領土ナショナリズム 尖閣 アジア
姜誠は『世界』2012年11月号で排外主義についてこう述べている。
―領土を侵犯されたと憤る大衆の素朴な感情を背景に、ポビュリズムの誘惑に負けた政治家が支持率アップや自己保身目当てに強硬な発言を繰り返し、さらに大衆の怒りを増幅させる。これが領土ナショナリズムというメカニズムの厄介なところ―
事の発端は石原慎太郎氏が米国のネオコンサヴァティブのシンクタンク「ヘリテージ財団」に招かれ尖閣諸島購入を打ち上げた、ここからすべてが始まった。
今では誰も記憶していないだろうが、石原氏の都知事立候補時の公約は「米軍横田基地の返還、あるいは共同利用」だった。
3.11東日本大震災の時は「我欲による天罰」と吐き捨てた。
横田基地周辺にしても、震災被害のあった地域にしても、沖縄にしても多くの人々が住んでいるのに、なぜ無人島に関心が向かうのか?不思議だ。
彼の購入計画発言で、民主党がうろたえ国が買うことにしてしまった。このことにより中国との関係は悪化し、経済的損失、文化交流的損失ははかり知れない。
日本製自動車の中国販売は40%激減し、中国からの日本への観光客は30%以上激減している。これらの回復は見込めるのだろうか?
このことは、サブプライムローン、リーマンショック並みの「激動」であり、これが一政治家の発言から始まったとすると歴史に残るであろう。
これに関し石原氏のコメントがあったかどうか記憶にない。
さらに海上保安庁も自衛隊も傘下にないのに「(他国籍船舶を)追い払え」と言ったが、彼は誰に追い払えと言ったのだろう?そして、島に構造物をつくれと刺激した。さらにパンダの子どもが生まれたら「センセンとカクカクと命名」と発言した。
頭の中はファンタジーと過激さだけだ。
領土問題に関して近隣を刺激しているのは日本政府である。
原子力基本法に「安全保障」の文言を入れ、
集団的自衛権の行使の解釈(システム)を変更し、
武器輸出三原則の緩和発言が政治家から出る、
憲法改正案では自衛隊の「国防軍」化まで出てきた。第二次大戦のドイツ軍がまさしく国防軍と名乗っていた。
最近石原氏は「武器を中国に売り日本の優秀さを示せ」と発言しているがその真意は分らない。
菅直人内閣は「領土問題は存在しない」と先人の知恵だった棚上げ論を反故にしたし、前原国交大臣(当時)は「現実的脅威発言」でさらに火をつけた。
近隣アジア諸国を刺激してきたのは日本の政治家たちである。
この刺激は近隣アジア諸国ばかりではなく、カイロ宣言もポツダム宣言も日本国憲法前文、同9条、同99条をも刺激するのである。
ヘーゲルの定義に背いて、歴史が人類の記憶とするなら、尖閣問題は日清戦争の時の台湾植民地化に根源があったし、その前段階には朝貢国だった琉球王国の植民地化があった。元々尖閣の命名はイギリスだったし。(イギリス海軍水路誌 "The Pinnacle Islands" の意訳)
竹島は韓国併合の前段階だった。
日本の政治家が根拠を示さずにオウムのように言っている「固有の領土」の固有とは何なのか?国民国家になってたかだか100年から200年である。その間「明治政府(1868年)「大日本帝国(1889年)」「日本(1945年?)」と国名は変わり、挙句の果てに憲法を総とっかえして変身を遂げている。
「固有」そのものが幻想でファンタジーである。
太田昌国は
「無主地占有」論は、西欧列強の植民地主義の根幹思想と批判し、もうそんな時代ではないことが国連の先住民族宣言や、EUのスタイルで分かるはず (EUが植民地政策に反省しているかというとそれは疑問だが…)
と言う。
山口正紀は
島も海も「どこかの国のもの」ではない。長い歴史の中で、国・民族を超え「海人=漁民」たちが利用してきた共有財産
と書いている。
賢人の考えであり、先住民族の国連宣言を踏まえれば非現実的なものではない。
中日(日中)間、韓日(日韓)間における緊張が誰にとって得なのかを考えよう。今から思えば鳩山由起夫氏の「東アジア共同体論」が懐かしい。
そして、まるで開戦前夜のようにナショナリズムを煽るメディアを疑おう。メディアはいくらでも同じ過ちをおかすのだ。
いつも損するのは、踊らされ、利用され、搾取され、棄てられ、殺される市民なのだ。
私は漢字文化圏でEUのような経済共同体が作れると思っている。それはタイやラオスまで及ぶ。そして、それは大東亜共栄圏の忌むべく幻想にも結びつく。だからなお、新しいアジア共栄圏は可能だと思えるのだ。それを最も嫌っている米国のくびきからどう逃れるかが最大の日本のテーマであろう。
安保条約と米軍基地から「解放」される時など想像できない…