従軍慰安婦からの連想
従軍慰安婦は、多岐な出身母体を持っている。
内地、植民地、占領支配地、収容所だ。
内地、つまり日本からはそれ以前に「からゆきさん」(女郎出稼という時を当てる場合もある)として多くが渡っている。映画の『サンダカン八番娼館』(熊井啓)で有名だし、映画『君と別れて』(成瀬巳喜男)のラストも外地に向かうと思った。
「からゆきさん」は日本人男性がいない地域でも広範にいたとされる。
それも南方ばかりではなく、ウラジオストック、中国北方、旧満州にも及ぶ。
村岡伊平次という東洋一円に組織を広げた有名な女衒がいる。
シンガポールを拠点に無法者を集め日本の女性の誘拐団を組織した。そして女郎部屋の総元締めとなり隆盛を極める。
明治22年から27年の間に3222人を手がけたという。
彼はその後、ベンゲット道路工事の日本人工夫の世話をみたり、ダバオ麻山開発に参画し太田恭三郎(ダバオ開発した実業家)に資金融通したり、愛国婦人会を結成したり、日露戦争の献納金を募集したり、女郎を含めた在フィリピン日本人の領事館登録を実現させたり、「隠れた総領事」として「愛国的至誠の実」をあげる。
彼は手記にこう書いている。
「女の国許には毎月送金してやる。両親も安心し、近所でも評判になり、所得税がかけられ、国家のためどれほど有益かわからぬ」
明治41年のシンガポール市内には約2万人の日本人がいて、その内四分の一から五分の一が女郎屋の女性だったと言う。
その時代から日本の貧しい女性はモノとして性具として移動させられていた。
大逆事件の犠牲となった大石誠之助は遊郭建議書を批判し新聞にこう寄稿した。
「一般の子女を保護すると言うが、良家の子女と貧家の子女を別物と見做し、前者の利益の為後者の人権を犠牲にすると言う冷酷なる金持本位説であって、これを説く論者と政治屋連は自己の階級に属するものの利害のみを考へ、花街の地獄に苦を嘗むる貧者と労働者の子女に対し一片の同情を有せず、其犠牲者に課税して金儲けをせんと言う。」(『牟婁新報』1906年)
植民地とは「併合」された朝鮮半島のことで、「日本人」となった人たちである。
この前例として薩摩藩における奄美大島支配や、松前藩の蝦夷地支配などがあるだろう。このどちらもが奴隷労働を課している。
朝鮮半島からは、内鮮一体だとか、天皇の赤子だとか言われたものの、激しい差別と弾圧の対象になり多くの従軍慰安婦を「供給」した。
支配地とは、戦争によって占領支配した地域での「現地調達」で、中国をはじめとしたアジア諸国である。
この場合、拉致されたり、「供出命令」によってトーチカなどに監禁されたケースも少なくないから「慰安婦」とは呼べない。
映画『スターリングラード』(ヨゼフ・フィルスマイアー)に敵女性兵士を拉致監禁し強かんするシーンがあった。
収容所というのは、占領支配地の収容所からの「調達」で、インドネシアやオランダ人のケースがあてはまる。収容所収容者を人権的な取り扱いをしたとは到底思えない。
従軍慰安婦という言葉では表しきれない事例があまりに多く、戦時レイプ被害者と言った方がいいと思う。だから「いわゆる従軍慰安婦」と言っているのだろう。
私の関心は加害者のセックスモンスターぶりである。
慰安所に行かなかった兵士の証言として「慰安所はお金がかかるから。外に行けばいくらでも(強かんが)できた」というものがある。強かんは、軍規にも刑法にも国際条約にも違反していたから「証拠隠滅のためにレイプ被害者を殺害した」という。
慰安所設置は、レイプ多発による現地住民感情の悪化が、占領地軍政統治の妨げになるという発想と、兵士の性病罹患の兵力削減のためだった。映画『人間の條件』には避難民の日本人少女を強かんする兵士も登場する。
それにしてもセックスモンスターぶりは凄まじい。
その理由を知りたい。
私は唐突にこの慰安婦というシステムができたのではないと思っている。
被支配階層の女性に対する搾取・収奪は日本の伝統といってもいいだろう。
例えばアイヌ民族である。
蝦夷地に進出した和人は、アイヌ民族の産物を収奪し、アイヌ民族の労働力を収奪し、アイヌ民族女性を収奪した。アイヌ民族女性は和人からうつされた性病で多くが死に。人口激減の原因となった。
これは松浦武四郎が告発している。
東北の飢饉では娘の身売りが常態化していたのは衆知のことである。
また村岡伊平次の例で言うと、明治の段階で中国、旧満州、南アジアに女郎屋があり、だまされたり誘拐されたりした女性が沢山いたのだ。
従軍慰安婦はその「国策化」である。故に心理的道徳的倫理的抵抗感もなかったのだろうし、すでに営業している業者がいたのだからあれほど短期間にあれほど多くの慰安所ができたのだろうと思う。軍事女郎屋とせずに「慰安婦」という言葉を当てたのは、女郎屋を蔑視していたか、わずかな倫理観が働いたか?
