映画『鬼火』
同タイトルの映画作品で有名なのはルイ・マルが監督したもので、私も外国語映画のオールタイムベストテンに入る好きな作品だ。
これはそれとは違う。
併映用の小品である。
かつて映画産業の隆盛期、日本には五社の映画会社があって週に1本の新作が封切られていた。そしてそれに伴う作品(併映作品)も作っていたので、週に2本の新作が作られていた。だから年間500本の新作が作られていたのだ。
映画会社の体力差もあるが、併映作品は40分程度の小品が多かったが、その多くは埋もれてしまい今ではデータしか残っていないものも少なくない。
ガス集金人が江戸川近くの場所に配置換えになり、そこでガス料金をためている一軒家を訪れる。
そこは脊髄カリエスで寝たきりの夫と看病する妻の二人暮しで、たいへん貧しげである。
ガスを止めると薬が煎じられないと懇願する妻に、止めないために内金を立て替えることを条件に肉体関係を迫る。
それには伏線があり、同僚の集金人に「そういういい目を見た」という話を聞いたからだ。
集金人役の加東大介が秀逸。
下卑て、小さな権力をかざし、それでいて純情な面も小心なところもあるという役を演じている。
妻役は津島恵子、薄幸さが滲み出ていた。
集金人の脅迫に応じ、夫から帯を借りて、彼の下宿を訪れる。
集金人は寿司をとって待っている。
しかし、結局は逃げるようにして帰ってしまう。
そして、翌日抗議の意思を持って再訪問をするが、夫婦は心中しているという痛ましいストーリーである。
1956年作品。
原作:吉屋信子、監督:千葉泰樹、脚本:菊島隆三
集金人が銭湯で妻が尋ねてくることを想像するシーンがあるのだが、フィルムが逆焼きなのだ。
なぜだか見当もつかない。
風呂の鏡に映ったということだろうか…