第68回東京都高等学校演劇コンクール地区発表会・中央地区 | leraのブログ

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第68回東京都高等学校演劇コンクール地区発表会・中央地区

中央地区A日程二日目(2014.9.23)が観劇できた。以下寸評と講評(上演順)。
講評は、林成彦氏(演出家、PAVLIC所属)、モラル氏(演出家・脚本家、犬と串主宰、ドリームプラス所属)。尚( )は筆者が勝手に解説したもの。

 今年の特徴は「戦争」に触れたものが三校あり多いと思った。これはウクライナや中東など紛争や暴力が吹き荒れる地域が多くあることと、集団的自衛権解釈などから嗅覚的に感じた危機感の反映かもしれない。但し三作とも部員作オリジナルではない。

都立新宿山吹高校
『ファーストキスはネコの味』 作:與口奈津江部員
小学校四年生がネコにメタモルフォーゼ。ネコ社会を知ることによる成長譚。ネコ社会に入ってからのエピソードがやや冗長で整理できる。そしてもっと冒険してもいいと思う。成長譚に関してもサプライズがあるといい。
 ストップモーションのエピローグに「さげ」が欲しい。
 最初リョータ(小学校四年生)の役者が拙い感じだったのだが、それがだんだんストーリーにあってきたところが面白かった。

講評
 穏やかな日常から長いキスがあり、それが期待感を持たせ、心をつかまれた。世界観がネコのモチーフにあっていてネコの衣装もよかった。リョータが振り回され成長するのにピタリと合った。ただ事件性が少ない。ストップモーションよかった。
 キスシーンがすごい。高校演劇では見たことが無い。白いネコがエロティック。キスに唐突感がない。キスまでの動線が長く出会いの時間をとっていていい。昼夜に関心がないネコ社会の感覚おもしろい。リョータの性別は、ファーストキスを奪われるということを重大事にするのなら、女性の方がいいのでは?するとルーシー(奪うネコ)は男になり、追う二人(アケチとコバヤシ、少年探偵団のイメージ)もしっくりするのでは?魔法のシーン(人形をステージに置いた)は見えにくかった。

都立向丘高校
 『父と暮らせば』 作:井上ひさし
 セリフはコトバとなって自分の体内に入り、コトバ(意思)となって吐かれる。そんなことを思ったのは、二人芝居というセリフのウェイトが重いにも関わらず、女優林美月がたいへん巧みだったからだ。セリフが体から出ていて自分のものになっていた。セリフばかりではなく、体の動き、視線、表情、本当に上手で感心した。広島弁を知らないが自然に聞こえた。この戯曲のテーマは「生き残ったやましさ」と「生きているから望むこと」の狭間で揺れ動く心理である。それがよく表現できていたと思う。

講評
 父親は難役を真正面から演じていた。女優は動きが意図ある動きで、さらにきれいで無駄がない。装置も二人の少なさを感じさせない。SEと声量に問題があった。幸せになってはいけない、とするところから欲(願望)が見えてきたら感情移入ができた。父の骨の入った箱がヘン。
 二人芝居は逃げ場がないので、チャレンジを評価。役者同士がよく見るのがいい。時間と空間を超え原爆が運だと感じ胸に迫り、説得力あり見応えがあった。広島弁が足かせになっていて情報のニュアンスが消える場合がある。方言を使わない選択もあったのでは?父親の顔と地蔵の顔の対比インパクトが弱い。父親の髪型も考えたい。

京華学園
 『いのち~ヌチドゥティーチー』 作:伊藤弘成顧問
別掲

区立九段中等教育学校
 『鏡を前に依りの箱』 作:仲程早貴部員
 カインコンプレックスがテーマかと思った。次々に届け物のダンボール箱が届けられるのだが、それかすべて同じ大きさでしかも新品。ここに引っ掛かってしまったため意識が無用な浮遊をしてしまった。同型新品に意味はなかったようだ。こういった非日常を舞台であらわすと観客はそちらに意識が行くので、演出意図やストーリーに無関係なら気をつけたい。
 テーマとしては個性との関わり。個性が人生を決定したり、理想の個性を考えたり、それは存在の意味に繋がる。脚本を読みたくなった。

講評
 物を捨てられない内面を視覚的なポップさで表現していて音楽もよい。ミステリー性あったし、キャストが個性があった。家庭教師に魅力を感じた。違いこそが個性はタテマエと踏み込んだところがいい。一人で悩んで一人で答えを出すという感じだった。
 役者力の高さに魅了された。家庭教師はセリフに重みがあった。ヒナコとユキの土産をめぐっての会話が魅力的。人のため、他者のため、伝わらないものを伝えるのがコミュニケーション。伝わらないもどかしさがセリフを言うとき素直に体に乗っている。わざとずらし(スムーズなキャッチボールではなく)を入れるともっといい。役者が曲に合わせる、他の人と合わせるために曲から遅れたりしたところと、ダンボール箱が全部テーブルの奥に置かれたのが残念。テーブル前にも置かれ、役者が邪魔で移動させるという工夫もあっていい。ホラーテイストがいい。