「いわゆる従軍慰安婦」問題は、この国が長年にわたって行ってきた女性に対する収奪の到達点だったような気がする。
それも二重の「マイノリティー」に対してだ。
女性という「マイノリティー」(無論少数派という意味ではなく、被支配層という意味)であり、かつ「先住民族」「貧困者」「障がい者」「教育疎外者」という二重の「マイノリティー」である。
村岡伊平次は誘拐団を結成したとき、手下の無法者に以下の檄を飛ばしている。
「(犯罪者だったので)日本国民として国家に仇をなし、国民性を失い、身をもちくずして、尊い先祖の墓に足をふみいれることもできぬ人間になりさがっている。おれはそれを不憫に思う。諸君がいま一度りっぱな日本国民になり、国家をきずきあげる大事業にたずさわり、一人でも多く国家にご奉公する人間になることを願う。天皇陛下にお詫びをし、国民の一人として改心するように、八百万の神々に祈ろう」
そして、君が代を歌い、天皇陛下、皇后陛下、皇太子殿下、帝国陸海軍、南洋在住同胞のために万歳三唱したという。
将校の慰安婦に対する訓示に似ている。
参考文献
日本残酷物語 貧しき人々のむれ 平凡社
熊野・新宮の「大逆事件」前後大石誠之助の言論とその周辺 辻本雄一著 論創社
朝日新聞は吉田証言の虚偽性を認め誤報としたなら、今こそいわゆる「従軍慰安婦」の分析、特集記事を掲載すべきだと思うが、日本のマスメディアにはないものねだりか…
かもめ座の後のT
南阿佐ヶ谷に「かもめ座」という小屋がある。
もちろん芝居に使われる小劇場だ。
プロ、アマ問わず使われるけっこうギョーカイでは知られているのではないかと思う。
その帰りに必ずといっていいほど呑みに行く店がTだ。(今回からイニシャル)
魚の旨い店として、そして三種のくさやが食べられる店として知られているが、もちろん高くはない。
他に日本酒の取り揃えが面白いのだ。
何が面白いのかというと毎回テーマを決めているのだ。
前回は「ひやおろし」がテーマで、30酒類ほどの「ひやおろし」が集まった。それのひとつひとつに解説が書かれる。産地や蔵元のエピソードや呑み方のお勧めなど。
今回はNHKの「マッサン」をテーマにした竹鶴酒造の酒だった。
3種が入っていて、内1種はすでに品切れだった。
私が呑んだのは竹鶴大和雄町純米原酒というアルコール度19.1!、酒度+1.5!という超甘口。ねっとりとした甘さとそれでいて爽やかな香りは「甘露」を思わせた。
いつも注いでくれる女性がアルコール度が高いからとさりげなくお水を持ってきてくれた。彼女はお酒の説明などもいつもしてくれる。
少し黄色味を帯びているので古酒と間違われないように製造瓶詰め年月日が明示されていると教えてくれた。それはビンの上に貼られた大き目の紙に表示されていた。
そこでなぜ詳しいのかを聞いてみて驚いた。
ご自分で蔵元を回って試飲して集めてくるのだという。
ただ生産数が決まっているものが多く、入らなかったり入っても少量しか入らなかったりすると言う。
さらに強くはないので試飲に苦労するという話は笑った。
次なるテーマが待たれるが、不定期である。
その後、カマスの塩焼きをもらった。
これが大変美味。
一箸つけたら止まらなくなって一気に食べてしまい、骨も食べてしまった。
家族経営あるいは兄弟経営で雰囲気もよく、最近のいい酒場の特徴として女性客の割合も高い。そして地元客でいつも混んでいる。ご近所と相席するのも楽しい。
だから今回からイニシャル。
ただひとつ欠点がある。
ここでかもめ座でみた演劇の劇評を書くのだが、酒や肴に現を抜かし芝居の印象が薄れてしまうことだ…
南阿佐ヶ谷に「かもめ座」という小屋がある。
もちろん芝居に使われる小劇場だ。
プロ、アマ問わず使われるけっこうギョーカイでは知られているのではないかと思う。
その帰りに必ずといっていいほど呑みに行く店がTだ。(今回からイニシャル)
魚の旨い店として、そして三種のくさやが食べられる店として知られているが、もちろん高くはない。
他に日本酒の取り揃えが面白いのだ。
