日曜日じゃないよ?」
「いいのよ。もう日曜日はこないの。私の可愛い坊や。だから今日は、クロワッサンを買ってきなさい。」
ママは腫れた目で、笑ってみせたけど、お金を渡す手は、震えていた。
いつもはバゲットを買いに行くのだけど、日曜日だけは特別にクロワッサンを買うんだ。でも今日は火曜日なのに、なんでだろう?
いつものパン屋に、今日は並ぶ人も少なくて、みんな悲しそうな顔をしてるから、朝の挨拶の声もかけられない。
何かきっと、よくないことがあったんだって、僕はそのときようやくわかったんだ。
教会の鐘の音が、ずっと鳴り続けてる・・・
家に戻ると、珍しくママがロザリオを握り祈っていた。
会話もなく、二人でクロワッサンを食べ終え、学校へ行く支度をしようとしたらママがようやく口を開いて、
「もう学校へ行かなくていいのよ。」
「え?どうして?」
「私の愛しい坊や」
ママはまた泣きながら僕を長い間抱きしめていた。僕は少し苦しかったけど、黙っていなくちゃいけないと思ったんだ。
「ねえ、パパと電話したい?」
「え?」
僕は「どうして?」とまた聞きたかったけれど、そうすると、またママが泣きだして、もっと長いこと僕を抱きしめて離してくれない気がして、口を閉じたの。
「TGVは運休でリヨンには行けないの。ストライキってわけじゃないのよ。だからせめて電話だけでも・・・」
僕は、ママが普通じゃないって、ようやくわかったし、なにか大変なことが起きてるんだなってわかったけど、もう3年も会ってないパパと、僕は何を話すんだろう・・・
それでも僕は、頷くことしかできなかったんだ。ママのために。
パパは電話で、「愛してる」って、何回も言っていた。
地球に隕石が落ちて、世界は終わるから、最後までママを守って欲しいって、言っていた。
僕にはどっちも信じられなくて、学校に行かなくていいのは嬉しいし、火曜日なのにクロワッサンを食べられるのも嬉しいから、まあこのままでもいいかな。
「私の可愛い坊や、最後に、どこか、行きたいところはある?」
「僕、海が見たい。海を見ながら、ママのサンドイッチが食べたい。」
パリ近郊の小さな町から、赤いFIATに乗って、太陽を浴びながら、ノルマンディーの海岸までドライブをし、カモメが舞う心地いい潮風を受けながら海を眺め、敷いたビニールシートの上の籠には沢山のフルーツと水の入った瓶があり、バターとハムのシンプルなバゲットサンドを頬張る母親と息子。
パリ近郊の家族の、
人生の中の、
最後の一ページの物語。
一冊目
東京に暮らす二人
窓辺から射す陽光で目が覚めた
彼女の寝息と温もりを感じ
目を向けずとも同じベッドの中にいることの喜びが溢れた
彼女を起こさないように背を向けたままスマホを手に取る
ツイッターを開くと・・・
”明日、地球に巨大隕石衝突の確率90%!?マジで??”
