敷地の端に……

何年ぶりだろう リラの花が咲いた

 

優しい 薄紫の花びらが集まって ひと房の花となり

かすかに ただよってくる 花の香

 

もう何年も何年も

『ライラック』と書いてある木札のその向こうで

枯れたようにも見えていた 小さな木

その木を見る度に いつか咲いてくれる日が来るだろうかと

半分あきらめていた

 

それが今年 咲いている!!

もうワクワクが止まらない

孫の A ちゃんは今年10歳 彼女はきっとこの花を見たことはない

それほど長い間 花は咲かなっかったのだ

 

ふたりで歩きながら この花に気づいたとき

  わぁー ライラックが咲いてる!!

と 声をあげて喜ぶ私の姿を 彼女はあきれ顔で見ていた

 

それ以後 そこを通るたびに 立ち止まって眺める

ひとり立ち止まって見ていると 遠い昔の甘酸っぱい思い出が蘇る

lilac は英語ではライラック、でも私はフランス語読みの

リラの方が何となく好き 

大好きだった歌のせいかもしれない

 

有名な曲ではなかったので 今では正しい歌詞を探せないが

当時10代の多感な女の子だった私は 

『リラを胸に』という歌に心惹かれた

歌詞もメロディーも 本当に素敵だった

今でも1番だけは歌えるけれど 2、3番の歌が所々思い出せない

 

  ♪この次誰かと 逢う時は 逢いたいな リラを胸に…

 

まだ誰もそういう人はいなかったけれど 私の中では夢が大きく膨らみ

いつか そんな風に リラの花の美しさを共に感じる人に出会えたらと

心の中で夢みていた

 

その詩の中の 情景描写は 今も私の心を熱くする

 

 ♪ … 薄紫の花びらが 風にほのかに香るとき 逢いたいな リラを胸に

 ♪ … 牧場のサイロに夕月が ぬれた緑を映すとき 歩きたい リラを胸に

 

そういう言葉が 断片的に(しかも正しくないかも💦)

想い出の奥から こぼれ出てくる

 

しばらく忘れていたその気持ち

久しぶりに咲いた リラの花を見て

私は 心を躍らせた

 

その小さなリラの 木には

今日も 薄紫いろの優しい色の花の房が ゆっくりと風に揺れている

私の遠い昔の想い出を その花の中に含みながら…

 

リラの木の前に佇む私

体中のすべての思いが リラの花の色に 染まっていた