少年法「改正」 | leraのブログ

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少年法「改正」




 今月成立した少年法改正の要は厳罰化である。



 少年犯罪は年々減っている。

 また日本の十代は世界で最も殺人を犯さない十代である。



 体感もあるかもしれない。

 アンケートで「犯罪は増えている」と答えが増えているが、「身近で犯罪があったことはない」と答える人も多い。つまりマスメディアの犯罪報道によって「犯罪の増加」が体感として意識に残っているのである。



 しかしそれにしても、なぜ厳罰化なのか?


 日本の刑法の罪刑部分は死刑を除いて概ね良くできているといわれる。それは教育刑に貫かれているからである。


 教育刑以外に「報復刑」があり、石打ち刑などがそうであるが、死刑も報復刑と言えなくはない。


 刑法がそういう精神であっても、刑事政策がその精神を斟酌しないという現実がある。刑務所で教育がされなかったり、出所後フォローがないため再犯率が高いという現実がある。



 日本の刑法が報復刑を否定しているのなら、罪刑の大きな目的は教育による再犯防止であるはずだ。

 特に少年犯罪の場合は育成環境や生活環境に影響されやすいため、自己責任を問えない。よって教育を主眼にした「不定期刑」が中心であった。


 少年に長期の定期刑を科すことは更生余地の削減になると思われている。


 今回の改正における厳罰化というのは、刑期の増大である。

 そして検察官関与の増大である。



 少年犯罪が減少し、教育刑というポリシーがありながら厳罰化を目指

すのはどんな心性なのだろうか?


 ひとつには被害者感情がある。

 被害者感情あるいは被害者遺族感情(以後被害者感情)は罪刑法定主義に反映させるべきなのかはたいへん疑問に感じる。


 本来被害者、被害者遺族はもっと別の方法でケアされるべきではないのか?という思いがするのだ。


 刑事訴訟法における刑事裁判は国家と被告の問題となっており、そこに被害者及び被害者感情が入り込む余地は無い。かつては公判の連絡も、判決内容の伝達も被害者には無かった。


 昨今は傍聴席を提供しているし、自由心証主義から裁判官が判決文に被害者感情に言及することも増大した。

 しかし、被害者の対応は物心の面からなされる社会保障であるべきだ。


 「物」というのは小さいものは健康保険(第三者責任のため健康保険適用にならない)から始まり、生活保障や遺族補償金制度までのことである。

 「心」は専門機関によるメンタルケアのことである。


 ある国では、犯罪の起きたその日に被害者の下をカウンセラーが訪問する。


 しかし国法が被害者感情だけを斟酌するとは思えない。

 プチ隔離政策とも思える。


 再犯しない教育プログラムを企画するのではなく、再犯させる回数を減らすために隔離するのだ。しかし終身刑以外ではその効果は薄いだろう。


 ならば改正の真意はなにか?



 格差社会による少年犯罪の増大を見込んでいるのかもしれない。

 現在は産業革命の真っ只中で、コンピューター社会が人のいらない社会、必要な人は消費者だけという社会を作っている。そこで作られるのは、「教育現場から疎外された職を持たない若者」である。


ここで言っている教育というのは、知識や教養を高める教育のことではなく教育消費者のことである。国立大学は独立行政法人になり学費が年間六十万近い金額になっている。私立大学の場合は百万円である。

国連の人権理事会(委員会から理事会に「昇格」)からは高等教育の無償化を勧告されていながら逆行している。国連の意思は教育現場から排除された場合社会の不安定要素になるし、正義が実現できないからだ。


 

 その彼らを犯罪者予備軍と見るのである。

 刑の厳罰化が犯罪の減少に直結しないことは自明であるため、目的は「せめてもの隔離」だろう。



 もうひとつは生産労働人口減少で惹起される外国人労働者増大に伴う外国人少年犯罪の増大を想定しているのかもしれない。この場合も目的は「せめてもの隔離」だろう。


 もうひとつ付け加えたいのは冤罪防止である。


 家裁の事実認定が不十分な場合がある。密室であることも関係あるだろうし、警察などの「説得」により冤罪が多いと言われてきた。相手は少年であり、誘導されやすく威厳に弱い。

 御殿場事件の冒頭陳述変更などの暴挙は例外としても、少年に関しては「無理強い」が横行する危険性がある。


 少年における冤罪の不幸は、人間形成する時期に、あるいは青春を送る時期に自由でないことだ。

 冤罪防止のシステムを少年だからこそ整備してほしい。


 それを「改正」の交換条件にしてもいいと思っている。

 朝日新聞の411日の社説では、検察官は冤罪を防ぐ観点から関与すべき、と言っているがナンセンスである。



備考

 メキシコ映画の『父の秘密』は少年保護の負の面を表現している。