”地球オワタ。 でも会社休みじゃないんだろうなwww”
”テレ東wwwwww”
そんなツイートでタイムラインが埋まってる
リンクのネットニュースにも、
それ以上でも、それ以下でもない字面が並んでいた。
テレビがあれば、テレビを久々につけただろうけど、
まあ、それ以上でも、それ以下でもないか。
外は静かだし、いつも通りの窓枠に切り取れた景色に、
何の実感もわかないし、あまりに唐突だ。
落ち着かないので、ソッと静かにベッドから出て、
コーヒーを淹れることにした。
お湯が沸くの待ちながら、壁に寄りかかり、彼女を眺める。
まあ、いっか。 これで終わりでも。
コーヒーの香りが部屋中に広がると、彼女が寝返りを打ち、
おはよう。私も飲みたい。
そう言ってから上体を起こし、ボーッとした目で僕を見つめた。
おはよう。すぐ淹れるね。
コーヒーを飲むのがこれで最後ってのは、少し残念かな。
朝日を浴びた二つの白いマグカップが、
長い影を伸ばしている。
黒いコーヒーから立ち上る白い湯気を眺めていると
彼女がトイレから出てきて言った。
ねえ、ニュース見た。
うん。 コーヒー、淹れたよ。
彼女は数秒間、黙って立っていたけれど、
その後は椅子に座り、コーヒーを飲み始めている。
僕も一緒にコーヒーを飲んでいる。
幸せだ。
これを飲み終わったら、彼女の髪をとかしてあげよう。
最後が、晴れの日で、よかった。
君の瞳が、透き通るように、輝いているから。
その伸びたまつ毛が、鮮やかだから。
東京に生きる
二人の人生の中の
最後の1ページの物語。
三冊目
ペンシルベニア州に暮らす二人
少女のぷっくりとしたまだ幼い白い指は起用に動き、まるで魔法のようにシロツメクサの花輪を紡いでいた。
その動きに合わせ、黄金色の三つ編みが揺れている。
その柔らかい髪を覆うカンカン帽に、ヒラヒラと舞うモンシロチョウが止まっても、その青い瞳にはシロツメクサしか映らない。
そよ風が夏草の香りを運び、さざ波のように心地よい音を立てた午後三時。
ペンシルベニア州ランカスターの牧草地を覆う、大きな雲の影はゆっくりと動き、道を行くアーミッシュの馬車もすっぽりと包み込んだ。
古い木製のドアが軋む。
少女は破顔するほどの健康的で無邪気な笑顔で、勢いよく振り返った。太陽を浴び、少し赤らんだ肌には、愛らしいそばかすがあった。
開いたドアからゆっくりと老人が背を曲げて現れる。太陽を背に、手を振っている姿は、まるで影絵の人形のようだった。
少女の目の前を蜜蜂が横切り、片手を草はらについたまま、そのまだ短い足で立ちあがる瞬間、その白さから、両ひざの赤らみが目立って見えた。
スカートをなおすと、もう片手にしっかりと握りしめた花かんむりを、とても自慢げに老人に差し出して見せた。
「おやつの時間だよ。さあ、家へお入り。」
少女は、その白いワンピースを泳がせて、裸足で庭を駆け、その勢いのまま老人に抱きついた。
老人は、そのしわがれた大きな手で、少女の頭からカンカン帽を取り、もう片方の手で背中をさすり、家の中へと入るよう、その手で背中をそっと押す。
家中がパンケーキと木の香りに包まれ、窓辺からは陽が射しこみ、そよ風に白いレースは揺れ、白い素朴な花瓶には、名もない野の花が飾られている。
アーミッシュが作った蜂蜜と、バターと、小麦粉と、ミルクで出来たパンケーキが、古い木製の丈夫そうなテーブルの上の皿の上にのっていた。
まだ湯気が立ち、温かいパンケーキの横には、ミルクの入った瓶と、グラスが置かれている。
瓶には水滴がついていて、まだ冷えてもいた。
ここには、テレビもなければ、電話さえもない。
何も知らない二人には、何の恐怖もないままに、窓の外の広大な草原の上に、巨大な隕石が青空に霞んで見える、それはそれは幻想的で美しい光景を眺め、楽しんだ。
口のまわりには、いっぱいの蜂蜜をつけたまま。
アーミッシュの家族の小さな人生の最後の一ページの物語。
短編小説「アーミッシュの家族」<2>
短編小説
「アーミッシュの家族」<2>
文・朗読/船本恵太
2019.10.6
少女のぷっくりとしたまだ幼い白い指は起用に動き、まるで魔法のようにシロツメクサの花輪を紡いでいた。
その動きに合わせ、黄金色の三つ編みが揺れている。
その柔らかい髪を覆うカンカン帽に、ヒラヒラと舞うモンシロチョウが止まっても、その青い瞳にはシロツメクサしか映らない。
そよ風が夏草の香りを運び、さざ波のように心地よい音を立てた午後三時。
ペンシルベニア州ランカスターの牧草地を覆う、大きな雲の影はゆっくりと動き、道を行くアーミッシュの馬車もすっぽりと包み込んだ。
古い木製のドアが軋む。