村田女子高等学校
 『月並みの女子高生の欲には限界がある~乏しい想像力と貧しい非日常~』
 くすぐりの効いたコントシーンの多いコメディ。現在の女子高校の生徒を等身大に表現し巧み。また、男女均等雇用法の欺瞞性をついたり、政治家のセクハラ発言を揶揄したり、辛味の現代批判が刺激的。それは結婚や家庭に入るという抑圧が未だにあることへの批判にも思えた。それらは与えられた自由の悲しさに繋がる。そこのところで単なるコメディではない姿を見せ観客を魅了したと思う。さらに良くなる本だと思う。

講評
 華やいだ舞台。(一見)「今どき」だがそれをつき放した普遍的なテーマ。技術が高くそれでいて親しみやすい。稽古量を感じさせないウマサ。その後を見てみたかった。ドラマ的に特別なことが起きない。よって演劇的な大技が欲しい。
 オープニングのおしゃべりは、役割をこなしていてリアルでうまい。フォーカス(観客の視点)を衣装(同じ制服でもコロスはダーク色)で分けている。早実(文化祭)に行ったふたりがうまい。二人しかいないのに文化祭が見えるよう。「公園で写真を撮ってそう」などはっとさせるセリフがあり、女子の「舞台裏」を垣間見るようだった。五人の個性や人柄がだんだん出てくる。題名の「月並み」が欲にかかると思った。タイトルの意味が(観劇)途中が変わったのがよかった。風早とキラのふたつの対比がよかった。キラとコー君の関係は当事者間で語られるが、演劇の場合はここに第三者をからめると、葛藤をつくることになりさらに台本が広がる。第三者とは、他にコー君を知る者がいるとか、コー君と他の女子が歩いているところを誰かが見たとか。

都立文京高校
 『就学旅行』 作:畑澤聖悟
 この本はたいへん巧みでメタファーの膾炙という印象がある。故に演じることは難しいし、キャストの力量も問われる。外観と違ってかなり難しい。さらに、ひとことのセリフに意味を持たせたりしているので、セリフがそれのためにわざとらしくなっては臭くなるし、それでいてちゃんと伝えなければならないから大変なのだ。
 総じてよく構成されていた。男子生徒の存在感が希薄だった。また、サダコのシーンはいらないのでは?

講評
 本の力に負けない作品。さりげない伏線が多々ある本。それを読み解く時間を感じた。女性が個性的で飽きない。空間の寂しさがない。男子の笑いの取り方のベクトルが似ていて差別化できるとよかった。
 環境に恵まれラッキーだった。観客は京華のひめゆりを先に見ているし、村田女子の男子話もあったのでストレートに伝わった。また、演劇も6本目だったので開場もやや疲れてまったりしていたので修学旅行の大部屋の雰囲気があった。柿崎の軍隊性や、先生の迫力がいい。白鳥先生のフェロモン的魅力は隠しておくほうがいい。布団の並びは柿崎の隣に野宮の方が対比が際立つ。また柿崎が上手の方がメンバーの見える位置で素振りができる。

立教池袋
 『PE! PE! PE! PENGUINS!!』 作:西川大貴
 ショーやパフォーマンスのグランドフィナーレがあると、そのためのストーリー運びになる。無論それはそれでいいのだが、それには完成度の高いフィナーレが必要になるので、ある意味危険でもある。
 人気を失いつつあるペンギンたちが自己の存在証明を求め、それが空を飛ぶことだったり、ショーによって人気回復を企図することだったりした場合、そこにあるルサンチマンを表現できるとストーリーは奥深くなると思う。

講評
 ツカミに成功したエンターティメント。オシャレだけどベタといった一歩超えた濃い、どろくさいカッコよさがいい。パフォーマーとしての意識が高い。ストーリーの軸の見せ方、ひとつひとつの理由が見えにくい。空を飛びたいココの孤立がソデで行われるので舞台で演技で見せたい。ショーをやろうと提案し(反発があり)和解までの時間が長い。途中の(タップ)ダンスは軽く見せ、ラストでちゃんとしたものを見せた方がシーンが立つ。
 カッコいい。演劇部っぽくなく、イメージが違うし、衣装で勝っている。タップもいいしもっと使ってもいい。但し一回目のタップは客がどう受け止めていいか分らない。キキにとっての意味が不明。空飛ぶ仕種もタップでいいのでは?大事なのは客の持つイメージ。客にどんな像を結ばせるか。

都大会推薦2校
 暁星『アブラカタブラ ビリケンケンチャン ラミパスラミパスルルルルルー』(1日目)
 京華学園『いのち~ヌチドゥティーチー』

奨励賞5校
 共立女子『オチブレニンギョ』(1日目)
 都立新宿『人一人』(1日目)
 区立九段『鏡を前に依りの箱』
 村田女子『月並みの女子高生の欲には限界がある~乏しい想像力と貧しい非日常~』
 都立文京『就学旅行』

 尚、都大会は11月8日9日、東京芸術劇場シアターウエストにて

第37回東京都高等学校文化祭演劇部門地区大会
主催:東京都教育委員会/東京都高等学校文化連盟
東京都高等学校演劇研究会