何が面白いのかというと毎回テーマを決めているのだ。
前回は「ひやおろし」がテーマで、30酒類ほどの「ひやおろし」が集まった。それのひとつひとつに解説が書かれる。産地や蔵元のエピソードや呑み方のお勧めなど。
今回はNHKの「マッサン」をテーマにした竹鶴酒造の酒だった。
3種が入っていて、内1種はすでに品切れだった。
私が呑んだのは竹鶴大和雄町純米原酒というアルコール度19.1!、酒度+1.5!という超甘口。ねっとりとした甘さとそれでいて爽やかな香りは「甘露」を思わせた。
いつも注いでくれる女性がアルコール度が高いからとさりげなくお水を持ってきてくれた。彼女はお酒の説明などもいつもしてくれる。
少し黄色味を帯びているので古酒と間違われないように製造瓶詰め年月日が明示されていると教えてくれた。それはビンの上に貼られた大き目の紙に表示されていた。
そこでなぜ詳しいのかを聞いてみて驚いた。
ご自分で蔵元を回って試飲して集めてくるのだという。
ただ生産数が決まっているものが多く、入らなかったり入っても少量しか入らなかったりすると言う。
さらに強くはないので試飲に苦労するという話は笑った。
次なるテーマが待たれるが、不定期である。
その後、カマスの塩焼きをもらった。
これが大変美味。
一箸つけたら止まらなくなって一気に食べてしまい、骨も食べてしまった。
家族経営あるいは兄弟経営で雰囲気もよく、最近のいい酒場の特徴として女性客の割合も高い。そして地元客でいつも混んでいる。ご近所と相席するのも楽しい。
だから今回からイニシャル。
ただひとつ欠点がある。
ここでかもめ座でみた演劇の劇評を書くのだが、酒や肴に現を抜かし芝居の印象が薄れてしまうことだ…
従軍慰安婦と公娼制度
昨晩、長年付き合っている人と話していて従軍慰安婦の話になり、彼が「従軍慰安婦は公娼」だから「あの当時」では認められたというので驚いてしまった。
彼はけして右派的な人ではない。
まず、公娼制度を誤解している。
公娼は警察に届け出を必要とする鑑札業である。
基本的に全くシステムが違う。
さらに公娼制度は「マリア・ルス号事件」(これは日本が初めて関わる国際法裁判)で人身売買がまかりとおる「奴隷労働」と指摘され、公娼制度廃止にむかわざるを得なくなった。
まさか今の時代に公娼制度が「自由選択の職業」と思う人はいないだろう。
大逆事件で犠牲になった人の中には廃娼運動をやっていた人たちがいる。
また山室軍平の命がけの廃娼運動は誰でも知っているだろう。
つまり公娼制度は国家権力にとても近いシステムで、それを守る暴力装置も備わっていたのだ。
だから「従軍慰安婦は公娼」という論理は、公娼という点で間違っているし、「公娼」に対する観点でも間違っている。イデオロギーの問題ではない。
想像力を持ってほしいと思う。
あまり光が当たらないが、北海道の労務慰安婦には14歳という年齢が記録されている。
14歳の少女が自分の判断で選択し就業する職業だと思えるだろうか?
でもその人からそんな言葉を聞いたほうがはるかにショックだった。
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公娼は警察に届け出を必要とする鑑札業である。
基本的に全くシステムが違う。
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また山室軍平の命がけの廃娼運動は誰でも知っているだろう。
つまり公娼制度は国家権力にとても近いシステムで、それを守る暴力装置も備わっていたのだ。
だから「従軍慰安婦は公娼」という論理は、公娼という点で間違っているし、「公娼」に対する観点でも間違っている。イデオロギーの問題ではない。
想像力を持ってほしいと思う。
あまり光が当たらないが、北海道の労務慰安婦には14歳という年齢が記録されている。
14歳の少女が自分の判断で選択し就業する職業だと思えるだろうか?
でもその人からそんな言葉を聞いたほうがはるかにショックだった。