少女は破顔するほどの健康的で無邪気な笑顔で、勢いよく振り返った。太陽を浴び、少し赤らんだ肌には、愛らしいそばかすがあった。
開いたドアからゆっくりと老人が背を曲げて現れる。太陽を背に、手を振っている姿は、まるで影絵の人形のようだった。
少女の目の前を蜜蜂が横切り、片手を草はらについたまま、そのまだ短い足で立ちあがる瞬間、その白さから、両ひざの赤らみが目立って見えた。
スカートをなおすと、もう片手にしっかりと握りしめた花かんむりを、とても自慢げに老人に差し出して見せた。
「おやつの時間だよ。さあ、家へお入り。」
少女は、その白いワンピースを泳がせて、裸足で庭を駆け、その勢いのまま老人に抱きついた。
老人は、そのしわがれた大きな手で、少女の頭からカンカン帽を取り、もう片方の手で背中をさすり、家の中へと入るよう、その手で背中をそっと押す。
家中がパンケーキと木の香りに包まれ、窓辺からは陽が射しこみ、そよ風に白いレースは揺れ、白い素朴な花瓶には、名もない野の花が飾られている。
アーミッシュが作った蜂蜜と、バターと、小麦粉と、ミルクで出来たパンケーキが、古い木製の丈夫そうなテーブルの上の皿の上にのっていた。
まだ湯気が立ち、温かいパンケーキの横には、ミルクの入った瓶と、グラスが置かれている。
瓶には水滴がついていて、まだ冷えてもいた。
ここには、テレビもなければ、電話さえもない。
何も知らない二人には、何の恐怖もないままに、窓の外の広大な草原の上に、巨大な隕石が青空に霞んで見える、それはそれは幻想的で美しい光景を眺め、楽しんだ。
口のまわりには、いっぱいの蜂蜜をつけたまま。
アーミッシュの家族の小さな人生の最後の一ページの物語。
短編小説「アーミッシュの家族」<1>
短編小説
アーミッシュの家族<1>
文・朗読/船本恵太
2019.8.1
遠雷が聞こえる
ざわめく心をよそに
勢いよく手を引かれ
身体を手繰り寄せられた
そのしわがれた大きな手は
赤らんでいて
太い脈は
この老人の
まだ力強い生気を感じさせている
すぐに夕立ちが来るぞ
老人の少し臭い口に
私は息きを止めた
山間の向こうを見つめる瞳に
横たわる厚い雲のシルエットが
くっきりと映っている
老人は何でも知っているんだと確信し
古いズボンの布をギュッと握り
皺くちゃの服に顔を埋めた
冷たい空気が足元からスカートの中に流れこんできたので
私はその汚れた裸足をくっつけた
家の中に入ろう
と老人が言い終わる前に
老人の腕をするりと抜けて
私は家の中へと駆け出した
そのまだ小さい身体は
ほとんど音もない軽いステップで
木の板に足跡だけを残していく
ゆっくりと跡を追う老人のカンカン帽に
トンボが止まった
老人の裸足の足跡の大きさと
この少女の小さな足跡が
仲良く並んでいる光景を
夕立ちが掻き消していったのは
老人が家のドアを閉めた瞬間だった
大きなカンカン帽と
小さなカンカン帽が
仲良く並んで
ヒビの入った壁にかかっている
アーミッシュの家族の
小さな人生の
一ページの物語
短編小説 パリ近郊で暮らす家族<2>
短編小説
パリ近郊で暮らす家族<2>
文・朗読/船本恵太
2019.10.05
栗色の癖っ毛が、真っ白なシーツからひょっこりと顔を出している。
朝日が、窓の格子が作る十字架の影を、壁に作っている。
一階から鳴り響く、ママの金切り声で、少年は目を覚まし、シーツの中に栗色の癖っ毛をしまいこんだ。
それでもママの声は鳴りやまないので、もう諦めてベッドからずり落ちて、なんとか身体を動かしはじめる。
階段の途中まで降りて、足元の寒さに震え、自分が裸足で、スリッパを履き忘れていることに気がつき、もう一度部屋に戻る間もなお、ママの声は鳴りやまなかった。
ついでに歯を磨き、顔も洗って、着替えさえもした。
髪は、ブラシで整えなかった。どうせ、あまり変わりはしないから。
スリッパから靴に履き替え、この寝坊助さんはようやく階下へと至る。
ママはずっと早口でまくしたてていて、何を言っているかはさっぱりわからないものだから、まるで宇宙人と遭遇したようで、笑ってしまったんだよ僕は。
その時は、まさかママが泣きだすなんて思ってもみなかったから。
僕はどうしていいかわからなくて、10分くらい立ち尽くして、ママが泣き止むのを待っていたんだ。
「もう最後だから、今日はクロワッサンを買ってきなさい。」
「えっ? ママ、今日は火曜日だよ?日曜日じゃないよ?」
「いいのよ。もう日曜日はこないの。私の可愛い坊や。だから今日は、クロワッサンを買ってきなさい。」
ママは腫れた目で、笑ってみせたけど、お金を渡す手は、震えていた。
いつもはバゲットを買いに行くのだけど、日曜日だけは特別にクロワッサンを買うんだ。でも今日は火曜日なのに、なんでだろう?
