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石田マネジメント事務所

技術やものづくりに関する最近の話題と気づき、ちょっとした備忘録を書いています。

現役時代、ある電子機器の商品企画、マーケティングの仕事を担当していたことがありました。当時は、新興国特に韓国のサムスン電子に日本の製造業はいいようにやられていました。

 

サムスンのマーケティングは徹底していて、世界中の各地に骨をうずめる覚悟のある人間を送り込んで、現地人の言葉を話し、現地の風習や文化を体得させるようなやりかたをしていた。サムスンを信奉しているわけではありませんが、当時の日本メーカのやり方と比べると対局にあるようなかんじだった。

 

日本は、高価格だが高機能なものを国内の狭い市場の中で、泥仕合を繰り広げつつ国内といわず海外といわず押し売りするわけです。そのうち共倒れしてゆくのですが、こんなことしていたら死ぬとわかっていながら、デスマーチをやめることができなかった。品質や性能はよくても、操作が難しくてボタンだらけのものよりも、機能はそこそこでも現地人の風習に合致した機能があり、安いものをサムスンは徹底して開発しました。

 

また、パーツや半導体なども世界中の市場で使いまわしができるような設計にして、部品選定もそれに従ったものにしていた。我々日本はというと、そういう発想がなく、製品ごとに、販売仕向け地ごとに別々の部品を使っていたので、当然コストは高くなる。

 

テレビなんかはそういうものの典型で、液晶パネルの後ろに入っている基板にTV用のSoC(半導体)が載っているのですが、実はどのメーカでも受信方式が同じならば、みんな同じチップが使われている。SoCメーカはもうかったでしょうが、セットメーカは結局のところ、部品買ってきて組み立てるだけしかやっていない。携帯電話もこういう業界構造だったので、最後に張り付けるメーカのロゴ銘版が違うだけなんじゃないかというかんじです。

 

市場のニーズ調査も、現地のマーケティング責任者、本社の技師長、開発部長などがそれぞれ違うことを言っていつまでも、いつまでも製品仕様が決定しない。そこそこ性能、機能で安く作るということに社内的に評価がなされず、難しい技術とか最新のテクノロジーをモノにした人が評価される。

 

そういう状態が続いて、サムスンとかLG電子と戦う前に自滅したのだと思います。

大手企業ほど、工場の情報システムについては悩みが深いのではないでしょうか。欧米や韓国などの企業と違って、同じ会社なのに、工場ごとに別々の情報システムが動いていました。

 

現在はある程度は刷新されたか、統合できたのかわかりませんがまだまだ過去数十年間の負の遺産が残っているところもあることと思います。

 

例えば、同じパーツメーカから同じ部品を異なる工場(もちろん、会社としては同じ)で調達する場合、異なる部品番号と品目名称でそれぞれの工場が別々の調達システムで運用していると、工場同士で同じモノとして識別できなくなります。

 

各工場は自分のところだけうまく回っているのなら他のところのことなど関係ない。パーツを供給しているサプライヤーの方が面倒というか、あなかばあきれながらそれぞれの工場向けに番号、名称をつけかえて提供するわけです。

 

発注している側も本社サイドでうまくパーツをあっちからこっちへと回すとなると、”名寄せ”をしないといけなくなる。また原価計算でも同じで、あちこちで橋渡しのためのアプリを作る必要があり、情報システム予算のかなりの部分がそういうことに使われてきた。

 

ある時点で、基幹システムをパッケージ導入して刷新するということが行われたのですが、欧米や韓国のようにそのまま導入して根底からリニューアルするということができなかったと思います。(もちろんリニューアルした会社もあるのかもしれませんが)

 

製造業ではありませんが、みずほ銀行の例がこうした基幹システムの統合、刷新がいかに難しいかを示しています。みずほは製造業とは事情が違うとは思いますが、大きく方針を出して方向性を決めることができなかったという意味では似ています。

 

全社で一斉に情報システムを刷新する費用を充当することはほとんどできなかったですし、工場(事業部)の単位で情報システムの作り替えに長い時間と、億単位以上の予算を投入するなどほとんどできないのです。私自身の工場時代の経験からいってもそんなことはありえなかった。

 

またバブル崩壊以降、情報システム部門はやたらとアウトソースそいう外部丸投げの風潮になり、人員も減り自分たちでITを開発するということは行われなくなった。そうして20年もたつと作る能力もなくなるのです。作るどころか、要件定義すらまともにできなくなる。

 

スマートファクトリー、DXで将来型のものづくりを といってもその予算は工程にセンサーをつける とか、今動いている生産管理システムのそばにAIのサーバをちょっとつなぐ という程度でしょう。