現代の「戦争」と内部統治強化
西谷修氏(フランス思想・東外大)が新聞への寄稿文(毎日2014.3.3夕「テロとの戦争が招く真の危険」)でこう書いている。
・ 兵器の破壊力が過大になったため、半世紀以上大国間戦争はない
・ よってテロとの戦争になった
・ 小国や非国家的組織をテロリストと名指し殲滅しようとする
・ 大国間戦争がないのに戦争の機運が煽られる
・ 外部に「敵」を想定すると内部の締め付けが可能になる
・ テロとの戦争は戦争を(内部の締め付けという)内戦化する
・ 内部の「敵」を排除して統治を強化する
そして、こう締めくくる。
「21世紀の戦争は内部統制と周辺の無秩序化として恒常化する」
怖い言葉だ。しかし、アフガニスタンやイラクで見てきたことだ。
清水雅彦氏(憲法・日体大)の講演で、この意見と通底する話を聞いた。
彼は80年代から秘密保護法制に反対してきたが、今回の特定秘密保護法の制定に関する意見の中にこういったものがあった。
・ 尖閣の中国漁船衝突事件を口実として秘密保護法制が論議され出した
・ 「国民の知る権利」が明文化されなかった
・ 処罰対象は民間人や秘密にアクセスする取材やその報道をする人であり、国民が「知る」ということが制約を受ける。適正評価を受ける人のプライバシー権も侵害され、公開裁判を受ける権利も侵害され、国政調査権も制約を受け、行政権の肥大化が予想できる。
・ 9・11以降、軍隊の警察化と警察の軍隊化という軍事と治安の融合化が起きた
・ 国内治安は警察、防衛は自衛隊と役割分担が明確で法体系も別だったが、対テロ戦争が活発になり垣根が崩れた
・ テロは犯罪なのに軍隊がテロ対策に乗り出してきた
・ 2000年代に入り、内乱など国内の治安問題で警察だけでは不十分な場合自衛隊が出動できるという協定があったが、それを改正し武装工作員の侵入や不審船対策で警察と自衛隊が一緒に対処できるとした。
・ 全国で警察と自衛隊が治安出動の共同図上訓練をやり、その後共同実動訓練をやり全ての都道府県で終了している。
9・11以降アメリカ合州国は「愛国者法」を作ったが、これは正しく内部統治強化であったし、日本も集団的自衛権行使に向けての準備の中で内部統治強化がすでに始まっているのだろう。いみじくも石破が取り消した発言からいけば、治安出動と称して警察と自衛隊が市民活動を規制するかもしれない。
国家安全保障会議のメンバーは首相・外相・防衛相・官房長官のたった4名だというし、今回の憲法九条解釈の変更を閣議決定でしてしまいたいらしい。
リーダーシップのある政治家を望んでいるのは有権者?それとも権力自身?私は元々政治家にリーダーシップは危険と言ってきた。
西村修氏は同寄稿文の中で、「私たち」についてこう言っている。
「人間の知性も、強力なテクノロジーを使うのにますます不釣合いになっている。難解なことや通常の尺度を超えたことはすべてコンピューターや機械に任せようとする。人間は考える事も想像することも省略し、単純な憎悪や報復の感情だけに身を任せて、安易に戦争を語ろうとする」
「私たち」は、東京大空襲の空の下のあった町に、広島長崎の原爆雲の空の下に、普通の市民生活があったことを知っている。それは重慶でも、南京でも、アフガニスタンでも、イラクでも、同じだということを知っている…
注:清水雅彦氏の講演内容はあくまで私の記憶である。