いつものパン屋に、今日は並ぶ人も少なくて、みんな悲しそうな顔をしてるから、朝の挨拶の声もかけられない。
何かきっと、よくないことがあったんだって、僕はそのときようやくわかったんだ。
教会の鐘の音が、ずっと鳴り続けてる・・・
家に戻ると、珍しくママがロザリオを握り祈っていた。
会話もなく、二人でクロワッサンを食べ終え、学校へ行く支度をしようとしたらママがようやく口を開いて、
「もう学校へ行かなくていいのよ。」
「え?どうして?」
「私の愛しい坊や」
ママはまた泣きながら僕を長い間抱きしめていた。僕は少し苦しかったけど、黙っていなくちゃいけないと思ったんだ。
「ねえ、パパと電話したい?」
「え?」
僕は「どうして?」とまた聞きたかったけれど、そうすると、またママが泣きだして、もっと長いこと僕を抱きしめて離してくれない気がして、口を閉じたの。
「TGVは運休でリヨンには行けないの。ストライキってわけじゃないのよ。だからせめて電話だけでも・・・」
僕は、ママが普通じゃないって、ようやくわかったし、なにか大変なことが起きてるんだなってわかったけど、もう3年も会ってないパパと、僕は何を話すんだろう・・・
それでも僕は、頷くことしかできなかったんだ。ママのために。
パパは電話で、「愛してる」って、何回も言っていた。
地球に隕石が落ちて、世界は終わるから、最後までママを守って欲しいって、言っていた。
僕にはどっちも信じられなくて、学校に行かなくていいのは嬉しいし、火曜日なのにクロワッサンを食べられるのも嬉しいから、まあこのままでもいいかな。
「私の可愛い坊や、最後に、どこか、行きたいところはある?」
「僕、海が見たい。海を見ながら、ママのサンドイッチが食べたい。」
パリ近郊の小さな町から、赤いFIATに乗って、太陽を浴びながら、ノルマンディーの海岸までドライブをし、カモメが舞う心地いい潮風を受けながら海を眺め、敷いたビニールシートの上の籠には沢山のフルーツと水の入った瓶があり、バターとハムのシンプルなバゲットサンドを頬張る母親と息子。
パリ近郊の家族の、
人生の中の、
最後の一ページの物語。
出演情報「10/12 アリーナ立川立飛 アルバルク東京」
サンドアート集団SILT
船本恵太&あんじぃあんじゅ
アルバルク東京の試合
10/12
アリーナ立川立飛
ハーフタイムショーに出演いたします。
竜馬四重奏さんの「YAMATO」などのサンドアートをパフォーマンスします。
皆様のご来場をお待ちしております。
詳細情報
14才サンドアーティスト一華ちゃんデビューパフォーマンスライブ開催決定!
【告知】
2019年9月23日(月)
山形県のキッズドームSORAIにて
14才のサンドアーティスト一華ちゃんの
デビュー・パフォーマンスライブ開催決定!
サンドアート集団SILTの船本恵太による砂絵のワークショップもございます。
●詳細・お申込みはこちらから
https://info.yamagata-design.com/l/510061/2019-09-08/36bmsb
●SORAI公式サイト
コブクロさん20周年全国ツアーWOWOWで明日放送
【告知】
コブクロさんの
20周年全国ツアー
京セラドーム公演収録映像が
明日9月7日22:00~
WOWOWで放送となります。
サンドアート集団SILTがライブ生出演し、5作品もパフォーマンスをいたしました。
詳細はこちらをご覧ください。


