枕の上の葉 99.8.8鑑賞
インドネシアの悲劇は長くオランダに植民地支配されたこと、日本帝国に差別的で暴力的な支配をされたこと、そしてスカルノ、スハルトの利権政治が紊乱したことである。それらは弱者を必要とし、絶対的な弱者を造る。この映画に出てくるのはジョグジャカルタのストリートチルドレンである。
アーシーという露天で祭壇の飾り物を細々と作っている女性がいて、彼女を慕っているストリートチルドレンが何人か居る。慕っているという表現は適当でないかもしれない。彼女の服の安全ピンを盗んだり(ボロボロの服をつなぎとめるのに安全ピンが用いられる。あまったものはピアスにして耳や唇で「保管」する。)するからだ。母のような気になる存在と言った方がいいかもしれない。彼女は子供達を気にかけている。
カメラは彼女や彼らの住んでいるスラムの描写を丁寧に追う。彼らは物乞いをしたり、流しをしたり、他の露天商の手伝いをしたり、盗みをしたりして生計を立てている。しかし彼らを搾取するシステムもちゃんとできている。シンナーやタバコだ。
ストーリーらしいものはない。彼らが順々にあっけなく死んで行くという以外は… 弟に会いたくて弟への土産の美しい枕を盗み、列車に乗り故郷を目指すが、乗った列車の屋根から転落して死んでしまう。国際的な保険金詐欺団に偽の身分証明書をつくらされ簡単に殺されてしまう。チンピラの紛争の人違いで殺されてしまう。
ストリートチルドレン達は身分証明書を持たないために埋葬の許可がおりず、何日も死体が置かれる。 アーシーはその死体のそばで、テレビのインタビューに答えこう言う。 「死んだのに埋葬できないなんて…一体どこの誰が決めたの?動物だって埋葬されるのに…」
この作品は実際にあった保険金詐欺殺人事件をモチーフに作られ、ストリートチルドレン達は実際のストリートチルドレン達で演じられた。主演のキリスティン・ハキムが製作もやっており、彼女の情熱が観るものに伝わってくる。 ブラジルで多くのストリートチルドレン達が焼殺された事件は未だ記憶に新しく、社会のシステムの中であるいはシステムの要求によって殺されていく彼らの命が儚い。
日本はODA(開発援助資金)と称し、日本政府がインドネシア政府に援助金を出しそれはいったんスハルトかスハルトの親族の所に落ちる。スハルトに賄賂を出している日本のゼネコンがその資金により開発工事をスハルトより受注する。その工事の多くは樹木の伐採やダム建設で、先住民の生きる場所を狭めたり一般住民の犠牲の上になりたつ。地方の子供達は都市部に出て行ってストリートチルドレンになるか、都市部に売られて行って性的な搾取を受ける。
これはインドネシアだけの問題ではなく、現在アジア諸国全ての国に関わる問題となっている。原因を問おう。原因は支配でしかない。暴力的な支配、政治的な支配、支配は弱者を必要とし弱者は常に子供や女性や先住民なのだ。この映画は人間がせずにはいられない「支配」を厳しく批判している。そして生命の尊厳などどこにもないという事実をアピールしている。
題名の枕とは母親の事であり、葉とは小さな生命つまり子供の意味だと言う…
監督と脚本を手がけたのはドキュメンタリーの作品を多く残しているガリン・ヌグロホ。彼は「水とロミ」と
いうドキュメンタリー作品で水辺のスラムに暮らす少年を描いている。
