劇評『彼らはバナナで鯛を釣る』劇団ARGO秋公演
大学の談話室と言った自由スペースで行われたのだが、階段状客席で劇場設営はしっかりしていたし、照明は舞台上にパイプ組で設けた本格的なもので(電気美術研究部の協力があった)、50人ほどの観客で満席だった。
舞台はシェアハウスの共有スペースの一室であり、背景の中央に管理人室と書かれた目立つドアがある。牛乳を管理人室の冷蔵庫へ移すという計画が実行されないので、「開かずの間説話」だと思わせる。
「開かずの間」であるはずの管理人室の第一の秘密があきらかになる。
それは、管理人室を潰したということ。そして管理人は二階にあった自室も「新入り」に貸したため、管理人本人は屋根裏に住んでいる。そこでプロローグにあった天井からの異音は解決する。それらの理由は経営難である。
米国の大会社の日本人副社長が行方不明になり、見つけたら5000万円の報償金が出る。シェアハウスのメンバーが協力してその副社長を見つけ、会社から迎えに来た長谷川がなんと「開かずの間」の管理人室から登場するのである。
5000万円の鍵を握る長谷川が管理人室から出てきて「開かずの間」の秘密があきらかになるのかと思うとそうではなく、その秘密は最後まであきらかにされないし、元々秘密などなく、「開かずの間」でもなかったようなのだ。
これは私の一方的な思い込みだと思うが、不幸な錯覚であった。
シェアハウスのメンバーは個々に特徴があり、苦悩も持っているようだが、その錯覚の故に私としてはテーマがばやけてしまった。
照明も音響もプロジェクターを使ったメンバーロールも役者もよかったので、残念だった。
この錯覚をしたのが私ひとりだったら大禍はないが…
原作:高見宙、演出:古宮洸輔/益子祐貴、副演出:鈴木寛、音響:伊藤聡一郎、照明:高橋明日香
駒澤大学 劇団ARGO 第163回公演